第2回しりとり道場
ある意味人類の発想の頂点へと舞い上がるしりとり竜王戦に出場するための「名人」の権利を競うしりとり道場の2回目.1回目ではダブルブッキング川元という素晴らしい名人を輩出しているので今回も彼並みで,できればタイプの異なる有望新人の出現を期待したいところ.局の側も同じことを考えたらしく,前回の鋭く尖った不条理よりはほんわりとした天然系棋士を多めに準備してきました.結果,どこか切迫感のない穏やかな雰囲気で終始展開です.
今回参加の棋士は,小木(おぎやはぎ),輪島,矢部(カラテカ),大久保(オアシズ).輪島以外は全員芸人のはずなのですが大久保が少々微妙(笑).基本的に天然揃いでしかも棋士たちの相手となる有野名人もまた天然.ツボにはまると頭が痛くなりそうな顔ぞろえです.決勝への進出者は一名のみ.進出者には名人位も授与されます.
緒戦は「しりとり4局打ち」,名人と各棋士が互い違いにしりとり.最初のテーマは「頭の悪そうな言葉」.これは天然にとってはとてもやりやすいテーマ.
小木の「子連れ妊婦」から開始しましたが,小木のどの回答にも言えることですが狙っている部分が狭すぎで,回答のアナーキーな香りは悪くないのですが,きちんと頭が悪い回答でないと点は取れそうにありません.一方名人有野は「プリンまみれ」と序盤より流れに乗ります.頭が悪い,というのはこのレベルでなければ(笑).輪島は彼らしく「全裸でノックアウト」.有野は「友達がきゅうり」と有野ワールドを早速展開.矢部の「リスの夢」は頭悪いかどうか不明ですが言葉そのものが面白く,そして長考する女流大久保の「牛若丸の運動会」がかなりいい.それに答える有野の「胃カメラ長介」はその回答をふっとばすくらいのかなりのすごさ.その後まあまあの展開が続きます.なんで輪島の「マットでうなるコーチかな」が75調なのかよくわからなかったりとか.そして有野の「名前がひらがな」は恐らく狙ったと思うのですが司会のいとうせいこうを激怒させます(笑).「六本木で缶けり」もきちんと頭が悪いですね.一方矢部の「ナースとお風呂」や大久保の「リンス増量」は両方とも結構面白い.ただし無闇な勢いは大久保の方が強く矢部は印象の面で損をしているかも.さらに有野の「牛でツーリング」は強い! それに答える小木の動物ネタ「グロテスクなコイ」…やはりフォーカスが合わず.
結果,矢部と大久保が決勝に進出.全体的にはテーマに乗れた有野がやりたい放題.その有野と類似のタイプの大久保と矢部が面白く,輪島はやはり対応力不足,小木は最後までテーマと笑いのツボの両方からはずれてしまいました.有野は格下同タイプの相手だとリラックスしているようで,テーマのよさも手伝い安定した試合をしています.注目すべきは女流大久保.長考の末出てくるしょうもない回答は賢しさがなく面白い.もっと乱暴になると板尾名人の無頼モードに近くなるかもしれません.
2戦目はしりとりイマジネーション.テーマから連想する言葉でしりとり.テーマは「宮崎駿がボツにした映画タイトル」.自然,のどか,文明批判あたりを組み込まないといけないのでかなり難しい.天然にはこのテーマは相性が悪そうで,逆に不条理には最適なテーマかもしれません.
矢部の「リューマチの治し方」からスタート.でもそれはショートフィルム? 有野の「田んぼと機関車」はありそう.そして大久保の「八つ墓村の宅急便」はかなりいいのですが「ん」で警告.そして有野の「ヤシの実合戦」も釣られて「ん」.で矢部の「野菜泥棒だー」や有野の「誰かの家計簿」は両方ともショートフィルムぽく.そして呟き長考のあとの大久保,「ボーボー森の大合戦」って大作だけどまた「ん」かよ(笑)! ここで大久保,折角の無頼風をセーブするしかなくなってしまいます.有野の「ボス猿とねじ」や矢部の「しりとけつ」はまあまあですが,大久保の「シミ対策」って普通のしりとりだし.矢部の「ダンボールでできた・・・コイ」,有野「石の小銭」と佳作が続き,大久保の「にらとねぎの騙しあい」で終了.
結果,矢部が減点の少なさから評価され名人となりました.語の破壊力は大久保のほうが上だったのでもったいなかったですね.ぜひ次回の道場ではアンタッチャブル山崎とともに出場して欲しいものです.
今回の道場では,名人有野が波に乗ると周囲をぶち壊しながら進むタイプなので,他の名人戦で見られるような前後の関係性を生かした展開は見られませんでしたが,その分1戦目の有野の爆発力は見ごたえがありました.勝ち残った矢部はやはり単語レベルの力が足りないので,次回までにこのあたりをどうやって強化してくるかが見ものです.また,他の名人との相性も気になるところ.有田あたりと戦わせるとおかしなことになるかもしれません.
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