第4回しりとり竜王戦 予選
珍奇な概念の組み合わせのみが勝負を決めるシンプルかつ深遠な戦い「しりとり竜王戦」.しりとり道場で見出された名人たちも加わった戦いなのですが,今回は関西勢の躍進が目覚しい回となりました.つうか関東の出場者は主に癖がありすぎで,題にあわず場の支配ができなかったことが多かったわけですが.そんな予選はベテランと新人がもみ合う展開となりました.
今回の参加者は有野(よゐこ),矢部(カラテカ),千原浩史(千原兄弟),大久保(オアシズ),志茂田,川元(ダブルブッキング),渡辺(ジャリズム),板尾竜王.矢部・大久保・志茂田が道場より参入.全体的に素人が減り芸人が数多く並びました.勝ち残り名人の位を得た矢部と志茂田に加え,善戦した女流大久保も参入.この3人がどこまで頑張るかが1つの見所.そして癖の強い新人とベテランの間で,新規参入の定評ある芸人である千原・渡辺がどのような方向性を見せてくれるかにも注目すべきでしょう.
予選の競技は「しりとりセンスマッチ」.テーマに合った粋な言葉でしりとり.
Aブロックは有野,矢部,千原,大久保.竜王経験のある非常に強い有野に対し他のメンバーがどのように対応するかが勝敗を決める鍵となります.支配する雰囲気に逆らわず乗るか,それともそれに逆らうか,己の道を行くか.…実際の戦いではそれ以前の問題と戦う名人が一名出てしまったわけですが(笑).
予選Aブロックへの1つ目のお題は「情けない言葉」.
千原「プードルのお下がり」が基準.「類似品ばかりだ」「すいかがメインディッシュ」「胃下垂なのにレオタード」のように第一印象でのパンチは弱いですがじわじわ効いてくるレベルの高い回答揃い.大久保は「リンスが足りない」「だまだまのセーター」のように女性らしい正攻法.有野はさすが「犬に挟まれた」と粋かどうかはあやしいですがテーマに沿ったわかりやすい強いネタを展開.そして矢部は,「中身も食べる」は恐らく味噌汁のしじみあたりではないかと思うのでわかるのですが,最後の「水曜日が怖い」はあまりにも一般性がなさすぎと回答の波が見られました.「大金を見るともらす」はよくわかるんですけどね(苦笑).実際に点差を大きく左右したのは参加者のケアレスミス.有野の「足らないカーテン」と大久保の「ユンボで通勤」はともに良いのですが「ん」がついてマイナス3点.しかし竜王経験者の有野は終盤に「百合畑でコンタクトを捜す」や「苦労して係長」という強いネタを連打してマイナスを取り戻してしまいます.それに比べると大久保の「どんぐりが主食」では弱すぎて点差を取り戻すのは難しいはずです.
予選Aブロックへの2つ目のお題は「ロックな言葉」.
矢部の「名古屋発ロンドン行き」からスタート.矢部は「洗濯orDIE」のようにネタだけなく演技も良いのですが,後半は「今はフリーター」「友達はいねえ」のようにネタが弱すぎて演技だけに頼ってしまうことに.千原は「キダタローで立てノリ」「インドに行って変わった俺」と矢部よりも具体性の増した描写で勝負.キダタローが関東でも通じて幸いでした.終盤の「絵本で往復ビンタ」は,そういう教育を子どもにほどこしているんだろうなと思わせて愉快ですね(苦笑).有野は余裕があり「下水道にもラジカセ」「うるう年にダンスパーティ」とロックかどうか冷静に考えると微妙なラインをしれっと攻めるところがまた面白く.
そしてある意味ものすごかったのが女流長考の大久保.最初の「リヤカーで夜逃げ」からどうもおかしかったのですが,「レスキュー隊出動!」と来たところで視聴者も気がつきます.大久保,このテーマがどうやらものすごく苦手のようです.恐らく想像がつかないんではないかと.ゆえに千原の「体操はエイトビートで」というロックな単語の使用に反応し大久保「デース」.…デスロック? どっちかっていうとメタルの接頭語なんだけどなそれ(苦笑).この追い詰められっぷりはどんどんひどくなり,終盤の「タオルケット」に至ってはもはやしりとりでしかありません(笑).感想戦でも集中攻撃を浴びることになる珍回答をしりとりの歴史に刻んでしまった大久保です.最後は有野が「戸締りはハートにもしな」と王道に帰って終了.
結果,終始安定していた有野と千原が勝ち抜け.矢部はネタの弱さがあって健闘及ばす.大久保さんは…今回はすごいことになってしまったので,次回はぜひ汚名返上をお願いしたい(苦笑).
Bブロックは板尾,川元,渡辺,志茂田.板尾と川元の連携に飲み込まれると敗北が決定する恐ろしいブロックですが,渡辺が思った以上に素晴らしい戦いぶりを見せます.その一方苦しんだのは志茂田.前回浮き上がっていた「自分が苦手なネタをどうやってこなしていくか」という課題に正面から当たってしまいます.
予選Bブロックへの1つ目のお題は「気まずい言葉」.
板尾は「裏だよねお互い」と業界ネタからスタート.終始バランスよく,「ナルトの渦は逆だね」「のびた君全部嘘だったんだ」と不条理だがわかりやすい良いハジケも見せます.川元はスタートを「イラン人とサイコロトーク」としてダッシュ失敗.「ネイルをしてきなさい」「団しん也と2人きり」と不条理なのですがひねりすぎの回答が多く.その川元の不調を尻目に台頭したのが渡辺.長考派ですが「9時間待たせてチェンジ」「居留守をきっかけに人間国宝」という正統派の強いネタを提示して板尾とともに波に乗ります.そして残る志茂田は「じっと待ちたくはないんだけどな」「うぜえよりうるさいの」と呟きはじめて審査員びっくり(笑).他のメンバーは「気まずい情景を描く言葉」を出しているのに対し,志茂田のみ「言われると気まずくなる言葉」をマイペースで回答してしまい審査員から点を引き出すことができず,終盤に至って渡辺の「立派な万引き」を引き取って「忌引きして万引き」としましたが時すでに遅し.志茂田の独自の風が他のメンバーの風と正面から当たることによって,全体の雰囲気が淀んでしまいます.
予選Bブロックへの2つ目のお題は「清潔感のある言葉」.
板尾は「うるせーよメンソール売り」は単語を意味なく挟むという素晴らしい戦術で一つの頂点です.しかし「風呂大臣」は「ん」がつくいつもの奴で,それのリベンジである「七色風呂」は今ひとつ.失敗をすっぱり切り捨てる思い切りの良さがつけば,さらに強い名人になる可能性がありますね.川元は先程ひねりすぎたことを反省してか「リンス3回」とストレートに再スタート.「フッ素加工の雨あられ」は決して悪くないのですがこれは審査員に通じずもったいなく.結局「ローブローは打たない」という王道に戻りますが中盤のダレが響きました.志茂田は「ロックンロールよりロシア民謡」「イタメシより奴豆腐」と「田植えの後にはシャワー浴びな」以外は対比の構図.ただし対比は組み合わせる相手を工夫しないとインパクトは小さめで,全体的に小粒に.そして渡辺.「医者のアンダースロー」「留守番電話専用合唱隊」「レインコートはいらないよとローマ法王は言った」と佳作を連発.他のメンバーが弱かった中盤を制したことによって場を支配します.最後の「イギリス人でございます」は言い方だけなのですが場を支配しているゆえに審査員には高評価となりました.
結果,場を支配した渡辺と強い板尾が勝ち上がり.難しくしすぎた川元と独自の感性が審査員のツボから外れてしまった志茂田はここで敗北.波の激しい志茂田が落ちてしまったのは運の問題でもありますが,あれだけ安定していた川元を下してしまった渡辺の実力はまさに脅威です! 残った4強がどのような戦いを繰り広げたのかについては決勝記事をお待ちください.
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コメント
ひ~ん、志茂田さん、今回よくなかったですね。
ネジがマズイ方向に差し込まれた、って感じです。
なによりファッションがよくにゃ~い。半そでにホットパンツとは?
板尾さんだって一応スーツでしたよね、ノーネクタイだけど。
『竜王戦』というからには正装してほしかった。
衣装でハッタリかまして場を支配する、
ってのも一つの作戦だと思うのだか。
衣装代くらい出しなさい、テレビ朝日。貸衣装でもいいから。
それに前回の予選で落ちた人も『名人』になってて、
なんだか割り切れない気持ちでした。
もっと予選をやってから『竜王戦』でもよかったのに。
大久保さんはその予選で落ちてた一人、回答はちとレベル低かったけど
長考する表情が楽しめました。11時の方向を見て、
しばし霊感を待つような素振り、それからブツブツと独り言、
苦渋の表情もクルクルと変わって見てて飽きませんでした。
決して美人さんではないけど、女優の素質もありそう。
いい脇役になりそうな気がしました。
投稿: dance nyanpal | 2004.06.21 17:40
dance nyanpalさん,コメントありがとうございます!
志茂田さん,服装よりも実はちょっと眠そうに見えたんですが気のせいでしょうか.あの深夜帯は普通の人間には辛いと思います.芸人が強いのは時間帯の影響があるのかもしれません.
志茂田さんの服装にお金をかけるよりは,そのお金でスタッフはファミレスでも行ってじっくりお題を作りこんでほしいですね.お題の出来不出来でハジケの程度が違ってきますので.
大久保さんの別の意味でのハジケっぷりはおかしかったですね.あれだけパニックになるってことは女優は難しいかも.でも,背景を通りがかる一般人とか死体役とかはものすごく自然にこなしそうな気がします(苦笑).
投稿: Rowen | 2004.06.22 00:34