第3回しりとり道場
「虎の門」の不定期企画しりとり竜王戦.いい年齢の芸人がしりとりをネタにハジケ合戦を繰り広げるという非常に実験的な企画ですが,評判も上々のようです.ただしいつやるのかがわからないので,それはぜひなんとかしていただきたい(苦笑).
今回は不条理の雄・板尾名人を迎え,未来のしりとり界を担う逸材を発掘するためのしりとり道場を開催.ただし有野が前回自分だけハジケすぎてスタッフに怒られたため,板尾名人はソフトタッチで行くとのコメント.まあ,意気込みだけなら何とでも言えますし,実際あの人がいなければいつものように板尾名人に全てが支配されたに違いありません.
参加者はケンドーコバヤシ,室井佑月,鍛冶(さくらんぼブービー),志茂田景樹.悪目立ちしているのは志茂田.普通に座ってるだけでも既にハジケている見た目天然系ですが,職業は文筆業.言葉を使って飯を食っている年月と気合においてはそこらの若手芸人の及ぶレベルではありませんでした.
最初はおなじみしりとり4局打ち.4対1ですが回答回数の多い名人の方が実は有利.最初のテーマは「じーんと来る言葉」.間口の広い初心者に優しいテーマです.
しりとりは鍛冶からスタートしますが,「よし,それはほんとのお父さんだよ」…回答自体は悪くはないのですが演技が弱い! 関東のテレビに緊張しているのかこの傾向は終始続きます.「大根しかないよ」のような貧乏ネタをキメ技として抱え,それで押しきるようにすればもう少しよくなるはずなのですが.それに比べると板尾は「よしたまえ」「象印なんだ」とじーんとするかどうかは不明ですが演技は力強く.どこがソフトタッチなのかわかりません(苦笑).ケンドーは「誰だって化け物は怖いさ」「夜だけパパ」ととてもスタンダードでいい回答を出しているのですが周囲の変則ぶりに埋もれてしまい,室井は「余命半年でごめん」のようにこれも正攻法なのですが言葉のレベルでの爆発力に今ひとつ欠ける上に「ん」がつくことによるペナルティも大きく.ゆえにこの時点で結局頭1つ抜け出してきたのがなんと志茂田.「越中フンドシはいいぞ」と序盤からよくわからないノリで飛ばし,板尾が「サーカスで働いてるんだよ」「四男の嫁にお行き」と素晴らしい演技を見せているのに.「キスはもういいわ.心が欲しいの」で淑女という独特の風を吹かせ,それに板尾が「野ざらしのどこが悪いのよ」でとはすっぱな女で答えるという面白い連携が.板尾個人の中での連携であるサーカスネタよりも,やはりこういう連携のほうが見ごたえがありますね.淑女をきっちり引き取って返した板尾名人の凄さは言うまでもありませんが,彼にそうさせるような魅力的な回答を放った志茂田の世界観にも目を見張るものがあります.
続いては「器の大きそうな言葉」.これは有田が得意そう.
波に乗っている志茂田からスタート…ですが「生みの母より育ての母」はタイミングを誤り今ひとつ.板尾名人はさすがで「鼻かみなんていらんよ」と余裕.ケンドーの「妖怪だって友達さ」は人類に限らないあたりがいいのですが,それに答える板尾の「皆サザンさ」…「さ」ではじまる回答をしろよ(笑).そして「ささみはそれ以上無理さ」って無理やりの回答はどんな意味ですか(苦笑).このテーマで面白い味が出ていたのは紅一点の室井.「さあみんなついてこい」「全部買えや」となぜかおっさん臭くておかしいですが総じて標準的.板尾は「家に来い」と絶好調で,鍛冶の回答は「胃が分厚い」.1文字単語は追い詰められた証なわけですが,これに答える板尾名人の「胃を貸そうじゃないか!」はさらにでかくなります.しかしそこに突っ込む志茂田は前段に縛られることなく「雷落とすぞ」と炸裂.サイズの大きさで攻める板尾は「象はちいせえなぁ」と素晴らしい回答.そしてケンドー.志茂田より天候,板尾よりサイズを継承した「涙で流しそうめん」はいいのですが「ん」がついてしまって痛恨のミス.鍛冶がネタをふってからの中盤のノリがよかったのですが,ケンドーがもったいなかったですね.
結果,勝ち残ったのは鍛冶と志茂田の2人.やはり「ん」のマイナスがなかったことが大きかったようです.ケンドーは本当にいい回答を出していたので,ぜひ再度の挑戦を待ちたいものです.
最終戦はしりとりイマジネーションテーマは「売れなさそうな芸人のコンビ名」.これもなかなかいい題ですね.
鍛冶からはじまりますが「ずっこけ二人組」は言い方が弱く,これに比べると板尾の「ミートボーラー」は言い方が強い.けれど言葉そのものの破壊力では志茂田の「ラッパとトッポ」がずば抜けていて,板尾名人が「ポパイとポテト」と追従し,空間が板尾&志茂田世界に染まりはじめます.残る鍛冶の「トイレ愚連隊」は面白かったのですが,続く水ネタの板尾「井戸水」は勝俣の「いつか枯れるんで」というコメントにも助けられて直前の印象を打ち消すほど.そして志茂田がはじめて水ネタを継承.しかも「ずずっ,ずずっとすすろう」というド迫力! 思わず板尾はルールをまた忘れて「ウクレレ職人」…だからしりとりなんだから「ん」をつけるなと(苦笑).かわりに受けた鍛冶の「ういろう」はいいのですが地味.そして板尾の「うかいのれ」って何だよ(苦笑).そして波に完全に乗った志茂田の「蓮華と線香」…絶対その芸人は売れません!(笑) すげえ! 志茂田の風にやられた板尾と鍛冶は完全に調子を崩し,板尾ときたら時間切れしてしまう始末.さらに志茂田の「ぽんぽんとぱんぱん」は「ん」がついてしまいましたがグループ名としては素晴らしく.板尾の「ぽっぽっぽー,何ぽっぽー」,鍛冶「ポップヒップ」と続き,最後は志茂田の「ヨンさまとベッカム」で手堅く終了.後半の志茂田のハジケ具合が素晴らしかったですね.
判定の結果,ダークホース志茂田が優勝し名人に! 最初の予想を完全に覆すほど志茂田が良かったです.有野タイプの波に乗ると周囲をなぎ倒す恐ろしい名人で,完全に乗れば板尾名人すら蹂躙される可能性があります.しかも有野より冷静なのでどんな場合でも自分の風はきっちりキープしていきそうです.課題は自分がよく知らない,苦手なテーマに対しどのように対応していくかですね.
もう1つ,今回特筆しておきたいのは板尾の「うかいのれ」.面白い言葉の響きだけで押し切り意味を無視するという手が本気で使えるようになると,しりとりで単語が見つからず追い詰められる可能性が大幅に減少します.いや,しりとりとしてはどうかと思うんですけど(笑),久々の素晴らしい新人,新しい戦術の登場に心が躍ります!
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コメント
あは、録画してみているので遅くなりました。
しりとり大ファンです。
志茂田さん、ほんとに良かったです、
年齢を重ねるとガンコになりがちですが、
発想が柔軟ですよね、
それともアタマのネジ緩み具合がちょうどいいのか?
棋士として座ってらっしゃる姿も背筋もピンとして
素晴らしい。
ま、ファッションは好き嫌いがあるとしても。
竜王戦にはぜひ虹色の燕尾服、
もしくは紋付袴でのぞんでほしいところです。
投稿: dance nyanpal | 2004.06.08 21:35
dance nyanpalさん,コメントありがとうございます.
前回は,本当に志茂田が凄かったですね.これまで心待ちにしていた芸人以外のしりとり名人なので,決勝で場を支配したときにはとてもうれしかったです!
アタマのネジ緩み具合がちょうどいい名人が欲しかったんですよ.とっても(笑)!
志茂田なら黄色のスーツでもかっこいいかもしれないですね.有野との真っ向勝負をぜひ見てみたいです!
投稿: Rowen | 2004.06.09 01:20
先ほど第4回のしりとり竜王戦を見て、思わず検索したらこちらを見つけました。
すごく詳しくレビューしてらっしゃるので前回見てなかった分も笑わせて頂きました!
弱小ブログですがTBさせてもらいましたです。
投稿: okome | 2004.06.19 04:28
okomeさん,トラックバックありがとうございます!
現在決勝部分を書き起こし中です.やはり板尾VS有野戦はベテランらしい遊び一杯で面白い戦いでしたね.
リンクもトラックバックもぜひご自由にどうぞ!
投稿: Rowen | 2004.06.20 22:16