劇場版金色のガッシュベル「101番目の魔物」
「お前がそれを望むならの巻」
富士山麓に母とともに遊びに来ていた少女,コトハ.快活で心優しい彼女は落ちた雛鳥を巣に戻そうとしたときに枝の上に乗った白い本を見つける.コトハはその本に浮かぶ言葉が現実になることを知って驚く.さらに本に浮かんだ言葉は,「金色の髪の少年との運命の出会いが待っているでしょう」というものだった.
その頃.ガッシュたちも富士山麓にキャンプにやってきていた.スカイダイビングを楽しむ?面々だがパラシュートのかわりにブリを背負っていたガッシュ,清麿につかまったのはいいものの,ブリを落としてしまって結局パラシュートなしで湖に落下.水中を逃げるブリを追いかけたガッシュが出会ったのは,さっき白い本を拾ったコトハだった.
「金色の髪の少年」であるガッシュに失望するコトハ.ガッシュは白い本を見せてもらい,その本に書かれたことが現実となることを体感する.さらに本に浮かび上がったのは「森の洞窟で母親が貴方を待ってます」という言葉.魔界の記憶を持たないガッシュだがコトハの母の姿から自分の母の姿を朧気に思い出す.
コトハたちのコテージでジュースを飲んだりよだれを垂らしたりコトハの不興を買ったりしているガッシュの元に,旅の資金を持ったままで行方不明になったガッシュを捜していた清麿が到着.ガッシュを叱りコトハに謝る保護者清麿.そのままガッシュを連れて行こうとする清麿に,ガッシュがさっきの白い本の話をする.本を調べる清麿だが,コトハの母がいきなり倒れてしまう.本に浮かび上がるのは「洞窟に行けば治療薬が見つかる」という言葉.おかしいと思いながらも,清麿はガッシュとコトハとともに山中の洞窟に向かう.
「101番目の魔物」見てきました! 上映中の映画なので中盤以降はできるだけネタばれないように頑張ってみたんですが完全には無理なので(笑),ネタバレが嫌な奴は見てから読んでくれ.個人的な感想としては結構楽しい映画なのでぜひ!
全体としては「ガッシュと清麿の物語」で他のレギュラーはおまけ.現在進行中の原作やアニメではガッシュと仲間たちの物語になっているので,それと同様のものを期待すると違和感を感じる可能性があります.ただし,「ガッシュ」の根幹にあるのはガッシュと清麿が一緒に見知らぬ世界を手探りで進んでいくという物語で,この劇場版もそのラインは外していません.本編では描かれていなくてもあいつも年齢なりにくじけ年齢なりに立ち直ってきているんだろうなと思っていた自分は割と楽しく見てました.心の動きはベタに描かれているので追いやすく(その分底は浅いけれど)初めて「ガッシュ」を見なければいけなくなった保護者の人々にもわかりやすいんじゃないかな.
冒頭は謎の少年と今回のゲストヒロイン・コトハのご紹介からスタート.ここのエピソードはラストまで引っ張る縦糸となります.でもって本当の始まりはスカイダイビングに興じるガッシュたちからですね.画は荒いけど動きが面白い.パラシュートのかわりにブリを背負ったガッシュを支える清麿なんですが,余計な重量が加わると非常に危険なんですけどいいのか(苦笑)? そしてOP中は落ちてなおブリを追っかける馬鹿者の姿とキャンプ準備する連中のほのぼのした様子の間にハードな戦いが挟み込まれるという体裁.タイトルが画面に出たときは本当にうれしかった! 4年くらい前の1話の掲載時には,面白そうだとは思ったけれどここまで来るとは思わなかったもんな!
ガッシュがコトハにすごいセクハラをかますことで絡まりはじめる運命の糸.確かに全裸が平気でブリにかぶりつく運命の相手は勘弁してもらいたいところがありますが,…これって1話だ(笑).恋の相手としては無理ですが戦いのパートナーとしては非常に大変ですがそれなりにやっていけるみたいです(苦笑).そんな非常に大変なパートナーを抱えたもう一人の主役清麿は再登場直後にはガッシュにいつもの激怒をかまします.それからコトハに謝ってるんですが,その謝り慣れてる様子が泣かせるなぁ(笑).話を聞いて本を手際よく調べはじめたり,深刻な事態に陥っても疑いの気持ちを失わないあたり,今回の清麿は精神的にはいつもよりしっかりしていて,完全な「お兄さん」役になってますね.
さて,ここから先は印象をいくつか.
全編通して何度か戦いがあります.全体的に戦闘部分はいい画になってますね.戦いぶりとしては終盤だけでなく序盤や中盤の戦いも結構面白いです.指示なし・呪文のみで戦うガッシュと清麿のコンビネーションとか,敵の特殊能力を前にしたティオたちのコンビネーションとそれを越える敵の応用力など.
加えて,作中何度か風が吹きます.ここぞというシーンで吹きますんで「ああ」と納得してあげてください.風は…やはり(正しい)運命の象徴なんでしょう.転がるように流されたり,その心を支えるかのように吹いたり.
「ガッシュ」で一番難しい設定は魔物とパートナーの関係だと思うのですが,これを視覚的に表現したのはベタですがわかりやすくていい.自分はすごい勢いで「終わりなき時の物語」を思い出していましたが違いました(笑).
今回の一番の見所は中盤で,普段現実世界で戦っている「ガッシュ」ではありえないようなファンタジックさや足が地についてない感じがとても面白い.ガッシュが選ばれた理由も含めかなり大らかな世界のようなので,今人間界で必死に戦っている魔物たちはやはり無理をしているのか,それともパートナーや人間界自体から性格に大きく影響を受けているのか.…ブラゴあたりは当時から恐そうですが.
外面ではガッシュと清麿の立場が逆転しても,精神的にはやはり保護者としての立場を貫く清麿.その一方で己の真実に愕然とするガッシュは思い切りくじけます.くじけるなんて彼らしくないんですが,記憶がないとは言え自分が生まれた土地に自分の母に会いにきているので精神的に甘ったれても仕方がないかな.そんなガッシュをなんとかしようとする清麿の様子がやはりいい.橋の上のシーンは抜群です.
黒騎士,仙人木,校長あたりが大人の魔物.初出かな?…黒騎士は結構若そうですが.そしてガッシュの母上は…6歳児相当に対しあの言い方ということは,これまた随分とすごい根性の方のようです(笑).
ティオ,キャンチョメ,ウマゴンたちは最初はギャグ担当ですが,中盤以降はガッシュたちより先に本筋の戦いに巻き込まれることになります.とりあえずガッシュに預けた時点で全てが負けだったり,尻が破れたり.もちのきレギュラーもいますが一瞬です(笑).
そしてワイズマン,ペイントとかツノとか羽とかついてわかりにくくなっていきますが,あれはガッシュ+清麿なんでしょうね.力も十分で頭もきれるから一人きりでも平気.魔物の中でもレアな能力の持ち主であったため,コトハさんを振り回すことになります.特にラスト付近はコトハが可愛そうでガッシュたちがワイズマンの非道に怒る気持ちがよくわかります.ラストはこういうアニメのお約束なので一緒に叫んであげるべきです(笑).
どうして来たのかなんて理由なんてささいなことで,大切なのはここで何をするかの方なのでしょう.もしその望みが正しいことならば,最後には必ず結果がついて来るはず.そんな感じで,ガッシュの心の軌跡を追って奇跡を見る物語…ってことで絶賛公開中なので,ぜひ見に行ってください!
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コメント
Rowenさんの感想、とっても楽しく読ませていただきました!楽しめたようでよかったです。私とは全く逆の方向にとっているのが(そして、相変わらずそれを納得できる形で綴ってくださってるのが)面白かったです。私は逆に、あの橋の上のシーンで萎えてしまったので。私の場合、別の東映作品の映画化における思いっきり笑わせて泣かせてくれるイメージが頭にあったので、必要以上に厳しい評価になってるのかもしれない。とはいえ、全く楽しめなかったわけではないので、もう一度見に行く時は、妙な意気込みなく見られるでしょうし、印象が変わってるかもしれません。
投稿: わに | 2004.08.15 14:49
わにさん,コメントありがとうございます! すいません存外面白かったです!
>私とは全く逆の方向にとっているのが(そして、相変わらずそれを納得できる形で綴ってくださってるのが)面白かったです。
見終わったあとでわにさんの感想を改めて読ませてもらったんですが,結論は逆なんですがわにさんの見方も共感する部分が沢山あります.確かに映画は,TVの「ガッシュ」の一番いい時に比べるとテンションが一段下がってハジケは足りず娯楽大作にはなってないのは同意です.そのかわり旅映画としては面白くて,TVではできないことをやってくれただけでもうれしかった.劇場に貼ってあった雷句先生画のポスターの意味が,見終わったあとで解った気がします.
>もう一度見に行く時は、妙な意気込みなく見られるでしょうし、印象が変わってるかもしれません。
もう一度行くんですね! 自分も次回はワーナー系になんとか行きたいところです.
投稿: Rowen | 2004.08.15 20:39