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金色のガッシュベル#73

「師と弟子,今生の別れの巻」

フォルゴレたちが必死の芸で呪文を消耗させたベルギム・E・O.しかし月の光の石の力によってその力は回復してしまった.本気になったベルギムとの戦闘に入るナゾナゾ博士たち.これまでのベルギムの術を観察していた博士はフォルゴレ・キャンチョメ・キッドに策を授け,敵を混乱させその隙に本を燃やそうとする.ところがベルギムの狙いはキッドではなく指示役の博士に向かった.しかしここまでは計算のうちでベルギムの移動用の椅子を倒すことに成功するのだが,なんとベルギムは椅子なしでも立つことができ,計算外の能力に驚く博士を襲うベルギムの一撃.しかし「不死身」と嘘をついて動揺するキッドの心を沈める博士.この戦いに負けるわけにはいかないのだ.
それは今より少し前から始まる物語.孫を己の手術の結果失った哀れな老人の下に現れた1匹の魔物.老人はその小さな魔物の姿に失った者の姿を重ね,閉じこもっていた書斎から嘘をつきながら踏み出した.自分を停滞した部屋から踏み出させてくれた魔物・キッドの仲間であるキャンチョメたちを守るため,博士は身を呈してベルギムの攻撃を受け,倒れてしまう.

今回は「ガッシュ」の白眉.笑えて燃えてかつ泣けるというこの作品の素晴らしい特徴を全力で表現した1話.今回の主要キャストの顔ぞろえと前回の展開だけしか知らなければ,今回がまさかこんな激しい展開になるとは思いもしなかったんじゃないか.フォルゴレたちに博士たちにベルギムたちと,どう見たって色モノ揃いなわけですが彼らの演じる物語は実に正統で骨太.見た目や表面的な属性がきっちりギャグで,背景にある思想や経緯はしっかりシリアスであるからこそできる「ガッシュ」ならではの離れ技が堪能できます.さらに画の面でも高い技術力が投入され,今回は隙がありません.見る人の感情を様々な方向に激しく揺さぶる素晴らしい物語に身を委ねてみてください!

前半は前回の実に間抜けな展開を豪快に省略の上でベルギム戦の後半開始.おさらいとしてはフォルゴレ・博士組はツッコミ不在なので博士の二段オチが本領発揮できないことと,防御のできる魔物が存在しないためダメージが深刻になりやすいことを覚えておきましょう.前回の面白話の中で敵の攻撃呪文を逐一分析していた博士は,ベルギムを翻弄し呪文を消耗させあわよくば本を燃やすという策を立てます.呪文を最小限の使用に抑え,かわりに「テレポーテーション」という言葉で精神的に揺さぶりをかけた上でキッドとキャンチョメの特質をよく生かした戦いを展開.変幻自在でかつ映像としては立体的な戦いぶりが素晴らしい.しかし博士が犯した判断ミスは「ベルギムは椅子から立てない」という思い込み.ここにツッコミさえいれば即座に突っ込んでくれるはずなので博士が呆然とした時間はずっと短くなり,ベルギムの攻撃から逃れる時間ももっと稼げたはず.ですがツッコミ不在ゆえに博士はベルギムの直撃を受けて鳩が飛びます! …だから事前に仕込むならもっと役に立つものを(苦笑)! そして露呈するもう1つの弱点であるチーム全体の打たれ弱さ.特に博士は年齢的にも最も深刻な状況に陥りやすいのですが,嘘をついてキッドを近くに越させません.この内心の嘘の場面はこれまでの蓄積があるからこそ悲壮.余裕さえあれば口に出して冗談にできるはずですがもはや嘘は嘘のままでギャグには変わりません.巨大な椅子を持ち上げるベルギムを背景にフォルゴレに影絵のように語る博士の姿は今回のギャグとシリアスの関係性を1つの画面に封じ込めたかのようです.
そして提示される博士の深層.孤独な老人をナゾナゾ博士に変えたのはキッドの存在ゆえのこと.博士にとってキッドは,存在意義を失った男にもう一度それを与えてくれた恩人です.ゆえに彼の意思と希望は何があっても守らねばならないわけですが…本を奪いに行ったキャンチョメたちを救うため,博士は身代わりとなってダメージを受けて立てなくなります.体力的に弱い軍師役が先頭に出ちゃだめなんだと,ここには言ってくれる人がいない!

後半.倒れた博士の脳裏をよぎる回想の続き.孫の死をきっかけにひきこもった博士の,書庫での長すぎる日々に理由を与えてくれたキッド.恐らく,最初は「キッドに必要とされた」ということだけが博士にとって重要だったのでしょうが,キッドの現状や魔界の様子を知り,さらに世界を巡り戦う旅の過程で,もっと高次元の「魔界に正しい王を立てる」が博士の生きて戦う理由に変わったのでしょう.仲間のために窮地に身を投げ出せるのは,同じ志の仲間や自分よりも大切な人がいるからで,博士の本心としては己の命すら失うことを恐れていなかったのではないかと思います.
しかしそんな博士の盾になったのは,博士がどうしても守りたかったキッド.本に炎が移り,キッドの存在がこの世界から消えるカウントダウンが始まります.ベルギムを前に勇猛で知略に満ちた戦いを続ける現実のキッドと,倒れた博士の傍らに立って別れを告げる幻のキッド.並の物語なら2つをそのまま並べるところを2人のキッドを同時並行で描写するあたりは原作由来ですがやはり非凡! 現実には,フォルゴレたちすら奮起させ的確な指示を与えるキッドの姿しかないのでしょう.幻のキッドは活躍するキッドの後姿から博士が読み取ったもので,現実には存在しないんじゃないだろうか.しかし博士とキッド,気持ちの通じ合う2人の間の真実であることは間違いありません.
「お別れしなきゃいけない」と挨拶を始める幻のキッド.最初は顔を見せず,次には眼鏡を光らせて目を見せず,最後に目を見せて泣かせるというスタンダードですが情に訴える美しい描写が,博士から学んだもので呪文なしで精一杯戦う現実のキッドの戦いの間に織り交ぜられて物語は最高潮に.
キッドが博士に抱いていた感情は最上の尊敬.パートナーというよりは弟子として学んできたことの集大成を示すことで「博士はボクの王様なんだ」と全身で語ります.博士は王様だから,博士のようになれたら王様になれたってことだよねという切ない問いかけ.そして最後には,最高最大の呪文でベルギムを圧倒.美しく優しい技の姿だけを残して,2体の魔物が現実世界から姿を消します.結果,この部屋で残ったのは人間たちとキャンチョメだけ.ベルギムという強敵を倒すため,非常に大きな犠牲を払うことになってしまいました.キッドの意思は生き残った仲間全員が引き継いでいくでしょうし,命を失ったわけではなく魔界に戻されただけなのですが…それでもやはり悲しい.

現在進行中の3元中継の中では実は最も泣けるのがこの回ではないでしょうか.画面の前で不意打ちを食らいまくって号泣する視聴者が目に見えるようです.でもって直後の丸美屋のCMに別の意味でやられた視聴者もかなり多かったんじゃないかと思います(笑).なんとかならないんだろうかあの配置.で,残るは主役グループのみ.相手は姿を見せない強敵なんですがなんだか様子が変らしい,というわけで「ガッシュ」という作品の凄さをさらに見せつける次回に続きます.

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