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ニニンがシノブ伝#12

「忍法・最終回の術の巻」

楓とシノブが出会ってもう1年が経った.シリーズもいよいよ完結を目前にしているわけだが,マニアの視点からすると伏線を投げっぱなしで終わるアニメというのはあまりよろしくない.そこでこの作品をチェックしてみると6話後半での音速丸とイズミの意味深な会話が回収されずに残っていた.このままでは不安でシリーズが終了できないと音速丸に直訴に行くサスケたち一同なのだが音速丸の駄法螺では回収どころか拡散して終了する恐れが.そこでサスケたちは自分たちでその伏線を回収してみることにするものの,従来設定の完璧な無視というのはかなりよろしくない.
忍者学園に到着した郵便にはシノブ宛の卒業試験のお知らせが封入されていた.その知らせとともに自分が頭領であることをシノブに伝えたいのだがあえなく失敗する音速丸.卒業試験に合格すればシノブの夢であるイギリスのホグワーツ忍者学園に留学できる…それは同時に,シノブと楓の別れをも示していた.

スタンダードな古典から丁寧にはじめ,いろいろあって(笑)いよいよ最終回を迎える「シノブ伝」.これから一人立ちしようとする芸人初の単独ライブのごとく,序盤は古典で実力を見せつけた上で中盤以降はより新しいオリジナルの芸風に突き進み,そして最終回はこれまでの総決算で,熟練の技術で作り手の青臭い精神に満ちた物語を最後まで描ききります.今回は実に深夜らしい難しいことをやってるのでじっくり見てくれ!

前半はあたかも普通の最終回のごとく一年を回想するヒロイン楓さん.シリーズ終盤で回想したりプレゼントを買いに出かけるとそのまま別れに結びつくので気をつけろ,とか思っていたら…実際にそのベタな古典展開が今回の縦糸として展開されます.
縦糸が楓なら横糸はサスケたち.忍者学園で連中の見ているアニメに激しい既視感が!…兄さんでも師匠でもないんだ(笑).次々に繰り広げられるマニアネタと業界批判.確かに回によって作画に落差のあるアニメは多いですが,正直間に合わないよりはマシではないのかと(苦笑)それに絵がいくらよくても,ぱっと見ではわかりにくいですが話がだめじゃどうしようもないんじゃないのか.というわけでまともなアニメの最終回らしく残った伏線を回収してみようとする登場人物ってのがメタで笑えます.とりあえず6話後半のアレだけは露骨なのでなんとかしておくべきだと音速丸に上申するものの,音速丸,全然たためてないというかむしろ広げてます.光闇とかはせめて3話くらいから語っておかなきゃだめですよ.このままでは伏線を回収せずになだれ込むダメアニメになっちまうというわけで,サスケたちは微妙に過去を捏造.同じ台詞ですが無機質に言わされてる演技が入るとイズミさんの台詞が全然違って聞こえますね.しかし,ここまで偉そうなことを言っておいて,マジカルランドで終わりにしちまえってのはクリエイターとしてはどうだろう(笑)! キャラもいじりまくりで基本設定も全放棄でいきなり魔法少女ものに.…それはサミーだから最終回じゃなくてスピンアウトのOVAシリーズとかでやれ(苦笑)! 作画は最高なんですけども他がダメ,という実例を放映するサスケども.あんなんで感涙するあたりで程度が知れるので,音速丸が蛇足を入れて止めてくれてよかった(苦笑).自分も声優の顔出しってどうかなぁと思う.そしてもう一度やり直し.
頭領宛の速達にはシノブさんの卒業試験のご案内.この卒業の日が来ることが,シノブさんの先延ばしできない宿命だったのです(ちょっと無理が).で,音速丸と頭領が同一円であることをまったく理解できない素晴らしきボンクラシノブさん.音速丸と自分が兄妹というコメントはそのまま信じ込んでぽにゅぽにゅと柔らかいくせにさらにこのあたりの作画が素晴らしい癖に,音速丸が頭領であることだけ信じられないのはなぜなんだ(笑).何はともかくシノブさんは卒業試験の結果によってはイギリスの魔法学校っぽい忍者学校に行けるかもしれないことに.特に伏線もなくシノブさんの夢はイギリスに行くことだったことが判明し(これはかなり無理が)卒業試験を受けることに.部屋の外でそんなシノブさんの進路を聞いてショックを受けたのは,縦糸の楓さんでした.

後半はシノブさん卒業試験に挑む…という形式でサスケたち一同最終回に挑む.夢を叶えるために一夜漬けの勉強をするシノブさん.横で音速丸が読んでいるものとか絵馬のどうでもいい内容とか,細かいところはいつものノリです(笑).シノブさんの夢であるイギリス留学と自分の離れたくない気持ちの間で苦しむ楓さんのあたりはうまいよサスケ.外国に行くとなれば忍者であっても箔がつくのか.「どんなに離れても友達だ」という言葉はこの場では表面的すぎて,先の現実を考えてしまえば泣けてしまう楓さん.
当日の卒業試験にはこれまでの関係忍者たちが登場するわけですがソドムとゴモラも忍者だったのか.試練の洞窟を通り抜けるには知力体力時の運が必要でクイズ大会みたいですが,先の試練を想像して怯えるシノブさんのところに届くのは楓の声.「試験の辛さはわかるから!」…これは1話の流れをクライマックスでもう一度引っ張ることになりますからいい仕事ですよサスケ! そしてシノブさんが「本当に幸せな女の子だったよ!」とか独白しつつ洞窟に入って行って終了…というのはまるで打ち切りのようなので却下だサスケ(笑)! ここの「負けないよ!」は特に可愛いんですけどね.そんなわけでさらに修正で音速丸が最終試練に.このパターンはもう音速丸がリアクション待ちしている状態なので全力で叩きのめすシノブさんはいっそさわやかです(苦笑).
そして春の続き.卒業試験に合格しシノブさんがいなくなって時が経ち…どんな展開にしたとしても,彼女たちさえ幸せならばそれでいいですよサスケ.あんたたちは頑張った(笑).これまで散々こちら視聴者の方を向いて楽しいギャグをやってくれたので,最終回の1話くらいは作り手が楽しみ語るために使ったって許す!

総集編的回想と丁寧な感情の表現と炸裂する作画芸とメタ的で高度な構造とオタク向けの非常にマニアックなネタを軽く混ぜて味付けしてみたような仕上がりで,本当はもう一息よく混ぜることもできたはずですが,それでもアニメの最終回としては画期的な展開が見られたところはさすが「シノブ伝」ではないかと思います.ufotableさんの作風は作り手の視点だけは一歩引いてクールなので,できれば次回作は視点まで暖かい…というよりはむしろ無闇に熱いのを希望.「警死庁24時」あたりどう?とか思いつつ,次回作に期待いたします.面白かったよ!

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