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MADRAX#26

「さ迷える3つの欠片の物語の巻」

真実の扉の前に集結する,マーガレット,マドラックス,レティシア,そしてフライデー.それを見守るクアンジッタ.マーガレットは12年前,フライデーの言葉で目覚めた父に殺されそうになり,死にたくないがゆえに撃ち殺した.その死にたくないという意思がマドラックスであり,マーガレットとマドラックスが分かれた瞬間に残ったものがレティシアとなった.フライデーは3人が1つに戻ればより真実に近づくと饒舌だが,彼を撃って消すマドラックス.
マーガレットは人殺しの罪とともにマドラックスを受け入れ1つになるか,それともマドラックスを殺すかのどちらかを選ばねばならない.選ばずに留まればレティシアは一人きりだ.マドラックスは自分にマーガレットを託して死んでいった2人のために,マーガレットが望むなら自分を撃っても構わないと言う.マーガレットは銃を差し出すマドラックスの手をとり,これ以上マドラックス一人を罪の意識で苦しめないために1つになることを願う.もちろんレティシアも一緒だ.手を取り合う3人は1人のマーガレット・バートンに戻り,そこにフライデーが戻ってくる.マーガレットが本質に近づいたと喜ぶフライデー.歪んだ世界を世界中の人々に知らせるのだと唆すフライデー.しかしマーガレットはフライデーに銃口を向けた.マーガレットは,マドラックスに,誰もが歪んだ世界の中で生きているのだと教えたい.

序盤は前作品ラストのぶちぎれ具合もあって(笑)どうなることかと恐々見ていた「MADRAX」.中盤以降は理論は不明ですが因果は理解できる物語が展開されてきたので頑張って見続けてきたんですが…最終回,思っていた以上に気持ちが良く,また深読みしがいのある豊穣な物語として完結したのでびっくり! うれしかったので最終回のみ,フルに私見を入れた上でお届け.

前半は1つになってフライデーに銃口を向けるまで.この作品を必要以上にややこしくしているのは「登場人物が結局一体何なのかわからない」という大問題なわけですが(苦笑),最終回に至って構造が見えてきています.マーガレット(本体・理性)-マドラックス(本能・衝動)-レティシア(記憶・事実)がマーガレット・バートンを構成する1セットなわけですね.1つに戻るには,どんな状況であったとしても,自分の手で自分の父を殺した(マドラックス)という事実(レティシア)を認めることが必要です.フライデーは「1つに戻れば真実に近づく」と囀ってマドラックスに撃たれてますが(笑),以下の経過を見る限り,この時点でフライデーが狙っていたのは,1つに戻り己の罪を知ったマーガレットが「あの状況では仕方なかったのだ」と己の過去の行為を内面で正当化することではないかと思われます.
1つになれば,願いが叶う時代の扉を開くことができるマーガレット.己の罪を認めるのを怖がるマーガレットに対し,記憶であり事実であるレティシアは「一人はもう嫌」と決断を懇願.罪を無視すれば消え,認めればマーガレットの中に戻るはずのレティシア.12年間まともな会話相手もいない環境に置かれていた彼女は,たとえ消滅であってもあの世界から脱出できるなら構わないほどに追い詰められています.そして「怖いなら撃っても構わない」と言うマドラックス.衝動であるマドラックスは,マーガレットのものであるゆえに他人は殺せても自分から死ぬことはできません.だからこそ銃をマーガレットに差し出すしかないのです.
そしてマーガレットが選んだのは融合.己の命のためにはどんな行為も行うのだという真実(マドラックス)と,その真実ゆえに犯した重大な罪(レティシア)の手を取って1つに戻るマーガレット.
フライデーは1つに戻ったマーガレットに対し,本質を取り戻したと喜んでます.1つに戻ったマーガレットが過去の自分の行為を己の中で正当化していれば,彼女に対し「この世界は歪んでいて,それを知らせるにはやむを得ないのだ」と吹き込めば,罪の意識すら感じることもなく大量虐殺をやってのけるでしょうからね.しかしマーガレットは全てを理解した上で,己の罪を正当化しませんでした.どんな過酷な状況であったとしても,生きるためにやったのだとしても罪は罪.罪を犯したのは衝動(マドラックス)のためですが,それは衝動を抑えきることができなかったマーガレット(理性)の責任だということをマーガレットは理解しています.衝動が抑えきれないような歪んな社会に暮らしていても,理性ある限りその中で生きていけるのだと,「自分が悪い」と罪を背負ったマドラックス(衝動)に対し教えてあげたい.だからマーガレットの銃口は,衝動のせいにして罪を犯させようとするフライデーを狙います.

後半はいろんなものの決着がつくまで.一体化することでマーガレットが気に食わない奴を無意味に殺せるくらいに殺人に抵抗感がなくなったんではないかと勘違いしたフライデーですが,前述の通りマーガレットはちっとも殺人を正当化してません(笑).ゆえにマーガレットは,衝動(マドラックス)ではなく理性(マーガレット)でフライデーを殺そうとします.自分の親や親しい人々を殺したから,フライデーが憎い.だから殺す.理由あっての殺人はフライデーの望むものではありません.「私は悪い女の子」と自覚し,罪の意識を感じて苦しみながら,それでもなお許せない理由のために理性で他人を殺そうとするマーガレット.本の世界は完全にマーガレットの支配化に入ったようで,いくら狙っても弾丸は当たるわけがありません.
マーガレットに殺されて本の世界から現実に戻ったフライデーですが,彼の前に来るのは実体のマドラックス.そりゃさっき融合しているのを見てますからフライデーもびっくりするってもんですが,このマドラックスは本の世界から現実へとはみ出したマーガレットの衝動なのでしょう.元々本には使い手の意思で現実世界に干渉する力があったわけですから,それを支配したマーガレットの「殺したい」という衝動が現実でマドラックスという形を取ってもおかしくはありません.もはや手品レベルでわらわら出てくるフライデーの部下がものすごく愉快なんですけども(笑)それを全部倒すマドラックス.燃える祭壇の前で怒るフライデーに対し,「所詮あなたも私と同じ存在」と言うマドラックス.マーガレット-マドラックス-レティシアで1セットなのは前述の通りですが,もしフライデーもまた誰かの「欠片」であるとすれば,それはもしかするとバートン-フライデー-?というセットだったのではないでしょうか.バートンは戦場で(内戦を止めるために?)本を開いたものの,その結果飛行機が落ちて大惨事.その罪の意識とついでに本の効果もあって主に理性のバートンと主に衝動のフライデーともう一人に分かれ,バートンはフライデーこそが犯人だと考えて殺そうとし,そこにやってきたのが幼いマーガレットで…という流れ? 大人のバートンの場合は子どものマーガレットほど完璧に理性と衝動が分離しなかったので,言葉によってマーガレットを殺そうとするくらいには衝動が残っていた…というのは無理があるかな(苦笑).時代の扉を開くには一度分離した者が1つに戻らなければならないという条件があると考えると,欠片のフライデーには時代の扉を開く資格がないということになります.
で,バートン-フライデー-?の?なんですが,…クアンジッタなのかなやっぱり.「私の先代たちも見続けてきました」という台詞があるので実体はちゃんと人間のようですが,バートンやマーガレットのように存在が3つに分かれたときの残り1人の寄代こそが本を守る彼女たちの役目で,もしマーガレットが1つにならないときは,ナハルがレティシアの魂を宿す宿命であったのかも.しかしマーガレットは1つに戻り,時代の扉を開き,彼女が望むものを手に入れます.マーガレットが選んだのは記憶と罪を己が背負った上で,実体だけを分離すること.分離することで時代の扉を開く資格を失う代償にマーガレットが手に入れたのは,1人の友と1人の妹.本によって生まれた仮初めの存在に血肉を与え,マーガレットは記憶と罪とともに,歪んだ世界を善意と悪意を背負って生きていく決意をします.

…あまりに複雑な上に説明不足でしかも自分の理解不足もあるのでちゃんと読み取れていない気が激しくしますが,自分の見た「MADRAX」はこんな物語で,かなりロマンチックで真下節です(苦笑).正直もうちょっとわかりやすくしてもらえればより高い評価ができるんですけども.でも,やりたかったことは割とわかった気がします.ラスト2話はちゃんと堪能させていただきましたので,次回作はぜひ,もうちょっと説明を足していただきたいと思います(笑).

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