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ケロロ軍曹#28

「純真無垢にはかなわないの巻」

(A)ケロロ小隊の侵略予算の半分を費やした気象操作衛星「こまわり」の力によって積雪50cmに達した朝.都市が自然災害,特に雪に対し極度に弱いことを利用して混乱に乗じ侵略作戦を実行する予定のケロロ小隊だったのだが,玄関出た直後にずっこけてその寒さにもやられ,計画を断念する根性なしの軍曹.それはあまりにもったいないとギロロが主張し,雪上特別訓練をしぶしぶ行うことになった.折角だから公式ルールをアレンジしてやろうと冬樹が提案し,桃華や小雪たちも呼んで2組での雪合戦をやることになる.そこはライバル心と下心に溢れる白い戦場であった

(B)「陰湿,陰気…」等と冒頭からナレーションされたクルル曹長.それが気に入らなくてついつい仲間たちに嫌がらせ.怪物を不法投棄したりゲームソフトを改造したりスポンジを変形させたりゴキブリホイホイを設置したり花柄にしてみたりルームランナーを高速回転させたり人食い植物を放ったりともはややりたい放題.なんとかしてくれと被害を受けた一同は軍曹に直訴.面倒なのでのらりくらりとかわす軍曹だが,自分のガンプラまでいたずらされていたことを知って激怒.一同とともにクルルの元へ向かう.

マニアックな素材で子ども向けの王道をなおも歩む「ケロロ」.すっかり手馴れた様子で今日もお約束を展開です.前半はちょいと季節を先取りしすぎた感がありますが,まさか放映日に関東を台風が襲うことになるとは(苦笑).ただし見所はやはり後半.これまで裏方を一手に引き受けてきたクルルの不思議なトリックスターぶりと敗北ぶりがとても面白い.
前半は雪を降らせるケロロ小隊.気象をコントロールする兵器なんてとんでもないものを作った上に設置まで完了していたクルル,恐るべし! これがあれば地表で災害起こし放題.災害まで行かなくても少しだけ平均最高温度を上げたりするだけで地表の食料事情が変わってくるという超兵器.ケロン人向けには侵略したい地域を梅雨にして,戦闘員の能力を引き上げるってのもよさそうで.しかしその本当の価値まではわかっていないらしく,とりあえず雪で街を麻痺させてみることにした軍曹.確かに関東以西では雪での麻痺っぷりはむしろ面白いですからね.しかし軍曹,作戦開始前に転んで寒さに自爆.都市機能と一緒に寒さで麻痺したのは軍曹だけのようで,ケロンはカエルの割に寒さには強いようで.いきなり高額な衛星をそのまま使いもせず放置しそうな軍曹に突っ込むギロロ.確かにあのまま放置なんかしようもんならもったいないおばけが(笑).
来るべき第2回雪作戦のために雪上訓練を開始するケロロ小隊.防寒用装備らしいものは軍曹のマフラーとモアさんの冬服くらい.雪合戦の開始にあたっていつ使うのかわからない謎の豆知識を披露しまくる冬樹がらしくて良い.分けたチームは赤が夏美・モア・軍曹・ギロロ・ドロロ.白が桃華・冬樹・小雪・ポール・タママ.このままでは赤の戦力がかなり充実していることを看破したタママは罠を仕掛け,夏美が人質役になって無力化されるように仕組みます.さすがは腹黒.戦いはもうはじまっているのです! 闘う前から熱く火花を散らす目の鋭いギロロとポールが互いのチームのエースで,白の人質は桃華が冬樹に助けられる喜びを味わうために就任.
試合が開始されるといきなりタママが先走った上に軍曹に敗北.頭は回るんですが精神的に不安定すぎるのは致命的です.タママを排除したものの隙だらけの軍曹に襲い掛かるのは敵チームエースのポール.それをドロロバリアーで防ぐ軍曹と,昔から利用されていたドロロがともに素晴らしい(笑).その上結局ポールに負ける軍曹,ドロロの犠牲がいきなり無駄になり,ドロロのすねる演技がいい大人なのに愛らしい.敵本陣に攻め込むポール,このまま勝つはずが…隠れていた赤のエース・ギロロがいきなり襲いかかります! このあたりのマトリックス避けっぷり,大人視聴者にとってはもっともっと濃い描写が本当は欲しいところなんですが(苦笑).白い戦場で展開する凄まじく高レベルの闘い.子どもの遊びに大人が本気で入ってくると実は迷惑だったりするので,2人の世界に入った戦士を誰も止めはしないのでしたとさ.そしてしもやけがかゆいことよりも,ケロンたちが普段から全裸だったという当たり前ではあるんですが衝撃の事実が印象に残りまくりです.

後半は冒頭のナレーションに突っ込むあたりから開始でさすがはクルルの主役回.ナレーターいじりはメタネタの基本なのでこの作品も多用してますが,ナレーターが物語世界の語り手であり絶対的な存在であるからこそ面白いので,そういう意味ではナレーターと登場人物の距離の取り方がギャグとしてはちょっと甘いんだよなこの作品.まあそれはともかく,「陰湿.陰気…」という罵倒を受けたクルル,ならばそうなってやろうかと嫌がらせを開始です.
ケロロ小隊の計画立案・開発・資材調達を一手に引き受けているクルル.彼が本気になれば嫌がらせなんてお手のもの.どれも相手を驚かせはするし迷惑でもあるんですが,あくまで「ちょっとした嫌がらせ」.お風呂のモアさん,入浴かと思ったらやっぱり掃除でさすがは昼のテレビ東京ですが(笑)ここで歌っている「おじさまラブ」がもう本当に愛らしくて愛らしくて! それに比べると桃華さんの路上での公開ハンカチ渡しスパーリングは微妙.クルルのいたずらで結局冬樹に接近することができたので,桃華はむしろ感謝するべきではなかろうか.
迷惑に耐えられない一堂はクルルの監督者である軍曹に切実に直訴.しかし面倒くさい軍曹,なんでもやる課で緒役者仕事を体現.書類を手で書かせた上に無駄にするという精神攻撃を一同に放つものの,他人には厳しく自分には優しい軍曹,大切なガンプラを傷つけられて他人事ではなくなります(苦笑).
とても「AKIRA」なクルルの部屋前に被害者一同集合.しかしクルルを順番に説得に向かうのがよろしくありません.クルルの領域である部屋の中で闘うということは,1対1では確実にクルルに押されるということ.ゆえに次々に敗北していく一同の悲しげな姿が累々と.屁理屈をこね,余計な情報で疑心暗鬼にさせ,独自に調べた情報で脅し…と陰湿極まるトークによって敗北していったに違いない.もちろんそういう陰湿攻撃を理解できないくらいに能天気な軍曹も登場するわけですが,さすがはクルル,しっかり対策用グッズを準備していて見事に人心掌握され戻ってくる1分後の軍曹…それは指揮官としてはアウトだよ(笑)!
最後に歩み出たのは最終兵器のモアさん.相手のいなし方には自信満々のクルルですが,無垢な目でひたすらに見つめるモアさんの圧力に押されます! 特別な脅迫ネタもなさそうな素行の良さに加え,軍曹以上に曲解が激しく,さらに傷つけるととても悪いことをしている気分になるモアさんのきらきらした目に結局やっぱり敗北.純真無垢と大書された画面の隅で転げてるラストのクルルがものすごくいい(笑).
結構メインキャラは多いんですが長期放映を生かして各人を比較的丁寧に掘り下げ続けているところは素晴らしい.きっちり掘り下げた分だけ,登場人物は視聴者の友達になっていくのです.ただし,1話単体として見ると愉快さが足りない気がしますんで,もう一息悪乗りしたほうがいいんじゃないかな.次回はその悪乗りっぷりがかなり楽しそうなので(笑)そこに期待しつつ,次回に続きます.

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