« ボボボーボ・ボーボボ#34 | トップページ | 金色のガッシュベル#80 »

ケロロ軍曹#31

「せめてお金は持ってから出かけようの巻」

日向家の居間でうろうろそわそわしている軍曹はネットオークションで落としたスポーツ用のソーサー,KWR-STが到着するのを待っていた.無事に受け取り100台限定のプレミア品を手に入れたとご満悦の軍曹.しかし値段もシリアルナンバーもどう見ても偽物だ.夏美は軍曹がソーサーに乗るのを禁止するものの,その制止を振り切って軍曹は出かけてしまう.
その夜,日向家にかかってくた電話の向こうでは軍曹が泣いていた.やっぱり偽物だったソーサーが壊れ,帰り道もわからないような遠い山の中で帰れなくなってしまったのだ.バスも来そうにないバス停で救助を待つ軍曹だが誰も来ない.そんな中で通りかかった別の宇宙人は敵対だったので助けてはもらえず,ナレーターとも話が合わなくて空腹で孤独な軍曹の帰るべき場所はどっちだ.

今回の「ケロロ」は素敵な抒情詩.もちろん迷子話なので誰でも十分理解はできると思うんですが,自分でバイクや車や自転車に乗ってあちこち出かけた上に,遭難した経験のある人はより楽しめるんじゃないかな.景色の美しさに誘われて思った以上に遠出してしまったときに限って,乗り物が壊れたり帰り道を見失ったり所持金がなかったりするものです(笑).テンションで無理やり話を引っ張るのではなく,話を上手に自然に,しかしありえない方向へ転がしていくコメディのお手本のような回です.

前半はそわそわ軍曹からスタート.ずっと楽しみにしていたものが到着する日って,ごろごろするかはともかく,精神的にはあんな感じだよね.宇宙から軍曹宛のお届けものはかっこいいバイク風の乗り物,KWR-ST.半重力エンジンを搭載したスポーツ用ソーサー(円盤)で,100台限定のプレミア品.どうしても欲しかったけれど高くて買えなかったものをオークションでお安く落とせたってのはよくある話だと思いますが…5000円で落としたってのはだめだろ(苦笑).きっと軍曹のことだから,出品者の評価もろくに見ずに落としたに違いない.むしろまだ商品が来ただけマシで,代金を振り込んだのに何も送ってこないのが普通だよなぁこのパターン.このうさんくさい乗り物に乗ることを夏美さんは禁止.しかし軍曹は制止を振り切って飛び出してしまったがゆえに一晩の物語がはじまります.
快適な乗り物の上から見る秋の風景はただひたすらに美しいだけ.ところが乗り物が機能しなくなった瞬間から,その光景は現実となって無力なドライバーに襲いかかります.ソーサーが壊れ日向家になけなしのお金で電話をかける軍曹.逆境ゆえに幼児化(苦笑).どことも知れぬ山の中で,所持金1円の上に宇宙人なのでヒッチハイクすら難しいという帰還困難状況に陥った軍曹.口は悪いもののボケガエルがやっぱり心配で助けてやりたい夏美さんに対し,うろたえるものの行動に結びつかないモアさんに,「ほっとけ」と口を揃える小隊の面々で軍曹四面楚歌.でも,いい年の上司が迷子になったとしたら,直属の部下としては本人の面子を考えるとなかなか助けの手は差し伸べにくいはず.…たぶん軍曹本人は面子なんか気にしてないんじゃないかと思いますが(笑).
助けを待ってバス停で凍える一匹のケロン.この光景は情景ジオラマのように絶妙に寂しい.そこに運良く通りがかったのはモジャラン人.ところがケロンとモジャランは敵対種族ゆえに助けてはもらえず.宇宙にもやはり争いがあるんだな.今の日本の状況のほうが異常なんだろうか.それでも気の毒な軍曹に缶コーヒーを落としてくれる気のいいモジャラン.この2人が戦場で再会することがないように祈りたい.
缶コーヒーだけでは腹は膨れず,お土産の芋も生のまま.ここで軍曹,寒さと空腹と孤独で一杯一杯なのかなんとナレーターに呼びかけてきました.ナレーターと話し始める軍曹.両者同世代くらいじゃないかと思うんですが趣味は致命的に合いません(苦笑).普通の人と話をするときに困らないように,一般性のあるネタを少しは仕入れておいたほうがいいよ軍曹(笑).

後半は待ちくたびれつつある軍曹が自分で動き始めます.山中で一人寂しく泣いても誰も共鳴せず.ナレーターも役立たず.そこでヒッチハイクを試みるわけですが,宇宙人では不都合で.かかしで簡易スーツをつくって車を止めようとするあたりは悪くないですけども…まさか車に轢かれるとは(苦笑).軍曹も悪いですが運転手も不注意過ぎかも.軍曹としては(轢かれたものの)車に乗ることに成功したので結果オーライ.ただし間の悪いときはこんなもので,アンチバリアのバッテリーが切れて軍曹の体が見えちまいました! 運転手も軍曹も一気に退散するわけですが,またペコポンの前に姿見せちゃった軍曹はうかつすぎ.この道にはカエルの妖怪が出るとかそういう噂が立ちそうです.ソーサーが壊れて足のない軍曹は性懲りもなく今度はトラックに無断乗車.寝ているうちについたのは…燃えないごみ堆積場.ここで人生ゲームを見つけて一人仲間になりきって遊び現実逃避する軍曹.ゲームではなく現実で「人生最大の賭け」に負けて開拓地にいるような軍曹の姿が泣かせます(笑).
一方,口は悪いし手も速いが心の優しい夏美さん.なかなか動かない小隊の面々に代わって軍曹を迎えに行くことに.タママ,ギロロ,ドロロがいつもよりも冷たく見えるのは気になりますが,羽根つき夏美さんのためだから仕方がありません.ユニットを貸してくれるクルルが妙にいい奴になっているのも気になりますが…羽根のためですから(笑)! 飛行と探査が可能なユニットを使い,夏美さんは上空より探索開始.軍曹の行方は冬樹とモアさんでパソコンから手がかりを得ますが,放送に耐えないようなものをブックマークしていなくてよかった(苦笑).
迷子になってしまったときにはその場を動かず助けを待つのが常道なんですが,放浪の軍曹はトラックのコンテナの中.しかし,このコンテナは遠い異国に運ばれる運命の上に中からは開きません! 扉を叩いて狂乱する軍曹のパニックぶりが哀れ.その上ソーサーで体当たりしたら,開いたはいいものの海へと落下! このあたりの畳み掛けは声優さんの演技が本当に見事で,間抜けな状況なんですが緊迫感溢れます.そして水中から,軍曹土壇場の機転で必死の脱出に成功するも結局一人ぼっち….そんな可愛そうな軍曹を迎えにやってきたのは,月の光に輝く天使の姿でありました.
ラストのこのシーンのためにキャラも話も多少無茶した部分はありますが,実際にあの美しい風景から眠りこけるケロンまでを見せつけられてしまったら,なんだか全てを許せてしまうんだよなぁ(苦笑).おみやげも各所でいい味を出していて,コメディのお手本のような話です! 大好きなテンション芸とは違った種類の笑いですが,これもまた良いものであることは間違いありません.平凡なようで非常に難しいこの芸を極めてくれるなら,それは素晴らしいことなのではないか…などと思いつつ次回に続きます.

|

« ボボボーボ・ボーボボ#34 | トップページ | 金色のガッシュベル#80 »

レビュー◆ケロロ軍曹」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ケロロ軍曹#31:

« ボボボーボ・ボーボボ#34 | トップページ | 金色のガッシュベル#80 »