金色のガッシュベル#82
「2人の旅の終わりの巻」
大ダメージをデモルトに与えるも決め手とはならず,一転危機に陥ったガッシュたちを救ったパティとビョンコ.しかし2人とも,直前まで仲間だったデモルトの恐ろしさは身に染みて知っている.敵となった強大な相手に震えながらも,これまでやってきたことの償いをしたい2人はもう後には引き返せない.一端はガッシュとの共同戦線を張るものの,デモルトの攻撃によってガッシュ組はほぼ行動不能に.パティとビョンコのはじめての正しい戦いに,2人の本の持ち主であるウルルとアルヴィンも協力を惜しむことはない.この戦いは人間の2人が待ち望んでいたものでもあるのだ.強大すぎる敵・デモルトを前に,パティは最後のわがままとして苛烈な戦いの指揮をとる.
今回の「ガッシュ」は52話より展開してきた1つのドラマの終焉.石版魔物編のサブエピソードの1つがいよいよ完結.珍妙な体育測定が一転番組ジャックにつながったあの回からはじまったパティさんの旅路.強力な敵として幾度もガッシュたちを苦しめてきた彼女たちは,悔恨の涙に満ちた終末を迎えることになります.30話という長い時間をかけて着実に積み上げてきた物語のクライマックスは,それに相応しく感情を激しく揺さぶります.多少の問題があったとしても問答無用の高テンションで壊される視聴者の涙腺.これこそがキッズ向け長期シリーズの醍醐味です!
前半.前回は1話かけてガッシュと清麿の激しい戦いと失敗を描いたわけですが,今回同じ相手に挑むのはパティとビョンコ.ガッシュと同格以上の強力な術を操るだけでなく清麿並みの頭脳プレイが可能であっても…いや,むしろそれだけの賢さがあるからこそ,デモルトの恐ろしさをよく理解しているパティ.怯えながらも引き返すことのできない戦いに挑みます.これはガッシュ組にとっては非常にうれしい助け.なんせ清麿が倒れてしまって主力のガッシュがうまく機能しなくなってますからね.自分たちの非道な行いを償うため,挑むパティの水の技に清麿がガッシュの電撃を乗せると素晴らしい威力! 清麿が意外と元気なんですけども(苦笑),ドラマの前にはささいなこと.再会したころガッシュが苦しんだ技を,今一緒に敵に対して放つ状況に素直に燃えるべき.愛はないけど(笑)ガッシュ・パティのコンビはやはり強くて,こういう独自の花道を特に準備するところに,作り手の愛を感じます.
しかしティオたちはデモルトが強い呪文を使っていないことを指摘.案の定ヴァイルは高度な呪文の使用を解禁し,その巨大な攻撃呪文によって回復しつつあったガッシュ組が再び壊滅状態へ.やはり2人きりにされてしまうパティたちは真っ青.しかし,パティの後にはウルルが,ビョンコの後にはアルヴィンがいました.自主的に動くウルルによってパティは救われ,これまで石版魔物とあまり変わらなかったパティとウルルの関係が,ガッシュたちと同じ魔物と人間が対等の関係へと大きく変化.前回までの随所で気が進まなさそうなウルルは描かれてきたので,彼が自分から協力を申し出る様子がうれしい.同じような魔物と人間の関係の変化はビョンコとアルヴィンの間でも起きるんですが…この緊迫した状況で面白回想を淡々と展開してしまうアルヴィン恐るべし(笑).凄まじいダメ魔物ぶりを披露するビョンコと,とんでもない本の持ち主ぶりを発揮するアルヴィン.これすら直後の展開のための布石であるあたりが素晴らしい.入れ歯は嘘とかゆるーいトークが繰り広げられている背後では,パティが必死で戦っていたりするあたりも絶妙.そして,パティの危機にその真価を発揮するビョンコ! 直前の間抜け話のおかげで,ビョンコが伸縮自在で実は相当に強い魔物であるという事実が際立ちます.さらにパティが繰り広げるのは,「最後のわがまま」.
後半.デモルトに一泡吹かせるために,知略を尽くすパティの戦いはクライマックスへ.デモルトとヴァイルと月の光の石,この部屋にはターゲットが3つあるわけですが,人間ヴァイルは正義としては選べず,デモルトはガッシュたちの力であってすら通じず,残る標的は天井で輝く月の光の石,というわけで月の光の石を壊すため,デモルトを石から遠ざけるぎりぎりの作戦を選択.ここまで彼女たちが必死になるのは,今,強く自分の罪を感じているから.悪いことをしたとわかっているゆえに,どうしても真っ直ぐ前は見られない.そんなパティの心境を示すかのように,前髪で目を隠す姿で描かれることが多いですね.しかし今の彼女にはその痛みを共有してくれるウルルがいます.ただの本の持ち主ではなく,パートナーがいるのです.
パティはビョンコととともに身を削り,ビョンコも月の石までパティを連れて行こうとフェイントをかけ.しかしデモルトの大技が向かってきて,このままではパティ組まで全滅の危機! …ここで体を張ったのがビョンコ.自分の強さを知らないまま,ゾフィスによって悪の道を歩まされた哀れなカエル.もし,彼がもっと早く自分の意思と力に目覚めていたなら,どれほど素晴らしいガッシュのライバルと仲間になってくれたことか! デモルトの攻撃はビョンコの本を燃やし,彼は一足先に帰還することに.彼が望むのは,皆と手をつないで一緒に遊べる魔界.それは間違いなく,ゾフィスが王になった魔界の姿ではありません.仲間を失い,自らの本も燃えかけているパティはついに最後の賭けに挑む決意を固めます.
アクルガで水煙を立ててデモルトの目をごまかし,己の大切なものをおとりにして月の光の石へと向かうパティの作戦.パートナーに嘘をついてまでの大勝負! あの初登場したときの曲から,これまでの物語が脳裏に蘇ってきます….あのときは,こんなことになるなんて思いもしなかった.互いの思いが等しいゆえに,同じような行動をしているパティとウルル.この気の使い合いはパティの勝利で,術によってついに月の光の石の破壊に成功します.しかし空中で避けられないパティに向かうデモルトの技,覚悟を決めたパティ.それを…! 長かったパティの物語がようやく報われる,ごくわずかな時間.他人のことを思いやることに気がついた彼女は,自分ではなくビョンコのことを懇願し,ガッシュたちは当たり前のように2人を受け入れます.「パティも同じ仲間ではないか!」 …受け入れられた喜びとともにパティは魔界へ.
余韻なんかありはしません.月の光の石は壊れましたが,戦いはまだ続いているのです.パティたちの助けもなくなった今,残る強敵デモルトを倒すための力はガッシュたちに残っているのか.次回に続きます!
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