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しりとり若獅子戦・本戦

さて,若獅子戦準決勝以降の本戦のレビューです.若手棋士がことばと戦う「しりとり若獅子戦」予選の顛末については1つ前の記事か以下のリンクをどうぞ.
 R'sM: しりとり若獅子戦・予選
最初は8人いた若手たちも半分になり,番組が進むにつれて棋士の受けるプレッシャーの量も桁違いに上がっていく「しりとり」本戦.長い戦いを同じ芸人に見つめられるという苦しみが,今回は若手の心を握りつぶしていきます.例えば竜王級の落ち着いたベテランが1人でもいれば,その棋士のペースに合わせることで若手も心の均衡を保てたはずが,若獅子戦ではその精神的支柱となる芸人が不在なわけで.
予選で勝ち残ったのは哲夫・小堀・川元・西田.本戦の経過は以下の通りですが,己の持ち味を出し切れて居ない部分は巨大すぎるプレッシャーゆえのことでしょう.特に決勝は,その決勝らしからぬぐずぐずっぷりをお楽しみください(苦笑).

準決勝第1試合は笑い飯の哲夫と西田のコンビ対決.普段から一緒に仕事をしている2人だからこそ,楽しそうでもありやりにくそうでもあります.互いの実力をよくわかっている2人の戦いは尻上がりに迫力を増していきます.

準決勝の競技は「しりとりイマジネーション」.テーマのイメージでしりとり.
テーマは「ボツになったドラえもんの道具」
千原の例題,「竹の子プター」からスタート.不条理だが大雑把.

居心地の悪そうなコンビ対決は哲夫よりスタート.「足袋手袋」は不条理だが弱く,西田が長考した「ロックづつみ」はわけがわからない上に弱い(苦笑)とここまでは手探り.しかし一足先にテーマを掴んだ哲夫の「ミサンガ切りバサミ」はその使用範囲の狭さがナンセンスで素晴らしい.掴めていない西田はすかさず「みつあみ切りバサミ」とこのネタをかぶせるものの主導権を奪えるほどには強くなく,続く哲夫の「みみずにおしっこかけても大丈夫カプセル」のほうがネタは弱いがテーマに合っている分,勢いがあります.迷走する西田の「ルームメートに変な人が来ないお守り」は哲夫の長いネタの形を借りてますが独自性が薄くて弱い.ここまでは明らかに押していた哲夫ですが,「リンスインコロンインシャンプー」からはテーマには合うが言葉があまり面白くない(苦笑)という弱点が露呈.そして迷いの末に最初のはさみシリーズと同構造に立ち返った西田の猛反撃.「プリン用フォーク」は圧倒的に強い! 押され始めた哲夫は困った末に「車シャコタン用ペンチ」と言葉を必死に選ぶものの微妙.押し続ける西田の「力強いデザインのTシャツ」は無意味すぎて強い! この激しい攻めに己の道を見失った哲夫の「つまらないもの一杯つまった袋」は…夢がない(苦笑).そして完璧に何を言っても面白い状態となった西田は「ロープだけど長すぎて使いにくいやつ」と冷静に考えると微妙なネタですら審査員の心を掴みます.

1対1の対決はやはり面白い.哲夫が主導権を掴む中盤から西田がそれを奪い取るまでが凄まじい一戦となりました.コンビ同士の純粋な笑いの能力差を示すような激戦をやってしまって,凄い満足感を得ているという西田ですが,今後の笑い飯の活動に支障が出ないかがちょっと不安です(笑).
結果は西田が13点で哲夫の6点を下し決勝へ.

準決勝第2試合は小堀と川元の竜王戦実力派若手対決.キャラを生かした間抜けなネタをマイペースに展開する小堀と,相手の回答を上手に生かして打ち返す川元.コンビの笑い飯ほどではないですが,竜王戦で相手の出方を知っている2人の戦いは,間抜けで凄まじい打ち合いとなります.特に追い詰められた小堀の必死の攻撃が凄まじい.そして,合間に挟まるギャラリーの小声がとっても邪魔(笑).

テーマは「売れなさそうな芸人のコンビ名」
渡辺の例題,「暴れんBOY」からスタート.…そりゃ売れないわな.

手を上げたのは小堀.「命からがら」は確かに売れるわけがない.これを返す川元の「ラベンダー臭」も同じくらい売れるわけがないんですが,両方とも言葉自体の爆発力は今ひとつ.小堀が考えた末の「嘘つきまっせ」も弱く,膨れ上がったギャラリーの視線が邪魔(苦笑).一足早くテーマに対する攻口を掴んだのは川元で,「背脂イチロージロー」は悪くないんですが,「イチローで止めればもっといい」といういとうのコメントはさらに的確.攻めどころを未だにつかめない小堀の「海山家」は「う」ではないということで失敗.そこで苦し紛れに出した「6と7」が簡潔ですが無機質さが絶妙! そんな大荒れの小堀のペースを無視してマイペースを貫く川元の「ナースコール」は地味ですが後からくる面白さ.そして荒れ続ける小堀は息を荒げつつも「る…る…るつぼ」明らかに追い詰められてますが(苦笑)そこが独特の迫力になって面白い! この直球に対応しなければならなくなった川元は,小堀と同じ方向でより強いネタを選択.「ボケ」はギャラリーの絶賛(笑)浴びる剛速球! 小堀はここで直球をわずかにずらして「ケメストリー」とパロディでこれも大絶賛.しかも受ける川元はパロディネタを受けて「リットン調査隊」と実に彼らしい鏡ぶりを発揮.必死で道を切り開く小堀は「いちからやります,…よ」と苦し紛れ(笑).最後,川元の「横と縦」は小堀の「6と7」を本歌取りしたものですがイメージが具体的に浮かびすぎて今ひとつ.

追い詰められて一杯一杯パワー全開の小堀とその小堀の暴風をときにはかわし時には跳ね返す川元のやり取りが見ごたえのある戦いとなりました.特に前半掴めないながらも必死でテーマを追いかけ続けた小堀はよく頑張った.ギャラリーは「ケメストリー」と「ボケ」を絶賛です(笑).
結果,小堀が13点で8点の川元を下し決勝進出.基本的に流れの受け手だった川元が「お互い苦しかった」とコメントしたのに対し,ひたすら心の赴くままに攻め続けた小堀が「楽しかった」とコメントしている食い違いが面白い.追い詰められた小堀が見せた煌く着想は,まさに勝俣の言葉通り,素晴らしい「お笑い筋肉」です.

さて決勝に駒を進めたのは西田と小堀.決勝にふさわしく笑いの神を降ろした凄まじいものを期待したいところだったのですが,ここで思わぬ伏兵が2人を襲います.この段階で実況席には司会2人+ベテラン3人+敗北者6名の計11名の大ギャラリーが完成.しかもどいつも笑いに関しては一家言ある連中ばかりでその上もうしりとりやらなくていいからものすごく気楽.この厄介なギャラリーのプレッシャーに,元々限界にいた1人が奈落の底に落ちていきます(苦笑).

決勝の競技は「しりとりツバメ返し」.「~だが~」でしりとり.
テーマは「せつない言葉」
板尾の例題,「一目ぼれをしたのだがゾンビ」からスタート.死は彼のお家芸です.

しばし迷った上で手を上げたのは小堀.「貧乏ではないのだが,歩く」.言葉から浮かぶ絵がぼやけてます.西田は「車だが動かない」と前のネタを説明するも審査員には届かず今ひとつ.ここまでの展開からか小堀,「いつもだがさえない」となげやり(苦笑).西田は悩んだ末「いいスーツだが泥んこ」と絵を見せます.西田のネタは小堀のネタを具体的にするものなんですが,そのアピールが控えめすぎて審査員に伝わっていきません.すっかり追い詰められた小堀は戸惑いまくりの上で「困ってるのだが,いいよ?」と自分の本音を語り,西田も迷った末に「ようこそと言っているのだが,家の中から出てこない」と難しい方向に.小堀は「家」を受けて「家だがベニヤ」と反射的に返答.追い詰められてるのは重々承知なんですが,決勝なんだからもうちょっとなんとかひねろうよ(苦笑).ここで西田が出した「ヤシの実っぽいのだが親戚だ」は素晴らしい! このネタは親戚がヤシの実っぽく見えるせつない風景を脳裏で思い浮かべてもらえると,奥深い暴力性が理解してもらえるんじゃないかと思います.それに比べると必死の小堀の「脱出したのだが複雑骨折」は暴力性が表面的すぎ.何かを掴み始めた西田は変な顔で悩んだ末に「ツイストを踊っているのだが曲などかかっていない」とさらに畳み掛け,ここに来て指先一本でしりとりの縁につかまっていた小堀が,「イケメンなのだが,はー,はー,あっ,よだれをたらしている」とついに落ちていきました(苦笑).その様子を目の前で見ている西田の,「ルール上何の問題もないのだがマスクを勝手にとった」はそのまま現在の小堀の姿ですか?

2人とも周囲のプレッシャーに負け,凄まじいハジケは見られなかったものの,限界点にいる人間の姿はそれだけで面白い(笑).特に小堀の不安定さは今回はマイナスに働き,その分安定した西田が着実に点を重ねることとなりました.ゆえに結果は,西田名人が16点.1点の小堀を下して圧勝!
2人がギャラリーの圧力に負けたため腰砕けな決勝になってしまいましたが(笑)それでも一定のラインでネタの質を維持しきった西田の腰の強さは素晴らしい.西田の場合,テーマを掴むまでに時間がかかるという問題さえ改善できれば,どれだけ手ひどい一撃を食らっても序盤から終盤までの総合力でねじ伏せる,恐ろしい持久力のしりとり名人が誕生するはずです.他の新人もそれぞれの強みと弱みを十二分に研究した上で,ぜひ次回のしりとり竜王戦に挑んでもらいたいところです.

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コメント

はじめてカキコさせて頂きます。

「一本気で遊ぼうや」は多分「一本木で遊ぼうや」だと思います。
一本木なとこが微妙に情けない。
「ロックづつみ」は多分「ロックつづみ」と言いたかったんだと思う。ロックで和楽器。

ドラクエやってたらあばれんボーイというモンスターがでてきてちょっと笑っちゃいました(^^

投稿: 松江 | 2004.11.30 12:13

松江さん,コメントどうもありがとうございます!
「一本木」なんですね.直しておきましたが…一体どこにあるんだ一本木?という状態なので,個人的な感想はあまり変わりませんでした.「ロックづつみ」も直前回答の足袋を継承して和風の連想をやりそこねているのかもしれませんね.でも,こっちもやっぱりネタとしては微妙だと思います(笑).

「暴れんBOY」,あまりにもベタな組み合わせなので,ドラクエ由来と断定することは難しそうです.でも,こんな中途半端な名前の芸人は売れないと思います(苦笑).

投稿: Rowen | 2004.12.02 03:39

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