陰陽大戦記#13
「二人一緒に笑えるようになるまでの巻」
ランゲツとの戦いで消耗しきったコゲンタは新太白神社に運ばれ,ホリンの回復の術を受けることに.そこになぜか突然やってきたのはモモとリナ.リクはコゲンタが心配で,ナズナはリクを休ませたいのだが,モモとリナがいると治るものも治らないとコゲンタに言われたために3人は京都見物に出かけることに.残ったコゲンタはホリンに,リクとこれまでの戦いについて語る.最初はダメ闘神士だったリクも少しはマシになってきたが,コゲンタに言わせれば「しょうがない奴」だ.
04年下期中の作品の中でもトップクラスの「陰陽」.今回は総集編なんですが,ここまでたった12話しかないはずなのにいろんなことがあったなと感慨深いものがあります.1話の時点ではここで書くにはまともすぎて作品に申し訳ないかもと思ったんですが,その後連中のボケがかなり深刻なことが判明し(笑)一気に書きやすくなりました.正直,一番怖いのはリクの日常が中盤以降に大きく崩れることなんですが,まあそのときは泣きながら書くかな.
前半はサブタイトルから始まっているのが新鮮.前回の激闘で倒れたコゲンタを回復させるため,ナズナはダメージが残ったままのホリンを降ろして術をかけることに.震坎乾坤…と言いかけたところで思いがけない面子が新太白神社に乱入.しばらく出番のなかったモモとリナが登場! リクをあっさり発見した上に,いきなりナズナさんと鍔迫り合いを開始するモモちゃん.そして拡大版でお届けされるモモちゃん妄想特急…話の本筋に何の貢献もせず己のエゴを画面にぶつけるなんて,ある意味ユーマより性質が悪いモモちゃんに見込まれてしまって辛いなあリッくん(苦笑).とりあえずリクは年下好みとかじゃないと思うので,無理に奪い返すよりは休ませてやってください….
新太白神社にモモたちが来ることができたのは,前日リクが連絡したのか,それともリナの能力でコゲンタの居所を察知したのか.状況をわきまえない点ではさらに上を爆走しているリナが居ては辛いので(苦笑)コゲンタはリクに京都見物を勧めるわけですが,リク本人はコゲンタをひどく心配.しかし,「こんなんじゃ…治るもんもなおらねえ」「特に,あいつがいると休めねぇ」という修羅場ぶり.結局3人は式神たちとナズナとテルを残して外出することに.で,テルは境内の掃除係に.ちなみにリクが明日学校に行かなければならないってことは,今日は日曜ってことかな.ならば京都に来たのが土曜で,じいちゃんが目を覚ましたのが金曜以前…ってことは学校はさぼってはいないようで.
やかましい一同が出かけたあと,ナズナとホリンは回復術を再開.震坎乾坤離兌巽離震…ということで「震坎兌離」の四方以外の斜めの音が入ってますね.これはより古い体系には含まれるということなのか.そしてホリンの術に癒されつつ,「なかなか立派な闘神士」について語るコゲンタ.
そりゃもうひどかった1話のリクは,神操機をまともに振ることすら一苦労.さらに2話では孤月拳舞以外の印を知らないことが判明して大ピンチ.その後印探しと修行をしないと駄目だとコゲンタが急かし,しかしリクがなかなか行かない…というのが7話くらいまで続いたんだよな.のんきでもたもた,頼りないし知らないし…と闘神士リクに対する不満を絶好調でこぼしながらも,最近は戦いに対し,指示より前に印を切ったり自分の判断で符を使ったりと少しはマシになったことを誉めるコゲンタ.スイッチの入ったリクが自分なりの意見を主張するようになったのは5話くらいからですが,より能動的に動きはじめるきっかけとなったのはやはり9話.ただ,現状ではリクのコゲンタに対する思い入れがあまりに強すぎて,闘神士として式神をその性能ぎりぎりまで使いこなす…というレベルには達していません.コゲンタが傷つくことをひどく怯えるのは,コゲンタの能力に対する信頼が足りないから.こんな状態では格上の相手を前にしたとき取れる戦術の幅がひどく狭いものになってしまう,というのは前回の戦いでも露呈してましたね.
後半はリクのダイジェスト.目の前で相棒が死にかかったり暴走したりという凄まじい戦いを経験したのと同日に,京都を引きずりまわされるリク.やたら喋るモモ,挙動不審のリナ,それを見守るリクはひたすら無言という絶妙のトライアングルぶりが素晴らしい(笑).さらに市場ではリュージまで合流.ボート部の付き合いの良さにもはや微笑むしかないリク.事情を知っているからこそ本当に心配だったんだろうけど…でも,同じボート部の仲間のためとはいえ,こいつら旅費はどうやって工面したんだ(苦笑).目当てのオカルト店が開いてなくて落ち込むリナが見つけたのはしっぽのキーホルダー.それを見て,置いてきた相棒のことがまた心配になるリク.手にしたことから非日常への扉を開いてしまった神操機は,彼にとっては災厄の箱でもあるはずなんですが,持っていないことを心細く思うほどに依存しているようです.
コゲンタの回想がリクとコゲンタのバトル中心だったのに対し,リクの回想は戦い以外の光景や出会った人々も豊富.1話では本当に何も知らなかったリク.祖父と学校程度のごく狭い世界で生きてきた彼は,祖父を助けるために闘神の世界におっかなびっくり踏み込んでいきました.闘神についてわからないリクがボケてコゲンタがツッコむ,というコンビネーションも結構早いうちから確立してたなあ(笑).リクはコゲンタから闘神を学び,その中で自分がどのような立場に立つのかを確認しながらここまで来ました.その思い出にはコゲンタだけでなく,モモたち学校の仲間や,ユーマ,マサオミ,テル,ソーマ,ナズナといった闘神士たちとのエピソードも数多く含まれています.闘神士とならなければ出会うことのなかった人々との交流もまた,リクの心を育てているようです.気がかりなのは仲間に対する強い守護の心.心底孤独を嫌うゆえに,コゲンタやモモたちやソーマといった仲間のことを本当に大切に思っているからなんでしょうが…もしその味方に裏切られたら,リクはどうなってしまうんだろう.大降神よりはそっちのほうが気にかかってしまいます(苦笑).
リクにもあまりにコゲンタに怒られ過ぎという自覚はあったようで,少しはなんとかしたいみたいですが…たぶん生まれつきだから,根治は無理だな(笑).怒られダイジェストをバックに,口はすごく悪いし乱暴で自分勝手で強引で負けず嫌いで無茶ばっかりで危なっかしい…と本人に聞こえないのをいいことに苛烈なコゲンタ批評を展開するリク.出会った時には,そんな批判がさらさら出た上にしかも一緒にいたいと思うようになるなんて思わなかったに違いない.基本的には怒られてばっかりなんですが,時折誉められたり認められたりするときには本当にうれしいんだろうなぁ.こいつ.
夕方,見物からの帰り道,リクは荷物を手に走り出します.コゲンタの治療もちょうど終了.ナズナが真面目にやっている最中に誰かが中断する,というのは繰り返しの笑いですが,今回はリクが飛び込んで,コゲンタのところに走り寄って涙ぐんでしけたつらといわれて笑われて,そして,やっと2人で一緒に大笑い.元々の性格が違いすぎるのでまだまだ息ぴったりとはいきませんが,この笑いがそのレベルへの最初の一歩ってことになるのかな.
リクたちボート部一行は帰還.モモちゃんは大人気ないのでナズナさんに噛み付くのはやめてください.それはたぶんリッくんに対しては逆効果だ(笑).テルも新太白神社を追い出され,一体どこをさ迷うことになるのやら.とりあえず生き残り,コゲンタと離れるのが辛いと痛感したリク.ヤクモに邪魔されたことで計算が狂い,爪を噛むマサオミ,そして古い太白神社の前から消えるヤクモ.前回離脱したユーマも含め闘神士と式神たちは一体どこへと向かうのか.次回に続きます.
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コメント
始めまして。先週の土曜日にこのサイトを発見して、陰陽大戦記のレビューを読ませて頂きました。「陰陽」は毎回楽しみにしているので、レビューも面白く拝読しました。
13話は予告を見て、「総集編か」と思ったら最後のカットで女の子同士が火花を散らしていたのでこっちの方が気になってしまいました。
ところでリクってコゲンタにしろソーマにしろナズナにしろ最初は駄目な奴と思っていたのが次第に認めていくというのはパターンかもしれませんが、あの性格のため余計面白く感じます。
でもそれは逆に考えると敵として見た場合も同様で、初対戦時はリクを「おまえには用はない」呼ばわりしていたイゾウも次には「てめえのせいで・・・」と「お前たちのせい」ではなく、コゲンタの事は入れず、「てめえのせい」とある意味今のリクには闘神士としては最高の誉め言葉を送る始末。こうなると最後の最後で逆転されたユーマもどんな悔しがり方をするのか楽しみだったりします。ただリクみたいなおとなしめな性格な主人公の場合、ライバルとしては正々堂々としたユーマよりは卑怯な戦法への怒りとかで積極的に戦わせ易い分、イゾウの方がいいのかもしれません。だからこそ中々退場させず、式神自体はかっこ良く、かつコゲンタと因縁がありそうな奴を設定したような気がします。
あとこの番組のOP主題歌、タイアップとして普通に男女の恋愛を歌ったとも、本編中のリクとコゲンタの関係を歌ったようにも取れるのが面白いです。個人的には後者であって欲しいのですが、歌から受ける印象は前者ですね。
長々と書き込んでしまいましたが、今回はこれで失礼します。
投稿: まさひ | 2004.12.28 20:08
まさひさん,コメントありがとうございます.
リクのとらえどころのないのんびりとした性格は,敵だけでなく味方にとっても脅威でしょうね.
今後どれだけ強くなってもあの性格は変わらないでしょうから,敵として戦い負けたときには「あんな間抜けな奴に負けた」と悔しくなるのは間違いないわけですが,味方にとっては「本当にあれが宗家でいいのか」と心底悩み続けるんじゃないかと(苦笑).むしろその戦いの記憶がすぐに消えてしまう敵のほうが,いっそ楽かもなぁ….
OPは,フルコーラスではなくアニメ放映されている映像と音楽の調和だけを気にするのが古からのお約束です.“Step”もそうだったので,あんまり気にしちゃいけません.曲に合わせた映像のキレとノリの良さは,結構幸せな出来ですよ.
投稿: Rowen | 2004.12.30 23:28