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ケロロ軍曹#42

「なぜかサッカー,なぜか友情の巻」

(A)ある晴れた午後,いきなりサッカーにはまった軍曹はケロンの力をペコポンに見せつけるべくチームを結成.赤い血のケロロ11は基本的に4人…ではなく5人なのだが,足りない分はドロロの分身で埋めて11人だ.早速西澤家の協力を仰ぎ特訓を開始するケロロ小隊.特訓の成果を確かめようとする一同の前に現れたのは,執事のポール率いるペコポン最強チームだった.

(B)ランニング中のタママが公園で眼にしたのは,少年がひとりサッカーに練習に励む姿だった.それにちょっと喝を入れてやろうとしたタママだが,不幸な事故で少年の前に姿を現すことになってしまう.自分はアンチバリアで消えていると思い込んでいるタママは自らのことを「通りすがりの神様」と詐称.一人練習していた少年の相手をした上に,必殺の嫉妬シュートまで教えるのだが,そのときに少年のボールを壊してしまう.

手固い芸風で幅広い層に対しアピールする秀作「ケロロ」.遅ればせながら授賞おめでとうございます.今回は前半がパロディ,後半がちょっといい話と実に「ケロロ」らしい2本セット.テーマを問わず,さらに主役がいなくても,「ケロロ」は「ケロロ」.アクはないのに個性はしっかりあるという,その熟練の芸がすばらしい.
前半はいきなり変なスイッチが入ったらしい軍曹,突然サッカーを開始.そりゃガンプラ作るよりは健康的なんだけどさ,メディアに影響されすぎるのは侵略側の指揮官としてはどうかと思うよ軍曹(苦笑).西澤サッカースタジアムを借りて赤い血のケロロ11を結成.足りない分はドロロの分身で補充し,サポーターにはモアさんが就任…とここまででパロディの準備とウォームアップが完了.このあとは実にこってりとしたパロディが連続.「サッカーを制すものは世界を制す」.確かにサッカーは元祖代理戦争って言うか現実化したガンダムファイトみたいなもですからね.これを侵略すべく集められた一同ですが,「キック&ダッシュ」や「ボールがお友達」は…いいのか(笑)? 軍曹の熱さにいつものように騙されて,赤い岬君まで誕生しております.
そしてはじまった新番組「キャプテンケロロ」は早速特訓開始.もちろん小隊はそもそも軍曹以外はかなり有能で,しかもケロロまで比較的筋がいい.ゆえにオレ達最強伝説を確信し共鳴するわけですが…分身してチームの大多数を占めるはずのドロロはまたも無視.このあたりの横長い構図が面白いなぁ.
さらにこの特訓の成果を試すべく,ペコポン最強チーム・ポールジャパンとの練習試合を行うことになったケロロイレブン.ポールの後に控えるのは,すごい小宇宙で戦闘力3万以上の猛者ども.何の説明もなくサッカーと無関係の作品のパロディをぶっこんでくるあたりが絶妙だ(笑).ペコポンとケロンの威信をかけた戦いは次の土曜.そしてはじまる更なる特訓は,鉄下駄のタママ,養成ギブスのギロロ,空気椅子のクルル,宙釣り特訓のドロロ,このあたりでパロディ的には腹一杯なんですけども,パンチ力を鍛えているスーパースター軍曹に至っては…この時点でオチが見えてしまっていいのか(苦笑)?
そして土曜日.温泉旅行を望む仲間の声援を受け,既視感のありすぎるシルエットの一同との試合がスタート.出てくる元ネタも広範囲に渡り,確かに最強の面子を集めた混成チームだけのことはありますな.試合は拮抗し0対0のままでロスタイムへ.そして立ち上がったのが軍曹.みんなの力を分けてくれ!と元気玉かと思ったら,観客席真っ白にするようなスーパーブロー炸裂.パロディのレベルでは伏線がきっちり消化されたのはいいものの,当然のように敗北のドウカの悲劇.…しょうがねえなぁ(苦笑).

後半は軍曹のいない1話で一人嫉妬嫉妬とランニングしていたタママが主役.出来心のいたずらに失敗してしまい少年と知り合ってしまったタママは,自分がすっかり見えていることにも気づかずに(笑)「通りすがりの神様」としての活動を開始.このゲストの少年が絶妙で,姿はメインやサブキャラの連中に比べるとわざと印象薄くつくってあるわけですが,声は手を抜かず上手い浅野氏を使っているから実にバランスがいい.そんな彼はサッカーが下手で,もっと上手になるために一人特訓していたのでした.
この少年に興味を持った神様タママは,数日を経てどんどん仲良くなっていきます.その間にアンチバリアの故障に気がついてもよさそうなもんではありますが,いい話なんだから堅いこと言っちゃだめだ(笑).そもそもサッカーは誰かと一緒にやるスポーツなので,相手がいれば互いに楽しく,興に乗ったタママはディフェンスの彼に必殺の嫉妬シュートまで大盤振る舞いで伝授.精神論のウェイトが大きく,コツを教えれば撃てるような種類のものではないと思ったんですが,…意外とそうでもないのか? しかしタママの指導で少年の大切なボールは壊れてしまった上に,明日も来い!というタママの言葉には寂しそうな表情を見せる少年.
西澤家の協力を受けて壊れたボールを継ぎ合わせ,元のボールを返すことで男の友情を示そうとしたタママ.しかし,雪の次の日から先は,待っても待ってもあの公園に少年が姿を現すことはなくなってしまいました.やがて雪が溶け,ドロロが示した公園の地面には「ごめんなさいと さようならと ありがとう おたまじゃくしの 神様」.タママがボールを壊したその日の夜に彼が書き残し,その夜雪に隠れた,声なき別れのメッセージ.
このシリアスな別れに巻き込まれたドロロは,真面目で心優しい彼らしく数日後にはタママを山間の小学校へとご案内.さすがは小隊1の人格者.少年が失敗して草むらに蹴りこんだボールの横に例のボールを置いて返すタママと,そのボールが神様からのものであるときちんと気がつく少年.感動ものならここでさらりと終わってもいいんですが,さらに嫉妬シュートをからめてもう一段完成度を高めるあたりが本作らしい.タママの微妙に歪んだ教えを真に受けた少年は,彼なりに直伝の嫉妬シュートを放ちます…が,これまた誠実で正しいポジティブシュートぶり.その直後の展開とも相まって,逆にタママのシュートがいかにアレかというのが際立ってしまう始末(笑).
宇宙人だから人前に姿を見せるわけにはいかないはずなのに,滞在期間の長さゆえか,それとも本来の性格からか随分と開けっぴろげになっているケロロ小隊.確実に隣近所には既に知れ渡っていそうな気がするなぁ(苦笑).そしてまたもきっちり季節ネタを追っていく手堅さに見惚れつつ,次回に続きます.

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