陰陽大戦記#19
「透明な湯に湯気も少なめなのにがっかりの巻」
テルが送ってきた手紙を読んだリクは,ボート部の練習を無断で休んで北国温泉郷に向かう.テルがリクを呼んだのは,金を貸してほしいからではなく,この町の人々が妖怪に襲われていて,その妖怪退治を手伝ってほしかったからだ.まずは旅の疲れを癒すべく温泉に入り,付近の鬼門の存在について調べるために大女将の話を聞き,と準備しているうちにボート部が顧問を連れてリクを追ってきた.果たしてこんな状態で妖怪退治はできるのか.
底暗い因縁話を基礎としながらもキャラの明るさで楽しく見せてしまう「陰陽」.多彩なキャラと状況を揃え,毎回視聴者に対してサービスを惜しまないあたりが素晴らしいんですけども,今回のサービスは一味違います.テレ東平日夕方のキッズ枠だとしても舞台は温泉! もちろんモモもリナも温泉に押しかけてきて,あんな風でこんな風なサービスを見ている誰だって期待するじゃないですか.お湯が白濁してたってタオル巻いて入ってたって湯気満載だって仕方がないと諦めつつにやにや見るような状況なのに…さあ,皆さんご一緒に! 「お前がサービスするのかよ!」
前半.月が沈んでしまったのか,今日は鬼門が開かず帰ってきたリクたち一同.玄関に到着していた手紙はリク宛で,北国温泉郷からテルが出したもの.頼りない上に腹が減りやすいテルは年下からの信頼がまったくないわけですが,それでも困っている彼を助けに翌日早速出発するリク.何もボート部に言わずに出かけたのは,無意識にボート部の干渉から逃れたかったのかもしれません(苦笑).あのリュージの熱心さからすると,モモが計画していたように夜は泥のように眠りたくなっていそうですからね.ボート部は本作では貴重な闘神以外の世界の象徴.ゆえにリクを執拗にどこまでも追います.モモはリクの行方を知るべく隠された神社に赴き,ソーマからゲット.相変わらずウマの合わないナズナとソーマですが,あのいじわるな教えぶりを見ると,ソーマもボート部に毒されてきているらしいのはいいことなのかどうか(苦笑).
リクはあっさり北国温泉郷駅に到着し駅前で呼び込み中のテルを発見.バイトの様子を見ていると,「やっぱり金?」と疑いたくなる気持ちはよくわかる.重ねてテルが深山荘で働くための顛末を聞いたらもう明らかに必要なのは金にしか聞こえない(笑).旅の途中で空腹ゆえに不法侵入と無銭飲食を犯した犯罪者は宿の温情で体で罪を返していたわけですが,テルが必要なのは闘神士としてのリク.山で妖怪が出るらしいので,これをなんとかするために手が欲しかったとのこと.ここであっさりテルが食い物の前払いを受けてしまったとコゲンタに看破されているのがおかしい.で,事情を聞いてリクも協力を約束.お金に関してはシビアなので貸してくれそうにないリクですが(笑)それ以外の人助けには割と協力的.他の人が困っているのを見ると放っておけないのは,主役らしい美徳です.
参戦の決まったリクに対するテルのもてなしは,源泉かけ流しの温泉.恐らく外には「掃除中」の札が出ていて貸切状況ではないかと思うんですが,本当に掃除されちゃ落ち着けないよなぁ(苦笑).折角お湯が地上波としては考えられないほどに無駄に透明なのに,入っているのは主役とタオルというがっかりぶり.でも! この先モモたちが追ってくれば素敵な光景が待っているに違いないと希望を繋ぐ,そんなサービス1回目.
妖怪がどこから出てくるのかが気になるリクは,それが鬼門の存在を示すのではないかと考え,宿の大女将にこのあたりの事情について聞いてみることに.思った以上の長話に足を痛めつけられる2人の闘神士.今回は小ネタが本編を食うほどにキレていて,やたら大量の荷物を持つ小さなじいさんとか,テルが匂いに引きずられて宿に飛び込む様子とか,ちょっとしたシーンなんですが面白いので見逃せません.
そして,大女将に痛めつけられたふらふらの2人に追い討ちをかけるのがボート部(笑).移動中に勝手に妄想を膨らませたんだと思うのですが,温泉でボートの特訓は無理だと思います.妖怪退治しなければいけないのに,仲間に完璧に仕切られてもはや流されるしかないリク.コゲンタに「どうすんだよ」と言われても…(苦笑).そして折角モモたちが到着したというのに,2回目のサービスはまたも男湯.
後半.冒頭で3度目のサービスが入るんですが先生で一瞬であんまりうれしくない….ボート部は町を散歩.日常よりも闘神を優先するリクのことが,モモは心配.一方山に入ったリクとテルは式を降ろして妖怪探索.イソロク,昆虫型だから嗅覚は良さそうなんですけどね.コゲンタは白虎であって犬ではなく,しかし夜目は効いたので早速見つけたのはドバエという小さな妖怪.人間の血を吸い親玉がいると意外と生態に詳しいコゲンタ.ここ最近,闘神に関わるリクの質問に答えられなくなり,知識の浅さがついに露呈してきたコゲンタですが(笑),妖怪に関しては実戦で身に着けたものがあるようです.これまで伏魔殿で襲ってきたのを適当に撃退してきたわけですが,「妖怪退治」という本来の闘神士の仕事に驚き,それに呆れて怒るコゲンタ.ドバエはどこかに親玉がいて,その親玉を潰さないとどんどん増える…ってもう上空に十分増えていて時既に遅く,かくして妖怪対式神の戦いが開始.
ところがこの戦い,妖怪が温泉街に降りたためにいきなり市街地戦に! ボート部以外の部外者に目撃される戦いとしては7話があったわけですが,あれが少数の人数を巻き込むものであったのに対し,今回は無関係な大量の人間を巻き込む事態となります.ニュースになってもおかしくない大事件に巻き込まれ,危機一髪のモモたち3人を颯爽と救うコゲンタと,大丈夫かと駆け寄るリク.この手の作品だとこれが日常茶飯事でも珍しくないんですが,本作の場合は非常にレア.…もしかして本当のサービスはこっち? ついでにとんでもない格好の先生も助けておくわけですが,気絶したのでリクの事情はばれません.このままばれない記録をどこまで伸ばすことができるのか.あ,リュージに押し付けたあの符は,今回使われなかったんだろうか?
妖怪相手に温泉街を縦横無尽に戦う式神と闘神士.コゲンタもイソロクも十分強いんですが,相手は小さくて当たりづらい上に数が圧倒的.しかし闘神士が印を切れば,式神は妖怪に対し明らかに優位.印と闘神士の存在が式神の力を引き上げるという事実はここまでも繰り返し語られていますが,それを見る側に対し見せつけるのがこの話の役割のようです.出てきた親玉はコゲンタすら出会ったことのない大物.普通の場所に入っていられるサイズではないので,やはり近くに鬼門が存在し,そこから出てきたのか? コゲンタとイソロクは巨大すぎる体と遠距離攻撃,さらに子バエに苦戦しますが両者とも闘神士の必殺技連打で抜群の力を放ちます.久々の離震離兌,コゲンタ渾身の怒涛斬魂剣.
コゲンタたちの活躍によって町の人たちは助けられたものの,妖怪に人間が襲われるという事態を重く見るリク.コゲンタ曰く,昔はもっと妖怪に襲われていたらしいですが,闘神士たちが各地でそれを退けたために現在は平穏であるとのこと.地流が倒し天流が封じた妖怪たち…そういや前回天流の封印で封じられていた中にいたあの影は,妖怪並みってことなのか? 今は両派の争いに夢中でどちらも妖怪なんか気にしないというコゲンタに,「そんなことない!」と真剣なリク.妖怪を倒すのが闘神士の本分なのだとしたら,それを知ったリクが義務に背を向けることはないはずで,それは流派を束ねる宗家としての美徳でしょう.
戦い済んで4度目のサービスなんですが…なんでもう上がってしまってるんですかお2人とも(苦笑)! そして本日3度目の入浴となるリク,2度目のリュージ.落ち込むリクに気を使うリュージの気配りはよく描けてると思うんですが,それは風呂の外でもできるだろ! 作り手は濡れ髪のリッくんで我々に我慢しろと言いたいようですよこの鬼め(笑).勝ったにしてもふっきれず,憂鬱なリク.本来闘神士と式神の敵は妖怪であり,流派同士の戦いは双頭の蛇が食い合うようなもの.地流が義務を放棄して天流に戦いを挑むのはなぜか.妖怪があらかた退治され,闘神士の存在意義が薄くなっているという現状にも関係あったりするのか?
そんなわけで間違ったサービスに複雑な気分になりながらも(笑)見落とせない情報が多く含まれた回でした.大女将さんのコメントの地獄谷だって回収されてませんからね.次回,またやってきたイゾウの手にあるあれは…やはり彼が持ち続けていたのか.仮初とはいえ折角出来た擬似家族たちをリクは守ることができるのか.次回に続きます!
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