ケロロ軍曹#44
「長い長い前フリの果てにの巻」
クルルの依頼でケロン人とペコポン人の運動能力を比較することになった日向家.絶対勝ちたい軍曹の指名で,比較対象は冬樹と軍曹に決定だ.西澤家冬季総合スポーツセンターで開催される2人の冬季スポーツ対決は,スキー,カーリング,ボブスレーなど本格的な競技が目白押し.しかしどの競技でも謎の妨害が入り,冬樹と軍曹の勝敗は最終競技まで決まらない.互いに相手が妨害していると考え腹を立てた2人は,5段アフロの屈辱をかけて最後の競技・釣りに挑むのだが,謎の爆発で競技場の氷が割れ,軍曹が水の中に落ちてしまう.
物語のバリエーションとセンスの良さはいつだって素晴らしい「ケロロ」.そんな中でも今回は2つのパートを上手に使って異なる物語をうまく重ね合わせながら描き,これまでにないとても興味深い光景を描き出します.ひっかかりの残る前半を継承した後半での展開はまさに圧巻.普段より抑えたトーンからはじまる物語は後半中盤以降,転がるように迫力を増していきます.テーマは2種族の交流で,詳細をよく知ることが理解するためには重要…ってのが物語構造そのものでも描かれているあたりが洒落てますね.子どもにはちょいと難しいかもしれませんが,凄く面白い.
というわけで前半の仕込みはクルルの悪い笑い声からスタート.研究の一環として調べたいことができた軍曹は,ケロンとペコポンの運動能力の比較調査を軍曹に依頼.水泳以外,普通にやって軍曹が夏美さんに勝てるわけがないんですけども,そこは軍曹も重々承知で対戦相手に冬樹を指定するというしたたかさ.本来は調査なので無理に勝っても仕方がないはずですが,どうあっても勝ちたいようで「一度倒した相手とはやりたくない」という詭弁も堂々.
対戦場所は西澤家冬季総合スポーツセンター.ペコポン側の応援は華やかですが,ケロン側はモアさんがいるだけで既に勝利ではないかと思います(笑).いきなり軍曹に指定された冬樹は最初は困り気味ですが,軍曹のかもしだす友好ムードに流されて手加減なしに頑張ることを決めます.もちろん軍曹は勝つために手段を選ぶわけがなく,友好トークも冬樹の油断を狙う罠なのは言うまでもありません.そしてそんな意識の食い違いを示すかのように,競技中次々に不審な事件が起こります.
まずはスキー大回転.軍曹はいきなり友好ムードを捨てて先行するわけですが謎の落下物によって妨害を受けて冬樹が勝利.続くスキージャンプ…ってろくな経験のない2人をジャンプ台から送り出すなんて無茶するなぁ(苦笑).大怪我してもおかしくない状況で飛んだ冬樹は風に乗るわけですが,謎の突風で記録なし.ゆえに軍曹が勝利.カーリング・ボブスレー・クロスカントリーと続く競技も謎の妨害が両者を襲い,襲われるたびに両者とも相手の仕業ではないかと考え,腹を立てます.もちろんペコポン側にはそんな妨害をする能力はなく,かといってケロン側にもそんな妨害をしている気配はなし.ならばこの場に不在のクルルがこれを仕組んだということなのか? その割には狙いに一貫性がなく,どんな意図でこんな惨事になっているのかまったく読めません.そして襲われている2人はクロスカントリーの雪崩でついに爆発.互いのプライドをかけての罰ゲームつき大勝負開催決定.ここで慣れているからという理由で5段アフロを提案されている軍曹がおかしい(苦笑).
最後の勝負はちんまりと「釣り」.あの様子だとわかさぎ釣りかな.しかしここにも襲い来る異常気象と,軍曹の手に来る大きな当たり! しかし,相手があまりに大きかったのか大惨事.溺れた軍曹を前にして,敵のはずの冬樹が取った行動は,オチも含めて(笑)実に彼らしい.ちょっとくらい疑ったって友達は友達です.そして日向家に戻った一同が見たのは,秋ママさんとクルル….ここまで全てが前フリ.本題はこの先です!
前半の謎が明らかになる後半! 珍しく明るいうちに帰ってきたママさんですが,ご存知のとおり軍曹たちは例のスポーツ大会の真っ最中.しかしクルルが待っていたのは彼女.バイクとともに地下に降ろされるとき,最初驚きながらもあっさりわくわくし始めるあたりはさすが作品内最強クラスのキャラだけのことはあります.クルルが見せたかったもの,そしてデータをとりたかったものは…どこかで見たような凄い巨大メカ.地球侵略用巨大兵器・AK966! あの羽根の形とカラーリングはもろに他社のため,あんまり作り手に頑張らせようとするのは酷だと思います(苦笑).その顔とボディラインはまさしくママさんそのもので,その身体データは一体どこから持ってきたのやら.何はともあれ邪魔者も冬山に追い出してあるので,早速試作機のテストを開始.バイクで搭乗するあたりがアレなんですけども(笑)かっこいい!
パイロットの搭乗直後にオータムHに改名されたAK966はアンチバリアを生かして早速外の世界へと出撃.ノリのいい秋ママさん,試作機に怯えることもなくむしろ限界を追求しようとする攻めの姿勢が素晴らしい.ただしそんな攻めのテストは,事故発生時に周囲に与える影響の小さい場所に移動してからにしていただきたい(苦笑).パイロットとの相性がよほど良かったのかオータムHの動きは素晴らしく,むしろクルルの想定外の動きを見せる…というのはもちろん暴走の予兆.そして,武器が動きだした時点から前半に残った謎が立て続けに判明! 軍曹と冬樹を襲っていた謎の妨害の意図が読めなかった理由にも納得です.もちろん真面目に考えれば無茶で強引な理由なんですが,宇宙人コメディならば十分許されます.だってそのほうが面白いから(笑).暴走するオータムHはしっかり迷惑をかけていたわけですが,むしろあの程度で済んだのは正直ものすごく運が良かったんじゃないかと.一つ間違えれば大惨事ですからね.あ,オータムダイナマイトだけは運じゃないや(苦笑)!
いろいろあって暴走したオータムHをなんとか止めることには成功したものの,結局壊れたので地下水道を通って基地に戻ろうと考えたクルル.そう.水中に彼らが入ったということは…このとき軍曹も冬樹も大変なことになりましたが,水中でも生命の危機がまさに訪れていたのでした.しかもこっちの2人は周囲からの助力は得られないので命の危機レベルが段違い.すっかりびしょ濡れですが,2人とも無事に戻って来れてよかった.謎解き開始から終局までの流れが本当に素晴らしい,ケレン味溢れる秀作でした!
さて,次回は時事ネタのはずが…いきなり団子ですか(笑)? そんなに何度も出されちゃなんとなく食べたくなって来るじゃないですか.いきなり団子の製造会社はパンのごとくタイアップするべきだろうと思いつつ,次回に続きます.
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