ケロロ軍曹#49
「他愛なくって一癖あっての巻」
(A)ある日異常現象が日向家を襲う.クルルが夏美のかわりに洗濯物を取り込み,冬樹の捨てられそうな本を助けたのだ! 軍曹たちはいつもと同じようにハイテンションで内輪もめしているのだが,そこで「処世術」について偉そうに語るクルル.実際にその言葉の通り,冬樹も夏美もクルルにお礼に来るからうろたえる軍曹たち.コツは簡単.普段やらないことをやればいいらしいのだが.
(B)桃華はホワイトデーに冬樹にお返しをもらって上機嫌.あとは冬樹に愛の告白を受けたいところだが,これは一筋縄ではうまくいかない難解なミッション.そこでスーパーコンピュータでシミュレーションを行い,事前に全ての問題点を潰すことにする.桃華はシミュレーターで冬樹に告白されるべく様々な状況を経験するのだが,一癖ありすぎる隣人たちのためにやっぱりうまく進まない.
いつもは手堅く上手い芸風で確実に笑わせてくれる「ケロロ」.普段に比べると今回は随分とテンションが高く,無茶な話を勢いで持っていく傾向が強いんですが…一般的な評価はともかく,自分はこういう回が一番好きだ(笑).題材としては他愛のない古典で見飽きるくらいのネタなんですが,その演じ方とふざけ方が絶妙! このネタで陳腐さを極小にできるのは,やはりキャラの強さが尋常でないからでしょう.その一方,製作側のジョージ・ナカタいじりがもの凄く楽しそうでたまりません(笑).
前半はやり慣れないことをやってみる試み.冒頭から「あの」クルルがなぜかちょっとした善行を積むもんだから不気味でたまらないですね.しかしサブタイトルとその後の展開によって,クルルなら当然取るであろう行動から視聴者の目を上手に逸らす,というテクニックが抜群です.クルルが奇行を行うのに対し,軍曹たちはいつものとおりに内輪もめ.ペコポン征服がうまくいかない理由については,全面的にギロロが正しいと思います(笑).趣味にかけるリソースについては,頻度や価格だけではなく一定期間内の総額を出すといいのではないかと.費やした時間についても現在の時給で換算しておくと,泣きたくなること請け合いです(苦笑).小競り合いを傍観していたタママまで引き込まれて展開されるバカテンションの内輪もめを止めるのは…今日は様子がおかしいクルル.しかしさっきの奇行はクルルの処世術.しかもその処世術の成果が冬樹と夏美でしっかり現れたもんだから,ケロロ小隊はこの魔術師,あるいは詐欺師に夢中です(笑).クルルの処世術は「普段やらないことをすること」.もちろんクルルの普段があまりにもダメだから(笑)こその,この処世術であることは肝に銘じておきましょう.
クルルの教えを継承し早速実践に移してみるのはタママ.どうにもこうにも美少女戦士なメイドさん方のお手伝いをしたら,大好評で迎えられることに.とはいえそこまで喜ばれるってのは,普段いかに迷惑をかけているのかの裏返しなので本当は安易に喜ぶべきじゃないんですけどね(苦笑).桃華さんの「来るべきおかし」は一粒24万1千5百円.ちょっとしたジュエリー以上に高いねぇ.
タママの成功譚を聞いた軍曹は自分も普段やらないことをやってみようと決意! もちろんやるべきは普段やらない「善行」なので,プラモデルの種類を変えても意味はなし.熊本,好きだねぇ(笑).同じ理由で録画予約ミスも「善行」ではないので意味はなし.トイレの三角折りは微妙に善行っぽいんですが,それをやるために失敗する分の悪行が大きすぎてダメ.アンチバリアなしのお買い物に至ってはそれは禁止事項だからだめだろ(苦笑).全てが裏目で夏美さんに怒られる軍曹ですが,実際自業自得以外の何者でもないよなぁ.
そして軍曹が最後に手をつけるのが「ペコポン侵略」.これが普段やらないことでいいんですか侵略者? その上施設の使い方まで忘れてるダメすぎるケロンは,ナレーターから見ても立派な問題児.というわけで最終兵器のボタンを気軽に押してみる軍曹…ドロロが止めてくれなかったら一体どうなったことか(苦笑).やりなれない悪行では怒られるのも当然で,しかもその実践を指南したクルルもやっぱり己の美学に準じている始末.やっぱり奴らは奴ら以外の何者でもなく,是非はどうあれ,それ以外の選択肢は現実的ではないのでしょう.というわけでオチですが,珍妙な求愛は…悪行(笑)?
後半はシミュレーションの罠.特別なエピソードなどないくらい自然に,冬樹は桃華さんにお返ししたようです.ただ,お返しをもらうタイミングで愛の告白がない場合は,シミュレーションよりもむしろ,ここまでの経過を見直ししたほうがいいと思うのだがどうか(苦笑).で,西澤家の超資金と超テクノロジーで完成していたスーパーバーチャルシミュレーター.仮想空間を現実のように体験できる夢のマシンです.ここで仮想冬樹のデータをちょっといじって桃華さんと愛を語らせておいたほうが皆幸せなんじゃなかろうか…でもやはり,本物の価値は別なんでしょうね.
冬樹を危機に追いやってアドレナリンの分泌を促し,ついでに桃華さんと接近させて告白させることを狙うポール.とはいえ腕っ節に自信のまったくない冬樹は危機から全力で逃げてしまうため(苦笑)最初の結果はバットエンド ランクD.ここから先が今回一番の見所で謎.チンピラでは冬樹が逃げて終了なので,わざわざハリウッド俳優を呼び寄せて宇宙人を演じてもらうというシミュレーションに変更.この俳優の名が…製作スタッフはジョージ・ナカタが大好きだ(苦笑).しかも宇宙人からもやっぱり冬樹は逃げるので,なぜその後もチンピラではなく無理に宇宙人に追いかけさせるのか,意味がまったくわからない(笑).
暗闇のマンホールに2人を追い込んで告白に持っていこうとするポールの計画ですが,これを仮想空間の軍曹たちがことごとく妨害.溢れる資金力でその障害を封じていくポールではありますが,ここまで関係者が集中して邪魔するところを見ると,冬樹と桃華の恋は余程運命から見放されているのか,それとも周囲が暗黙のうちに2人の仲を否定しているかのどちらかだと思います.何度も脅かすジョージ・ナカタの宇宙人をそこから逃げ出す仮想の冬樹,そして引っ張られるたびにぞんざいで無口になっていく桃華さん.このだんだん適当になっていく桃華さんの静かな疲労感がいい感じ.
必要があれば雑誌を創刊して吉崎先生に大量に原稿を書かせたりするだけでなく,地上の全ての建物を撤去するような暴挙だって実行するポールの気合がすごい.でも,モアさんのいきなりだんごだけはぜひそのままでお願いしたいんですけども….徹底した環境整備によってようやくマンホールに入った桃華さんと冬樹は,映画の主人公のように近づいてやっとランクS! これを現実で実戦だーって,ここまでしないと成功しない計画というのは,前提に間違いがある可能性が高いので,もう一度根本から考え直したほうがいいんだけどなと思ったら案の定.どれだけ頑張っても妨害が入ってしまうのは,運命,あるいは物語が2人を近づけまいと頑張っているいい証拠なので,桃華さんも今回は諦めろ(苦笑)!
両話ともいつもに輪をかけてくだらなく,内容皆無でハイテンションなのが素晴らしい.ついでに予告のナレーターのコメントもナンセンスで素晴らしい(苦笑).今後もこういうベタネタを独自のノリでこなす回をときどき見せてくれるといいですね.で,スタッフはギロロが大好きに違いないんですけども,次もジョージ・ナカタは大活躍? 次回に続きます.
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