ケロロ軍曹#51
「問題だらけの素敵な友達の巻」
午前3時に指揮官より軍曹に下されたのは,24時間以内の撤退命令だった.1年経ってもペコポンはちっとも侵略できていないので,このまま帰っては大変なことになると考えた軍曹は,急いで侵略マニュアルを読もうとするのだが家事優先でなかなか進まず,結局ほとんど読めないままで夕方となってしまう.今日の夕食は軍曹が家事を頑張ったご褒美のビーフシチュー.秋ママさんにも誉められる軍曹だが,もう明日はここにいないのだ.夕食の後片付けもきっちりとこなしながら,軍曹のペコポン最後の日は終わっていく.結局侵略はできなかったけれど,旅立ちのときはすぐそこだ.
子どもと大人の心を同時に掴む秀作コメディでありかつ特殊なガンダムシリーズでもあった「ケロロ」.今回が第1期の最終回で,一応の区切りとなります.原作そのものの良さがあるとはいえ,1年という長期に渡って粒揃いの作品を提供し続けたってのが素晴らしい.作画の面でも物語の面でも卒がなく,観客が受け入れられるぎりぎりのラインをきっちり狙って暴れてくれる,非常に良く計算された見事なショーを見せてくれました.今回は区切りのエピソードなのでいつもよりも感動増量.1年かけて侵略するはずが逆にペコポン文化に洗脳されてしまった軍曹のじたばたぶりをお楽しみください.
前半は最後の1日.悪夢のように軍曹の夢枕に立つ指揮官の立体映像.午前3時の通信は,24時間でケロン星に帰れという命令.「留まれば命の保証はできない」なんてのは確かに悪夢と勘違いしてもおかしくない台詞ではありますが,この命令は…現実.そしてはじまる,いつもじゃないようでいつもの(笑)最後の1日.
撤退命令が現実とわかって大汗をかく軍曹.なんせこの1年,ペコポン侵略そっちのけでバンダイに侵略資金を突っ込んできましたからね(苦笑).この状態で戻ったら,どう考えても処罰は免れません.というわけであわててここまで漬物石がわりにしていた侵略マニュアルを読もうとするわけですが…相変わらず計画性のない軍曹は全然懲りてない.正月も宿題溜め込んで大変なことになっていたじゃないかよぅ(苦笑).それでも必死でマニュアルを読もうとする軍曹は,夏美さんの妨害を必死でかいくぐりつつ読むことに.一応,マニュアルは実践の手引書なんですが,このあたりで目的がペコポン侵略からマニュアル読破に変わってるのはまずいよなぁ(笑).
二宮よろしく家事をこなしながら本を読む軍曹.さすがマニュアル.余程のアホでもちゃんと読めばそれなりになるように記述内容は至れり尽くせりで…夏休みの手引きの冒頭みたいだ(苦笑).ペコポン最終日を軍曹は,結構適当に家事をこなしながらマニュアルを読んだり掃除機で吸ってくしゃくしゃにしたりしつつ,過ごします.スイトール君が部屋中のマニュアルを吸ってしまう動きとカメラワーク,地味に凄いなぁ! その頃,部下たちもそれぞれに最終日を過ごしています.撤退準備をするギロロはテントの中で芋を発見.タママは一人きりで菓子の食い修めを実行中.とはいえ,寂しさが先に立つと味どころじゃないよね.
結局マニュアルすら読み終わらなかった軍曹.けれど今日軍曹の邪魔をしたという記憶は,明日の夏美さんからはきっと消えているはず.撤退の際には関係者の記憶を消すのが,宇宙人のたしなみ.軍曹のペコポン最後の夕食は夏美さんのビーフシチューで,これは軍曹が今日家事を頑張ったご褒美.姿も立場も全然違うのに,ダメなところは怒るかわりに,良いところもちゃんと認めてくれる日向家.1年前に転がり込んだ宇宙人たちは,1年かけて日向家の出来の悪い家族になったわけです.秋ママさんはお小遣い20%アップとまで言ってくれるんですが…軍曹には次のお小遣いの日はもう来ない.夏美さんのおいしいビーフシチューを食べる日も,もう来ない.
ギロロは愛する夏美さんに,言葉のかわりに焼き芋をあげ,軍曹も言葉のかわりに皿洗い.どうせ言葉にしても,明日の朝には消えてしまうなら,とても口には出せないよなぁ….結局今日は何もできなかったけれど,日向家の役に立ったので,これでよかったのでしょう….軍曹は荷造りを完了します.
後半はケロンのいない「ケロロ」.友達のところからケロボールを回収した軍曹.夜の中でそっと別れを告げて,公園に集合する小隊一同の姿は,さながら妖精の国に戻る妖精のよう…いや,連中はもちろん宇宙人なんですけど(笑).公園に集合する中には,軍曹と一蓮托生なモアさんもお待ちかね.ペコポンの平和のためにはそのほうがありがたいのは間違いなし.半分忘れられながらもちゃんとドロロも到着し,いよいよお別れ! …と思ったら小雪さんがわざわざお別れの挨拶に.「ケロロ」の麗しいお嬢さんたちの中でも,小雪さんはスタッフに愛されていたのか,随分と厚遇されてたんじゃないかな.そして残るは最後の仕事.全部消すスイッチで思い出を徹底的に消去します.
光の中,迎えの宇宙船へと引き上げられていく軍曹たち.しっかりガンプラ抱えてる軍曹.きっと本当は工場ごと持って行きたいだろうなぁ…スイッチの効果で地上では消えていくケロンの痕跡.その痕跡に結びついた楽しい記憶とともに,全て闇の中で在りし日の姿に.何もかも消えていく彼らのいた証拠.食器も,当番も,…記憶も.異世界の者との別れとしては古典中の古典とも言えるこの状況で,軍曹が叫ぶのは「さよならなんて,嫌であります!」…このあたり,お約束だからはっきり先は見えているんだ.それでもぐっと来るのは演出と声の力だよなぁ.
軍曹たちが消えてから数日後.軍曹たちがいることによって楽しい方向に回っていた冬樹たちの日々は,平和で,しかしありきたりのものへと変化.散々迷惑もかけてくれた軍曹たちですが,あいつらがいたから面白かったこともたくさんあったんですよね.既に失われてしまった空白を埋めるものに気がついたのは,全編で目立たないながらも(笑)ペコポン人としては軍曹と最も長い時間を過ごした冬樹.地球儀の真横に,地下室に,冷蔵庫に…誰かの痕跡を感じ,ついに中に入っていたジオングのプラモを見て泣く冬樹.それは,ガンプラが何よりも好きだった,大切な友達!
最後は割としょうもないオチで終わるんですけども(苦笑),空白を見せることによってそこに居た存在の大きさを逆に見せつけるという技法がぴたりとはまった,最後まで本当に上手い作品でした.プロの作る見事な商品はいつだって面白かった上に,あいつらがまだまだ帰らないなんて,サービスするにも程がありますよ(笑)! ここまででかなり原作のストックを使ったはずなので,時間帯変更の次期シリーズではオリジナルが多くなりそうですが,今までのオリジナルの品質を見る限り,スタッフやターゲットの大幅な変更がなければ恐らく大丈夫じゃないかな.
あれだけ悲しい話にしておきながら,実はただの健康診断だった軍曹たち.けれどこのまま冬樹たちの前から姿を消すはずが,冬樹がジオングに足をつけたので(笑)たまらず軍曹が飛び出して…「軍曹! どこ行ってたんだよ!」
…そして日向家の侵略の日々は,再びはじまります.
| 固定リンク
「レビュー◆ケロロ軍曹」カテゴリの記事
この記事へのコメントは終了しました。
コメント