ケロロ軍曹#47
「ハジケるにはまだ遠くの巻」
(A)3月3日はひなまつり.日向家でも雛壇を飾りつけしている.赤い毛氈の上に並べられていく雛人形.それを見ている軍曹たちはひなまつりがどんなものかを知らなかった.夏美から日本の由緒正しい祭りなのだと聞かされて,期待しながらひなまつりについて調べてみるが思った以上に地味な祭りでケロンたちはがっかり.そこで軍曹は,由緒ある祭りをケロンの科学力でもっと面白くするという,ろくでもないことを思いついた.
(B)夏美さんも大好きなダンスマン.そのコンサートチケットを夏美に売りつけにきたダフ屋の軍曹とクルル.ダンスマンに会いたい夏美は千円でチケットを購入するが,そのチケットはまぎらわしい別のもの.宇宙から飛来し夏美さんのチケットのもとにやってきたのはアフロの宇宙人.彼の名はダソヌマソ.クルルの友でありダンスマンの類似品だ.
最も手堅い笑いを常に提供してくれる「ケロロ」.落ち着いた笑いでやりすぎて破綻することはなく,時事ネタだってもちろんお手の物.まさにコメディのお手本のような笑いが特徴なんですが,今回はちょっと様子が違います.普段通りのノリでつくれば手堅くまとまるはずなのに,話が展開するに従って普段は絶対に外れない話のたがが緩んでくるのでおかしなことに.「ケロロ」にしてはギャグ重視になっているのは,今回大活躍するクルルこと子安氏のおかげでしょうか(苦笑).
前半は時事ネタで一発.年中行事を律儀に追うのはファミリー向け作品のお約束です.忍者なのでひな祭りを体験したことがない小雪さんはまあ仕方がないとして,もうすぐ1年なのに未だ日本の常識を学習できていない軍曹たちは絶対に勉強不足だと思います.ひなまつりがわからないと,特に少女漫画系の作品の鑑賞時に悩むことになるはずなんですが…ガンダムマニアにはあんまり関係ないのか(苦笑).でも,雛人形をガンプラ扱いしてはいけません.あれはプラモデルではなくドールだ(笑).しかも職人の手による完成品販売の上にセット売りなのでお値段もそれなり.ゆえにガンプラとは格が違うと夏美さんは軍曹たちに主張します.
ケロンにとっては秘境の祭り,ヒナマツリについて調べるケロロ小隊ですが,その地味さにどうにも拍子抜け.これを若者らしく宇宙の技術でポップにアレンジしようとする軍曹の思い付きが毎度ながらダメ.ついでにまたも夏美さんに釣られて懐柔されてしまうギロロはもっとダメ(苦笑).ドロロも釣られて混ざろうとするんですが,いることを認識してもらえていなかった影の薄さが悲しい.登場当初から,出番があるたびに影が薄まっている気がするなぁ….
そして時は至り3月3日.女の子のお祭りに男が一人.結構なお内裏様ぶりなんですが,ハーレム状況なのを冬樹は…絶対わかってないよなぁ(苦笑).桃華さんは日向家の雛壇がヘリに乗らずに見られることに感動でスケールが違います.と,ここまではいつものノリだったんですが,ここから先は若干1名大暴走.女の子の祭りだからと登場する黄色いクルル子.もちろんクルルのパワードスーツで,時間をちょっと間違ったような子安氏のハジケっぷりが光ります(苦笑).子安氏の可愛い子猫ちゃん声は聞き慣れてるんですが,それを口にするのがアフロではなく女の子型だと破壊力が違うなぁ.どっか見たことのある姿でステッキ振り回すクルル子さん.羽根の意匠とか,締め金先生的にはOKなんでしょうか(笑).そんなオレンジ娘がどうしようもない呪文で招く宇宙ひな祭り.一応軍曹の仕業なんですが,今回はクルル子さんのインパクトが凄すぎて霞んでしまいます.
軍曹提供の宇宙ひな祭りことダジャレ祭り.宇宙ひなあられをタママが食らうと花火になるわけですが,ある種の爆発物は甘いらしいのでわからないでもありません.宇宙ひしもちに追われて「必死もち」あたりから,クルル子さんの不審さがエスカレート.出てくるものになぜか添えられるクルル子さんのダジャレ.恐らくはこのイベントの企画を担当したであろうクルルが見たかったのは,バカがダジャレを本気で体現する様子だったに違いない(苦笑).夏美さんたちだけでなく,軍曹たちもクルルのハジケにつきあわされる被害者ではなかろうか.
新たな祭りとして企画されたイベントのトリはお雛様! 乙女の祭りということで,彼女たちの大好きな逞しい男の裸体を雛壇に飾り,それをわっしょいわっしょいと担ぐ秘境の奇祭がここに完成.しかしハジケリストとしては,発端はダジャレで構わないんですが,そこからどう暴走させるかが重要.折角の「避難まつり」なんだから,逃げていく方向などを工夫して物語を破綻させればきっと…普通の視聴者はぽかーんとするに違いない(笑).今回の物語の結論は,ハジケリストとして大成できるのは相応の才能を持った人間だけ,ということでいいですか?
後半は最近のサンライズのお家芸である実在人物を使っての遊び.これでオープニング・エンディングとも歌ってる奴は全員本編にも出たことになりますね.時間帯移動を控えてるので,今期シリーズでやり残していることは全部片つけておこうという考えなのかもしれません.夏美さんも623経由で,アフロ軍曹でおなじみのダンスマンが大好き.コンサートに行きたいなーと思った矢先にやってくるのが2匹のケロンのダフ屋.「チケットあるよー」の言いっぷりが堂に入ったもんですが,もちろんダフ屋は違法行為.軍曹の提案は基本的にうさんくさいので自動的に断る夏美さんですが,ダフ屋の巧みなトークによってつい見てしまったチケットには「ダンスマン」という文字! 実はちょっと違うけど! これをご奉仕価格の千円で購入した夏美さんは,あっという間に詐欺被害者.
チケット購入がきっかけとなり,なぜか宇宙から落下してくるアフロの男.天体観測していた冬樹の「ぼくんちに落ちたー!」という悲鳴が絶妙です.夏美の部屋に落ちてきたもじゃもじゃの毛玉からは手足が生えて…参上,ダソヌマソ! クルルの親友であるこの宇宙芸人,ダンスマンに間違えられるために芸名まで似せたという姑息さを何の迷いもなくぶっちゃけるのが特徴です.前半はダジャレでしたが後半はぶっちゃ毛,あまりにもピン芸人らしいこの芸風は綾小路きみまろの劣化版で,ぶっちゃけ新しくありません(苦笑).この変態の到来に即時退去を命じる夏美さん.でも話を終わらせるにはまだ早いとメタ的なぶっちゃけをされて戸惑い気味.番組終了までにらみ合うわけにもいかず,時間つなぎに乱入してくるのがギロロ.変態アフロにミサイルを撃つものの,アフロの中は超空間であったために因果応報は保たれることに.
さらに時間を繋ぐダソヌマソは夏美さんを甘言で誘うわけですが…さっき2人のダフ屋が示したとおり,上手い話には必ず裏があります.今回はその目線のおかげで早めに気がついたのですが,もちろん彼が狙っているのは夏美さんのアフロ化.しかし,この危機を救ってくれたのは目立たなくても腕は立つドロロ.己の技を封じられ,即座に撤退を決めるダソヌマソの判断は冷静で正しい(笑).
変態が帰り,犯罪者を縛り上げて今回の最大功労者であるドロロを歓待する夏美さん.しかし帰ってきた秋ママさんのうかつな行動のおかげで結局予定調和の引力から逃れることはできず.ところがその場に満ち溢れた力が脅威の奇跡を招くことに! アフロの波長に呼ばれてやってきたのはスーパースター.この脈絡のなさは良いハジケの前兆なんですが,前回に引き続き,そこから激しく破綻していくことがないのが惜しまれます.ハジケの導入としてはまさにお手本のようなネタなので,作り手に必要なのはそこから一歩踏み出す勇気.もちろん足の下は崖ですが(苦笑)!さて,本作のおかげでサンライズはパロディに関する素晴らしい経験を積んできたんじゃないかと思うんですが,次の元ネタは他社ですね? 同じ掲載紙ということを生かした良いパロディを期待しつつ,次回に続きます!
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