焼きたて!!ジャぱん#26
「脇役,ようやくの晴れ舞台の巻」
なんやて人間という職人としては致命的な特質を持つ河内.しかしアフロにしたのは伊達ではない.勝負をかける「歌うパン」は箸を突き刺して独特のクープをつくり,オーブンの中に水の入ったバケツを入れて大量の水蒸気を当て焼き上げる.焼成がはじまると,オーブンからは独特の音が.
対する諏訪原の焼き上げた長いフランスパンは,とぐろを巻いて蛇のように踊る.審査するのは黒柳.この新人戦ではじめて審査員の口に入った諏訪原のパンは,喰った者をワルツのリズムで踊らせる.基本的に長いほうが美味いフランスパンの特徴を追求した諏訪原の凄さを目にしても,今日の河内はくじけない.自分のパンに,それだけの自信があるのだ.
既に大きな問題はほぼ片付いて,ネタ満載の楽しい新人戦最終戦が展開する「ジャぱん」.ここまで和馬の噛ませ犬として苦汁を飲まされてきた諏訪原と,物語上の役割で「なんやて!」を言わされ続けてきた河内は双方とも役割的に気の毒(笑).とはいえ2人とも一人前のパン職人であり,そんな連中が噛ませ犬や驚き役をやっていたんだから和馬や冠は本当に凄かったんだということが間接的に示される一話でもあります.見所は…やはり堀内氏のキッドの独特のツッコミだろうなぁ(苦笑).シリアスな部分としては後半で店長がはじめる問いかけの部分に,実はじんわりと来るものがあります.
前半.ここまで本当に期待ばかりを集めながら,本領発揮の機会を常に失ってきた雌伏しっぱなしの男諏訪原と,精一杯の戦いをしようと思ったら相手が自滅とか雪乃の妨害とかでいいとこがなかった河内.それは控えめなギャグであり,物語を回すために必要な道化役.しかし彼らの本領はこれほど凄い!というわけで披露されるのはもちろんギャグの方ってのが世の中の厳しさだ(笑).周囲の期待を受けても余裕の諏訪原と,既に「なんやて!」連呼で一杯一杯の河内.それでもパン生地に箸を刺し,独特のクープをつくった上に水入りバケツをオーブンの中に入れて焼成となかなかの大技を繰り出します.業務用のオーブンってでかいんだなぁ.河内の歌うパンには,焼き頃を音で教えてくれるお知らせ機能つき.河内的には「歌」と認識してほしいところなんですが,他の連中は驚いても「鳴くパン」と認識しているのがちょっと悲しい.鳴くパンでは,まるで小動物みたいじゃないですか(苦笑).
先に焼成を開始した諏訪原のパンの出来は…うねるとぐろを巻いた蛇,なんですが…どうしても別のものに,茶色いぐるぐるに見えてしまうのは仕方ないところ(苦笑).オーブンには高さはあっても長さはそれほどないらしく,パン自体の長さを稼ぐためにこの形を選んだんでしょうが,さすが諏訪原,いろんな意味でチャレンジャーです! これを試すのはマイスターではなく,しゃしゃり出た黒柳…となるはずが今度は諏訪原が黒やんの審査を拒否.確かに準決勝ではパンを喰ってすらもらえなかったわけですが,武士然としているくせにその程度のことを根に持つなんて細かいことを気にしすぎ…でもないか(笑).とはいえ黒やんはもうパンが喰いたくて仕方なく,パンを食わせたくない子どもと食いたい駄々っ子の戦いは無理やり喰った駄々っ子の勝ち.蛇の頭を食いちぎった黒やんが見せるリアクションは,パンのワイルドな形状とは好対照!
フランス貴族のコスプレでワルツのリズムで踊りだす黒柳.パンだけでなく,パンを食った奴まで踊りだすのが諏訪原作「踊るフランスパン」の真価.まあ,優雅な踊りなのは最初だけなんですが(苦笑)それに対する月乃の適切なツッコミは誰も聞く者はなく,黒やんの踊りのレパートリーも止まらない.フランスパンは内部の白いクラムが大きいほどおいしくなるので,基本的に長いほうがうまい.フランスでは味を追求する贅沢としてパンの長さを競っていた時代すらあったわけですが,この無駄を改めたのがナポレオンの規格でありました…というわけで一応黒やんのベルサイユ装束にも意味があったわけで,さすがは黒やん,パンについての知識は深いです.
さて,諏訪原のすごいぐるぐるを目にしながらも今日ばかりは一歩も退かない果敢な河内.2流呼ばわりに対し「なんやと!」と怒り,己の「歌うフランスパン」の真価を信じ,凄まじいパン職人に立ち向かいます.
後半は河内大逆転! 本人はヘタレでも今日河内がつくった自分のパンに対する自信は本物.その気迫を優勝者和馬ですら評価しています.しかしここで大逆転を楽しく見守ることができない南東京支店.河内が凄ければ凄いほど,彼らの前にある出来事が訪れる可能性が高いのです…松代店長が和馬に聞くのは,優勝者の副賞を利用してパンタジア本店に移るかどうか.本店に行けは給料3倍,設備なども弱小支店に比べれば格段.けれどあっさりそれを否定するのが和馬.和馬の幸せを考えれば本店勤務のほうがいいに決まっていると月乃さんも判断しているわけですが,なんせ相手はジャぱんバカ.彼にとっての幸福は,気の合う仲間とともに真のジャぱんを追求すること.本店勤務がジャぱんへの近道でない限り,今の和馬にはまったく魅力がないわけです.で,木下は可哀想だなぁ(笑).
しかし河内は違います.新人戦にこれまで必死の気合を見せてきたのは,夢である本店勤務を叶えるため.確かに和馬とは入社試験からの腐れ縁ではあるものの,夢のためにその縁をかなぐり捨ててもおかしくないことは3人とも知っているわけです.…それでも南東京に残ると決意する和馬.一人前なら,自分の道は自分で選ぶのが道理.けれどそれは河内との別れのはじまり…こんな話を試合中に店長がはじめるのは,今河内が焼いているパンの凄さを黒やんのリアクションの前から理解しているいい証拠.少なくとも負けることはないと,己の部下の力を認めたからこその発言だったわけです.
で,そんなシリアスなやり取りはそっちのけで河内運命のパンが完成.河内が湯気の中からとり出すのは,歌うフランスパン,ダブルクラスト! 2倍のさくさく生地とはどういう意味なのかといぶかりつつもそれを口にする黒やん.その脳裏に蘇るのは…アメリカのハイスクール時代の記憶.どこかでものすごく見たことのある顔(主な声優:堀内賢雄)の黒やんの親友,キッド.貼り付けたような同じ顔ではあるものの(笑)いい奴で,ひとり留学していた黒柳を支えてくれたナイスガイ.本来の出演作品は「セブン」や「12モンキーズ」で,お袋とかネズミ小僧役はやっていませんよ断じて.そんないい奴,でも留年.ダブるクラスメイト.ダブルクラストー! …無理やりな子安氏の暴走はまあいつものこととして(苦笑)笑いどころは洋画の吹き替え声優を連れてきたことと,その彼に「話つくんなよ」とか「意味わかんねえよ」とか非常にコンパクトなツッコミをさせている部分に違いない.この手間をかけたパロディぶりこそが本作の真骨頂.というわけで黒やんの裁定は同点で両者3位!
パンの力でトリップ中の黒やんにかわり,ダブルクラストについては河内が説明.笛の穴のようなクープを開け,水入りバケツの上で焼成したことによって音が出ただけでなく,パン内部の空洞に水蒸気を回すことによって内側にもクラストをつくるというのが河内のタネ.この説明に,怒る諏訪原もようやく河内の価値を認めることに.とはいえ諏訪原のパンは空気を生地中に大量に含ませることで極端に軽いパンを作り出していたので,どちらも見た目のインパクト以外のものをしっかり提供していたわけです.
常識を超える河内のパンと,旧来の技術を極限まで突き詰めた諏訪原のパンはどちらも素晴らしく,自分と互角の戦いをやってのけた河内のことを,厳しい諏訪原が一流の職人として認めてくれたのがうれしい.ただのヘタレではなく,不安定ながらもやるときはやる男という評価を手に入れた河内.この評価とともに本店に行けば間違いなく出世できるはずなんですが…河内の勝利は南東京支店にとってはうれしさ半分,不安半分.果たして河内は折角手に入れたこの権利をどうするのか? 次回に続きます.
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