ボボボーボ・ボーボボ#52
「笑いは心,そして炎の巻」
ボスであるギガとも互角の戦いを繰り広げる我らが3バカ.ギガはついに己の軸を芸術の上に置き,ボーボボたちの全ての攻撃ことおふざけを「芸術」という観点から切って捨てるという大技に出る.並みのボスならあっさり敗北しそうな全員臼のさるかに合戦すら,芸術としては認められないゆえに,ギガに届かない.
攻撃を当てるべく世俗芸術にシフトしてみるボーボボたちの攻撃.しかし,それは真の芸術ではないから届かない.芸術作品をつくって見せても首領パッチ以外の評価は今ひとつ.ここは芸術を越える人の生き様を見せるしかない.
ついにギガ戦クライマックスに辿りついた「ボーボボ」.前回までのバトルは正直今ひとつテンションが上がりきらずにやきもきとしていたわけですがさすがボス戦.今回はアバンから凄いテンションだ! 「ボーボボ」はハジケるギャグに対しひたすらに身をゆだねるのが正しい鑑賞方法なんですが,大人の場合は必要以上に深く汲み取り,現実の特定局面に結び付けて無理やり高尚にしてみる,というひねた読み取り方も楽しいもの.今回はその曲解がやりやすい回です.また,ギガがぶっ壊れていくのと平行して,ビュティさんのツッコミもパワーアップ.その抜群の間もまた見ものです.
テンション高い今回はアバンからぶっ壊れてます.ボーボボと転校生ギガは登校途中にぶつかって恋の目覚め.そこに幼馴染を主張する首領パッチ登場というダメぶり.「ボーボボ君はあたしの幼馴染なんだからぁ!」…ヒロインのギガはまあ我慢するとして,首領パッチは日本中の幼馴染好きに謝れ(笑).
序盤からして無茶苦茶だ! 変貌し,本気となったギガに狙われたボーボボたちの考えるギガの攻撃は…一応「恐ろしい」ってことになってんだからくすぐられたりブランコしたりじゃないだろう.ましてやアバンでぶつかったギガ子さんが転校してくることじゃないだろボーボボ(苦笑).事前にネタをふっておいてきっちり回収する様が気持ちがいい.そんな恐ろしいギガと戦うことを前に,なぜか記念写真を撮ることになった天の助.自意識過剰の彼が豪風の中で必死で取ったポーズは…「○×商事の株を全部買い占めろ!」…芸暦がにじみ出てくるようなおっさんぶり.しかもこのポーズに対し律儀に10億分買い占めてくるボーボボたちが素晴らしい.天の助,マネーゲームで破産の危機!
ギガは己のコレクションである真拳使いたちを結晶化して宙に飛ばし,その中にはあのヘッポコ丸の姿も.ボーボボたちを倒すべくギガが持ち出してきた最終最強の武器が「芸術」.ボーボボたちはハジケることでギガを倒そうとするも,奥義・愛を取り戻せで,愛を守るために旅立って明日を見失った3人の大暴走を「イッツ芸術!」の一言で無力化するギガ.人間の精神活動のうちでも美を対象とする「芸術」は,笑いさえあれば何でもアリのお笑いとは別の軸であるだけでなく,お笑いに対する恐るべき猛毒でもあります.これまでどれほどのお笑いが,「芸術」という名誉の花に誘われて道を見失ってきたことか.確かにその書や絵は素晴らしいのかもしれない.しかし純粋に笑いの世界にいたならば,どれほど見事な芸を見せてくれただろうか…つうか,あんまり上手くないだろ(苦笑).
ギガの技の恐ろしさを娘の部屋を覗く母の笑顔でいなしつつ,ボーボボたちが繰り出すのは.奥義・昔鼻毛話さるかに合戦2005.登場人物が全員臼で希望の色で気高いペガサスに騎乗というナンセンスぶりを発揮するものの,ギガの芸術の力(パワー・オブ・アート)の前には無力.本来お笑いとして評価するべき対象を,芸術の観点から冷静に分析・鑑賞されてしまっては…このままでは笑いが取れません!
直線的な笑いでは効かないというわけで,精神にダイレクトアタックをかけるボーボボと首領パッチ.ボボパチとして牧歌的ゆえにうさんくさい(笑)絵手紙になってみると,これがなぜか魚雷さんのツボにヒット! 即座に再結成されたボーボボと魚雷の最強コンビの攻撃も,ギガには通じない! 芸術を標榜するギガには,美の観点で評価されるものでなければ届かないのです.3バカもにわか芸術家となってみるわけですが,天の助もボーボボもまったくそちらの才能はなし.首領パッチだけは何もしていないのに100点がついてしまって天狗となるわけですが,笑いを忘れた芸人ほど弱いものはないわけで.同じ「芸術」という軸の上ではギガに勝てるわけがないから.ボーボボたちは芸術を越えるものとして「アート・オブ.田中さん一家」でハジけていきます.
中盤.まともな人間のいない(笑)田中さん一家.まずボーボボが放つのは「激情風景選画・千本ノック2005」.額をつけることで行動を美として解釈することができるかどうかを見る側に問う,奥義とアートの融合.これは評価が定まらない問題作であるゆえに,見事にギガにヒット.ギガ反撃の最高彫刻ゴールドフィッシュは…もう魚の時点で予測されるとおり(笑)案の定首領パッチ母に煮込まれてしかもまずく,布団と一緒に叩かれるギガ! 存在そのものが芸術である首領パッチの行動は世俗であっても一つの美で,もちろんギガに当たります.さらにかぶせるのが偉い可愛い声でどきどきさせる魚雷さん.熟女タレントである彼女は女優で,ゆえに放課後の教室で告白を演じるなんてのはお手のもの.もちろん良いドラマは芸術なのでギガに攻撃は当たります.そして序盤で購入した○×商事の株が急騰したのが天の助! 金は美の支配者.大量の資金さえあれば美を購入できるので,俄か成金の天の助の攻撃も当たるわけです.犬である田楽の散歩は,現代アートでは商用キャラクターが1つの美として認められる場合もあってギガにヒット.ラストはイタリア風と予告してエジプト壁画を食らわせるという大技が炸裂し,彼の計算では届かないはずの攻撃を食らい狼狽するギガ.で,片隅では天の助が大暴落に巻き込まれていておいしいな(笑).
ギガの考えていた芸術は幻想と理想の表現方法の1つに過ぎず.真の芸術が日常のリアルの中に存在するというボーボボの言葉.これは美が芸術作品の中で表現される理念そのものであり,それは芸術を鑑賞する一般の人々の心の中に存在するからでしょう.とはいえ高尚そうな会話はもちろんフリでいきなりお笑いに引き戻すあたり,さすがはボーボボ.「芸術は,バックドロップだ!」 …人の心を揺り動かすこと,そして動かされてしまう心こそが芸術の極み.情動をもたらす力という点では,芸術もお笑いも根源は同列ということでボーボボが勝利したのかと思ったら,敗北したにも関わらず人質を放さないギガ! その往生際の悪さに,ついにボーボボが怒ります.
その頃,破天荒は一人で王龍牙とバトル中.牢獄真拳奥義を食らいつつも冷静な破天荒は,自信満々の相手に対して「寝ぼけんな」と封印解除! その凄まじい力は,通常は短期間しか動きを止められない鍵真拳を一生止めるほどの技へとパワーアップ.破天荒ですらこうなら,あのボーボボが封印解除すればどうなってしまうのか!
終盤.諦めの悪いギガに引導を渡すべくボーボボも封印解除.鼻毛は龍神となり,天に昇り同じ姿の荒神を呼び覚まします.無駄に美しい荒神様,見事に荒れていらっしゃる! 鼻毛魂を解禁したボーボボたち,荒神様が大暴れの合間にバカが面白ポーズをとっていたのがよくなかったのか,ギガではなくボーボボたちに火を吹いた(笑)! 受けた炎はそのまま不死鳥に.これぞ鼻毛極意・熱炎漢浪漫.他者の心を揺り動かすのは,熱血の魂!
無駄に燃えている3バカこと漢どもは己の身を省みずに突進し,右手を砕きながらもギガに一撃! この一撃によって闘魂を注入されてしまったギガは,芸術を鑑賞する冷静な心を失ってしまいます.そんなギガの心に火をつける,「おれごと焼き尽くせ!」という無駄に熱い行動の天の助,そしてそれを越えて熱い行動を取るボーボボ! …冷静に考えなくても自爆なんですが,熱さに流される今のギガにはそんなことすら思いつかない(苦笑).背景すら強制的に変えるボーボボたちの熱血ぶりは,ギガの心の炎を燃やし,彼を内側から焼いていきます.
鑑賞する冷静な心を失えば,異常に流されてツッコめなくなります.敵のはずのギガを救うべく,熱湯の中で巨大な岩を食い止める首領パッチのわけわからん行動すら,今のギガには彼をさらに燃やす炎です.ボーボボは天の助の拳と引き換えに漢拳を伝授され,それを両手両足で使います.無茶な技で体力を使い果たし,3バカは命を失うものの…地獄で閻魔に喧嘩を売る熱さ.そう.熱血で不可能を可能にするジャンプヒーローは死にません.やるのは死んだフリだけです(笑)!地獄巡りの 「魁!ボボボの鉄拳男塾」は地獄の釜よりも熱く,その勢いで地の底から蘇る3バカ.ほら,やっぱり死んだフリだ! ボーボボが宙に舞い上がって放つ最も熱い必殺ブローは,輝く太陽の上を行く,ボーボボの拳! …体と心を焼き尽くされたギガはついに倒れ,余計な蛇足がつきつつも(苦笑)ついにステージクリア.ビュティさん,ツッコミお疲れ様! 今回の姫役のヘッポコ丸も元の姿に戻って,サイバー都市の戦いも終焉.
先回まで今ひとつ熱さに欠けたギガ戦ですが,最後の最後で青白い炎を放ちました! もちろん前回予告のギャグ抜きは大嘘で(笑)本当に素晴らしいハジケっぷり.自分と同格のギガを倒されてしまったツルリーナ4世は,今度はコールドスリープから目覚めた自分の先代をボーボボにぶつけてくるようです.あのボーボボの体に負荷がかかるくらい封印解除の力は凄まじいようですが,次の敵も再びこの技を使わなければならないほどの強敵なのだろうか….
作中とは対照的に作品としては地方局で打ち切られ,追い詰められていく「ボーボボ」.でも,お前らの凄さは応援する子どもたちが知っている! 骨は拾ってやるからどこまでも突っ走れ! 次回に続きます!
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