第9回しりとり竜王戦・決勝
この記事は第9回竜王戦,準決勝以降の記事です.予選の様子は直前の記事か以下のリンクでどうぞ.
R'sM: 第9回しりとり竜王戦・予選
大林の大健闘とかほんこんのひな壇芸人ぶりとか川元の爆発とか永久追放確定の痴れ者の登場とかいろいろあった予選を潜り抜けた猛者は千原弟(千原兄弟),板倉(インパルス),川元(ダブルブッキング),有野(よゐこ)の4名.荒れた戦いを潜り抜けた実力者どもなんですが,実は前回から変わったルールに対応できない奴が登場してしまいます.いろんな意味で笑い声溢れる予選と違ってどうにもしょっぱい準決勝の空気は決勝にまで続いていくんですが,最後に煌くのは名人同士のしりとりを介した会話.寝ないでよかったと思わせる輝きが,我々を待っていてくれましたよ!
準決勝第1試合は千原と有野の対決.しりとりに関しては確実な評価を受けている2人の戦いは当然素晴らしいものが期待されるわけですが…まさかあんなことになろうとは(苦笑).出口のない迷宮をさ迷う2人の男の悲しい姿が実に印象的な戦いです.
準決勝の競技は「しりとりフレーバー」.「~風~」でしりとり.
テーマは「豪快な言葉」.
板尾の例題は「切腹風帝王切開」.腹のしわにそって開いているので目立つ傷跡が残りにくい感じです(笑).「帝」が「帯」っぽくなっている豪快さも含め,豪放磊落な芸風のよく示された素晴らしい例ではないかと.
さて,競技は始まったものの2人がいきなり長考.千原はともかく速攻型の有野すら手を挙げないという異常事態が発生.なんせこの2人とも「~風~」というルールは初体験です.やがて手を挙げたのは千原.でも「胃カメラ風…写メール」とどうしようもない迷走開始.続く有野ももちろん長考,で「ルノアール風吉野家」ってのは豪快というよりは豪華じゃないかな.千原はとりあえず豪快そうな言葉を選んでみるものの「やくざ風女弁護士」はあんまり豪快じゃない.どうやら豪快を諦めたのか有野の「四季折々風プール」はただの不条理に(笑).プールなんだから夏だけでいいというコメントはもっともです.千原の「塁審風一塁手」は紛らわしく,それはフェアではないから豪快ではない.有野の「湯たんぽ風爆発物」は豪快ではないと思うんですが,ともかく危ない.千原は闇の中,「鶴の恩返し風嫌がらせ」はもう豪快でもなんでもない.もちろん有野の「セバスチャン風泥棒」も言葉の面白さのみ.男2人暗闇の道行き,光は見えません….ついに千原,「うちの子風よその子」で自爆し後にばったり,グロッキーに,なんか,なんか痛々しくて見ていられないよ(苦笑)! 最後は有野の「コカイン風刺青」.言葉の選択で暴力はちゃんと含まれてるんですが,組み合わせが良くないなぁ.
結局迷宮の外に出られなかった2人はしょんぼり.自分たちの出来があまりにもあまりにもだったのは,本人たちが一番痛感しているようなのでこれ以上傷口にからしは塗るまい(苦笑).「~風~」とすると普通ならどうしても表現がまわりくどくなり,その分マイルドな表現になるとのことなので次回はもうちょっとテーマを工夫してくださいな.結果,2対4でという考えられない低得点での戦いで有野が決勝に進出.すごくしょっぱくなっちゃったけど,2人がどれだけ苦しんでいたかはよくわかる.だから,無理に山下なんかフォローしなくていい!(笑)
準決勝第2試合は川元と板倉の対決.予選ではもっとも波に乗っていた川元に対するのは,まともだったAブロックで手堅く言葉を作ってきた板倉.若手同士とはいえしりとりのキャリアは明らかに川元が上で,準決勝も予選の勢いをそのまま継承するのかと思ったらまたも悲惨なことに.やっぱりこれはルールがまずいんじゃないか?
テーマは「おしゃれな言葉」.
渡辺の例題は「パリコレ風お百度参り」.ターンとかするんだよね?
手を挙げたのは板倉なんですが,「リス風入れ歯」と最初からコースから外れていくのはどうだろう(笑).川元の「絆創膏風タトゥー」は雰囲気的にわかるんですが言葉としては弱い.板倉の「海亀風マウンド」も海亀もマウンドもお洒落に結びつきにくくどうにも微妙.で,川元の「トロンボーン風喘ぎ声」は言葉としては面白いんだけど,実際のテーマには微妙にかすってる程度なんだよな(苦笑).微妙な打ち合いは互いではなく,空を切っております.そんな中で板倉が放った「絵描き風覗き」は良い.一瞬路線をつかんだのかと思わせるような好手だったんですが….川元の「キューティクル風しめじ」は微妙.カエラですか(笑)? 掴んだかと思われた板倉の「自慢話風愚痴」はおしゃれでもなんでもないよなぁ.そして川元の「ちくわ風付け毛」は,これをお洒落として解釈することが難しいぞ(苦笑).両者目隠し状態での乱打戦.拳は空を切り,相手に当たらない! 板倉の「下駄風パイ」も川元の「犬風サイドカー」も微妙.ただし川元のほうが浮かんでくる画は面白い.板倉の「カブトムシ風T字髭剃り」は審査員のコメントの通り,東急ハンズか,あるいは王様のアイディアあたりにありそうな気が.そして最後の川元の渾身の一撃,「リチャードギアの顔型風出窓」…外から見ると透明なギアが壁に塗り込められているのでナンセンス(笑)!
第1試合よりはマシですがこちらもどうにもしょっぱい試合.「犬風サイドカー」についてはあとからきたと勝俣が賞賛しています.結果,なんと点数は11点で同点! ここで審査員がそれぞれにどちらかを選んで勝者を決めるわけですが,5人が川元を選択し決勝進出.この戦いでの結果もありますが,予選での圧倒的な強さがこの結果を生んだんじゃないかと.
決勝は有野と川元の対決.安定感なら有野,勢いなら川元が有利.しかし戦い以上に深刻なのは直前の試合で冷え込んでしまった場の空気.これを決勝にふさわしい温度に上げてこその竜王なんですが,果たしてどうなることやら.ちなみにほんこんさんはひな壇タレントとして,収録中は一瞬たりとも気を抜いてはいけません(苦笑).
決勝の競技は「しりとりセンスマッチ」.テーマに合った言葉でしりとり.
テーマは「うさんくさい言葉」.
板尾の例題は「CMのあとはあの大物女優がポロリ」.確かに!
とりあえずばればれの嘘をついていけばテーマから外れないということで,先攻した有野は「リムジンあげるわ!」…嘘だ(笑)! これを受ける川元の「ワニ噛んだわ」は今ひとつ弱い.最初は良かったんですがまだ先の戦いのダメージが残っているのか.有野の「わら掴んだら助かったよ」はことわざから取っても今ひとつ.単純な嘘ではなく,その嘘をつく状況まで含めてコーディネイトしないとうさんくささはかもし出せないということで,川元の「4打数5安打でした」は状況が不明ゆえに弱い.同じ理由で有野の「たまに別荘ばっかり売る」も弱い.川元は「ルージュで人を殺した」と地平線の夕日程度の明るさすら消してお得意の暗黒路線に回帰(笑).それに対し有野は「弾飛んできたけど避けれたわ」と深刻な話題を明るくナンセンスに消化.どんどん暗くなる中で輝く川元は噛みつつも,「若い奴は被告席座れよ」と重い単語を積極投入.対する有野は「よーよー,ハクいお母さん連れてんじゃん,じゃん」って朝日のように明るいもんだからどうにも流れがかみ合わない(苦笑).けれど,ここで月が太陽に出会う奇跡が起きます.きっかけは川元の「よくこのペンダント見てくれよ,このペンダントをつければ皆幸せになれるんだこれは全国2億人の人が幸せになってるんだ」ものすごく長いんですが,通販といううさんくさいモチーフをきっちり読み込んだ面白さがあります.ついでに川元がものすごく棒読みなので,たぶん勧誘してる奴は瞳孔開いてるんじゃないか(笑).で,これに応えたのが有野!「騙されるな! オレのペンダントのほうが本物だ!」…素晴らしい! 業者間でトラブル発生です! 元々相手の強さに応えて強くなる性質の川元には絶好の展開.「騙してねえけどごめんなさい」と謝ったら,有野は先輩らしく「一緒に売ろう」! この協力しつつの応酬こそしりとりの華です! さて,川元は「上辺だけですがつきあってください」とむしろ正直な迷回答.有野の「入り口はあちらのほうにあると聞いてますが」は弱い.最後は川元の「ガメラの養殖はじめました」は能天気.ちょっと有野風で楽しいなぁ.
序盤こそ準決勝の雰囲気を背負ってしまったものの,中盤以降での爆発力はさすがは決勝! うさんくさい状況での2人の業者の間抜けな会話は,しりとりの歴史に残してあげたい優れた応酬です.特に川元の必死の頑張りを継承して世界をつくることに協力した有野は,結果的においしいところを持っていったんですけども(笑)さすがベテラン,彼の見事な機転と安定感がなければ,このやりとりは作り出せなかったはずです.
結果.有野15点川元12点で有野が逃げ切り,竜王に! 名人と竜王を隔てるのはやはり安定感.どれほど追い詰められても大外しだけは出さないテクニックが,上にいくためには重要です.とはいえ川元も持ち味の暗黒な戦いぶりを見せてくれたのがうれしかった.
安定感を身につけるにはしりとりに慣れることが大切なので,新しい息吹を吹き込むためには,参加する新人に事前のスパーリングを義務づけたほうがいいんじゃないかな.あ,山下は来なくていい(笑).たかがしりとりではありますが,芸として見せるには鍛錬が必要のはず.それを理解した者によって新たな良い風が吹き込むことを,楽しみに待ちたいと思います.
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コメント
個人的な要望としては、川元と笑い飯と次長課長河本、そしてできれば南海キャンディーズ宮里あたりを集めてしりとり若獅子戦パート2をやって、その上位と板尾、有野、渡辺、Jrの4人と画ヅラ要員の藤崎でまた全国ネットの深夜枠で改変期特番やってほしいですね。そうすれば前回の全国のようなダダ滑り状態は回避できそうな気が…
投稿: pianissimo | 2005.05.29 09:41
すいません、誤「宮里」正「山里」でした。
投稿: pianissimo | 2005.05.29 11:19
若獅子戦も大切なんですが,自分はM-1のように若獅子戦の予選を自信のある奴を広く集めてやって欲しいです.最近だと顔を見て驚くことがあまりないですからね.もちろん,M-1よりはずっと小さい規模で構わないんですけど(苦笑).
確かに前回全国のダダ滑りはひどかったですが(苦笑),あれは出演者の性能よりは緊張の問題のほうが大きいように見えたので,全国放送を何度かやって慣れてもらうか,録画で凄いのをまとめて見せ,生での戦いは竜王レベルの面子を集めていきなり決勝から開始したほうがいいような気がします.
投稿: Rowen | 2005.05.30 00:09
最近のブログでのしりとり竜王戦についての書き込みだと、有野や渡辺の凄さをわかる人が少ないんですよね。「QJ」買ってしまいましたが、活字にするとまた別の楽しみがありますよね。こちらのレビューともまた違う。
以前書いた「作物に害を与える」の初出が、東京MXテレビでやっていた「XEBEC ONLINE 平畠杯スター大喜利」で、まさにミニM-1みたいに東京ダイナマイトやPOISON GIRL BANDとか、有望株でマッチメークをしていて、その位の規模をうまい具合に集められればいいんですけどね…
30分:未だ無冠のJrと、川元など有望な若手で予選(収録)
15分:過去のVTRで竜王タイトルホルダーの実績、名勝負を紹介
45分:竜王タイトルホルダー3名を加えて決勝(生)
という90分編成もいいかもしれませんね。
投稿: pianissimo | 2005.06.04 00:31
笑いのセンスは本当に人それぞれで,ここの他のアニメレビューを見ればご理解いただけるように(笑)自分は明らかにテンションとノリ重視で,地味な上手さはあまり評価しません.だから有野の評価は普通よりも高く,渡辺は少し低くなっているはずです.
見る人によって評価は変わって当然…というかむしろそこが面白いです.人の数だけ違うことが書いてあるのがレビューの楽しさですからね.で,もしどのレビューを読んでも見識が一致しない場合は,即刻自分でレビューを書くべきではないかと思います.
次回,もし全国放送があるならやはり傑作選は流して欲しいですね.ただし川元は相手が強ければ強いほどノるので,若手の中に入れると埋もれる気がします(苦笑).
投稿: Rowen | 2005.06.05 03:56