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陰陽大戦記#31

「誰かの通った自分の道の巻」

ナンカイの守る四国の鬼門を閉じたリクが天神町に戻り,ソーマとともにスバルの様子を見に地流の施設に出かけた頃,ユーマとミヅキは未だに伏魔殿の底にいた.妖怪から逃げる2人がたどり着いたのは花の咲く美しい伏魔殿.ほっとしたのもつかの間,2人の見慣れぬ男がミヅキたちの声を聞きつけてやってくる.ミヅキが飛び出したことをきっかけにはじまる神流闘神士たちとの闘神は2対1で,いかにランゲツであっても不利.焦るユーマに対し,迷いを捨て腹を決めろと言うランゲツ.3年前,ランゲツとの契約では迷いなく「父と同じように皆の笑顔のために戦う」と言い切ったユーマ.しかし,今の彼には迷いがあった.

天流,地流,そして神流.各流派にタイプの異なる主役格が1人ずついて,それぞれの立場と行動を対比させ際立たせようとしている「陰陽」.今回はその中でも地流のユーマが主役.彼の弟の回想を交え,ユーマの進んできた道がようやく語られます.「重なる思い」というサブタイトルは,表面的にはユーマとミヅキ,あるいはユーマとランゲツ,さらにリクとソーマの心が重なる様を示しているはずですが,裏では過去のユーマと現在のリク,さらに過去のリクと現在のユーマの一致をも示してるわけですね.こういうキッズ向けとしては明らかに無駄な凝りっぷりが大好きです(笑).ここまで追いかけてきた視聴者にとっては過去の謎が解消されるありがたい回なんですが,ゴールデンウィークで普段は見ない人の目に触れる機会に主役がまったく活躍しないという豪快な構成は,…どうなんだろうか(苦笑)!

前半.先に今回の主役以外の動向を.まず,前回天流宗家の大降神で四国の四鬼門を失ってしまった地流ですが,彼らの鬼門でのバトルの分析で判明するのは,既にリクはあまりにも強すぎて,地流の当社比3倍はそれについていくためのギミックであったという脅威の事実.普通だと強すぎる敵に対抗するためにギミックを使うのは主役側だから,一般的な展開とは構図が逆転しているわけです.…ここが今回一番の笑いどころという認識は正しいですか(笑)? 同じ地流に属しながらも,3倍の鬼門の力を使ってもナンカイが勝てないのは年齢だとせせら笑う者,経済的な損失を報告する者,仲間を倒され憤る者と行動は様々.その中で瞑目しているミカヅチは一体何を考えているのか.ちなみに120兆ってのは国債くらいの額なんですが,建造時のコストから将来的な効果まで考えても,その損失はいくらなんでもふっかけすぎだと思います(苦笑).
そんな地流が切り捨てた,今回の主役であるユーマとミヅキは未だ伏魔殿の底をうろうろ.流派として符を戦闘以外に使う技術に劣るのか,それともある程度空間の構造を把握しないと道は作れないのか,今のユーマはヤクモのように道をつくる手段はないようです.さ迷う2人が発見したのは平和そうな花畑.ミヅキの寝転がる様子はどうにもかわいらしく,そりゃ言うこときかない彼女を無理して運んできたユーマだって微笑みたくもなるってもんですが,ここはいい雰囲気が持続できるような場所ではありません.
2人の声を聞きつけてやってきたのは神流の2人組.伏魔殿の底は,ここを根城とする神流の真実にも最も近い場所のはず.特にこの花畑は「神聖な場所」のようですからね.恐らくはヤクモが目指しているのはこの場所.程なくユーマたちとの邂逅があるのかも.…ヤクモがミヅキの心を持って行ったら笑うだろうなぁ(笑).ランゲツは相手の強さを警戒.数で劣る上にミヅキというお荷物を抱えたユーマにとって,戦闘はぜひとも避けたいところなんですが.そういう事情を全然読み取ってくれないお荷物ことミヅキさんが大暴走.口を塞ぐ手を噛み,自分を守ってくれる男に「気持ち悪い」とのたまい,「何のために戦うのよ」と喧嘩を売った上に敵の前に飛び出すという嫌がらせフルコースが実に見事(苦笑).もちろん神流が地流の2人を助けてくれるはずもなく,逆に大火のヤタロウと椿のカンタロウが降ろされます.前には2人の闘神士,後には隙あらば自分を噛むお荷物.真の意味でのユーマの味方はランゲツしかいないという逆境で,闘神がスタート.

さて,本来の主役であるリクはどうやら無事に四国から戻ってこれたようです.節季を乱し無関係の人々を苦しめることをやめさせたい天流にとっては,四鬼門を守る式神を倒せば季節が戻るというのは朗報.しかし,しれっと茶の間に上がりこんでプラモデルつくってるマサオミが語るところによれば,北九州の鬼門を守る式神はキバチヨでは倒せない.「宗家のリクだから倒せたんだ」とやたらに主張するマサオミ.四大天の力を使って大降神している式神を倒すのは,宗家にしかできないことなのだ…ってどうして四大天の力を使っていると断定できちゃうんですかマサオミさん.ちなみにマサオミのプラモデルはガンダムカラーなんですが,その描写でガンプラ買おうとするのは余程のマニアだけだと思うぞ(笑).
やたらリクばかり持ち上げる言葉に反発し自分の力を主張しているコゲンタや,マサオミを交通機関として評価しているリクにマサオミの怪しさがわかるはずもないわけで.頑張れるのはマサオミを警戒していたナズナさんしかいないんですが,その疑いすらも弁当ではぐらかされてしまうからなぁ(苦笑).天流側の良心であるナズナさんすら一撃で倒す(しかもしばらく麻痺させる)マサオミ相手では,やはりヤクモとの対面しか化けの皮をはがす方法はないんだろうか.
そんな騒がしい茶の間で,独り静かだったソーマ.自分と同じ立場だったスバルが気になるソーマに対し,リクは今スバルのいる,ソーマが以前いた場所に案内してほしいと頼みます.現状や自分自身を知ることで精一杯だった以前のリクに比べると,明らかに視野が広がっているのがわかりますが,敵の待ち伏せにいかにも遭いそうな地流の施設に気軽に行ってしまうのは組織の長としてどうだろう(苦笑).地流の施設では,覚えていないものの元気そうなスバル.闘神士になりたてだったはずの彼の場合,忘れてしまった期間も短かったはず.それは…幸運なことだったのかもしれない.…闘神士にとっては楽しげで悲しい光景の前で,ソーマが語るのは彼ら家族の物語.ソーマが地流から逃げ出して天流に身を寄せた5話以前に,飛鳥家に起きた物語.
小さな村の地流の社であった飛鳥家.美しい母,快活な兄に泣き虫の弟,そして大きな父.4人家族の3年前は平和そのもので,彼らは今以上の権力を求めることはなく,そのかわり笑顔が溢れていました.明日はユーマが闘神士となる日.家族全員がそれをうれしく待ち望んでいる…そんな幸せな今日を壊したのは,一台の黒塗りの車.ミカヅチの訪問に「全てを話す以外あるまい」と出かけた父は戻らず,神操機を手に父を追った母も戻らず,日々は瞬く間に壊れていきます.2人の帰りを待ちきれずに勝手に式神との契約を結びに行ったユーマ.ミカヅチの支配下に入る前に己の手で封印を切ったのは,ユーマにとっては幸運だったのだろうか?
独りで社の封印を解き,己のものとなるはずの神操機で式神との契約に挑むものの,降りたのはまだ幼さの残るユーマには手に余る白虎のランゲツ.しかし一歩も引かずに交渉を続けたユーマは,ランゲツの問いに対し聞いたような言葉で答えます.望むのは…「この力を.父さんのように,みんなの笑顔のために使うんだ!」 それはつい先日リクがたどり着いた境地.今でこそ天流打倒に力を注ぐユーマの起点が,その敵である愚かな子どもと同じという滑稽さに,いつかユーマは気がつくのだろうか? 自分が笑顔のために戦うことを面白いと感じたランゲツはユーマと契約し…そして今,ユーマは伏魔殿の底でランゲツとともに,神流相手に戦います!
状況は不利な2対1.さらに後には守るべきミヅキ.どうにも厄介なのは力自慢のカンタロウで,あのランゲツの力を凌駕する抜群の膂力はランゲツの技と戦いをぶち壊してはいくけれど,実は問題はそんなレベルの話ではなく,ユーマが抱えている迷いこそが重要.「お前の腹が決まらねば,ワシはどうすることもできん!」

後半.例えば一本道では迷わないように,迷うのは他の可能性が見えているということ.迷うユーマはランゲツの力を引き出すことができず,神流2柱のコンビネーションに対応しきれないだけでなく,離兌離震,必殺必中の裂紙大逆剣すら外してしまう始末! かくなる上はと大降神を覚悟するユーマに対し,ランゲツは一喝.もう一度己の望みを考えてみるように促します.もちろんそれはランゲツがユーマを信頼できないからではなく,ユーマならこの言葉で気がついてくれると信頼しているからでしょう.…神流はそこでユーマを笑う余裕があるんなら,相手が迷っているうちに全力で倒すよう,油断せず頑張るべきだと思います(苦笑).
ユーマが「今」戦う理由は,天流を潰し地流の栄光を掴むためではない.ここには天流の姿はないし,後ろには彼がどうしても守らねばならない人がいる.何のために戦うのか.それはミヅキを伏魔殿から救いたいから.…かけがえのない大切な人を,助けたいだけ.ユーマの内心が願い,それゆえにランゲツの技を乱していたのは大切な人を助けたいという純真な願い.奇しくもそれは,リクがコゲンタと契約するきっかけになった願いと同質のものです.流派章は七の位へと上がっていますが,主役の始点であるこの境地にたどり着いたってことは,ユーマはもう一度,己の道を自分自身で選びなおせる機会を得たってことなのかな.
迷いの消えたランゲツが披露するのはテクニック.初めて見せる「邪皇嶽真錐」は相手の足を止めてしまう特殊攻撃.派手な赤い背景の割にやることがでこをちょんとつつくだけという落差がいいなぁ(笑).相手の力をも利用して厄介なカンタロウを崩し,ろくな盾のなくなったヤタロウをも倒そうとするも…さすがは神流のホームグラウンド.花園の底の妖怪を足止めに使われて勝負は持ち越しに.妖怪から逃げるユーマとミヅキに,そんな2人を守るランゲツ.とりあえずやっとミヅキの心がユーマを受け入れる方向に動いたのは喜ばしいことではないかと.失ったものが戻らなくても,残ったものや,失ったあとで生まれるものは確かにあるはずです.

ソーマが語った物語の最後は悲劇.兄弟がミカヅチのもとで目にしたのは,封じられた父と倒れた母.そのときユーマは確かに,ミカヅチと式神を睨んでいたはずなのに.あの日以来兄が笑った姿を見ることはなくなり,両親を失ったソーマはこの施設で闘神士として見出され,兄の後ろを迷走することに…ってソーマのやたらに高い学歴って,たった3年程度で築かれたものなのか? それはいくら生来の才能があったとしても,制度的・期間的に無茶だと思います(苦笑).
涙ながらに語り終わったソーマは笑顔でスバルたちと遊び,残されたリクは施設の園長と対話.確かにソーマがここまで明るくなったのはリクのおかげ.最初はなじめるかどうか不安でしたが,リクの底なしのボケっぷりに巻き込まれて,誰もが面白くなっていくというのが天流の真の恐ろしさですからね(笑).立場なんかどうでもよく,子どもが笑っていることが大切なのだと言う園長.確かに今,ソーマは救われていると思うんですが,救ってくれたことを感謝されているリクだって子どもなんだけど,それは救わなくていいのか?
過去を共有することによってより心を近づけて帰ってきたリクとソーマを待っていたのは,テルの手紙.予告を見る限りギャグ回のように見えるんですが,そう思って見ていて何度苦汁を舐めさせられたことか(苦笑)! 真面目な感想を書くのは本当に辛いので,次こそ楽をさせて戴きたいと懲りずに期待を抱きつつ!次回に続きます.

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