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陰陽大戦記#34

「誰もが何かを求めてるの巻」

ミカヅチビルでの戦いで伏魔殿の奥に飛ばされたユーマとミヅキは,戦闘と逃亡の末にようやく見知った伏魔殿に到達した.しかしそこに待ち受けていたのは「天流の」マサオミ.マサオミの符の力で硬化したミヅキの前で始まる,キバチヨとランゲツの激しい闘神.以前はただ翻弄されるだけだったユーマだが,ここまでの経験が彼を強くしている.消耗の激しい伏魔殿の中,ろくな休息も取れなかったはずのユーマの印を受けるランゲツは,高速のキバチヨの攻撃を見事に受け止め,溢れんばかりの力で反撃する.ランゲツはやんちゃな猫などではない.敵に対し牙を剥き襲いかかる,地流の虎だ.

陰と陽,大人と子ども,日常と戦闘,敵意と慕情,笑いと悲しみ…それに加えて過去と現在の対比がさらにスケールアップして冴え渡る「陰陽」.物語を回すのは「運命」程度の薄っぺらい言葉ではなく,魂から滲み出る強い「欲」.今回はミヅキを守りたいユーマの欲と,人を騙しても目的を果したいマサオミの欲が正面から激突.その一方で前回のことで己の力…欲の強さに恐れをなしたリクは真面目に部活に参加して一回休み.ちなみに若干1名,一般人にも関わらず天流宗家やその式神すら驚く恐るべき欲を示しますんでお楽しみに(笑).

前半.まずは前回怒りにまかせて主役とは思えないキレっぷりを見せてしまったリク.散々トラウマをつつかれてついに爆発した結果なんですが,まぎれもなくあの破壊衝動も自分の中にあるものだと理解しているからこそ,学校でも未だに憂鬱.リクの存在そのものに関わる深い心の傷の問題なので,式神ゆえに人情の機微がわからないコゲンタに話したってなんとかなるような問題ではない(苦笑).「もう大降神なんかしたくない…」とべっこりへこんでいます.9話や22話ではコゲンタを失うのが怖いという名目で百鬼滅衰撃やそこから発生する大降神を嫌がってましたが,内心こうなるのが怖かったのかもしれません.
ただし,ショックを受けた子どもを放っておいてくれるほど本作は甘くはありません(笑).ボート部の新人戦が近いということでやたらヒートアップしているリュージと,それを遥かに凌駕する欲の魔人がリクの周辺で躍動(苦笑).ここまで殺伐とした闘神の合間でスパイス的に描写されてきたボートが,ついに次回は主役になるのかな. 「コペルニクス的発想」とか仰々しいことを言った上に自分で秘密特訓も準備できるリュージは,体育以外も絶対やればできる子ではないかと.
リュージ考案の特訓はネギダンス再び.笑いどころはリュージに必死で合わせようとするものの面白いほど合わないリク…ではなくて背中のリクの動きが合ってないのがわかるリュージの超常能力.リナのトラしゃんのポーズは恥ずかしげがなくていいなぁ(笑).
さて,天流宗家でちょっと遊んで事態の進行を進ませようと思ったらむしろこじらせてしまった神流.彼らがリクを一生懸命地流にけしかけているのは,宗家でなければ封印が解けないからのようです.1つ封印が解けたってことは,四大天=ウツホの封印ってことなのか? もしそうなら,そんな重要なものを自分たちのために利用していた千年前の天流は一体何を考えてたのやら.少なくともガシンを助けてくれたリクの両親は,そんなことをするような人には見えないんですが.「少し,あいつに借りを返したかった」と呟くガシン.彼が抱えた借りの大きさによって,この先彼が誰のために動くかが決まりそうな気もします.
そしてずっと歩き続け,見覚えのある場所に到着したユーマと,その背中のミヅキ.記憶を失い妖怪が溢れる異郷に落とされたことによる,ミヅキの心身の疲労は激しいようです.ましてやそんな彼女を背負ってきたユーマの疲労はミヅキを遥かに超えているはず.そんな旅はようやく報われて,ユーマが見つけたのは地流が使っていた伏魔殿.以前はミヅキも覚えていたこの場所に対し長く感傷を感じる暇もなく,「天流の」青龍使いが登場だ! やはりユーマは符に関してはやや劣るようで,マサオミの放った「虜」の符はミヅキを縛って硬化させます.マサオミ=ガシンは本作では恐らく最高の強さを誇る闘神士.非常に悪い顔で,ユーマを挑発したことからはじまるキバチヨVSランゲツ.非常に高度な戦いです!
速さに優れるキバチヨと力に優れるランゲツ.しかしそれを使う闘神士の力が増したことによって,キバチヨの高速移動にランゲツは確実についてきます.とどめの直後に生まれる一瞬の隙を確実に掴んで反撃する上に,キバチヨの技を多少食らった程度では倒れずにそのまま向かってくるのが恐ろしい.消耗の激しい伏魔殿で,ユーマの内には一体どれほどの気力があるというのか.彼らを地流の猫扱いしていたマサオミもさすがに見直したようです.
で,2対の式神が激しく鍔迫り合いしていたその頃,先生は己の休暇欲を満たすため,生徒の机を勝手に探って盗みを働こうとしております …この先生やっぱりダメだ(苦笑)! ボート部の新人戦への参加申込書を盗もうとして探るリュージの机の中から,なぜか転がり出てくるタマネギもよくわかりません.奥にあるのをやっと見つけてひっこぬいたものの,タイミング悪く持ち主のリュージが戻ってきてそれを持って申し込みにゴー.…お前ら,真面目にやってる地流と神流に謝れ(笑)!

後半.どんな手を使ってもボート部をさっさと負けさせて休暇を得たい先生は,本屋でボートの本を大枚はたいて大量購入.…うまく優勝すれば顧問に注目が集まってそれをきっかけに華麗なる転身!なんてのは思いもつかなかったようです.バカですね.その気負いは実に半端なものではなく,帰り道のリクとコゲンタがやばい妖怪と勘違いするレベルに到達.人間の強い欲は妖怪と同質でその力の源.神流の花畑から飛び出してきたあの大量の妖怪は,一体どれほどの人の心を反映したものなのだろう…なんてことはこの場の誰一人考えるはずもない.「妖怪は許さないよ!」と天流宗家がしゃきっと構えたのに先生が呪詛の念を放出しながら通過.とりあえずリクがおもちゃみたいなのを構えているのは見られずに済んだのはよかったけれど,あれは本当に先生でいいのか(苦笑)?
天流がおふざけに興じている頃,伏魔殿では地流と天流のふりをした神流の闘神が本格化.単純な攻撃ではなく,印による技の打ち合いになる中,その口でユーマを惑わしはじめるマサオミ.ミヅキに助けられなければ勝てないヘタレと侮辱し,プライドの高いユーマの頭を沸騰させて正常な判断をさせないように仕向ける精神戦です.それを受けるユーマも自分たちをここに送り込んだあの大降神の竜がマサオミのキバチヨだと気がついて激高.そして乱れた心では,爆砕牙点穴だって当たるわけがない.ついにはユーマのことを忘れたミヅキのことを「記憶をなくして幸せだ」とまで言ってみせるわけですが,これもまた逆鱗ではないのか(苦笑)?
竜鱗爆雷,邪気滅殺砲と立て続けに技を放ち,最後は凄い背景の金輪際撲滅戟を食らわせようとするキバチヨ.迫る巨大な戟を前に,記憶を失う前にミヅキが言い残した言葉を思い出すユーマ.忘れないで,勝ち続けて,そして「あなたのことが好き」.自分を守るために身を投げ出した彼女の心と願いを無駄にしないためにも,今男は勝ち続けなければならない! 2人分の願いを,欲を込めて切るのは離坎坎兌,技は凶闘気無限暗黒! 身体強化の技によって漲る力は戟を止め,さらに裂紙大逆剣がキバチヨを襲う! 「女神は貴様に振り向かない!」と猛るユーマに対抗するようにその残忍な本性を現すガシンは,地流の雑魚に対し大降神をぶつけます!
しかし,ここでなんとオニシバがタイザンとともに闘神に乱入! 「貴様が青龍使いか!」とマサオミに向かって銃口を向けます.ミヅキを助けるためにとユーマたちを伏魔殿の外に逃がすタイザン.「これ以上来るなら,地流のタイザンが相手だ!」とか言ってくるので,これにはさすがのマサオミもびっくり.なんたってタイザンは….
そう.タイザンはガシンと同じ神流3人組の残る一人.天流の側で情報や感情の操作を担っているのがマサオミだとすれば,地流の側で同じことをやっていたのがこいつだったわけです.さらに伏魔殿の中に秘密を抱える神流にとっては,地流の探索がそこに及ばないように手を回すのも重要な仕事だったのではないかと.彼はユーマのデータを調べている最中に,天流宗家とユーマの能力パターンがほぼ同一であることを発見し,それを知らないマサオミがユーマを倒すことを止めに来たのでした.飛鳥ユーマこそが真の地流宗家かもしれない…これはミカヅチの図った罠なのか?
ちなみに今日のミカヅチはユーマたちの母と和やかに会話などしております.彼女を気遣うその様子は穏やかで,決して好戦的なものは伝わっては来ない,しかも立ち上がったところでめまいに苦しむミカヅチ.何かの病か,衰えか,あるいは分不相応な強大な力を奮ったことによる副作用なのか.

地流と神流に激震の予兆が示されていたその頃,天流はどうしようもなくのん気のままでした…(苦笑).夜中まで部屋でボートについて研究してきた先生が示す大技こそ,顧問の強権を利用したポジションチェンジ! これまで一同が練習してきたポジションを全部入れ替えることで台無しにする作戦です.3万円分の気合で船首と船尾を入れ替えたなら…これがなぜか面白いようにうまくいく(笑)! トラさんのポーズも(コゲンタの意思はともかく)見事に決まったし,どうも勝利の女神はここに微笑んでいるようで,神様って本当に気まぐれです.
さて,後半の露見によっていきなりユーマの存在が重要なものとなり,この先地流には激震が訪れることになりそうです.封印を壊す力を持つ宗家?をミカヅチが下っ端として扱っていたのは,自分の宗家としての地位を守るためか,あるいは物凄いスパルタ教育の一環だったのか? ユーマたちの両親がミカヅチにやられたのは,天流と手を結ぶべきという主張が通らなかったためなのかそれともユーマの才能を巡っての交渉がこじれたのか? 人の心が求めることと実際の行動は食い違うことが多々ありますが,少なくとも神様ほどは不条理ではありません.それが正義かどうかは別としてミカヅチにだって行動の理由はあるはず.未だ不透明なそのあたりがこの先,明らかになっていくんだろうか….ところで,もしユーマが宗家だとしたら,封印を解かせるには地流の鬼門を叩かなければいけないけれど,神流はどうやって現在地流所属のユーマをそう仕向けるんだろう? 次回に続きます.

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