陰陽大戦記#38
「抱えた闇にこぼれた涙の巻」
地流のクレヤマとコンゴウを倒し,東北の四鬼門を消したリクとコゲンタ.百鬼滅衰撃の三連撃の反動で倒れたコゲンタの側にいるリクに近づき,月の勾玉を求め,神流闘神士・ガシンとしての本性を現すマサオミ.もう闘うことなどできないコゲンタを救うために,リクは月の勾玉を差し出してしまう.去り際のガシンが語るのは,千年前に天流を襲ったモノのこと.ヨウメイの母方の伯父に当たるライホウ.謀反の疑いをかけられ幽閉された天流宗家は,地流に利用されて千年前の天流襲撃に荷担した.大降神してヨウメイたちを襲ったあの影は…ライホウと契約したコゲンタなのだと.しかしリクには悲しんでいる時間はない.月食までにミカヅチを倒さなければ地上は地獄と化すと警告し,マサオミとキバチヨはリクの傍から去っていく.
1つ1つ消されていく四鬼門と,それとともに壊れていく四大天の封印.しかし肝心の天流宗家は式神と心がすれ違ったままで力が足りず…事を急ぐ神流がついに繰り出した大技がリクとコゲンタを襲います.明らかになるマサオミの正体と,思いがけないコゲンタの罪! ショック療法とはいえあまりに刺激の強すぎる展開に泣きっぱなしの闘神士と,既に傷つけてしまった自分の手ではどう頑張っても救えないことを知って打ちのめされる式神という実に切ない展開をベースに,ユーマ対タイザンやヤクモ対ショウカクのハイテンションバトルが存分に挟み込まれます.この心底真面目にやるべき回にすら根性で笑いを組み込んでくる演出恐るべし(苦笑).ただしベースはもちろんシリアス.特に終盤の展開は感動的な演出に騙されそうなんですが,…やはり納得が行きません.
前半.今回はリク・ユーマ・ヤクモの3元で物語が同時展開.まずは九州のユーマ対タイザン.自分とタイザンの正体を知り,タイザンは敵なのはまあいいとして,地流宗家のほうは受け入れ難いユーマ.彼のミカヅチに対する忠誠ぶりは相当のものです.しかし真の宗家を隠すために無理をしてきたミカヅチはもう終わりであり,我らの手に落ちたと言い切るタイザン.あの苦しげな様子はやはり無理ゆえのものだったんですね.
そして始まる霜花のオニシバVS白虎のランゲツ.オニシバの降神シーン,演出がノリノリだ…(苦笑).契約と人情秤にかけりゃあ契約が重たい式神道となぜかモノクロ映画風.たった1度きりの見せ場のためにここまで頑張ってしまえるところが,この作品の凄さでしょう.オニシバの攻撃は概して直線的.いきなり闘神士を狙う見事な神流ぶりを示しつつ闘神スタート!
その頃,ヤクモ対ショウカクも激戦開始.リクやユーマの戦いが神流の望むものであるのに対し,ヤクモとの戦いは彼らが望んでいないという点が異なります.操られまくっている他のおばかさんたちとは違い,神流の計画を根底から覆す可能性があるんだから頑張れヤクモ! 降ろされたのはショウカク側はおなじみの大火のヤタロウ,そしてヤクモは消雪のタンカムイ.毎度ながらヤクモの印はとんでもなく高速で,声優が合わせるのがきつそうだ.明らかにヤクモより格下のショウカクは大降神,ヤタロウは巨大なヤタガラスに.
そして青森・恐山.コゲンタはとうに限界を越えて闘う力なし.激しい戦いを乗り越えたところで,マサオミにいきなり造反されて動揺しどうしていいかわからないリク.月の勾玉を要求され,あっさりそれに従いそうになるリクのバカを必死で止めるコゲンタ.素直すぎるこいつを放っておいては,悠長に気絶もしていられない….マサオミ曰く,千年前に天流の社を襲ったのはランゲツではなく,コゲンタ.当のコゲンタには覚えがないものの,「真実は神流のみが知っている」とマサオミは言い切ります.
リクと同じように,もう1つの名を持っていたマサオミ=ガシン.とはいえマサオミの場合は,読み方が音か訓かの違いだけのようですが.動くことすらつらいはずなのに,必死でキバチヨに立ち向かうコゲンタ.しかし闘えるような状態ではなく,逆に捕まってしまうのが闘神士を守る式神としては非常に情けない.さらにコゲンタを人質に取られてしまい,耐え切れず特段の葛藤もなしにあっさり勾玉を渡すとマサオミに泣きついているリクも相当情けない(苦笑).天流宗家の証と引き換えにコゲンタを助けてくれと懇願するリク.たとえ何がどうなろうと,コゲンタとの絆を失うことだけは耐えられないってのは…本当にひとりは嫌なんだろうなぁ.勾玉と引き換えにコゲンタの身は助かったものの,ガシンが2人に告げる過去が,式神の心とプライドを切り刻みます.
それは千年前の,ライホウという天流闘神士の物語の断片.天流宗家でありながら謀反の疑いをかけられて幽閉された彼は,リクの母の兄.伸びきってはいるもののリクそっくりの髪の流れです.髪型だけでなく,宗家としての力も母方の血に由来するんでしょうね.牢の中のライホウの虚ろな目は,何かを間違ったリクの未来を見るようで怖い.力は抜群でも人が良すぎるってのもリクに似ていて,だからこそ彼の末路がリクに重なりそうなのが怖い….地流に騙されて利用され,天流襲撃に荷担したライホウ.そのライホウに使役されたのが大降神コゲンタだと言うマサオミ.反論しようにも,記憶のない彼らは言葉を持ちません.
しかし落ち込んでいる暇はないと,もう既にドツボに落下している2人に最後の誘導をかけるガシン.月食までに倒さなければミカヅチは怪物となり,地上は地獄となる…神流が語るこの言葉は真実? ミカヅチ討伐を「宗家として最後の仕事」とさらりと言うガシン.神流にとって天流宗家の存在が必要なのは,ミカヅチ討伐までってことか.そのあと,ユーマを含め用済みとなる宗家は一体どうなるんだろう?
ついに天流側から離れていくガシン.「結構楽しかったぜ」という言葉くらいは真実だと思いたいけれど,闘神石で作った鬼門を通じ消えていく2人の姿は,もはや戻るはずもない.
後半冒頭の視点の移動はなかなか見事.天神町の天流の社,現在の天流の拠点にいるのはお留守番のナズナとホリン.暗い空と狂う節季のバランスに危機感を感じているところに,ちょうど良くテルが参上! 妖怪出現のご報告に(今更)やってきたテルに,リクの様子をみてきてお願い,なナズナ.元々惚れているテルにとってはもちろんお安い御用なのですが,彼女の心は既に別の人のものですよテルさん(苦笑).ここにソーマやリクがいないからこそ!テル様だけが頼りなのです.
ナズナが心配しているソーマは,ミカヅチビルの近くの病院らしき建物の中から,母と一緒にミカヅチビルを観察中.ソーマの肩に手をおきビルを見る母の目は聡明.式神を失い記憶も失ったはずの彼女は,一体何を知っているんだろう.
視点はそのミカヅチビルの中へ.ここが現在の地流の拠点.天流の拠点から地流の拠点へとスムーズに切り替わっていく視点が実にいい.中ではウツホを封じるための必死で舞うミカヅチですが,膝から崩れるほどに消耗.それを心配して近づくミヅキへの「来るな」という叫びは,彼の残り少ない正気を振り絞ったものだったのか.己の娘を伸びる髪で繭の如く包むミカヅチは,既に人ならざるものに変わりつつあるようです.
さて,前半展開していた2元のバトル.まずはヤクモ戦.タンカムイに代わって降ろされたのはなんだか異様によく喋る芸人こと黒鉄のリクドウ.火性のヤタロウに対するには水性のタンカムイで相剋を狙うか,少なくとも同属性のタカマルで対等に勝負するべきと思うのですが,よりによって属性的には明らかに不利な金性のリクドウを降ろすヤクモの意図がまったくわからねえ(笑)! …シリアスが耐えきれなかったのか? 立ち位置に移動して繰り出す技も,突込全開大手刀.「なんでやねん」とツッコミまくるこんな恥ずかしい攻撃にやられたら,別の意味で闘神士として再起不能になりそうです.
結局このバトルはいつもの五芒星から五重塔,そして刹管相輪串刺で完了.リクドウを降ろした意味は「お遊び」以外にはやっぱりないのか…確かにこんな式神と契約してるんだから,ヤクモ自身も相当面白い奴ではあるんだろうけど(苦笑).消えたショウカクが言い残したのは,復活目前のウツホが望むのは戦いのない極楽の世…けれど,ただひとりでそれを成そうとした時点で,それは皆が笑顔でいる世界とは違うのでしょう.
さてユーマ戦.銃をモチーフとした直線的な攻撃のオニシバと,力を面に近い形で振るうランゲツのバトルは白熱.オニシバの神速血盟蹴の右下の速度計なんて実に見事な悪ノリなんですが,爆砕牙点穴と真正面からぶつけられたら視聴者だって燃えないわけがない.そんなバトルの横で語られていくのはミカヅチの秘密.宗家の力でなければかなわぬ封印を維持し続けるため,逆式まで起こしていたことが判明! このあたりは漫画を読んでいるかどうかで理解度に差が出そうですが,ほどなくこちらでも十分な説明がされるに違いない.ウツホはミカヅチが取り込んだ式神を操り,今まさにミカヅチそのものを取り込もうとしている.タイザンが,ミカヅチがウツホの手先に成り下がるとユーマに吹き込んでいるところがどうにも巧妙.ウツホにかかった封印を解くため,天流地流,両宗家の力でミカヅチを倒してもらうための地道な誘導にものの見事にひっかかっていくユーマが情けない.もうちょっと自分の頭で考えろ.
オニシバの指先ミサイルこと弾丸暴風雨を邪五行滅衰で打ち消すランゲツ.闘神士としての格の違いはこちらでもあまりに大きく,タイザンはオニシバを大降神.力のインフレーションは激しく,最初に比べると随分と大降神もお安くなったものです.けれど大降神で一度失敗しているユーマは,ランゲツを失わぬために印のみでの大降神征伐を敢行.凶闘気無限暗黒から爆砕牙点穴の連打へと繋げるコンボ攻撃.3秒で108発,大降神に比べれば小さすぎる体から発された強い拳は,大降神オニシバを(タイザンの狙い通り)叩きのめし,その力は四鬼門を通じて四大天の最後の1体を壊します.
残る鬼門は大鬼門のみ.神流の計略どおりに封印は壊れ,天と地の封印を揺り動かし,ウツホが動き出す….負けたはずなのに消えてしまったショウカクや,式神を失ったはずなのに再び流派章がその腕に戻ったタイザンの行方も気がかりです.地流闘神士と式神に関しては実に贅沢に消費してきた本作ですが,人数が少ないこともあるのか神流は優遇されているようで.
そしてリクとコゲンタ.戦闘こそないけれどミカヅチの次くらいに大変なことになっているのがこのコンビ.天流宗家の証を渡し,裏切った仲間から実は仇であった仲間を救ったリク.動けないコゲンタを鬼門から出た妖怪から守ろうとして…なぜか妖怪,この無力なコンビを素通り.これは情けなさに同情されているのか,それとも敵意を向けられなければ攻撃されないのだろうか.とんでもないことをした,取り返しのつかないことをしたと涙を流すコゲンタ.リクが抱える暗いものをなんとかするどころか,その暗いものの原因がコゲンタ自身だなんて.出会う前から裏切っていては,信頼してもらえるはずもない.だから契約を解除して名落宮へ落としてくれと願うしかないコゲンタに,リクは今まで,言えずにいたことを話します.
父も母もリクのせいで,天流の社に連れ戻されて苦しんだ.「…でも僕と離れることができて,たぶん,安心したんだよ」.千年前に天流の社が襲われたとき,父はヨウメイに神操機を握らせ母は千年後の世界に送った.ヨウメイはそれを父に戦いの道具にされ母に捨てられたと考えた.両親にそうさせたのは自分に力があるからで,宗家の力を持つ自分さえ傍にいなければ,両親が苦しむことはなかった…リクはそう考えているのでしょう.涙を流しながら苦しげに笑い,どう見たって一番の被害者なのに自分から罪をかぶった上,それを哀しくて恥ずかしいものとして一人で抱えて来たというどうしようもない愚かしさ.さらにコゲンタにまで「心を開かなくてごめんね」と謝った上に「今も信頼している」だなんて,お人よしにも程がある!
己のパートナーの底なしの暗さとお人よしぶりを目の当たりにして,それは間違っていると涙ながらにリクを叱るコゲンタ.本当はコゲンタをうらんで怒り,思い切り殴らなきゃならない…ってのは見事に視聴者の気持ちを代弁する叫び.けれど泣き笑いのままに柔らかく拒否され,「僕は君を恨んだりしない」なんて言われてしまったら,コゲンタは一体この負い目をどこに持っていけばいいのか.背負う必要のない罪を背負うことは,自分自身に害を加えることに他ならない.それは罪なきものを幽閉するのと本質的には等価だというのに.
悪いのは力,そして強い力を悪いことに使おうとする人たちだというのが今のリクの結論.宗家なんかどうだっていいけれど,宗家の力は「皆が僕みたいに悲しい思いをしないように,正しく使わなきゃいけないと思っている」…抱える必要などないはずの罪を一身に抱え,救う義務などないはずの人々を悲しみから守ろうとする,本当に愚かなリクの決意によって流派章は七へ.
大泣きして謝りもはやリクに頭が上がらなくなったコゲンタと,心の中の黒い部分を吐露してすっきりしたらしいリクは唯一残る大鬼門に向かうことに.テルさんこと交通機関もちょうどよくやってきて,ついに次回はミカヅチビル再びとなるようです.予告でコゲンタが言っていた通りにごちゃごちゃはこの回で終了? でも,大鬼門の破壊についてリクは天流宗家ではなく太刀花リクがやるべきことだと自負してるんですが,そこまで思い込んでやったことが完璧に裏目に出たとき果たして耐えられるのだろうか.…ああ,なんかまだもうちょっとごちゃごちゃしそうだ(苦笑)! ついにお約束の,でもおもちゃを売る気があるとは到底思えない時期でのパワーアップも見所.「陰陽大戦記」最終章の幕が開く,次回に続きます.
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