第10回しりとり竜王戦・予選
時には愛を,時には憎しみを受け渡す人類最大の武器…言葉.その言葉を無意味にもてあそぶ優良企画「しりとり竜王戦」.前回の開催は4月下旬,その前が2月だから偶数月開催ってことになったのかな? ちなみに前回までの歴史についてはこちらでも下のほうよりご覧下さい.今回は実力者揃いのトーナメントで壮絶な戦いが予選から炸裂! 天然がいないために序盤からハイテンション.その激戦に巻き起こる番狂わせの連続と若手の台頭,そして今なお残る藤崎のダメージ(笑)が今回一番の見所です.ちなみに命はかかってません.
今回の出場者は板尾(130R),川元(ダブルブッキング),渡辺(ジャリズム),板倉(インパルス),河本(次長課長),千原弟(千原兄弟),松本(レギュラー),濱口(よゐこ).芸人縛りのエピソード10は,予選の段階からガチンコだ! どの名人も一癖も二癖もある個性の持ち主ばかり.しりとりというルールの縛りの中で,いかに個性を見せていくかがポイントになるのは当然なんですが,今回,高レベルゆえに個性だけでは勝利の風が呼べないことが如実となります.段位表でトムに並んで初段に顔を出した藤崎.これは大荒れの予兆? 司会はいとう,勝俣,大林.全員笑いに関しては厳しさを持つ面子なので,点も普段に比べると厳し目に.これだとウケる笑いが先鋭化しすぎる嫌いがあるから,一般視聴者レベルを審査員に1人は入れておいてほしかった(苦笑).
Aブロック予選は板尾・川元・渡辺・板倉.全員おなじみの強豪ばかり! このレベルといきなり闘うことになった新人板倉の顔色が悪くなるのはよくわかる(笑).それに対し,周囲のレベルが高くなればなるほどテンションを上げていく川元には有利な条件です.渡辺は前々回の藤崎の大荒れを思い出してトラウマがうずき,板尾は適当なトークを完結させず千原にフッてみるという余裕ぶりです.
1戦目は「しりとりツバメ返し」.「~だが~」でしりとり.
テーマは「ミステリアスな言葉」.「モスクワだがニーハオ」からスタート.出稼ぎ?
己のペースで他の名人を押しつぶす板尾が当然のように先行し,「お父様の形見だがブラ」と小当たりでスタート.それに続く川元は「ランドセルを背負った小学生がこちらを見ているのだが,鎖鎌を振り回している」と持ち味の真っ黒い言葉で場を染め上げます! こっちに来る,こっちに来るよ! 渡辺の「ルールブックなのだが丸文字」はうまい.でも今だとギャル文字のほうが… そして新人板倉,「しめじなのだがデザートの欄に書いてある」…これは文句なく上手い! あれだけ緊張していたんでどうなることかと思いましたが,テーマにぴたりと合ったお手本のような解答です.続く板尾の「ルノアールの絵を譲り受けたのだが急に色弱になった」…絵を思い浮かべればニュアンスはよくわかるけれど,コメントしにくいよ(苦笑)! 来週お詫びから始まるかもなぁ.川元の「頼もしい人なのだが,木の汁を吸う」はストレートながら不条理で良い.本性はカブトムシですか? ここまでいい当たりが続いている中,渡辺の「牛なのだが,模様が,馬」…それミステリアスか(笑)? わけのわからない前走の崩れをモロに食らったのが気の毒な板倉.「まぶしい宝石なのだが鼻くそがついている」…あああ,こっちもやっちゃった(苦笑)! どうせやるなら「できている」くらいまでいかないと.前走の迷走を受けた板尾の「ルームメイトだが殺人鬼」…はミステリアスなんだけど当たり前すぎて弱い.そして川元の「気が効く人なのだが腸を引き摺っている」.じわじわと来る真っ黒い世界.でもミステリーよりはサスペンス.前回失敗した渡辺は奇声を上げつつ,「瑠璃色のペガサスというあだ名の男なのだが半ズボンです!」と無理やり気合で押し切り,前回大ゴケした板倉は「すまない留守を頼むといわれたのだが,全然出かけていかない」と見事に持ち直してみせます.
名人も司会者も視聴者も(笑)全員中盤板倉の「鼻くそ」にひやりとした一戦でありました.これで回答が終わっていたら,板倉の芸人としての評価に傷がつく可能性すらあったので持ち直してよかった.大人の笑える下品ネタというのは,かなり難しいものなんだよね.
2戦目は「しりとりイマジネーション」.テーマのイメージでしりとり.
テーマは「最近のジーコの寝言」.…で例題言う前に手を挙げる川元(笑).それはオフサイドだ!
例文は「ワールドカップ・Fカップ」からスタート.
オフサイドに萎縮した川元からさっと奪っていく板尾竜王はさすが.でも「プチトマトは絶対残すな!」は微妙.食餌指導? 川元の「仲代達矢,渡哲也,ジーコ」ってそれは一体どんな状況? この良回答を受けた渡辺,「こんばんはジーコの悩み相談室です」…言ったあとで自己嫌悪に陥るくらいなら言うなよ(苦笑)! 板倉は長考の末,「素の状態ではジーコ,点々を取ったらシーコ」じわじわ来る面白い手.そして板尾,「コーナーキックで点取るやなんて,オカマのするこっちゃ」…それ,ジーコが否定していいのか(笑)? 川元の「槍と盾をください」は守勢に回るジーコの心境だろうか.渡辺の「いいよなぁ,なでしこジャパンは」もなかなかいい.選手が男性ばかりじゃうれしくないってことなのか….板倉の「諮ったな,マラドーナの奴め」は無理やり単語でサッカーに.板尾は長考の末に「名選手はサロンパス2枚まで」…弱いなぁ,川元の「テロップ出せよ」はジーコが夢の中で試合を見ていて,そのままだと敵の名前とかポジションがわからなくて,というところまで行くと面白い.渡辺の「ヨーグルトは日本を応援します」は大転倒なんだろうけど,テーマによって救われてます.板倉の「すいませんでしたうちの柳沢が!」はマラドーナと同レベル.板尾は長考し,「ガードマンさんに教えてもらうな」.…コント風景まで思い浮かべると笑えるものの,言葉自体の迫力は弱い.
川元の黒い風がコンスタントに好調だったのに対し,板尾竜王は明らかにテーマに苦しんで不調.渡辺は普段は非常に手堅い芸なんですが今回は物凄い大振りが目立ち,板倉は転がりつつも頑張った…という印象.勝俣が指摘した「何人かのパスミス」については渡辺と板倉が手を挙げています(笑).
しかし結果は,11,10,14,11.好調に見えた川元が意外と点が低く,大振りながらもぎりぎりかすらせていった渡辺が14点で決勝進出! そして投票で上に進んだのは11点の板尾.板倉も素晴らしいファイトぶりで,あの「鼻くそ」さえなければもう1つ上にいけたかもしれません.
Bブロック予選は有野・松本・千原・河本.Aブロックに比べると多少天然味が加わった一堂です.初出場で素晴らしい姿勢,板倉に負けず劣らず緊張しているのが松本.この場で新しい自分を捜します.前回藤崎にぼろぼろにされた河本はリベンジを誓い,千原は板尾に振られたトークを,子分として適当なところでまたもぶん投げ(笑),そして有野は嫁のことを言われて照れております.私生活が充実するとダメになる芸人は確かにいるわけですが,有野の場合はどうなのか.
1戦目は「しりとりツバメ返し」.「~だが~」でしりとり.
テーマは「少しテンションが下がる言葉」.「レッサーパンダだがずーっと立ってる」からスタート.
Aブロックに負けずこちらでも主導権争いは激しいわけですが,手を挙げた3人のうちなぜか最後に上がった河本からはじまることに(笑).回答は「ルービックキューブだがシールがない」と小当たり.続く有野の「イタリアンを食べに行ったのだが,シェフがインド人だ」もまあまあ.そして姿勢のいい松本が! 「田んぼだが,水がない」…子どもが来た(笑)! 天然だとありがちな芸風ではありますが,この凄い面子の中だといやに目立ちます.千原の「いカ,メラなのだがうちのオヤジは胃キャメラという」はたどたどしく弱い.これに続いた河本,「うちにずっといるのだが裾が濡れている」…これは凄い! テーマとの親和性も申し分なし.審査も騒然とするほどの実に強い手だ! この強さを受ける有野,「ルーマニアに言ったのだがTUTAYAが一杯だ」はさすがに見劣り.そして子どもらしく(笑)頑張る松本の「大嫌いだが好かれてしまっている」はらしくてよし! 千原の「ルイビトンだと言い張るのだがLとBだ」は,文字に起こせば面白さがわかりやすい(偽物なわけです)ものの言葉だけでは弱い.さっき大当たりした河本は「ダイスケという名前だが,マモルというバッチをつけられた」と子どもネタに引かれてますね.続く有野の「助けてもらったのだが突き落とした人だった」はかなり良い.どんな2時間サスペンスドラマなんだろう.言葉の応酬に苦しむ新人松本,「他人だが,…僕のにしたかった…」子どもがそのまま出た! これは大人の回答としては恥ずかしい! 続く千原の「タニマチなのだが名前を間違えてくる」はまとも.実際に兄と名前を間違われたりはしてそうだ.
最初は主導権の取り合いになったものの,後になるほど長考になる傾向が見られました.目立つのはやはり河本の歴史に残る大当たり.それと,常に松本が「子ども」というキャラを押し出して,点はともかく,おなじみの有野や千原の個性を見事に打ち消してしまってます.
2戦目は「しりとりイマジネーション」.テーマのイメージでしりとり.
テーマは「先日潰れた地方のスナックの名前」.「おてんば小町」からスタート.
あの大当たりで波に乗った河本,今度こそ最初に手を挙げて「ちょこっとレンジ」.審査員は電子レンジと解釈してますが,オレンジレンジでもその中途半端なエロぶりが想像できて面白いぞ(笑).有野の「地元民のみ」は客を連れていけないので不便だ.そして松本は子どもなりに「みんなの,……もり」そりゃ潰れるさ! だってこの店,酒出ないもん(笑)!スナックの名前にこれを持ってくる松本.己のキャラを完璧に把握しています.千原の「リストカッツ」は潰れた理由が気になるなぁ.刑事事件だろうなぁ恐らく….調子がよかったはずの河本,ここで「釣った魚をおさし…つ,釣った魚を逃がしました」えー(笑)! まず,そもそもスナックの名前じゃないし! そりゃいとうにこっぴどく叱られて当然だ.続く有野は悩んで「他人の店」.ニュアンスは伝わってくるんだけど弱い.松本の「世界の…ナオミ」は子ども妄想ぶりが見事.千原はリストカッツの姉妹店らしき「民事」.入りたくない.これにかぶせる河本の「執行猶予」はライバル系列店? そして有野の「与謝野晶子の教え子の飲み屋」は店名としては今ひとつだけど,意外と繁盛しそうな気がするのだがどうか.
勝俣は松本の提案するスナック名に流れる同じ子どもっぽさに大ウケ.千原の黒い系列店もなかなかの高評価を受けてます.それに比べると前半の良さを崩してしまった河本と,濃い展開に持ち前の明るさ・能天気さを生かせなかった有野は厳しい.結果は8,7,9,13! 有野竜王がなんと8点で予選で脱落.勝ち残ったのは2戦とも安定していた9点の千原と,1戦目に大当たりを出した13点の河本! 松本は己のキャラを生かしたファイトが光ってましたんで,テーマに恵まれればもっと上にいけるはずです.経験をさらに積んで頑張れ!
以上予選で勝ち残ったのはAブロック渡辺・板尾,Bブロック河本・千原.この4人で本戦が行われたわけですが,その顛末については次の記事に続きます.
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コメント
毎回楽しくレビューを読ませていただいています。ちょっと気になったのですが、第10回のレビューで「初参加の板倉」とありますが、彼は第9回にも出ていたのではなかったでしょうか。勘違いでしたらすみません。
投稿: しりとり大好き | 2005.06.26 05:53
ご指摘ありがとうございます.うわー,思い切り消し忘れていましたよ(苦笑)! 確かに第9回にも出ていたのは間違いないですというか自分でも書いていたし.
そんなわけで該当部分をさらりと削除してみました.板倉ファンのみなさん,ほんとすいません.
投稿: Rowen | 2005.06.26 16:16