金色のガッシュベル#118
「炸裂!視覚的暴力の巻」
ガッシュとウマゴンを公園で遊ばせ,次なる脅威に備えて謎の遺跡についての研究に励む清麿のところに,思いがけない客,父の同僚であるダルタニヤン博士がやってきた.早速石板をなくしたことについて詫びるダルタニヤンだが,清麿にとっては既に解決した話.しかしそんな彼の淡泊な反応になぜか怒り出すダルタニヤン.研究対象を失った喪失感を力説した上,清麿の研究対象を奪ってやると宣言して姿を消す.
その直後,恵とサンビームからティオとウマゴンが姿を消したことを知らされた清麿.3人で公園にいくのだがガッシュの姿はなく,かわりにダルタニヤンのメッセージが残されていた.ガッシュたちが埠頭にいることを知ったパートナーたちは,大切な相棒を助け出すために大きな客船に踏み込んだ.
穏やかな日々の中,まだまだゆっくりと仕込みを続けている「ガッシュ」.今年度に入ってからやたらと出来がよくなったので,楽しさ重視のオリジナルの日常話だって見所たっぷり.ギャグとしての面白さも強く求める客にとっては実に満足度の高い話だったりします.今回はゲストのダルタニヤンの変態ぶりを鑑賞する回だと思うのですが,この構造なら通常はガッシュたちちびっ子が主役になるはずなのに,なぜか主役をパートナーたちが担当.思わぬアクションを強要される保護者たちの姿が実に哀れです(笑).
石板魔物編をくぐり抜け魔物相手なら相当強いはずのガッシュとウマゴンなんですが,今日も公園で快調にナオミちゃんの襲撃を受けてます.彼女の今日の得物はヘビ.ガッシュをいじめるためとはいえ,あれほどの量を集めるのは並大抵の苦労じゃなかろう.服の中に蛇を入れられ薮の中で全裸になったりその状態で大量のヘビに囲まれたりと絶体絶命の連続するガッシュ.そんな中で叫ばれる「どうして清麿は助けてくれないのだ?」という絶望的な問いかけが今回のテーマ! …それはたぶんガッシュを優しい王様にするためじゃないのか(笑)? そんなわけで追い詰められたガッシュとウマゴンを救うのは「ま゛ー」という叫び.変態が,海を渡ってやってきた!
さて,高嶺家ではそんな変態が近所に出没していることを知らない清麿が資料の研究中.近い将来ガッシュたちが困らないように真面目に備える彼を訪れたのは,煙草臭くてスーツを着た変態.イギリスのプロフェッサーダルタニヤンでありました.清麿の父の同僚で以前イギリスに行ったときに顔を合わせた,今となってはかなりおなつかしい人で…そのときからコスプレマニアの変態であるという設定には何の揺らぎもありません(苦笑).
わざわざそんな変態がスーツを着てこの家を訪れたのは,清麿の父と一緒に調査していた石版がなくなったことを詫びるため.確かにふざけた格好で謝られても対処に困るものなのでスーツ姿は正解だと思うんですが,実は清麿にとっては今更のこと.あの石版に封じられていた連中はいろいろあったものの皆魔界に戻っていったはずなので,「あの石版のことは,全部終わってるんだ」と明るい顔で返答.
しかし,ここで清麿がまったく執着しなかったのが逆にダルタニヤンを怒らせます.研究対象を失った研究者の悲しみというのがダルタニヤンの中には相当大きくあるようなんですが,研究者でもなんでもない奴が同調できるわけもない(苦笑).そんな清麿のつれなさにエキサイトするダルタニヤンはスーツを脱いだ上,そのプライドをかけて清麿の研究対象を奪ってやると宣言し離脱! 部屋の窓を突き破って帰ったダルタニヤン.ときどきザケルとかで壊れている気はするんですが今回は清麿に非がないので,弁償代はちゃんともらったほうがいいぞ.
研究対象を奪うと言われた割に部屋からガラスが1枚消えた以外は(笑)特に何もなくなってはいないことを不審がる清麿のところに相次いで入る凶報.恵からはティオが姿を消したと連絡があり,サンビームもウマゴンがいないとやってくる.状況証拠の積み重ねから推測される結論は,公園に置いてあったオルゴールのメッセージによって完璧に裏付けられてしまいます! …直前にダルタニヤンマークのトラックが公園の近くにあるあたりの芸が細かい.このトラックでオルゴールが配送されたんだろうな.オルゴールの中から出てくる回るコスプレ博士人形.大事なあの子たちを預かったので返してほしくば埠頭まで来いという犯行声明の末に,お約束通りにちゃんと爆発.器物損壊,誘拐に爆発物持込,博士はこの来日でいくつ罪を犯せば気が済むのだろうか(苦笑).
博士の犯行声明の通り,港には大きな客船が停泊中.丈夫な魔物の子はそう簡単に行動不能になったりはしないはずなんですが,何分相手が想像の斜め上を行きかねないので清麿も警戒.特に連れ去られて石版の代わりの研究材料にされるのは洒落にならないため,並みの人よりはちょっと場数をこなした程度の少年少女といい大人は丸腰で船に入ることになります.
3人の被害者が踏み込んだ船の中で次々出て来る全てのものが,ここがダルタニヤンの領地であることをどうしようもなく主張.衣装部屋や葉巻の部屋があったりラストであんなことになるってことは,恐らく一隻まるごとダルタニヤンの持ち物なんでしょうが,その無駄に凄い資金力の源を知りたい(笑).思わせぶりに垂れ下がる紐を清麿が引いたなら,うにとナマコが頭上から落下.天才のくせに紐を引くのは,ツッコミの割にボケに対する付き合いも大変に良いことでもおなじみの彼らしい行動ではないかと思います(苦笑).
本気の変質者にさらわれたはずのガッシュたちを探して保護者たちは船中を右往左往.ついにブリを着たガッシュを見つけた!と思ったら実際はガッシュコスプレの博士.真夏の同人マンガ祭りの季節ということで,似合わないコスプレは凶器なのだということを視覚的な暴力で教えてくれているようです(笑).この最悪の物体に仲間を返せと3人は抗議.けれど博士は甲板に逃げ出し,洋上でのいい大人たちの追いかけっこは性懲りもなく続いていきます.
次に現れたのは可愛い妖精姿のティオ.もちろん一瞬後にはおぞましい変態に.これはティオへの侮辱だと思うんだけどどうだろう.そしてここまでの展開で勘のいいサンビームが先を察して博士に先制.姿形のみならず中身まで模倣しようとする精神は別作品なら褒められるかもしれないが,視聴者だっておっさんに顔をなめ回されるおっさんなんか見たくはないんだ(笑).
姿形のみならず中身まで腐っている真の変態ダルタニヤンは,ここまでのクレイジーな所業を「最高のもてなし」と表現しやがる見事な壊れぶり.確かに海産物は日本人の好物としてはポピュラーだけど調理くらいしやがれ.しかもここで自分は外人だと主張するサンビームのまともさと鋭さと正論の無意味さが,変態との見事なコントラストを描き出しているわけです.…ギャグ担当のサブキャラのダメっぷりも本作の良さの1つだとは思うのですが,教授はもはや他のキャラや視聴者の予想すら越えて爆走.ウマゴンはまだしも,なんで華さんに化けて清麿の耳噛んでるのかがわかんねえ(苦笑)!
そしてどうやら何も考えていないらしいこのド変態が間髪置かずに取り出してくるタイタニックスイッチ.確かに自爆スイッチは狂科学者の嗜みですが,お前の専門分野は考古学じゃねえのか? …性の悪い変態の悪ふざけに翻弄されまくる常識人3人が気の毒でたまりません! 既に洋上は夕刻.大事な仲間を帰せという3人の訴えがようやく通じて姿を表すガッシュたち.感動の再会と抱擁…と思ったら,変態博士に駆け寄る魔物の子供たち! 教授に対しもっと遊ぼうと無邪気にねだる3人は,すっかりダルタニヤンに洗脳されていたのでありました.
唯一無二のパートナーに放っておかれるのは確かにさびしく退屈で,そんな心の隙間をよりによって変態が埋めちゃったために起きたこの事件.ダルタニヤンはガッシュたちを騙していたわけではなく,むしろ気の毒に思って遊んでくれただけ….確かに清麿も恵もサンビームも,将来を見据えて今は忙しい.ガッシュたちだってなぜ忙しいのかはもちろん知っているけれど,かまってもらえないことはやはり耐え難い.自分が清麿と一緒にいるのは,他の魔物と戦っているときだけではないかというガッシュの叫びは確かに真実.…でもなガッシュ,お前は一体何のためにこの世界にいるんだ? 遊ぶためじゃなくて,優しい王様になるためじゃないのか? 寂しさは感じるかもしれないけれど,それもお前の願いを叶えるためじゃないのか?…程度の説教は当然期待したんですが,清麿たちときたらそこで素直に謝ってどうするよ(苦笑)!
「本当の友ならば,決して手を離してはならない」というもっともらしいダルタニヤンの説教でなんとなくいい話にまとまっていく場の空気.魔物と人間の絆は将来的に切れることが約束されているかけがえのないものなので,そのあたりを実感した上で互いをもっと思いやることが大切なのは間違いないかもしれないけども!それを思い知らせるために変な格好で3人を追い詰める理由はないだろ.それは単なる異常性癖以外の何物でもないだろ博士(笑)! しかしそんなツッコミが入ることはついになく,なんとなく流れで大団円になったところでなんとなく自爆スイッチを押す変態博士.…お前が何も考えてないことだけは本当によくわかった!
そんなわけで変態理論が最後の最後まで炸裂する凄まじい話でありました.読み取れる教訓はいくつかあるんじゃないかと思うんですが,個人的には「似合わないコスプレは暴力」と「他人の家の教育方針に事情を知らずに口出しするのはどうかと思うし,その的外れな助言をあっさり受け入れる保護者もどうかと思う」あたりを採用してみたいと思います.清麿はダルタニヤンに例の遺跡の情報を流したから,ファウード編が終了したあとでこんなのがまた繰り返されないとも限らないため,すっぱり忘れることもできないのがなんだか腹立たしいぞ(笑).
さて,こんな間抜けどもと因縁が生まれ将来的な激突が予想されるリオウたちは,ディオガ級以上の力を持つ魔物を目的のためになおも収集中.冒頭では新たな協力者もその姿を見せていますが…随分と渋い声を選んできたなぁ(苦笑).彼らはファウードに集結し何を為そうとしているのか.そして仲間を集めるための「策」とは.次回に続きます.
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