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アストロ球団#2

「見えていたって掴めないの巻」

アストロ球団の創設を目指し,シュウロは球一の他にもアストロ戦士の目星をつけていた.一人は長島が育て上げた孤児,球五.そしてサーカスで働く明石兄弟だ.力持ちの弟・球八と小さく俊敏な兄・球七にアストロ球団入りを要請するシュウロだが,球七は自分の行き先は自分で決めると即座に断る.
明石兄弟が決めた行き先は阪急.サーカスで磨いた二人のコンビネーションは,力に勝る球八が身軽な球七を空中に投げることで捕球するというまさに超人に相応しいもの.二人をアストロ球団に引き入れるには,球七の鼻っ柱を折ってやらねばならない.変幻自在の脅威の壁を壊すため,球一は新打法の開発に挑む.

神がかった沢村伝説を語りまくったあとでついに本編に突入した「アストロ球団」…って実際は1話の後半なんですが.見所は明石兄弟の超捕球よりはむしろ球一の地獄特訓ぶりで,流血程度は当然の今後の試合の様子を彷彿とさせます.こんな夜中に送られたのはてっきり球団を追放するためかと思っていたんですが,今後の酸鼻極まる展開を考えると,民放中では放送コードが相当緩い深夜枠に入れるしかもはや行き場がなかったのかもしれません.ちなみに特撮はまだまだ地味.でも,実際はアクションで魅せるというよりは想像の範囲を超えたトラブルに苦しむ姿で魅せるドラマなので特に問題ない気もしなくもなく.

前半.長島が手塩にかけて育てた秘蔵っ子球五に,これまた当然のように目をつけていたシュウロ.球一には長島のために着々と進路を歩む堅実で常識的な球五の心はまったく理解できないようで.彼については今はそのときではないと判断したのか,シュウロは次の目的地,球七,球八兄弟のスカウトに向かいます.重いバーベルを軽々とぶん投げる怪力の球八と,小さく身軽な体を生かした軽業師・球七.球八は割とそのまんまなんですが,勝気で茶目っ気溢れるムードメーカー球七役のはまりぶりはなかなか.この双子の兄弟が生まれたのは例のあの日.痣もしっかり装備しているのでアストロ超人なのは間違いないわけですが,たかが王を抑えた程度では超人として認めることはできないと,折角のスカウトをあっさり蹴ってしまいます.「本当の超人とは,不可能を可能にする人間のこった!」と生意気ながらも屈託ない笑顔の球七.自分たちの超人としての力を信じていればこそ,それを任せる球団にそれだけの力量があるのかを真正面から見極める腹なのです.
球七たちに逃げられた球一は勝手に球五を呼び出してさらなる勧誘.ボールの痣の宿命に全てを委ねて行動できてしまうエキセントリックな球一と,育ての親の恩をどうあっても振り切ることができないまともな球五は当然すれ違い.長島がいなければ何も出来ないとバカにして,戦場では義理人情は通用しないと言い切る球一.逆に言えば今の球五を縛るのはただ長島の存在のみ.それさえなんとかできてしまえば,球一の剛速球についつい疼く痣の宿命はもはや止まらないに違いない.だからこそ球一は男として長島を切り捨てろと揺さぶりをかけ,球五は必死で長島の存在にしがみついて耐えるのです.
それから少し後,結局3人の超人のうち誰一人チームに引き入れることのできなかった交渉ベタのシュウロと球一は球七たちの新たな行動を知ります.なんと阪急に兄弟二人で入団し,日本シリーズで巨人を倒すための切り札役を担うとは! 彼らの兄弟の特質は鉄壁の防御.外野の隅に二人でぽつんと突っ立っているという一見間抜けな姿こそ明智兄弟の守備フォーム.二人のコンビネーションは宙高く,外野に飛ぶ球はたとえホームランすらも取る!
球八が球七を見事投げ上げることによる空中まで制圧する超広範囲の守備は,たとえ超人である球一の打球であっても乗り越えることは不可能.しかし,これはもちろん球七から球一への果たし状.球一が彼らと同じ超人であることを見せつけてアストロ球団に引き込むためには,日本シリーズまでのあと1ヶ月で超人プレーを生み出さなければなりません.…強い者のみに従う,それもまた非情なる戦場を生きるものの知恵.

後半はスポーツものらしく特訓だ! 球一が選んだ特訓場所は黒部ダム.あの高いダムを球七たちの鉄壁の守備に見立て,それを越える長打を生み出すべく特訓を開始.阪急の秘密特訓場も相当大げさだったけど,やっぱり漢の特訓場とくればこのくらい大げさなのがちょうどいい.相方はシュウロ.沢村の薫陶を受けたとはいえ普通の人間が超人の相手を務めるのは,絶対に口にも顔にも出さないだろうけど相当おっかなかったに違いない.そして,時は過ぎて1ヵ月後,彼らは新打法を手に,山から里へと下りていきます.
日本シリーズ開幕戦.王の長打はホームラン清掃人の明智兄弟の鉄壁の防御にひっかかり,折角の見せ場は台無しにされてしまいます.超人ならではのサーカス的な面白さはあるけれど…この時点で既に一般的に言われている「野球」の範疇からは見事に外れているために,旧来の「野球」を愛する者たちの心には相当ひっかかるものがあるのではないかと.例えるならばドーピングが許された陸上競技みたいなもんで,確かに凄いけれど,競技として別物と感じてしまうんじゃないだろうか.…超人にとっては普通のプロ野球選手では相手にはならない.やはり超人には超人を! しかし球一は巨人軍ではないため,またも犯罪行為に手を染めることになるのでありました.普通は江夏の件でもうちょっと懲りると思うんだけど,警備をもうちょっとなんとかしろよ(笑)!
そして出てきた5番の…球一.もちろん本当の5番は球一に襲われてロッカーで倒れております.しかし,この行動を相応の覚悟の末のものだと感じた選手達は超人バトルを静観することに.こんな大舞台を平気で乗っ取る超思考が理解できずに狼狽する球五がいかにも常識人で,超人の癖になんだかおかしい.打席に立つ球一は,これまでの時間の全てをダムの壁にぶつけて特訓してきています…その回想でついに朗々と流れる球団歌.今はまだ歌の力にシーンが負けているものの,今後流血インフレが進展すればきっと釣り合うに違いない! 両手を血に染めても明智兄弟攻略法を見出せない球一.しかし執念の雄叫びを上げる球一の上に降る流星,ジャコビニ流星群が,鉄壁の壁を突き抜ける超打法のヒントとなったのです.あいつは超人なんだから,バットにヒビなんか入ったら打ち返すことすらできないだろうとか堅いことは言いっこなしだ!
そして日本シリーズの大舞台で,ジャコビニ流星打法炸裂! ヒビの入ったバットは粉々に砕け,それはボールと一丸となり,流星群のように外野へと向かう.いくら鉄壁の守備とは言っても,バットにボールがまぎれてしまっては本当を見出すことは彼らにはできない.遥か遠い星に手が届かないように,白球はフェイクに紛れて壁を突き抜けていく.…明智兄弟の敗北! たった1打で球一の力を認めた兄弟は,約束どおりに新生球団へと電撃移籍! もちろん阪急は勝手すぎる二人の翻意に怒るものの,常人の理論で超人の意思を,約束を,執念を覆すことができるわけがない.

偉大なる日本シリーズ初戦を土足で踏み荒らし,その上マウンドジャックまでやってのけるシュウロ.そのとんでもない行動とは裏腹に,高らかに新生球団設立の発表を行います.若き沢村の深き怨念を継承した,9人の若者による夢の最強チーム,大リーグに勝る超人球団! 「沢村に代わって,超人球団をここに設立いたします!」 血沸き肉踊るその光景を,ネットにしがみついてみている球五.彼の心は親元から宿命へと引き剥がされていく.戦争によって生まれた無念から生まれた脅威,アストロ球団へと….
ついにたまらず球五は長島の元より出奔.巨人軍を血祭りに挙げると宣言するシュウロに比べれば,球五の旅立ちを後押ししてくれる長島は,人間ができていると思います.それにああいうトンデモ人間ばかりの集団だと,常識人は絶対に大切にしたほうがいいですよ.こうしてはじまったたった4人と1人の旅路は,仲間と強敵を巻き込みつつどこまでも高く上り詰めてゆくのです.そろそろ本領発揮かな? 次回に続きます.

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