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陰陽大戦記#47

「そして因果は巡るの巻」

ヤクモはその命と式神の力を空めがけて揮い,この世界をウツホの無から守るための五行の柱を立てた.巨大なヤクモの幻影を目指して伏魔殿の闘神士たちは進む.走るリクが見つけたのはあの懐かしい四季の伏魔殿.その中でリクとコゲンタはガシン…マサオミと再会する.ガシンはヤクモに託されたリクへの伝言を確かに伝え,さらに借りていたものを返すと,己の青い極神操機をリクに渡した.なぜウツホは人を石に変え,天を無で覆うのか.なぜガシンはリクを裏切りウツホにつき,そしてなぜ今神操機を返そうとするのか.リクは未だその理由を知らない.請われたガシンは,千二百年前に始まったこの物語の源流から現在までのあらましをリクに伝えるのだった.

今は遠い2つの過去が現在を侵食する「陰陽」.時の流れの中で善悪はひとりと3つの組織を巡り,それが現在の,絶対的な善のいない構図を生み出す源となったわけです.というわけで今回はこれまでの過去設定の整理&暴露.あるいはアバンの総集編.中盤がまるごと設定祭りとなっているあたりは本作の場合珍しい省エネ.情報の羅列は「陰陽」らしくはないけれど,ここまで本当に無茶をしまくりかつこれから先も無茶するんだろうから今息抜きするのはアリだと思います.それに本気で見ていた視聴者にとってはここまでのかなりの部分の答え合わせにもなっているのでそれなりに楽しい.…でも,相変わらず子どもは放置なんだなぁ(苦笑).

前半.この世界をウツホの生み出した無の沈降から守るため,五柱の式神による五行の柱を立てたヤクモ.源流零神操機がヤクモを導いたのは,全てが終わる時間を少しでも先送りするための自己犠牲の道.力と能力に加えて迷いがなく折れない心を持っていたからこそ,この役割なのでしょうね.空を支える巨大な雄姿はなぜか伏魔殿だけでなく現世にも投射.今,人間界で石化せず耐えているのは闘神士・巫女としての素質のある連中だけなんでしょうが,日本国外はどうなってるんだろう….巨大なヤクモと5体の式神の姿は,伏魔殿にいる闘神士たち,特にろくなナビも持っていない神流討伐隊にとっては格好の目印に.けれど早速到着した彼らが見たのは,もの言わぬヤクモの姿.
天流と地流が頼りになる闘神士を失ってしまったのを知ったその頃,神流陣営も大混乱.ここまでうろたえるってことはタイザンもショウカクもウツホに操られているわけではなく,彼らなりの自由意志でここにいるのだろうけど,2人とも力だけはあるけれど仲間もいない寂しい国を,心から望んでいるのだろうか? …上空の無に驚いた2人はウツホに対し,このままでは作りかけの理想郷が消滅すると懇願.2人が自分の望む国を作るというからガシンを騙すことにも協力していたようですが,結局造反され心は乾く,そんな現状をウツホはまったく気に入らない.
国づくりは途上だから時間が欲しいと必死な2人に対し,ウツホは地流宗家の討伐とヤクモの五行柱の破壊,さらに裏切ったガシンの討伐を命じます.残る天流宗家に対しては,ウツホ直々に木型に呪を込めてリクとコゲンタの運命を曲げた一人である,ヨウメイの叔父であり先代の天流宗家のライホウを準備.部下程度では到底リクにはかなわないと考えているんでしょうが,なぜウツホはそこまで天流宗家の力を買っているのか?
さて,敵であるウツホにまで見込まれているリクは移動の最中,22話に訪問した四季の伏魔殿を再訪することに.乱れる伏魔殿の中でも美しいまま,青錫のナナヤによるダメージすらも見当たらないこの不思議なフィールド.壊れたところが勝手に直っているのは隠された天流の社と一緒なんですが,これはフィールドや建物に自己修復能力があるのか,あるいは時の流れでも狂っているのか.そして,さらにこの場に縁のあるもう一人の男が姿を現します.…前回の展開でウツホに騙されたことを知り,もはや神流に属することすらできなくなってしまったガシン.真実に打ちのめされ目的を見失った彼ですが,少なくとも無が地上を飲み込む世界を望んではいません.
リクは気づいていませんが,リクの両親との縁があるこの伏魔殿で再会したリクとマサオミ…ヨウメイとガシン.もはやガシンにリクと戦う理由はなく,ヤクモからの伝言「極めしものだけがウツホを止められる」を伝達.おまけでウツホが天流宗家を恐れていることまで教えてくれる彼は,情報不足にあえぐ現在の天流と地流にはぜひとも欲しい人材なんですが,なぜかリクに神操機を渡してしまうガシン.…このあたりシリアスなんですが,神操機を放棄するガシンにつっかかるコゲンタに「ちょっと黙ってて」とまったく遠慮なしのリクが面白い.あの38話以来,完全に立場が逆転してるんだよなぁ.
ガシンの神操機はヨウメイの母から託された天流宗家のもう1つの神操機.渡される様は既に42話で描かれているわけですが,リクにすればまさかマサオミと自分の母が知り合いだなんて知らなかったわけだからびっくり.リクはこの物語の流れを最も深く知るひとりに必死で教えを請います.「わからないんです.なんで今,こんなことになっているのかが!」

「全ての始まりは,今からおよそ,千二百年前だった」…小国が互いに争う戦乱の世.式神までもが巻き込まれ卑劣な策略の末に名落宮に落とされていったという残酷な時代.もちろん節季を司る神をおろそかにするような人間が許されるわけもなく,けれど飢饉や病で苦しむのは,たぶん戦う力も式神を使う力もない弱い人々だということが切ない.ガシンとウスベニもそのような弱いものたちであったわけですが,山の奥深く,ウツホの里に逃れたことで運命が変わります.
世の弱者が集まって出来上がったウツホの里.ウツホ自身の出自は不明ですが,身寄りのない空っぽの自分を「ウツホ」と名づける程度の学と洒落っ気はあったようです.妖怪と一緒に暮らしていた彼の心は,その力と同じく並の人の心とは何かが違っているのかもしれない.弱い人たちは力を持つウツホを頼り,ひとりぼっちだったウツホとともに暮らすことになります.ここで手に入れたささやかな幸せこそ,ガシンが求めてやまないもの.あの頃の幼い彼は,無邪気に笑っていたのです.
その卓越した力ゆえに頼られたウツホは,式神と自然の力を結集して四大天の力を入手.四季を操るなんてのはまさに不遜な行いなんですが,ウツホ自身が悪ではなかったからこそ最初はうまく回っていた.乱れたものを治め,相容れないものを分ける.人にも妖怪にも「みんな」に幸せなこの平安の時代こそ,ウツホにとっての理想郷だと思うんですが…今のウツホが求めている世界も,この頃の理想のままなのだろうか?
力は幸せな暮らしのためには不可欠.けれどその力を求めるものは弱いものばかりではない.強いものほどより大きな力を求め,そんな行動が悲しみを招くのが世界の常.四大天の力を欲しがった有力者達…将来の天流・地流の罠に落ちたウツホは時空の間に封じられ,四大天の力のみが奪われ,罪のない弱者たちはウツホの封印が解けぬように陣に埋められ,逃れたものすらも次第に封じられ,ついには己までもが伏魔殿の中に封じられてしまった…それが封じられるまでの,ガシンの知っている物語.

後半.そして二百年後…ヨウメイのいる物語.神流はウツホや仲間を救うため,地流に天流が四大天の力を我が物としていると煽動し,両派をぶつけ合わせる中でウツホの封印を解こうとするも,役についたばかりの幼い天流宗家・ヨウメイの母であるショウシの君が宗家を千年の先に飛ばしたために失敗.この段階ではガシンは未だ目覚めず,大乱を伏魔殿に逃れ生き残ったヨウメイの両親によって,ガシンは封印を解かれ神操機を与えられることになります…って両親がガシンに会ったのはヨウメイを跳ばしたあとなのか.これであの戦乱のあとも2人が生き残っていたことは確定したようなんですが,ガシンと別れた後の消息が大変気になります.
ショウシからガシンに渡された,天流に影で伝わっていたもう1つの神操機.いきなり影の神操機とか言われて唐突すぎる感はありますが,万が一にも記憶を落とされては困る宗家に2機持たせるという判断は非常に合理的.地流が影の宗家を立てたように,天流も宗家を守るための策を弄してもおかしくはないはず.そのもう1台の神操機を正しく使うことを約束し,ガシンはキバチヨと契約.しかし天流宗家がいなければウツホを復活させる術はなく,タイザンとマサオミは千年後に賭けて…現在.天地宗家によってウツホは復活した.
千二百年の悲願が叶い,本当に欲しいものが戻ってきたはずの神流.けれど…神流が最初に願っていた姿にこの世は戻らないばかりか,ウツホによって無に飲み込まれようとする危機到来.人々の平和な暮らしをを守るものを善,壊すものを悪とするならば,封印された千二百年の間にウツホは悪となり,天地はぶつかり合い,衰退しつつ善へ向かったことになります.そしてウツホを善だと信じて疑わなかった神流やガシンは….

長い物語のあと,「これはいただけません」と青い神操機を持ち主に戻そうとするリク.「神操機ではありません.キバチヨさんです」いくら宗家であったとしても式神との思い出や絆は引き継げないし,リクにはコゲンタもいてくれる.一緒にここまで来てくれた,今はちょっとした軽口だって叩ける大切な友達がいるからもういいのだと,笑って神操機を差し出すのです.
目的のため,これまでリクの心をわざと切り裂いてきたガシン.とても神操機を受け取れるような状況ではないけれど,リクには「マサオミ」に大きな借りがありました.33話,地流に嘘をつかれてリクがぶっ壊れたとき,式神を怒りや恨みに任せて使ってはならないと止めてくれたのは「マサオミ」.たとえそれが自分の両親の教えだとしても…あの場を作ったのがガシンだとしても,頬を叩いて自分を止めてくれた事実を大切に胸に抱えてきたんですね.天流の罪を償うため,自然を守るために使って欲しいというのがリクの両親の願い.そして今リクも同じように,美しい四季をを守るために力を使いませんかと,とことん柔らかくガシンを説得.そしてついに,ガシンは再び神操機をその手にすることになります.
不自由で不便で厳しくて,それでも仲間達の笑顔に溢れていた,あの日々.ガシンとキバチヨは未だそれを取り戻すための旅の途中.その手に力があるのなら,求めなければならないのです.ただしリクの仲間に戻ることだけは断るガシン.その資格がないだけでなく,確かめなければならないこともあるからと再び道を違えることに.…けれどリクの見立ての通り,もうガシンが本心からリクと敵対することはないでしょう.3つの極神操機は,全てウツホの敵となったのです.

リクがその底なしのお人よしぶりでガシンを改心させていたその頃,現世ではなぜかリクが話題の中心に.自分たちのために伏魔殿に出向いてくれているボート部部長は,闘神士でしかも宗家という一般人にはわけわからん立場に加え,重く悲しく思い出したくもない過去まで抱えていたため,自分自身の境遇についてあまり語ることはなかったようで.それを幼馴染でありリク研究の第一人者であるモモから拝聴するわけです.
モモが知っている幼いリクは,モモの家族と一緒の旅行のときは寂しそうで,運動神経は割と良くサッカーが得意で,相当重症の甘党で,意外と無鉄砲で着物の女の人に見とれる,そんな少年.大半の記憶は失ってしまったけれど,それでも消えずに残った過去の断片が今のリクの心の礎となり,のんきで臆病で育ちが良くて,仲間や家族が本当に大切で,失ったはずの過去の夢を見る1話のリクへと繋がっていったわけです.
リクのことをよく観察してきたモモに対し,「太刀花クンのことが好きなんでしょ」と今更(笑)その気持ちに名をつけてくるリナ.…今更照れたって,余程鈍い奴以外はとっくの昔から君の気持ちには気がついていると思うぞモモちゃん.下手するとリクにまで気づかれていてもおかしくはないぞ(苦笑).そしてモモちゃん久々に愛の妄想大暴走.リクが怒るような秘密って,一体何だろう? …やっぱりモモちゃんは,妄想して百面相したり笑ったり,明るい顔をしているのが一番似合う.リクは伏魔殿に「モモの笑顔」を取り戻しに行っているわけだし.リクにとって「みんな」の象徴となるのが,モモの姿なのかもしれないな.
さて! ちょっとした休息の末に物語は再び混迷の中へ.ウツホの命を受けて神流討伐隊の前に姿を現すショウカク.姉たちが眠る封印の花園でタイザンと再会するガシン.そしてリクの前には自分に似た男の姿が.…ウツホが過ぎた力さえ持たなければ,こんな現在にはならなかったのだろうか? 次回に続きます.

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