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陰陽大戦記#49

「大切な夢にもさよならの巻」

仲間の眠る花畑で,敵として再会するガシンとタイザン.千二百年を仲間として過ごしてきた2人の目指すものは同じ.穏やかな日々を取り戻したいという気持ちに偽りはない.けれどタイザンが目指していたのは,神流の仲間だけが権力を握り幸せになる都.権力を奪いあうことでもたらされる不幸をよく知っているガシンは,タイザンの理想を認めることはできない.
リクはウツホの作り出した幸せな幻に囚われていた.自分を受け入れてくれる両親の姿は,幼いヨウメイが求めていたもの.しかしその幻の外では,コゲンタが四大天の攻撃を食らいながらもリクを呼んでいた.

たった1年の割に実にいろいろありすぎた「陰陽」.視聴者の理解のことはあんまり考えず(苦笑)猛スピードで設定や伏線をぶち撒いてさらにそれを猛スピードで回収していくという脅威のマッチポンプぶりを楽しめるのもあとわずか.今回は実質的には前回の後編.前回に引き続いて,今回はガシンとリクが今自分が求めるものをはっきりと認識します.特に過去を振り切るリクの雄姿は素晴らしい.ここ最近決めるべきところではどんどん等身が上がってるんだけど,内心の成長を外見に反映したその姿は確かに主人公.よくぞここまで成長してくれたなぁ.

前半.まずはガシン対タイザン.千二百年前から一緒に行動してきた仲間のはずが,ここに至りやはり敵となってしまった2人.自分たち以外の全てを犠牲にしても仲間に力と平穏な日々を与えたいと考えるタイザン.ウスベニたちのこともウツホを利用して全ての態勢を整えてから助けるのだという極端な思想.…神流にとってはタイザンの考え方が当然で,ガシンのほうが異端なのか.もちろんタイザンの道は式神や世界を壊してしまう道.
ガシンとタイザンの考えがすれ違うのは,タイザンがウツホの里に逃げるまでの過去が原因.当時から服装が一人違うなと思ったら,タイザンは都落ちしてたんですね.さらにウツホのことを都に密告した元凶もタイザン.その力で都に戻ろうとしたようですが,結局は都の者たちに利用されて終わっただけでなく,ウツホ封印への引き金ともなったのでありました.
ガシンの姉であるウスベニと恋仲だったはずのタイザン.彼はウツホの真意を知った上で,ウツホに頼んで偽のウスベニを作り出し,ガシンを操ろうとしていました.その判断は非情だが正しい! 千二百年の付き合いだからこそ,ガシンを退場させないための手段もよく理解していたってことですね.
ウツホが復活したおかげで現世はほぼ壊滅状況で,残るのは石化していない敵闘神士と巨大な力を持つウツホのみ.天地宗家とウツホさえ倒せば仲間たちを復活させられるとタイザンは誘うけれど,天流宗家に許されたばかりのガシンが受け入れられるわけがない.加えるなら,天地宗家やウツホを倒してしまうとウスベニたちの封印を解けるものもいなくなってしまうし.もし天地宗家を倒すことで封印が解けるとしても,それによって宗家が封じてきた妖怪なんかも一気に開放されそうなので現状の貧弱な神流陣営ではあまりにも危険な気がする.
…それに,千二百年の付き合いなら,タイザンはガシンが絶対に自分の提案に乗らないことも理解していたはず.本来タイザンが取るべき道は,天地宗家とウツホの激突を影から見守り,どちらかが倒れた時点で生き残りを倒すこと.ここでガシンに会っても何の利もないんですが…それでもここに来たのは,内心では自分を止めて欲しかったのだろうか.
そしてはじまるオニシバ対キバチヨの闘神! 神流のためにひたすらなタイザンと,式神を私欲のために使う暴挙を許せないガシン.互いを知り尽くした2人の花園での戦いは,ハイレベルで熱い! 直線的な動きが特徴で,中・遠距離での戦闘を得意とするキバチヨとオニシバ.移動速度ではキバチヨが勝るものの,オニシバには弾丸と神速の足がある.飛行できない不利をまったく感じさせないオニシバの奮闘ぶりが素晴らしい.
さて,そのころの主役なんですが,前回ラストのヒキでおなじみの通り,ウツホの作り出した素敵な幻覚にまんまと引っかかってトリップ中.うつろな目,微妙な笑顔のままで固まっているリクを包む桜交じりの風は,式神のコゲンタには突破できない.その上ライホウも四大天も傷つきはしたもののまだ健在! 邪悪なライホウは,リクがウツホの夢に取り込まれるまでの時間に,闘神士の助けがないコゲンタを四大天の力を使って倒すために攻撃再開.リクの印がなければ技も出せないコゲンタ,大ピンチ!
ウツホ謹製の夢の中,桜の下で狩衣と烏帽子のリクは,夢見ていた両親に再会して赤ん坊のように抱きついて甘えます.以前地流が似たようなことをやってリクをキレさせたけれど,今回はそんなごまかしとはレベルが違う.…これが夢だとはっきりわかっているから,リクが幸せそうな分だけ見ているほうはどうしようもなく切ない.術をかけているウツホは,そんな悲しみを理解しているのだろうか.

後半! まずは神流の頂上決戦が決着.キバチヨとオニシバ,光速の直線攻撃が激突! 普通なら極神操機持ちのガシンが明らかに有利なはずが,闘神機のタイザンはそれと互角に戦ってみせます.オニシバの一切合財貫通撃の威力はキバチヨを吹き飛ばし,逆にキバチヨの大技・金輪際撲滅戟はカウンターされてしまう.最強技の霊騒乱燦燦ですらオニシバには効かない! …四大天に飲み込まれるのではなく,その力のみを利用してコントロールしているとは,さすがはタイザン,ウツホを倒そうとするだけのことはある.明らかにこれまでの四大天の力の発露とは姿が異なるわけですが…タイザンの手元にも絡みつく光る何かが見えています.
四大天の力によって式神の範疇を超えた力と速さを手に入れたオニシバは強い.神速の蹴りも超越鬼神速へと変わり,スピード自慢のキバチヨすらも上回る.因縁の花畑で高レベルの闘神を見せる両者.四大天の力は,かくも素晴らしい.
しかし強すぎる力にはそれなりのリスクが伴うもの.程なくタイザンに訪れる力の限界.タイザンが吐血してオニシバの動きが止まり,その隙を見逃さずガシンは最後の渾身の攻撃を放つ! …千二百年を共にした仲間ではなく,正道を外れた敵として,ガシンは容赦はしない.再度の霊騒乱燦燦によって四大天の力はついに砕け,キバチヨの逆鱗牙がオニシバの体を貫いた!
そして,花園に降る雪.倒れるオニシバとタイザン.四大天の力をその体に埋め込んで,オニシバに伝えていた無茶がタイザンの体を壊しました.命を削って式神に力を与える邪悪な技の痛々しさを知って,再び千二百年を共にした友へと心が戻っていきます.…強いガシンに対抗するためには,タイザンにはこれしかなかった.
原因はいつも過去に.タイザンには,ウツホの里にたどり着く前に都で悪事を重ねてきた過去がありました.人を騙し殺めてきた経験から,奇麗事だけではダメなのだと知ってしまったタイザンは,里の者を守るために,あえて悪を引き受けていたのです.愛のために少年を悪に駆り立てるほど,当時の都はひどい場所だったということか.
そして最後の最後で,ガシンに大切なウスベニの笛を渡すタイザン.「あの頃の,安らぎに,偽りは…ない」.そのまま痛む体で忠犬オニシバの傍へ.オニシバは消え,タイザンは倒れ,ガシンにとってあまりにも重い勝負が終わっていく.…タイザンはいい人ではなかったけど,心からの悪人でもなかったはずなのに,

悲しい別れは天流宗家の元にも訪れています.ウツホの幻覚に囚われたリクが見るのは,両親にこれまでの思いの全てを話した夢.父に戦いの道具にされ,母には千年後の世界に捨てられたという幼いヨウメイの抱えた黒いトラウマを吐露すると,「わが子のことを大切に思わぬ親がどこにいる」と,一番の恐怖を否定してくれる父と母.ヨウメイにどこかで生き続けてほしかっただけなのだと聞かされて,欲しかった言葉に涙ぐむリク.卓越した闘神士としての力ゆえに運命に翻弄されてきたヨウメイが求めていたのは,両親に一緒にいる許しをもらい,傍にいること.夢の中の父と母は,リクに惜しみなくそれを与えてくれようとします.
しかしこれはウツホの作り出した巧妙な幻.現実ではコゲンタが一人ライホウの四大天へと立ち向かい,帰ってくるんだとリクの名を叫ぶ.ウツホを盲信するライホウにとっては,聞こえるはずのない声を張り上げるのはきっと愚かな行い.けれど,リクとコゲンタの間の絆の深さは伊達ではありません.ミカヅチ最終戦ではウツホからの介入すら振り切った絆は,既に印ではないもので繋がっているのです.
闘神士を呼ぶコゲンタの声は,ついに幻覚を越えて夢の中のリクのもとへ.それまでは両親の優しさに涙ぐんでいたはずが驚いて,きょろきょろして…立ち上がるリク.迷いも逃避もなく,引き止める両親に心を動かされることもなく,リクは穏やかに,とても心地のいい夢の中から醒めることを選びます.
夢から出れば心に黒いものを抱え続けなければならないことを理解しているはず.それでもリクは,夢を捨てます.「僕は,ヨウメイではありません.…僕は,太刀花リクです」.この優しい光景は,ヨウメイであったリクが望んでいたもの.しかし太刀花リクが望んでいるのは,のんきで間抜けで穏やかなあの日々.「太刀花リクとして生きてきた日々を,取り戻すことです」.天流宗家としてのリクが背負うことを選んだのは,仲間たちの笑顔.その決意に迷いはありません.
夢だからこそ最高に残酷なものをウツホに見せつけられたリク.しかしもはや心の揺るがないリクは必要以上のお人よしぶりを示してしまいます.ウツホに向かって本当に気持ちのいい笑顔で「素晴らしい夢を見せてくれて,ありがとうって!」…タイザンは里のものたちは善人すぎるから弱いと考えていたけれど,本当の善は暴力的.程度を越えたリクの善人ぶりは,ウツホの術と計算だけでなくその心すらぶっ壊し,夢は桜の花と消え…厳しい現実へ.
目が覚めて,早速待ってくれていたコゲンタのために印を切るリク! 式神と闘神士の絆は印のはずですが,闘神士に届いた式神の叫びのほうがより強力な絆のような気がします.ついには四大天を崩すも,妖怪と化してなおも向かってくるライホウ! 襲われるリクの危機を救ってくれたのは,駆けつけてくれた地流宗家!

天流と地流,千年の因縁を乗り越える力となったのは,ユーマの自覚とリクが常に差し伸べていた手.ユーマの提案は「太刀花リク,まだオレのことを仲間にしてくれるか!」…そりゃもう根っからの仲間マニアであるリクは「もちろん!」と大喜び.ランゲツとコゲンタもここから先は共闘することになるんだから,もうちょっと仲良くしとけ(苦笑).コゲンタがリクの名にこだわっているのは,式神だから名を特に重要に感じているのかな.
こうしてみんなの笑顔を最優先に走り出す天地宗家.特にリクの場合,敵対したライホウだけでなくウツホすら彼にとっての「みんな」に含まれそうな予感がするぞ(笑).…やや不安なのは,みんなの笑顔を守るためには太刀花リクの日々を捨てねばならない状況が来ることなんですが….もちろんリクの底抜けなお人よしぶりはウツホにとっては凶器.その怒りに伴って,美しかった都は燃え上がる!
ついにウツホとの最終決戦に突入.式神の契約を書き換えるという特技を持つウツホだから,過去登場した様々な式神たちも登場しそうですが問題はそこじゃない.現在契約中の式神たちと闘神士たちの絆は一体どうなる? 未だに理解できない部分が残るウツホの心も,戦いの中で過去が披露されていけば明らかになっていくのだろうか.次回に続きます!

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