« 焼きたて!!ジャぱん#46 | トップページ | 9月終了アニメ雑感・2 »

陰陽大戦記#51

「もうひとりのウツホの巻」

ウツホによる天地宗家の封印の危機を救ったのは,神流のマサオミだった.マサオミはウツホに敵対することを宣言し,再びリクとともに戦うことになる.超降神した式神3体の力は凄まじく,ウツホの操る大降神すら極の力で退ける.式神たちのなかの闇すらも闘神士との固い信頼によって打ち破り,ついにはその力を響き合わせてウツホの封印に至る極神操機の式神たち.逃れようのない封印に沈んでいく,3人の闘神士を苦しめてきた元凶….けれどウツホの哀れな叫びに,リクはこのままでは何も解決しないと気がついた.

長いようで短かった1年もついにあと2話.収まるべき大団円へとひた走る「陰陽」.あまりに面白くて分量が凄いことになってしまったこのレビューも残るは2回.今回は前半が式神戦で後半が心理戦.変形込みで大技を連発する前半はもちろん無茶苦茶贅沢なんですが,もっと贅沢なのは後半の心理戦に注ぎ込まれた時間.滅び行く世界の中,さらに次回最終回だってのにキレたウツホとひたすら口喧嘩する闘神士たち…ってここに来てこれをやるか(笑)! けれど本作の真の醍醐味は派手で小気味いい式神戦などではなく,因縁と契約で絡まりあった式神と人間たちの繊細でダイナミックな心の機微なんだからこれでよし! 終盤は,技ではなく心でウツホを圧倒します.

前半.前回多大な犠牲を払いつつウツホを封印しようとした天地宗家.しかしそれを利用され逆にウツホに封印されそうになった2人を手荒く助けたのは神流のマサオミ! サブキャラがほぼ片付いたところで颯爽と再登場し,おいしいところを持っていきます! 姉や仲間たちを蘇らせるために現代の天流を内部から操ろうとしていたマサオミは,ウツホやタイザンの真実を知ってついに真っ向から造反.ヤクモが残してくれた言葉の通り,自分の姉が守ろうとしたものを守るためにも,マサオミはウツホを止めることを決意.ここに極神操機持ちの最強トリオが結成されます! 今は思い切り迷惑をかけた2人の宗家に心底詫びる時間もないマサオミ.全てが終わったあと,彼をぶん殴る時間は残っているだろうか.
前回の展開でそれなりにダメージを受けている白虎たちに変わり,先頭で仕切るのは青龍のキバチヨ.千二百年をたった一人の闘神士とともに歩んできた古参の式神の割には,ペラペラと英語で一番現代に順応しているあたりが楽しい.天地神の三極神操機で超降神した式神たちは,ウツホがけしかける大降神を打ち倒していきます.ウツホに言わせれば,闘神士の欲で式神を縛るのが超降神.しかし縛られているはずのコゲンタたちの表情は,己の理性をなくして空しく暴れる大降神よりもずっと豊かだ.
ウツホ謹製の大降神式神どもは強いけれど,それぞれにヤクモの言葉を胸に抱えた3人の闘神士が戦意を失うことはない.極神操機の力によってパワーアップするのは1つの技だけではなく,ここに来て他の技まで新たなビジュアルとともにパワーアップ! おそらくはこの2話あるいは1話のためだけにわざわざ着せ替えさせるだなんて,なんて贅沢してくれる! 震坎兌離,コゲンタの孤月拳舞は風雲反魂手へとパワーアップ.ランゲツの洞刻もキバチヨの対大降神小銃逆鱗爪一九四一斉射も見たことない姿とともに炸裂.名前長い.このあたり,あまりに贅沢すぎてむしろありがたみがなくなっている気がするのは気のせいか(笑)?
大降神を新技で倒されたウツホは木の型に力を込めて更なる強敵を作成.それは超降神したコゲンタたちの中にある闇を取り出してつくった大降神.…強敵として用意されたのが自分自身のコピーってのは,今のウツホにコゲンタどもに対抗する手段が他にないことを示す良い証拠.高速に流れていきますが,恐らくはこれが式神の頂上戦! …確かに闇は深いけれど「恐れるな!」と叫ぶコゲンタ.あまりにも緊密な闘神士と式神の絆は,自分自身の闇ですらもあっさり撃破! 閃輝照陽光,赤月華,八手舞拿….またも姿を変えて発揮される新技は,ウツホの望みを壊していきます.
戦闘の中で高まっていく神操機の力.ついには神操機が光りはじめ,式神たちは時が来たことを告げます.闘神士たちが切った印によって三度姿を変えた式神たちは,トランスのままでウツホの周囲を取り囲む….力と絆を極めた3式神による強力な封印がスタート.囲まれたウツホにはもはや行動の自由はなく,封印の陣の中,ウツホは沈む.
「…嫌だ…嫌だ,嫌だぁぁ! もうあんなところに戻るのは嫌だぁぁ!」
幼すぎる悲鳴にはっとするリク.人を滅ぼそうとする悪であるのと同時に,その力ゆえに騙されて封印された哀れな子ども.ひとりぼっちを恐れる涙の叫びに,リクはこの道では大団円が来ないことにはっきりと気づきます.ウツホも「みんな」の一人.助けを求める哀れな子どもには,その力のある誰かが手を差し伸べなければならないのです.

後半は総決算の心理戦! ウツホの封印を強制的に中断したリク.いきなり努力を台無しにされたユーマやマサオミには大変迷惑だろうけど,リクが必死で主張するとおり,このコースは一時的な勝利への道ではあるけれど全ての解決への道ではない.それは千二百年前の罪の繰り返し.前と同じことをやってしまっては,ただウツホの苦しみや悲しみや怒りを大きくして未来に先送りするだけ…そんな投げっぱなしの道が王道のわけがない! 極めし者がやるべきなのは,ウツホを救うこと.方法はわからなくても,リクたちはここでそれを実現しなければなりません.
もちろん救われ役のウツホもそんなリクの言葉に反発.ウツホが千二百年に渡って天流と地流から受けた仕打ちは,地中に一人きりで眠れず泣けず,見たくもないものを見せられるという拷問.常人なら心が壊れて当然なほどの過酷な経験を叫ぶウツホの顔は,少年の顔のはずなのにひどく老いている.人の歴史は,数え切れないほどの戦いや血や罪や愚かさや悲しさで紡がれてきた.そしてそれは,闘神士という同族同士で争いを繰り返してきた闘神士と式神たちの歴史も同じ.…ただし彼らの同族争いの原因となったのは,彼らの欲とウツホの存在なのだけれど.
人間は太極にはびこるゴミだと,自分の命令に従わない式神たちを抱き込もうと頑張るウツホ.今や生き物全てを焼き尽くすほどの火を手に入れている,愚かな人間.彼らの欲によって太極は乱れ,この世に残された時間はわずかしかない.人さえいなくなれば,太極の節季を司る本来の形に戻ることができる.…かつての救世主の血を吐くような正論に,人である宗家たちは沈黙するしかない.
正しいけれどひとりぼっちのウツホは必死.過ちを繰り返す人間から離れて「契約」という形だけの絆を捨てろと言うけれど…コゲンタたちは動かない.式神たちにとって,契約は闘神士との大切な約束.同じ目的に向かい歩むための誓い.契約は式神と闘神士の不断の努力によってのみ保たれるから,形などない.形のないものは壊すことはできない…「もうこの絆は,何人たりとも壊せやしない!」

手に負えないほど超降神は強いし,闘神士は自らの分もわきまえず自分を救うとか言い出すし,式神たちは絆を切ってくれない.何もかも思い通りにいかないウツホは,今度は闘神士たちから絆を切らせようと揺さぶりをかけます.皆の笑顔のために闘うというユーマには,今すぐ全ての人間を笑顔にしてみせろと無理難題を.笑顔は,その場を取り繕う仮面に過ぎないとも.穏やかな日々を取り戻したいマサオミには,現代のどこが穏やかなのかと指摘する.もはや過去の自然は戻らないからマサオミの穏やかな日々だって戻るわけがない.
そして最も性質が悪いリクには,お前には何もないと真実を叩きつける.宗家として,笑顔のため,式神のため…これまでころころとリクが目的を変えてきたのは,リク自身には本当の目的がないから.たった一人で千年後の世界にやってきた異邦人にとって,この世界は所詮他人のもの.この世界にリクのためのものはないのだから,絶対に譲れない欲などない.他人のための世界で,無駄に生きているだけ….
「僕には,あなたの言うとおり,何もないのかもしれません」ぼんやりと静かで生の喜びも感じられなかったリクの日々.しかしコゲンタが来たことによって,日々は波打ち変わっていった! 面倒以外の何者でもないはずのコゲンタを最初からあれほど大切にしていたのはここに繋がるのでしょう.コゲンタが連れてきた沢山のトラブルと沢山の仲間,それから,信頼.そして…人の役に立って,周りの皆が喜んでくれそうなこの瞬間.
何も持たない空っぽの少年が欲しかったのは,誰かの役に立って記憶の片隅に少しでも置いておいてもらうこと.異邦人がここにいたという小さな証拠.…それは確かに欲だけれど,同じように空っぽのウツホすら抱いたほどのわずかな望み.こんな欲すら人の罪と言い切れる存在は,きっといない.
リクに続いてウツホの糾弾をひっくり返すユーマ.確かに全ての笑顔は無理かもしれないけれど,今は笑顔にさせる力を周りに与える存在になりたいユーマ.それはランゲツに出会ってはじめて知った,大切なこと…それはたとえば父のように,母のように.道は間違っていたけれどミカヅチのように.そしているだけで自分を支えてくれたミヅキや,ソーマのように.一人では無理でも,沢山の人が笑顔を守れば,全ての笑顔に限りなく近づいていくだろう.
そしてマサオミ.ウツホが自分たちを救ってくれた恩を,マサオミはキバチヨとともに千二百年忘れませんでした.救世主としてのウツホを覚えているマサオミにとって,自然を愛する心に溢れた彼もまた「みんな」.確かに今の世は穏やかな日々には程遠いかもしれないけれど,マサオミやキバチヨはウツホとともに戻りたい.何も持たない空っぽのウツホのことを,今,心から受け入れてくれるのは彼しかいない.
どうしようもない自分なのに,支えてくれる,教えてくれる,ともに歩いてきてくれる…「たったひとりの式神との絆が,僕/俺たちを救ってくれたんだ!」

式神の存在を小さな灯として,闇を歩んでついに極にまで至った3人の闘神士.その高みは,常人ならざる力を持つウツホにならばわかるはず.3人の言葉の中に自分との共通点を見出したものの,コゲンタ・ランゲツ・キバチヨの3体の名を砕いてしまうウツホ.闘神士たちにとって替えがたい存在を奪ったウツホは笑うけれど…全ての式神が消えて節季も失われたこの世界に絶望することもなく,ただ真っ直ぐにウツホを射る3対の瞳.闘神士たちはウツホに何を言おうとするのか?
いよいよ最終回! 式神を失ったはずの闘神士たちは何をどうやって大団円を導くのか.現世の連中,特に自分よりもリクを心配しているモモも気がかりです.敵を倒して終了という道はもはや選べない本作で,極神操機の連中はどのようにしてウツホを救うのか.力はいらないとかあの頃に戻りたいとか展開はいくつか考えられるけど,それをあと1話にきっちり入れ込んで別れまで描ききる時間はあるのか.そしてボート部は,世界を制覇できるのか! 次回,最終回に続きます!

|

« 焼きたて!!ジャぱん#46 | トップページ | 9月終了アニメ雑感・2 »

レビュー◆陰陽大戦記」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 陰陽大戦記#51:

« 焼きたて!!ジャぱん#46 | トップページ | 9月終了アニメ雑感・2 »