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アストロ球団#14

「野球は人殺しの道具じゃないの巻」

終戦以来,死に場所を求めていた元特攻隊の氏家は,己のビーンボールに全精力を込め,アストロどもを次々に撃沈していく.戦中派が投げているとは思えないような恐ろしい球によって球七と球三郎は潰される.そして最後の1球は鮮やかな血の花を咲かせ,見事球一を仕留めた.球にこめられた青春の妄執はその一瞬で昇華して,抜け殻の氏家は全ての恨みを忘れて消えていくのだった.

名選手の妄執が痣となり青年たちの運命を狂わせていく「アストロ」.戦争がなければ今になって死にかかりながら野球をやらねばならない気の毒な超人たちが生まれることもなかったはずで,だから,戦争なんかやっちゃいけない.今回リタイアしていく氏家もまた,戦争の妄執に全てを狂わされた男.特攻隊の生き残りとして死に場所を探した彼の旅は,不思議な明るさと切なさの中で終わっていきます.…野球と戦争.競いあうことと殺し合うことは違うけれど,良く似ている.

前半.華々しい死に場所を求める氏家の妄執はついにアストロ球団への特攻開始.まずは球八.穏やかだが強い心で安易に動揺しがちな仲間たちを支えるアストロの精神的支柱・母艦に対し,足にめり込む真っ赤なビーンボールを放つ.当たったところは焼け爛れて骨まで見えるってんだから,常人が何球も投げられるような球ではありません.
野球のルールの中で合法的にアストロを潰す.これぞデスマッチの真髄であり,氏家はその忠実な体現者でもあります.華々しい舞台の上で潰れることをうらやましがる死に損ないの未練は深く,何も知らない彼らの子の世代に代償を求めるわけです.…己の無念を後の世代に無理やり押し付けるのは沢村と一緒なんですが,戦争の未練を球場で満たそうとするのはあまりにも場違いに過ぎる.
戦中派の青春の上に球一たちの青春がある.けれどそんな花の下の闇を知らない無邪気さゆえに,氏家は球一たちを愛して憎む.死に損ないの命を凝縮した平和に対する恋慕と恨みの籠ったビーンボールは,アストロの切込隊長・駆逐艦球七を仕留めます.
もちろんデットボールなので塁には出られても,骨が剥き出しになる怪我と1塁分の進塁の価値を比べるとアストロの支払いはあまりに高い.けれど死出の旅に出た氏家を無粋な乱闘で止めるものもなく,球四郎に戒名までも準備された神風は球三郎を撃沈.ただし投げる氏家の気力も体力も1球ごとにえぐり取られ,ついに残る力はただ1球を投げ切るのみ.それは,燃料も片道分の黄昏の旅路.
球四郎が餞として与えた戒名は奇妙院幻烈居士.それが書かれた位牌を額に,氏家は念願のラストステージへ.死に場所を求めてここまでビーンボールを投げ続けてきたとしたら実に迷惑極まりない投手に違いないものの,それでもこれこそが彼自身が貫いてしまった道.そんな道が切れる場所で球四郎と最後の握手をかわし,巨艦・球一に特攻をかける! 「さらばじゃー!」と絶叫する氏家が幻視するのはきっとあの戦場…彼にとっては現実は幻,幻こそ真実.自分自身が散るはずだった空を海を夢想して,幻の如き現実を貫き打ち砕く! ついに社会に適応できなかった哀れな男が投げる1球は,血濡られた美しい花を咲かせます.
ボールの縫い目を爪で切り,鼻血を垂らしながら投球に入る.限界を越えた血は老いた体を突き破って頭から一気に噴出! …凄くシリアスな画面なのに,映像が暴力的に面白くて涙が出そうだ(苦笑).球一はナマクラ球をホームランへと変えたはいいけれどこれはデスマッチ.真の凶器は見事球一の首筋を切って飛び,全てを放出した氏家は倒れる.見事に球一を仕留めた氏家の髪は真っ白に.あの一瞬に,持てる限りの妄執と熱と力を注ぎ込んで失ったわけです.
妄執とともに命を投げた氏家はかろうじて生きてはいたものの,全てを放出しきったことによって情熱のみならず記憶までも失ってしまいました.あれほどまでぎらぎらと輝いていた刀はただの棒切れにかわり,戦場は幻へ戻る.不思議そうに周囲を見回す氏家の様子が淡々としているのが,血のしたたるレバーがいきなり干物に変わってしまったかのようでひどく面白い.ちなみに氏家の最後の魔球の秘密はやはり球の皮.薄い皮が油断した球一の首をかき切ったわけです.
てなわけで早速氏家の特攻によって傷だらけになったアストロどもですが,さすが本拠地が完成しただけのことはあり,スタッフに女医さんが追加されました! 野郎だらけのクレイジーな世界に華麗に降臨した天使様なので全員で崇め奉るべきだと思うんですが,野球バカの超人たちにはこの有難味はわからないんだろうなぁ…(苦笑).

後半.アストロ抹殺さえ実現できれば手段は問わない球四郎は,彼らの結束が強まって叩きにくくなる前に全員を仕留めるつもり.抜け殻となって退場した氏家に代わってマウンドに上がり,早速球五を血祭りに上げる! …あの球四郎が仕掛けてくるんだから100パーセント罠だと理解していても,シュウロが球五に願った通りにいつでもまとも野球をしようとする真面目さが完全に裏目に出ています.
サードから殺人罪にならない程度のタイミングで球を渡されたあと,球五を襲う大門,たかが1塁がここまで遠くかつ痛いものだとは…というかもう完璧に守備の範疇を越えている陣流拳法の炸裂ぶり.よりによってアストロのホームゲームだってのに,審判の目は一体どんな節穴なんでしょうか.
いきなり肋骨を折られて内臓に刺さって要するに戦闘不能の球五.無茶すんなって怒ったはずが重体患者を運び込まれる天使こと女医さんの心労は尽きないどころかもっと深刻になるばかり.しかもこの先はビクトリーも負傷者が出てくるから,先生自身が一試合完全燃焼しなきゃやっていけない状況です.
仲間を傷つけられた球七は猛り沸騰し,それを同じくかなり沸きやすいはずの球一が止める.さすがにやや我慢を覚えてきたみたいですね.プレイでやられたらプレイでやりかえすのは正しいけれど,ビクトリーのプレイは野球ではない.だから,どうしたって我慢できないのが人間というものであり,球七は言うに及ばず,球三郎や球六や球二までもが猛ります.
球六は怒りにまかせてカミソリの竜へと戻り,殺人X打法の封印解除.凶悪なピッチャー返しからチームリーダーである球四郎を守るためにダイナマイト拳が盾となったのはいいものの,その球でいきなりボクサーの商売道具がぶっこわれるのがやりきれない.いくら自信があっても,拳と硬球じゃ勝負にならないだろ(苦笑).しかも拳があれほどまでに慕っていた球四郎ときたら「ほっちょけ」とあまりにも冷淡.全ての選手は球四郎の所有物であり手駒であって,部下ですらないビクトリーには,まともなチームワークは存在しません.「初の犠牲者」という野球中継では破格の表現を受けつつダイナマイト拳が退場.
続く球八は球四郎のスカイラブを見事打ち返して球六を帰す.けれど足の怪我によってゆっくりしか進めない彼自身を襲う敵の「守備」の雨あられ.けれど、ルールから逸脱した超攻撃的なビクトリーの守備どもを全てふっ飛ばし!「もうたくさんじゃこんなとち狂った野球地獄は!」と視聴者が思わず深くうなずいてしまいそうな名言を吐く球八!
球八もビーンボールで大怪我をしているし,大事な兄も傷つけられている.だからと言って怒って相手を傷つけるのはただの野蛮な戦いであり,野球ではない.沢村や氏家の妄執を生んだ戦争と同じようなものを超人たちがこの球場で演じるわけにはいかないのです.「俺たちの野球道は,こんなもんじゃなかったはずだ!」…確かにビクトリーのデスマッチは野球ではないけれど,アストロの野球道も野球かどうかはかなり怪しいんじゃないか?とか思いつつ,次回に続きます.

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