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アストロ球団#11

「常軌を逸した超人プレイの巻」

アストロに先立って巨人と試合する権利を手にしたビクトリー球団.シュウロは来る7月23日にビクトリーと戦い,勝った際には球四郎をアストロ球団に入団させ,負ければアストロ消滅という約束をする.
実家に戻った球三郎は,兄・大門と再会する.自分を守ってくれた幼い思い出の片鱗もなく,ビクトリー球団のデスマッチ野球で弟もろともアストロを潰す気の兄.もはや自分の身1つではアストロの仲間たちを守れないと思い知った球三郎が家を去る間際,あの球六…カミソリの竜に出会う.

ついにはじまるデスマッチの壮絶なる前哨戦がもう無茶な「アストロ」.球四郎という稀代の策士のところに集った荒くれどもに,デスマッチのための殺人技を仕込む者こそ球三郎の兄である大門.美少年の兄は荒ぶる殺人機械.その能力は確かに凄いけど,球四郎にすらもうちょっと丸みがほしいと言わせるほどの尖りっぷり.この大門のイキっぷり,言い換えればあまりの一杯一杯感が,同程度の能力を持ちながらもずっと遊びのある球四郎の人間的な魅力をより引き立てます.でも,あんな特訓やらかすってことは,実は中身は良く似ているのかもしれないなぁ….

前半.いきなり球四郎率いるビクトリーに挑戦権を奪われた上に徹底した挑発を受けたので,峠会長の元に自ら談判に行ったシュウロ.穏やかのようでひどく尖った会見に乱入するのは会長の孫であり今回の絵を描いた球四郎.なんたって知らないうちに勝ったら球四郎さんを僕にくださいみたいな状況になっているので,人の好みを無視して商品にされた球四郎は介入せざるを得ないわけです.
シュウロが決めた決戦の日は,3ヶ月後の7月23日.オールスター戦にぶつける所存です.場所はもちろん新築のアストロ球場.賞品は球四郎と,アストロ球団の消滅.…あれ? 巨人との対戦権は?
その頃,次の戦いが自分と深く関わることを知った球三郎は,ひとりで陣流拳法総本山,自分の実家に戻っていました.巨大な門に飲み込まれた先には.見えずとも過去と同じ懐かしい雰囲気が,…兄と練習した幼い日々.父に叱られる自分をその身でかばってくれた優しい兄.過酷な後継者レースに巻き込まれた2人でも,確かにあの時は心が通じ合っていた.兄は弱い自分を,世界で一番強くなれと励ましてくれたけれど.
それは既に幻で過去の話.今の兄はもはや弱い者をいたわってくれたあの人ではない….見開かれた眼.額から大きな傷の走る異様な容貌で睨むのは,自分と同じビクトリー球団に引き込まれた荒くれ連中.それぞれに得物を持った荒くれたちは襲いかかってくるものの,陣流を会得した者に敵うわけもない.同じチームの連中に刻み込むのは,どんな状況でも標的を殺すデスマッチ野球の基礎.容赦なく,完膚無きまでに弱者を叩きのめすこと.…球三郎が感じた兄・大門の気配は,鬼神の如く荒ぶっています.
見えぬ球三郎が気配だけで兄を見ていたのと同じく,大門もまた球三郎の存在を見もせずに感じていました.柔和な弟と強面の兄は,兄弟とは思えないほどに似ていない.自分の命を差し出してでもアストロの仲間たちを守りたい弟と,弟もろともアストロ球団をぶっ潰すつもりの兄の意思が通じ合うことはない.…なんだってここまで兄弟仲がこじれたのか,というのが,ビクトリー球団戦での大きな鍵となり,同時に壮絶な見せ場の原因をつくります.
もはや兄の翻意は期待できないと感じた球三郎は,道連れ覚悟の戦いを挑むことに.いきなり始まる因縁の兄弟拳法対決,超人としての心眼がなければここまで無茶な勝負を挑むことはできないでしょう.兄と弟,ビクトリーとアストロ,見える者と見えない者がぶつかりあうまさにそのとき! 救いの女神,あるいは雰囲気をわきまえない無粋な女性がその対決に割って入ります.
今や総帥の地位につきこの家の主人である大門と,家と陣流拳法を捨てて外の世界へと逃げ出した球三郎.そして球三郎が未だ隠している2人の間の真実.…言わねば大門に永遠に恨まれる秘密ならば,言えば大門も間違いなく球三郎を許すに違いないということか.彼が隠しているのは,それほどまでに大門に大きな衝撃を与える爆弾のはず.結局勝負は水入りで,大門は弟が苦しむ様が楽しくてたまらない.
アストロを傷つければ弟が苦しむ.それを再認識したであろう大門の特訓は凄まじく,彼を引き込んだ球四郎にすら人間としての丸みが欲しいと感じてしまうほど.球四郎の分析は実に当を得ていて,スーパースターには純粋な勝負強さ以上にファンを惹きつけるに相応しい人格が求められます.そんな意味では,人間味溢れすぎで憎めないアストロ球団の方がずっとスター性は強い.しかしこの問題すら自分の演出でなんとかできると判断する球四郎恐るべし.さすがは超人.何をやらせたってパーフェクト!
結局何も出来ずに戻ることになった球三郎は,実家の門の前でカミソリの竜こと球六に出会います.髪の寝たままの球六に仲間になって欲しいと言い寄るものの,未だに球四郎に乱された心が癒えていない球六はまずはおことわり.その手で人を殺してしまったことを未だに整理できていない彼には,もう少しだけ時間が必要…けれど,人の生き死にを背負っているのは,球六だけではありません.今は別れた球三郎の背にも,ずっと前から重い荷物が負わされているのです.

後半.特訓のおかげでぼろぼろの超人どもはいつもの食堂でたらふく食事.ご主人達のご好意がうれしいというか,シュウロは選手の食事という非常に重要なことを野放しにするなというか…(苦笑).そこに戻ってきたのが鬼を見てきた球三郎.細かい説明はアストロらしく全部ぶっとばし,いきなり特訓を申し出る! 球一の命を守るために球一の命を危険にさらすようなとんでもない特訓をしなきゃならないらしいってのはどうにも矛盾.とはいえ兄・大門の鬼神ぶりはまともではないから,球三郎の特訓もまともな領域には留まれない.
球四郎が企画し大門が教え込むデスマッチ野球は,野球のようで野球ではなく,アストロを抹殺するための攻撃手段.…古今の行き過ぎたスポーツ漫画・アニメだとやってる最中にもはやスポーツとは言えないものに変わるってのはよくあることですが,本作の場合は試合する前から普通の野球をやることを放棄しちゃっているのが無茶苦茶というか,ずるいというか…(苦笑).何はともあれ大門が絡んでいるということは流血は避けられないし,どうも球六までビクトリーに行っちゃったっぽいという報告を受けて球一発奮.勝つため…というよりは生き残るために過酷過ぎるプレイに挑戦!
特撮ヒーローらしく採石場で特訓する球一以外の超人ども.ただのノックではなくて,ホームというよりはキャッチャー目指して突っ込んでくる敵にいかに耐えるかを特訓している2代目球二.ただ,この段階では,まさか敵のヘルメットやバットがあんなことになっているとは思っていないわけですが…,ついこの間まで裏方しかやってなかった彼にとっては,少なくとも他の仲間程度のパワーを身に着けるのは何より重要.
そんな一同の耳に聞こえてくるのが,森から響く球一のすごい悲鳴! 球三郎に連れて行かれた彼が一体どんな目に遭っているのかを見に行った仲間達が見てしまったのは,まさに特訓の範疇を超えたとんでもない光景.手足をくくり逃げられない状態にして,球三郎が球一の背を釣鐘がわりに宙吊りのでかい丸太を打ち込んでおりました! 既にやりすぎのプレイと化しているこの光景に,さすがの仲間も呑まれてしまいます.
いやもう普通に死ぬだろとしか言いようのないハードすぎるプレイ.そりゃ仲間思いの球七は球三郎に抗議しようとするものの,球三郎本人もやりたくてやってるわけじゃないのがよくわかるから文句も言えない.仕方なく球七は球一を茶化して元気づけようとするけれど…球一に至っては痛みで意識が飛んでおります.こんなに痛々しくてはどうしたって茶化せるわけもなく,仕方なく球一の血をぬぐってやる球七と,「…すまねえ…」と蚊の鳴くような声で答える球一.たかが野球の特訓なのに,なんでこんなことに!
球三郎曰く,背中の8つの急所を鍛えるためには丸太ぶつけしかないらしく,球七は自分が邪魔してしまったことを痛感.…でも,本当にこれしかないのかどうかは,謎.「お前達を見てると,つくづく男の戦いには際限がないことを思い知らされるぜ!」という球七の言葉は,そのまま視聴者の感想そのものでもあります.お前らの特訓は絶対に行きすぎなのでもうちょっと際限を持ってくれ(苦笑).
ビクトリー戦に際して球一と球三郎にかかった重みは並ではない.だからこそ.仲間達はその苦しみを少しでも軽くするべく,自分たちをさらに鍛え上げることを決断.球七球八は兄弟で旅立ち,球二は女房役として球一のプレイに付き合い,そして道を見失った球五は親とも慕う長島のところに赴いて,将来の敵から良い助言をもらいます.相手がどうだろうと自分が持ちうる限りの力を発揮しろ,正道を歩めという長島のすがすがしい教えに従って己の野球道に戻った球五は,格闘アニメじゃないけれど,バンアレン特訓室・高重力場での特訓へ!…その特訓装置のどこが正道なのかは,あえて追求しないであげたい(苦笑).
そしてこの戦いの業を背負った球三郎.彼の苦悩の意味を真の意味で理解するものは仲間にはおらず,彼自身もそれを共有するつもりもなく.だからこそ,球三郎は兄の手から仲間達を守るために,ひとりで鬼にならねばなりません.敵・ビクトリーを率いる将は,超人の証であるボールの痣を「烙印」とうそぶく球四郎.彼が超人としての宿命にここまで逆らうのは一体なぜなのか….そして,さらに明らかになる因縁ともっと溢れる血! 次回に続きます.

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