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アストロ球団#13

「あの日の悪夢はまだここにあるの巻」

1973年7月23日,巨人軍への挑戦権をかけた運命の一戦がついにはじまった.アストロ球団は球六を加えた7人で,球四郎率いるビクトリー球団に挑む.1回の表は球一が傷つけた掌で会得した脅威の変化球によってビクトリーを抑える.その裏,ビクトリーのピッチャーは氏家.途方もない前進守備や大門の殺気で不穏なグラウンドに上る主将の球一.氏家は渾身のピッチングで球一の体を狙うが,球三郎の過酷な特訓で鍛えられていた球一は倒れない.続く球五の長打によって1点を先制したアストロ.しかしビクトリーから感じられる殺気はますます強まるばかり.球六はその殺気の中心である大門に,かつての自分と同じようなおびえを感じ取るのだった.

前の戦いでも既に大概無茶苦茶だったものの,今回の試合はそれに輪をかけておかしくなっていく「アストロ」.ロッテ戦と大きく違うのはビクトリーが球四郎率いる色モノ軍団であること.野球経験者がほとんどいない急造チームが得点関係なしのデスマッチを仕掛けてくる…って,敵が仕掛けてくるのはもはや野球の試合ですらないわけで.野球というルールの中でいかに合法的にアストロ超人どもを殺していくか,それしか考えていない球四郎が起用した先発が凄い.戦争によって生まれた沢村の妄執の子である球一たちに,同じく戦争によって生まれた妄執が襲いかかります.

前半.ついに始まる運命の1973年7月23日.オールスター戦を延期させるほどの社会的な影響力を持ったデスマッチを見たい人々で球場は溢れんばかり.アストロとビクトリーの応援合戦も華々しく,明日はきっとオールスター戦に出るはずのスーパースターたちの姿まで見られるほど.日本中がこのアストロドームに注目し,超人野球の始まりを心躍らせ待ち構えています! …ただし,この先に待つのは実に凄惨な身を削る死合で,観客たちは恐らくそのことをまったく予感していないはずです.
1回の表.ビクトリーの攻撃でピッチャーは球一.その掌には自ら傷つけた深い傷が残り,投げる球はその溝の効果によって変幻自在の変化を見せる! なぜ手に溝があるとそんな球が投げられるのか,理論はよくわかんないんだけど(笑)さすがは超人,暴投かと思ったら直角に曲がってミットに収まるようなとんでもない変化を見せております.しかも変化は水平だけでなく垂直だってOK.こんな七色の変化球,既に巨人軍では攻略不可能じゃなかろうか.
凄い変化球で早速一人舞台を作り出した球一.しかし球四郎は余裕綽綽.なんたって彼の目的は試合に勝つことではないから,無理に攻撃し得点する必要すらないわけです.そしてそんな敵の狙いをいち早く察知して欲しい監督のシュウロときたら,試合中に飛んできた矢文に呼ばれてのこのこ退場.…またか(苦笑)! 超人たちを集めた責任者なんだから選手をほっぽり出して持ち場を離れないでいただきたい.前回はそれが間接的な要因となって人が死んでるわけだし!
球七が首尾よく2塁を盗んで続く打者は二代目球二.ビクトリーと来たら隙を見せればボールを掴んでバッターを殴り倒す気満々の超前進守備っぷり.打球にぶち当たることを恐れないあたりが怖い.さらに続くはこの闘いの主役でもある球三郎.花も舞い散る盲目の美青年はバッターボックスに立つものの,ファーストの兄の色濃い気配に呑まれている.音と気配で周囲の状況を敏感に感じる球三郎には目の見えないハンデはほぼないものの,それでも殺気に満ちた兄と交錯するのは怖い.大門は蹴りで球三郎を狙い,球三郎はそれをバットで食い止め…兄弟の諍いは明らかに兄が強い.
そして続くは真打,アストロの要・球一! …この顔を待っていたとビクトリーのピッチャーは膝をついて泣く.真っ向勝負の男の中の男を前に,好敵手に引き合わせてくれた球四郎に感謝する氏家の態度がおかしい.さらにビクトリーの全員が南無阿弥陀仏を唱えるあたりもおかしい.静かに狂って殺る気満々の氏家は案の定全身全霊のスクリューボールを球一の体目がけて放つ! …別に得点はしなくてもいいのかもしれないけれど,全力でデッドボールを狙っていくのはルール的にはOKなのか?
投げた手が地にめり込むような,氏家の凶悪なビーンボールをその背に受けて…しかし球一は球三郎と必死でこなした例のハードなプレイの成果で健在! 球一が敵ピッチャーからその命を狙われるのも,そんな命の危機を無茶苦茶な特訓の成果で跳ね返すのも全て陣流の因縁あればこそ.大門と球三郎の呪われた兄弟喧嘩は,既にビクトリーとアストロに根づいて包み込み縛り付けているわけです.
ビーンボール魔人の氏家は,以前独立リーグで血塗られたスクリューボールの投げ手としてその名を知られた男.しかし彼は今に比べるとずっと老け込むのが早かったはずの70年代の人間としては,想像できないほどに姿が若い….
そんな反則魔人の前に立つのが毎度ながら地味な球五.しかし今回は重力室での特訓の日々と,父親的存在の長嶋の与える二世称号という仰々しいお飾りが埋もれがちな彼を救う,はず! 重力室での危険な特訓の成果として,ここ一番のこのときに,妙に壮大な背景とともに待望のワープ打法が炸裂だ! …予告で見て爆笑した画なんだけど,2回目でもやっぱり面白いなぁ(苦笑).こうしてチャンスに強いところを示した球五ではあるものの,折角の見せ場はあっという間に球三郎に奪われてしまう.そんなツメの甘さがやっぱり球五だ.
3塁を蹴ったところで球三郎は兄と向かい合う.右行って左行って最後には上に飛ぶというやたら息の合ったお見合いぶりはさすがは兄弟と言うべきなのか(苦笑).結果としてはここで球三郎はアウトとなるわけですが,あの大門に対して正面から喧嘩を売れたのは意外と大きな成果ではないかと.殺気に萎縮したままではそのままなぶり殺しにされるのがオチ.恐怖を振り切ることができなければ,兄越えはできないはず.
そして今回は敵だけでなく味方からも監視されることになった人殺しの球六.彼が見せる生き様ことアンドロメダ大星雲打法もまた,前回の予告で爆笑を誘った素敵スケールの映像なわけですが(笑)その打球の銀河のごときプレッシャーすらも胸で受け止めアウトにしちゃう大門の胸板恐るべし.敵よりも先に味方に漢を見せなければならない球六も,さすがに最初から活躍することはできない.
しかし実は球三郎と大門の兄弟ゲンカの鍵となるのがこの男.球四郎の誘いを断った彼が大門の脅えをよく嗅ぎ取っているのは,球六が大門の置かれた状況を正確に理解していればこそ.似ていると知っているからこそ心を読み取れる球六は,まさにもうひとりの大門.

後半.ビクトリーの打順は主役,伊集院大門から.ヌンチャクを持ってバッターボックスに入る彼の狙いはもちろん球三郎.どんな野放図な軌道もホームベースを通るものだと狙い打った打球は球三郎の顔面を狙い,しかし球三郎はこれをのけぞって避け掌底で打ち上げピッチャーに戻す.けれど,デスマッチでは打球などただの陽動,本命であるヌンチャクに狙われた球三郎をその身でかばってくれたのは…球六だ!
自分が消した命の代償に,その命が守ろうとしたものをその体で救う.これこそが球六の歩む贖罪の道.もはや戻らない過去を贖うために選んだのは,木ではなく己の身を削ること.その機会を早速与えてくれた大門に礼をいいたいくらいのええかっこしいである球六の痛々しい姿に,あの2代目球二すらも心を動かされます.アストロの結束はまさに一秒ごとに強まり深まっていくのです.
そんな結束ぶりを警戒した球四郎は,ムショ帰りの狂った風に命を下します.不自然なほどに若々しくぎらつく氏家は,ビクトリー全員の敬礼を受けて最期の旅路へと出撃! 既に消えていなければならない戦中の妄執の塊は,その妄執の子であるアストロに対して何をやらかそうと言うのか.死に花を咲かせる氏家の最期の出撃の首尾はいかに! すいません予告でまた吹きました(笑)! 珍しく綺麗どころの出てくる,次回に続きます!

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