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アストロ球団#12

「因縁と生命を球遊びに乗せての巻」

アストロ球団とビクトリー球団の争いは,同時に球三郎と大門の宿命の対決でもあった.球三郎のみが父の実子であり,それゆえに跡目争いで敗北したと思った兄は父を殺した.自分自身は育ての父に殺された初代総帥の子であると知ったがゆえの凶行だった.兄に絶縁されて家を追い出され,そして今がある球三郎.彼は仲間を守るため,逃げることはできない.
決戦までの3カ月は両軍ともに激しい特訓の日々となった.大門は球四郎の思惑通りにビクトリー球団を殺人部隊に鍛え上げ,アストロ球団はそれぞれの考える激しい特訓に血と汗を流す.運命の日は急激に近づきつつあった.

決戦を前に熱く激しく高ぶる「アストロ」.前回の球三郎の凄い特訓に代表されるイキっぷりは,仲間たちを更なる特訓の悪路へと導きます.それほどまでに陣流の血と総帥の地位を巡る争いは濃くて激しく,また切ない.その上過去には真実が眠ったまま…とか書いているとつい癖で総帥ではなく宗家とか書きそうになってしまうわけですが,実際に何も知らないのは優しい球三郎ではなくぶちぎれっぱなしの大門の方なわけです.

前半は球三郎の回想の続きからスタート.大切な超人仲間を守るため,2度と袖を通したくなかった拳法着に再び身を包む球三郎.彼が思い返すのは,自分が家を追われるまでに起きたこと.…全てが変わったのは父が自分を陣流の後継者として指名したあの日.強い兄を差し置いてなぜ自分が後継者として指名されたのか.父は球三郎が総帥となるのは定めと言うけれど,そんな定めは球三郎だけでなく,大門にだって納得できるわけがない.だからこそ起きたあの凶行…兄は父をその手にかけた.
今際の際の父は球三郎に,兄を恨むな,全ては父の身から出た錆,何も知らないお前には不憫なことをしたと詫びて絶命.その言葉の意味もわからないまま,肉親を目の前で失ってしまった球三郎を大門は笑う.父は泥棒猫.初代総帥を闇討ちで殺した卑怯者.そして自分こそ,その初代総帥の子! 球三郎とは血が繋がっていないどころか,宿命の敵同士!
力は遥かに劣る球三郎の父は,大門の父である初代総帥を闇討ちで殺した,と言い切る大門.球三郎が次期総帥に選ばれたことこそ,泥棒猫の本当の子である証…とは言うけれど,これは果たして真実なのだろうか.狂乱する大門は敵である伊集院家を根絶やしにしてから陣大門に戻ると宣言し,幼い頃はあれほど大切にしていた弟に襲いかかります!
一度拳を交えれば血縁無視ってのが陣流の掟.そんな陣流を極めた大門はそこに在るはずなのに目には見えず,球三郎は戸惑うしかない.特に殺す気の有無が明らかに違う2人の気合の差はあまりに大きく,今のままでは兄の宣言通りに球三郎は嬲り殺しになるばかり….このままではいきなり未来を消されそうな球三郎が生き残る術はどこにあるのか.そして一応野球ドラマのはずなのにこんな格闘ドラマでいいのか.
兄相手には本気になれない球三郎と,抱えた怒りゆえに本気を通り越してぶちぎれている大門.もはや球三郎の命運もここまでか,と思われたそのとき,2人の上に落雷で大木が倒れてくる.大門が手を下さずとも倒れる幹が球三郎に引導を渡す…はずが,なぜだか球三郎をかばってしまうのが,人の心の不思議さ,面白さ.
大門を駆り立てたのは過去の兄としての記憶.記憶の中のかばうべき大切なものを反射的にかばって身代わりとなった大門.最後の最後で彼を襲ったフラッシュバックが彼の手足を勝手に突き動かしたわけです.もちろんそんな行動を取るだなんて,大門自身が一番予測できなかったに違いない.改めて弟には絶縁を申し付け,しかしその顔には彼が兄以外の何物でもないことを示すような大きな傷が走った大門.
こうして家を追われた球三郎は,将来の美貌と才能でレーサーとして大成したあと,一度は死んだところをヘリから地上に落とされて(笑)蘇った上にアストロ球団に入ったわけです.追われたときにはなかったものを,今の球三郎は守らねばならない.沢村の妄執によって刻まれた痣によって引き寄せられた仲間どものためにも,その命を盾とも変える所存です.
てなわけで兄弟の因縁をも巻き込んだアストロ対ビクトリーの戦いは迫る.ビクトリー側では苛酷な特訓がついに仕上がり.鬼軍曹こと大門のおかげで見事に鍛え上げられた野良犬たちは,不敵な表情は以前のままですが見事に統率されています.ちなみに三兄弟はアフロから坊主に変わったんですが,慣れない坊主ではちょっとした衝撃でも頭が切れて血が出そうで怖いや(苦笑).プレイヤー兼監督の球四郎に見せた特訓の成果は,打球を軽業的な守備によって素早く1塁に戻し,そこにやってくる打者を大門がその腕で仕留める,という連携を暗示するもの.アストロは,恐ろしい体術の使い手である大門が守る1塁を突破することはできるのか.
もちろんアストロもアストロで無茶に無茶を重ねています.危険な重力室で特訓する球五,球七と球八は火山で命を削り,さらに球三郎の凄いプレイこと過酷な特訓を生き抜いた球一は,球二に止められつつも新たな試練に挑む.丸太特訓以来,球一役の雰囲気が段違いで鬼気迫るものになっているのが良い.あの絶叫で役者が何かを掴んだ感があるなぁ….勝つために必要ならばどんなことにも怯まない.これもまた血塗られたアストロ魂.その運命ゆえに必死で止める球二の言うことを聞かずに回転する電動ドリルをその手で掴んで叫ぶ球一.ビクトリーを倒すには,ここまでしなきゃならないのか.

後半.ついに間近に迫るデスマッチ.ここまでで腹一杯になるほど因縁と苦しみを見せつけられたのでまずは心温まるものを.アストロ御用達の定食屋には,選手のかわりにデスマッチ内野席への招待券が届きました! なんせ彼らの食生活は実質的にこの小さな店が支えてきたわけで,その代償をプラチナチケットで支払うのは当然…というか,主催者ならこの手のチケットは容易に手に入るだろうから,ものすごく安く上がっているような気がするんだけど(苦笑)当人達が喜んでいるならまあいいか.
ついに完成した広い西武…ではなくアストロドームに佇むシュウロ.彼が時間を財力を注ぎ込んで作り上げた美しい夢の舞台に,これからはここを家とするはずの6人の超人たちも登場.全員特訓のおかげでぼろぼろになってますが,誰一人逃げ出すことも,命を落とすこともなくやってきた! ユニフォームも正式なものへと改められるわけですが,そのシーンにユニフォームの販売宣伝テロップを乗せてくる局の商売根性が大好きです(笑).
球一にはこのアストロを率いる将として,天駆ける獅子の如き活躍を.2代目球二にはどんなときにも諦めずに奇跡を起こす粘り強さを.球三郎は死という絶望から命という希望を拾ったように,試合の中でも希望を求めることを.球五には,絶対野球の範疇を越えるに違いない殺伐とした試合に,真っ当な心地いい風を吹き込むことを.球七にはアストロ1の火の玉としてアストロガッツを.球八にはその爆発的な底力で勝利への架け橋となることを.シュウロは選手たちそれぞれに期待するわけです.さらにここに居たのは6人ではない.残る1人としてその姿を現したのは,放浪の末にここに辿りついたカミソリの竜!
そりゃもちろんアストロ超人たちにとっては彼は初代球二を殺した相手.特にその最後を看取って魂を受け継いだ2代目球二にとっては許せるはずもない.球七球八も同じ気持ち.…しかし,そんな彼が心底苦しんだことを知っている球三郎や球五は彼を受け入れたい.アストロの総意は2つに割れ,残った球一が全てを決めることに.仲間たちの怒りも,敵を受け入れようとする心も,そして殺した苦しみをも理解した上で,ぶつかりあう心を1つに束ねて導くことが将の仕事なら,まさにこれがその最初の試練.
竜は,球二を殺した事実と魂を背負って血塗られた道を歩む覚悟を決めている.敵だけでなく味方にすら疑われても野球だか格闘技だか死合だかわからん戦場に立つことこそ,竜の選んだ贖罪の道.ボールの痣に賭けてそこを歩むのだと決めた彼を,球一はチームの一員として受け入れます.こうしてアストロ球団はついに7人に! …専用球場を持って巨人軍に挑もうとするチームの癖にまだ9人揃っていないあたりがやはり何とも言えませんが(苦笑)ともかく1人増えただけでも素晴らしい!

7月23日.オールスター戦の真裏で大一番がついにはじまる.どう見ても凶器なバットやらヘルメットやらを揃えてくるビクトリー球団と,威風堂々真っ直ぐに立つアストロ球団.ビクトリーを率いる球四郎を含め,8人の超人と奇想天外なスペシャリストどもが繰り広げる苛烈な戦いは,一体画面にどんな凄いものを映し出すんでしょうか.しかもビクトリーには刑務所帰りの最後の秘密兵器が存在.彼はデスマッチ野球の中でどんな役割を果たすのか! …すいません予告映像見た段階で吹きました! 次回に続きます!

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