第12回しりとり竜王戦・本戦
この記事は第12回竜王戦,準決勝以降の記事です.予選の様子は前の記事か以下のリンクでどうぞ.
R'sM: 第12回しりとり竜王戦・予選.
勝ち残ったのはほっしゃん。・板尾(130R)・山根(アンガールズ)・千原弟(千原兄弟).ベテラン2人と若手2人のこの舞台では,結果としては順当にベテランが若手を叩いていきます.自分自身の中にはない言葉がテーマとなった場合にどのようにしのぐか,そしてしりとりは本当に言葉と言葉だけで戦うようなものなのか.勝負的には今一つ煮えきらない準決勝も含め意外と見所満載です.
準決勝第1試合はほっしゃん対千原.予選ではテーマに恵まれて勢いに乗ったほっしゃんと,勢いに乗った若手の陰で確実に点を重ねていた千原の対戦.予選の結果だけならほっしゃん有利にも見えるけれど,本当の実力差は同じ土俵の上に上がらなければわからない.不得意なテーマをどうこなすかとか,ぎりぎりの状況でもルールを忘れずにいられるかとか(笑)!
準決勝第1試合の競技は「しりとりセンスマッチ」.テーマに合った言葉でしりとり.
テーマは「ジェントルマンな言葉」.「ワンちゃんからお先に」からスタート.
そもそも何が紳士なのかを探るところからはじめなければならないこのテーマ.続く言葉が思いつかずしばしお見合いを続ける2人.結局一応スロー判定を使ってほっしゃんが辛そうに先行し,「ニシンは逃がしてあげなよ」…紳士への道は遥かに遠い(笑).千原は長考の末に「ようこそ,校長室へ」ってどんな校長だ.マイネか.ほっしゃんは「ヘクトパスカルを,あなたに」と一杯一杯.いとうもいらねーよ!と無情に突っ込む.千原の「西日暮里から,失礼します」は…どうにもならないなあ(苦笑).少なくとも西日暮里は紳士じゃないもの.では紳士は一体どのような言葉を使うのか? この問いについに手を届かせたのがほっしゃんの「スカイマークエアライン」! でも「ん」がついたのでいきなり3点減点だ(笑)! 高級そうなカタカナという突破口に目がくらみ,足元の穴に落ちてしまって勿体無い.そしてああカタカナか,と気づいた千原が出したのは「スティッグマイヤー・リサ」…永世竜王の予告をなぜかひっくり返して使うという千原の巧みなテクニック.ただし,カタカナならなんでもいいってもんじゃねえ(苦笑).ほっしゃんの「サーティイヤーズオールド」も同じ! もうちょっと紳士について真面目に考えるべきなんだけど,千原の「飛びますよ,飛びますよ」とかは考え過ぎで迷走しちゃって,ほっしゃんの「ヨークシャテリアを彼に」もやっぱり迷走.ただし無理を重ねた回答そのものが醸し出す独特のおかしさが場に深く漂っているから,今なら何を言っても通ってしまうハイな状態.千原が「蒙古斑が,スペードの形をしてるんです」というテーマ無視の回答を繰り出せば,ほっしゃんは「スカイマークエアラインズ」とさっきの失敗を複数形でリカバーする.千原の「素敵なイブクイーンですね」というのはカタカナは入っているけど紳士ですか? ほっしゃんの「寝返りするなら手伝うよ」は紳士というより高齢者介護ではありませんか? 千原の「夜店で,チーズフォンデュ屋をやってます」に至っては,それは紳士のやることですか?
たとえ厳しいテーマでも,粘りに粘ることで稀に開ける不思議な世界があります.テーマにはまったく合ってないんだけどなぜか面白いという集団しりとりハイを巻き起こした終盤がやはり素晴らしかった! そのきっかけになったのはほっしゃんのスカイマークに違いないけれど,「ん」を回避するのは基本中の基本だしなぁ….
結果,ほっしゃん10点,千原14点で千原が決勝進出! 惜しかったのはやはり「スカイマーク」.あれを回避できていればきっと決勝進出だったはずですが,そこを避け切れない,あるいは減点された分をその後取り戻すことができなかったことこそ,ほっしゃんがしりとり新人であった確かな証拠ではないかと思います.
準決勝第2試合は板尾対山根.こちらも前の戦いだけ見れば勢いがあるのは明らかに山根.しかし,勢いというのは回答との相性に大きく左右されるもの.自分の中からテーマに合致する言葉を見つけることができればいいですが,できないときにはそこに近づくための努力を必死で続け,それができない時にはそのまま泥の底に沈むしかない.風はいつも追い風ではないのです.
準決勝第2試合の競技も「しりとりセンスマッチ」.
テーマは「頭のよさそうな言葉」.「恋人は数学」からスタート.
早速先行する板尾は「くの一の恋文は,シェイクスピアだね」と微妙な回答.山根の「根っからの,活字好き」はそろそろと賢い世界を手探りしています.それに比べると板尾の「きりんはね,…足していっても面白くないんだ」はいきなりとんでもないレベルに回答を引き上げる妙手.解釈に関しては審査員と視聴者にゆだねてしまう,いかにもベテランらしい強い手です.けれどそんな技術を持ち合わせていない山根は「大好き,勉強」と80キロの直球.彼なりのペースで賢さを表現するつもりのようですが,しりとりは短時間で上り詰めないと試合が終了してしまいます.山根の理解できる賢さは小学生レベルのもの.そこでわざわざ板尾は「ウルトラマンてね,結構バカだよ」と山根の切り開いた領域を踏み荒らす.それでもペースを守ろうとした山根は「夜中まで,勉強したこと,ありません!」と小学生の道を歩んだけれど見事に「ん」をつけて3点減点だ(苦笑).向かい風の中で必死でテーマをこなしていた山根にとっては最悪の失敗で,ここで勝敗が決してしまいます.板尾の「よしなよ,都立だよ」は中学生くらいだろうか? しかし良い.山根は「予想してました」とようやくテーマに合った解答を繰り出すけれど既に遅い.おかげで余裕のできた板尾は「誰にぬかしていうんだ,おう」とか言いかけて仕切りなおす.基本ルールすら意のままに変えるその様はまさに永世竜王.「誰に…誰に抜かしていやがるんだ,を,英訳してやろうか」…英語を使えばいいってわけじゃないんだけどなぁ(苦笑).ラストの山根は「閣下と呼びなさい」それは深緑の知将ですか?
向かい風の中を勝手に爆走した板尾竜王に比べると,必死で歩むばかりだった山根にはやはりこの舞台と相手はあまりにも重すぎた.「ん」で自爆したのも痛かった….
結果,板尾6点,山根0点で板尾永世竜王が決勝進出! 山根名人は,乗せれば抜群に強いところは初期の有野名人と同じタイプだと思うのですが,回を重ねるごとに有野竜王は様々な局面に対応するための器用さをも身につけていきました.…今回は発揮できなかったけども(笑).勝ち続けるためには勢いだけでなく耐えてこなす技術も重要なので,ぜひ今度の参加のときまでにじっくり研究してきてほしいです.
決勝は千原対板尾.準決勝は結果としては順当なものに.ぎりぎりのラインで安定していたベテランたちが最後の舞台で演じたのは,しりとりを越える新たなる世界.板尾対有野が見せた凄まじい空中戦とはまた違う,ささやかな寸劇が連続して展開します.にやにやと力の有り余る板尾永世竜王に挑んだ千原.2人はそれぞれ,詐欺師の仮面をつけました.
決勝もしりとりセンスマッチ.テーマは「詐欺師っぽい言葉」.
千原の「πは割り切れます」からスタート.
2人のキャラからすると最適のテーマによって場に火がついた! もちろん先攻する板尾は「スペースシャトルはね,これがあるから帰ってきたんですよ」…たぶん会社を騙しに行ってるぞこの詐欺師! それに対する千原は「予言しましょうか?」と街角で小さく稼ぐ.板尾は長考の末に「科学的に,根拠のある,一方通行」と行政機関を騙しに行けば,千原は「嘘じゃないってほんとに5億入るんだから」と地元の名士を垂らしこむ.スケール感は違うけど,いずれ劣らぬ詐欺師ぶり! 板尾の「ラッパのマークのね,モデルになったラッパです」は折角の大スケールがちょっと小さくなってしまって勿体無い.千原の「好きなんだ! 君と君が」は実にわかりやすい結婚詐欺.そして本当の詐欺師は絶対にそんなことは言わない(笑).板尾の「蛾次郎さんどうですか,つけ心地は」…実名を出されてしまうと大変にツッコミにくいんですが,司会席がしばらくの間小声で笑っていたことだけは記しておきます(笑).千原の「晴れてるでしょ?」は天候操作装置ですか? 2人の詐欺師合戦はさらに強く熱を帯びていきます.板尾の「4日後に,笑ってください」は逃げ切るには絶妙の期間.千原の「伊藤家の食卓でも今度やる,とか言ってたよ?」は奥様方がころりといきそうな素晴らしい殺し文句! 地味に「よ」攻めを喰らう板尾は「4年前は,確かに,あたし男だったよ」とカミングアウトで「よ」を戻したものの,千原は全てを締めくくるべく「容赦ないんですね.警察って」と詐欺師として逮捕されてみせました!
2人の詐欺師が見せた激しい演技合戦は実に見事.文字だけでは伝わらない詐欺師の仮面のつけっぷりが堂に入ってました.たった一言でその周囲の状況を全て暗示してみせた2人の演者に拍手を送りたい.
結果.千原12点,板尾11点で第12回竜王は千原名人! 師匠越えの2度目の優勝の勝因となったのは,激しい演技合戦の中でも安定して点を取り続けたことでした.凄まじい回答は出せなくても,1答たりと大きく外さなければ永世竜王にだって勝てるというのがこの試合の面白さ.そんな強さは何度も参加することによって初めて身につけられるものだから,ぜひ準決勝に進んだ有望な若手には次回もこの舞台を踏ませてあげてください.そして,新しい強いベテランを番組で育成していただきたいと思います!
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