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アストロ球団#16

「死が開く真の戦いの巻」

アストロとビクトリーのデスマッチ5回表.真実を知った大門はついにヌンチャクではなくバットを握った.超人球三郎の兄,戦いの天才が挑む真っ向勝負に対し,球一はアストロシフトで鉄壁の守備を敷く.けれど大門は消える魔球を打ち鉄壁をその底から抜いて美しいホームランを描いた.正々堂々の勝負に勝った大門は,ここまでの愚かな行為の責任を取るべく陰腹を切っており,最高の勝負を見せた直後に絶命していた.
己の罪を命とホームランで贖った大門の死に様に,敵味方の誰も,あの球四郎までもが感銘を受ける.力でも恐怖でもないもので,大門は両チームをさらに成長させる

漢の流す血と汗でいつも満杯でおなじみの「アストロ」ですが,今回でビクトリー戦最大の転機を迎えます.きっかけは前回後半で球六がぶっちゃけた伊集院家の真実.とんでもない思い違いをやらかしてしまった兄は弟の心も振り切って黄泉路へと爆走.いくら取り返しがつかなくても…逆に取り返しがつかないからこそ,そんな風に帳尻を合わせるのはどれだけ感動的でも間違っている.

前半.球四郎がアストロ潰しの目安としていた4回は終わって5回の表へ.最大の計算違いはアストロ超人の体が思った以上に丈夫だったことだろうか.超人全体によく効いたのは氏家の特攻くらいで,未だに球五以外は生きて動いているもんな.さらにそんなダーティプレイの原動力であった大門の心は球六のファイン暴露によってがたがたに.雰囲気をあえて読まない男・バロンの登場も手伝って,この場にはデスマッチの存在する余地が消えてしまったわけです.
そんな雰囲気の変化を如実に反映するのが大門の得物.おなじみのヌンチャクを置いてバットを握る! 反則上等のこの男には普通の野球道具はどうにも似合わないわけですが,デスマッチを否定し超野球をやろうとしていたアストロにとってはこれぞ思想の勝利の瞬間.喜びつつも「アストロシフト!」の一言で球一の背後に完成するすさまじい防御陣…なんだこの面白い画は(苦笑).
球八の頭上には球七が乗って長打対応,さらに1,2塁間は球三郎,2,3塁間を球六の分身でカバー.確かにこれができるなら9人はいらないかもなあというかむしろ不在の球五の立場がない(笑).こんな愉快な背景で男と男の掛値なしの勝負に挑む球一と大門.そして折角の愉快守備ですら,足元から見事に抜いてホームランとする大門渾身の打球! 折角の必殺守備が1球すら持たないというとんでもないインフレーションの末に大門の勝ち.しかし….
勝負には負けたものの思想面では大門を転ばせたために大勝利の球一は負けてもなおすがすがしく,「やられたぜ!」などと感嘆.己の打球の行方をじっと見て…呆然としているように見える大門.ビクトリー最強の武闘派がまともに野球をやったということで敵も味方もなんだかうれしい気分なわけですが,そんな雰囲気に赤い水が差されます.大門は…バッターボックスに立ったまま,死んでいる!
陰腹を切っていた大門.前回の球六の暴露によって己の罪に気づいてしまったこの男は,思想的な敗北と同時にその命までも断っていました.大門という男の存在意義と欲望と正当性を根こそぎぶっ壊されたことによって,生きる理由が失われたゆえの悲劇.アストロとビクトリーの両軍にとって衝撃的な転機が,もはや何も映さない大門の目から涙のこぼれた瞬間から,はじまります.
あのバロンですら茶化せない,仲間の死.その崇高な死に様に何も感じないのかといきなり球一は球四郎に呼びかけるけれど,それよりももっとちゃんと監視しとけとか医者を呼べとか,そういうことを言うべきじゃないか(苦笑). 球四郎も球四郎でそういう当たり前のところにはまったく頭が行っていないけど,球一の訴える大門の死に感じるもののほうはあるようです
ビクトリーのユニフォームと,陰腹を切った腹のあいだにおさまっていた血に濡れた詫び状.見えない球三郎の代理として,球七が涙ながらに文面を読み上げます.嫉妬と思い違いで父を殺め暗黒に足を踏み込み,犠牲者を出した罪を拭うために一命を奉じてお詫びする.勘違い男の命1つで全てが贖えるわけもないのにそれでも自刃を選ぶのは愚かな自己満足の極みであり!…それゆえに,悲しい.
憑き物と一緒に落とされて死んだ大門が血の滲む遺言に残したのは,あまりにも似合わないまともな言葉.球四郎には正々堂々と最後まで戦えと,球三郎へは兄として何もして…と詫びる言葉を.紅い紙に残されたその声こそが,デスマッチという一つの思想が完全に崩れた音でもありました.
血に染まって読めない詫び状も,そもそもその紙面すら読めない球三郎には自在に読める.最後に己の兄が戻ってきたことを深く感じ「満足したね」と弟自ら抱えて退場.球三郎の腕の中で,勝手な兄は静かに冷たくなっていきます.二十にしてはや心朽ちたり…と思っているのはお前だけだろうに,道ふさがると思ったのもお前だけだろうに.どうしてようやく咲いた花は実も残さずに散るのか.
自分で集めた選手達を駒として扱っている球四郎にとっても,武術の達人であった大門は特別な相手.完璧超人がそれなりの敬意を示したのは大門とバロンだけでしたからね.けれど負けず嫌いの球四郎は「挫折と敗北は何の教訓にもならん」と死者を愚弄し,思想の戦いに負けまいと必死.大門は自分自身に負けたのであり,デスマッチが負けたわけではないと懸命の抵抗を見せているあたりが既に負けているんだけどね.
逆に思想的には既に勝利しているアストロは球四郎のみっともない抵抗に激しく怒り,より一層の猛攻でビクトリーを揺さぶります.あっという間にビクトリー守備陣はぼろぼろに.それでも自説を曲げまいと必死の球四郎も,ここまで炎上してしまうと意地の張りようもありません.ビクトリーの連中だって,この期に及んで未だに自分たちを道具扱いする球四郎のことなんかいっそ裏切っちゃえばいいのに.
そんな往生際の悪すぎる球四郎に完璧なる止めを刺すのが,同じチームでありながらも違う思想で生きているバロン.普段の安定した精神状態ならここまで打ちこまれることはないに違いない球四郎をオカマ言葉で軽く揺さぶったあと,「意味もクソもあるかー!」とオカマな仮面を引き剥いで,球四郎の顔に拳を放とうとする! でも寸止め.球四郎は天才であるがゆえに察しも良く,殴らなきゃわからねえガキではない.だから,言葉を使ってもうアストロには通用しないデスマッチ思想の鎧を脱がせます.
球四郎も他のビクトリーの仲間達も,そして敵のアストロたちも同じ場所に同じ高さで立っていて,球四郎一人が高いところにいるわけではないこと.威厳と権威を振り回しても人はついてこないということ.バロンの教えは球四郎に敗北をはっきりと教えるもの.ここまでされてついに敗北を悟った球四郎は仲間達と同じ場所へと降り,ダブルプレーで走者を一掃.
大門の死は,アストロの1試合完全燃焼という思想の正しさの証,球四郎は数少ない友とも師とも呼べる男に敬意を表し,謹んでデスマッチを返上して試合を進めることとなります.…まあ,デスマッチを返上しても野球ではなく「超野球」なんだけど(苦笑).悔し紛れに死者に唾を吐きかけるような真似はやめ,対等の敵であるアストロを倒すためにも右腕に包帯を巻く.大門の死は,球四郎を大きく成長させる!

後半.勝つために包帯を巻いた右腕で剛球を投げる球四郎.アストロ超人でもかすりもしないようなファイナル大魔球が炸裂しながら7回へ.対するアストロはさすがにダメージの蓄積が表に出てきました.確かに新技とか打たれ強さとかを磨くのも大切だとは思うんですが,それ以上に基礎的な体力づくりをもっと頑張っておくべきだったんじゃないだろうか.相変わらず球一は後半はどんどん一杯一杯.さすがは1球ごとに球の軽くなる男です.
既に息も絶え絶えの球一の前に立つバッターは球四郎.でも,とうとう球一の球はキャッチャーの元に届かないほどにへろへろ球へと変化したので,備前長船を片手に球四郎はマウンドに登ります.しかし情けないと振り回したりすることはなく,わざわざ指先のしこりを日本刀で切り押してくれる.…これはありがたいような,むしろ素人治療じゃ危ないから女医さんのところでちゃんと処置を受けたほうがいいような(苦笑).
互いに完全燃焼することこそが,死んだ大門への一番の供養だと考えた両軍はあっという間にヒートアップ.特に無駄な球七のフライトは雰囲気に流されたんだろうけどやりすぎで,おかげでアキレス腱が切れました.気持ちはわからないではないけれど,やっぱしこれはダメだよなぁ….アストロは劣勢.バロンは見事な空中回転によって華麗に大逆転の3点をゲットし,球六のアンドロメダも包帯巻き球四郎の球の重さにはかなわない.
異様に重い球四郎の球はスピンボールの一種.投げている者の腕をぶっ壊しかねない恐ろしい球の前に立つのは球一.先に塁に出た仲間を返すため,ここ一番のジャコビニで球四郎に挑む! さすがは主役だけあって球四郎の球を打ち返すことには成功したんですが,バロンのその身を張ったフォローによって走者一掃には至らず満塁.…でも,やっぱりやってることが無茶すぎた.球一との対決で限界を越えた球四郎の右腕は…動かない!
13対15でビクトリーのリード.7回裏の二死満塁.ついにクライマックスを迎えるこの闘いは,一体どんな終幕に至るのか.そして試合終了までには,峠会長と和んでいるシュウロはちゃんと帰ってくるのか! 沢村の妄執に踊らされる青年達の明日はどっちだ.次回に続きます.

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