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アストロ球団#17

「明日はうずきの先にしかないの巻」

13対15,7回裏の二死満塁.球一との対決で限界を越えた球四郎の右手が死んだ.しかし超人は効き手がバカになった程度で試合を放棄することは許されないので,急ごしらえの左投手となった球四郎.球の荒れるピッチャーを支えるためにビクトリー守備陣も奮闘する.特にバロンは捨て身の守備で球四郎を支えるが,このプレイがまたも悲劇的な結末を導く.起死回生の同点ホームランを放ったバロンはホームに戻ったのと同時に倒れた.ここまでビクトリーの連中を叱咤激励してくれた頼もしい男は,球四郎の懇願も聞かずに黄泉路へと旅立つ.

長い長い激戦もついに終盤.クライマックスへと達する「アストロ」.その終わりを飾るかのように,病院送り程度は普通で死者まで出ちゃってる壮絶すぎる戦いに,更なる血の花が捧げられることになります.視聴者に大きなインパクトを与えるには「死」というのは実に効果のある要素・状況ではあるんだけど,そしてそれがたかが野球の試合で連発されるところが本作の最高の醍醐味でもあるのだけれど!…でも,本当にそれでいいんだろうか? バロンほどの漢をこんなことで失うだなんて,そんな贅沢なことを許してもいいのか?

前半はやや光が見えたと思ったらやっぱり暗転.前回ラストで無理させまくった右腕がやっぱりぶっ壊れた球四郎.いくら天才でも相手が全員超人で,息抜く暇が一切ないというのは相当に厳しかったようです.包帯の下の右腕ではブス色のボロ雑巾のように変わっていて,もはや痛みすら感じない.普通の選手ならとっくの前に担架で運び出されるところなんだけど,超人にそんな甘いことは許されない! 超人が退場する時は,少なくとも意識が混濁してなけりゃいけません(笑).
球一は苦しむ球四郎に球を投げ,まだお前には左手があると諭す.そしてこの程度で挫折するようでは,これまで完全燃焼して燃え尽きて行った仲間たちに示しがつかないと….血染めのボールに込められてきた氏家の青春や球五の真剣勝負の精神,ダイナマイト拳が球四郎に寄せた殉心に,球三郎が見せた自己犠牲の姿,そして…大門の悔恨と贖罪.全ては未だボールの中に渦巻いている.
敵の喝によって持ち直した球四郎は,慣れぬ左手で凄まじい球を投げる! なんせ急ごしらえなので球は荒れまくるものの,ようやく真の仲間となったビクトリー守備陣がフォローしてくれます.孤高の男がついに仲間に頼るようになったということで球四郎はまさにツンデレであり(笑),そんな彼の魅力に心揺るがされたチームメイトたちも頑張る.特にすっかりオカマの仮面をかなぐり捨てたバロンに至っては,球六の打球をベンチに転がり込んでまでキャッチしてアウトにするというファインプレー.…ただし,この1つのアウトを得るために,バロンはとんでもない代償を支払うことになります.
8回裏.安定しない急造の左投手・球四郎のために1アウト満塁で打順は球一.試合終盤の両チームの激突をテレビで見守っているのは…峠会長とシュウロ.可愛い孫の人間的成長のために,峠会長が旧知のシュウロと組んで超人どもを真正面からぶっつけたことが明らかに.川上監督と峠会長のタッグがシュウロに挑んでいたのかと思ったら,実際は峠会長とシュウロが沢村の妄執を継ぐグルだったわけですね.まあ,そんなことはともかくとして,シュウロは監督なんだからそこでのんびりしてないで今すぐ帰れ(苦笑)! こんな喰えないおっさん2人にダシにされた川上監督が大変可哀想な気がしてきました….
球一が逆転の1打を放って9回表は15対16のアストロリード.最終回に挑む一同はもちろんぼろぼろ.ここで延長なんかになってしまうと,たぶん両チームとも全員死ぬんじゃないか(苦笑).そんな中でも最も死に接近しているのがさっきファインプレーを見せたバロン.確かに超人から勝利をもぎ取るためには命を賭ける必要があり,仲間たちも本当に死んでいったのは間違いないけれど,彼の進む道が黄泉路となってしまうからやりきれない.それでも逆転の花道を作ることに命を賭けたのは,球四郎に心底惚れていたからなんだろうなぁ….
アストロ超人側もすっかり限界に達しているものの,気合の残っている球一の球はバロンのスイングよりも速い.超人の限界は彼らが死に絶えるとき.それまではのたうち回って勝利を追及する精神こそアストロガッツというもので.そんな度を越えた野球バカに勝負を挑んだバロンの打球は空高く舞い上がり.球七が不死鳥となって宙に舞っても届かない! 折角球団歌をバックに飛んだのに,鉄壁を誇ったこの壁もすっかりインフレーションに置いていかれてます.何か新しい守備技を編み出さないと,次の試合からはここに立たせてもらえないかもしれないぞ?
見事なホームランで3塁までをぐるりと回ったバロンは…ホーム直前で止まる.あと1歩で球四郎のキスが待っているのに,鼻と口から溢れ出す鮮血! さっきベンチにつっこんだ段階で打ち所が相当悪かったバロンは,そのまま大門が既に去った道を後追いすることに.もちろん立て続けに師匠的存在を失いそうな球四郎は大慌て.死ぬことは許さんという最高の言葉で引きとめようとするけれど,超人でないバロンに力は既にない.
常に1番を目指してきた理論家のバロン.しかしその追求も天然の超人である球四郎には叶わなかった.生まれ持った才能は残酷で,仕方なくバロンは頂点の熱気を観察することに人生の目標を切り替えた.…精神的に未熟な大将を観察しているうちに,彼を導くことに面白さを感じるようになって…今.
バロンが最後に指導するのは,己の生まれを肯定すること.他の人々よりも恵まれた能力を持っているからこそ,ある特定の人生を歩まねばならないのを認めるということ.敷かれたレールを否定することで力を奮ってきた球四郎だけれど,彼が本当の力を発揮できる場所はレールに乗った先にしかない.呪われた痣の誘いに従って自分のために人生を歩めと激励して,ついに2人目が最後の時を迎えます.
目の前が真っ暗になったバロンが詠んだ辞世の句.「露と落ち露と消えにし我が身かなみやこのことは夢のまた夢」ただし大部分盗作とこんなときでもユーモアを忘れないバロンの逝きっぷりはたまらなくかっこ良く,しかしそんな面白さも絶命という事実を和らげるどころか,むしろその悲しさを煽るだけ.球四郎がいくら頼んだって時はもう戻らない.一人の超人を目覚めさせるために,2人目の貴重な命が失われます,

後半.9回裏.大門が死のうとバロンが死のうと試合中断なしというのが超人野球の忌まわしいたしなみ.警察は一体何をやってるんでしょうか.野球しか能のないアストロ超人にとって敗北はすなわち存在そのものを否定されること.対して一流のハグレ者を率いた球四郎にとっても,多大なる犠牲に報いるには勝利しかない.互いに意気あがるこのクライマックスに水を差してくれるのが…残る1人! 最後の打席,折角の絶好球を痣のうずきで邪魔されるなんて,球八は実に気の毒です(苦笑).
アストロ超人たちの痣は9番目が同じ球場にいることによって激しく反応.とはいえもうすぐ決着がつく(か延長で全員が死ぬ)という瀬尾際に9人目にしゃしゃり出てこられても困るわけで,新戦力を押し付けあうアストロとビクトリーは男気溢れてるんだか何なんだか.何はともあれこのドームに9人揃ったことを喜ぶ祟神・沢村は己の像に雷を落とし,それがきっかけとなって全員のうずきが止まったのでプレーを再開.明らかに荒神である沢村を鎮めるためにシュウロが必死に悲願を叶えようとした気持ちはわからないでもないですが,…だったらとっととベンチに戻れ.今すぐ戻れ.
続くバッターは兄の球七.左打席に立って走る距離をわずかでも短くし,球二のヒットで進塁するときにもサーカスでの経験を生かして大回転進塁.球三郎のバントは今最も機動力の落ちている球四郎に処理させることによって塁をさらにせしめて1アウト満塁.そして続くのは…球一だ! ここでやらねば男がすたる.最後のエース対決だ!
気合の入った2人の勝負,意地の張り合いに競り勝ったのは球四郎.なんせ死人2人に再起不能2人を背負っているので球一とは背後霊の量が違います.
同点・9回裏2アウト満塁.そんな晴れ舞台に戻ってきたのは…再起不能のはずが無理やり起きてきた球五! 中盤からのいいところはずーっと寝ていたために一切噛めなかった気の毒な男が,ここに至って雰囲気も読まずに復帰です! …今となっては球九郎と似たようなもんじゃねえのかと思えてしまったりするわけですが(笑)ご本人がまだ自分は燃え尽きていないとさわやかにおっしゃるもんだから仕方がない.直前の対戦で燃え尽きかけた球四郎に対し,雰囲気の読めてない球五はどんな形でとどめを刺すのか.試合の結果はいかに! …次回,最終回に続きます!

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