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アストロ球団#15

「優しい嘘は破られての巻」

アストロ対ビクトリーのデスマッチは続く.球五が敵の罠にはまって戦線離脱.猛るアストロは野球道を外れかけるものの,球八の叫びがそれを引き戻した.ビクトリーの陣営にも大きな動きがあり,ダイナマイト拳の代わりにバロン森が入る.自己愛と耽美な雰囲気に満ちた優男の加入に動揺するビクトリーだが,彼の目や頭脳は球四郎も認める超一流のものだ.
大門との真っ向勝負を避けた球一.しかし続く球四郎に見事に打ち取られてしまう.一挙に4点を奪われたその裏,球三郎は純白のユニフォームで兄との最後の勝負に挑む.

ここまでの血塗られたデスマッチに大きな転機が訪れる「アストロ」.ビクトリーを率いる球四郎の意向でここまで殺し合い風味が大変に強かったわけですが,前回の球八の叫びがきっかけとなったかのようにトンデモ野球方向へと路線が修正されていくことになります.その流れを加速させるのは新規参入のバロン森の実に楽しそうな大サービスぶりと,球六が暴露する事の真相.…特に後者は,ここまでの因縁の1つを完全に終結させるもの.真実にはそれほどの力があります.

前半.妄執を昇華させて記憶喪失になる奴が出たり次々に女医さん送りになる奴が出たり,精神と肉体の両面に厳しい戦場に登場する新キャラクター.金髪をなびかせたオネエ言葉の耽美極まりない美青年,バロン森.今アストロドームにいる選手どもは球五を除いてどいつもこいつも正常ではないわけですが,これまた極端すぎる奴を呼び込んだもんだなぁ…(苦笑).スカウトマン球四郎の慧眼に感服したいところです.
花も咲かないどころか死臭漂う荒野に飛び込み,値がつけられないほどの生き方を模索するべく登場した華麗なる男の第一印象は…もちろん「気持ち悪い」で敵も味方も全員一致.汗血生臭いとビクトリーのベンチに香水を撒き散らしたり,余程自信があるのか公衆の面前で全裸を颯爽と披露しまくったりと大暴れのバロン役の役者根性が素晴らしい(笑).そんな新たなるチームメイトの爆走ぶりに,汗と血の中で生きている大門はさすがに閉口しています.
ただしあの球四郎が見込んだ男だけのことはあるので,バロンを舐めてはいけません.「投げてちょうだい!」とか言うし球一の球に対しては1テンポ遅れてバットを振ってくるしでズブの素人っぷりを恥ずかしげもなくさらしているけれど,球四郎が見込んでいるのは彼の野球理論.たとえアウトを取られても,たった3球でも球一の球が急激に軽くなっていくという弱点を的確に見抜いてしまうのだからたいしたもの.
その上,オネエ言葉と柔和な笑顔の裏にある真の姿は大門に勝るとも劣らぬ漢ぶり.大門以外の全員の武器バットを集めて一気に膝でへし折り,「ええかげん目ぇさまさんかい!」とビンタをぶちかます! 野球にかこつけて相手を潰す球四郎や大門の思想を,卓越した逸材のすることではないとばっさり否定.その気合の凄さによって,球四郎が集めたスペシャリストどもにまともな野球をさせてしまうのです.
バロンのショックはビクトリーに実に良く効き,得点を無視していた連中もまともなプレイで塁に出始めます.ただしバロンの思想を受け入れていない大門の得物は未だにヌンチャクのまま.達人である彼の「無意無感有耳音の極」の前には,球一の新作魔球・ファントム魔球すらも無意味のはず.…球三郎が周囲が見えなくても行動できるように,総帥である大門もまた目に頼らずとも音や気配だけで周囲を察することが可能.球一の新魔球の特徴は「消える」ことで,これは目の見えない相手には効果がないわけです.折角の新作で勝ちたい気持ちはわかるけれど,今回ばかりは相手が悪いのだと球三郎が必死で引きとめ….
その助言を受けて球一は苦悩の敬遠.逃げではなく駆け引きであり,勝利に徹してこそ一流の男なのは間違いないし,投げたら絶対打たれてその結果球一はものすごく落ち込んで役立たずになったに違いないんだからこれが正解.下手に相手の土俵に踏み込むことなくまとも野球をやることこそ,今は倒れた球五のやろうとしていたことのはず.とはいえ一試合完全燃焼はハリボテかと大門に愚弄されるわ仲間の球七には怒られるわとやっぱり散々.でも,その程度でここまでひどいことを言われたら,プロ野球選手は全員人間扱いされないと思うぞ(苦笑).
さてその頃,謎の矢文で呼び出されたシュウロは球四郎の祖父である峠会長と面会などしておりました.いくら探していた九人目の超人の情報がもらえるからって,試合中に選手を放り出してのこのこ出かける監督は本当にひどい奴だと思います(笑).最後の一人,火野球九郎はサンフランシスコにスポーツ留学中.右手の甲には超人の証であるボールの痣が確認され,その略歴を見る限り球四郎型のバランスの取れた超人のようです.
わざわざ峠会長がシュウロにこんな情報を流したのは,自分の孫である球四郎を打ち負かしてもらいたいから.愛人の子という生まれと超人の証である痣によって峠家の鼻つまみ者扱いされてきた球四郎.だから,超人に対する憎しみまでも計り知れない.…実際に超人だと判明したあとは,彼の卓越した能力だって超人だからと軽んじられるようなこともあったかもしれないな.
生まれも才能も並でなかったからこそ,真の仲間もライバルも得ることができなかった孫を救うためにアストロをぶつけたかった峠会長.でも,本当に球四郎のビクトリーを倒したいなら,試合中に敵軍の監督を呼び出すのはやめるべきだと思います(苦笑).案の定球一は球四郎に打たれて一挙に4点とか取られているし….
アストロドームでは球三郎がシャワールームで覚悟を決める.バロンに続いてまたも野郎の肌が画面一杯で,一体誰に対するサービスなんだろう(笑).最初から兄の心が収まるならば自分の命などどうでもよかったことを思い返して,真っ白い死装束をまとってバッターボックスへと向かおうとする球三郎.…初代球二のような犠牲は絶対に出したくはない.当然仲間は彼の死なんて望んでいないわけですが,球三郎はただの真剣勝負だと優しくたばかって戦場へと向かいます.

後半.バッターボックスに入った伊集院球三郎は,兄・伊集院大門と激突する覚悟を固めます.勝負は球四郎の球を球三郎が打った瞬間からはじまる…はずが,そうなる前にいきなり3塁から球二がホームベースに突っ込んできた! 狙っていたのは得点ではなく球三郎の足.初代を失った二代目は誰よりも仲間が大切で,だからこそ鬼となって球三郎の進塁を妨害したわけです.2度とあんな悲しい目に遭いたくないからこそ,優しい球二も味方を傷つける修羅へと変わり,球三郎をバットで打ち据えようとするほどの必死ぶり.
そんな球二の必死にさらにかぶせてくるのが球六! 球四郎に殴りこまれたことによって修羅の道に戻されてしまった彼ですが,割と速いうちからアストロに味方することを覚悟していたようで,ビクトリーのキーマンである大門のことを独自に調べていたようです.本家で球三郎とすれ違ったのは,ちょうど内偵を進めている最中だったわけですね.
球三郎がどれほど傷つけられても守り通し,球六が暴露する血塗られた真実とは…球三郎の父こそ先代総帥であり,大門は勘違いで自分の父を殺していたということ.知らないことは恐ろしい.真実はなんておぞましい.大門の世界は全て裏返り,しかもその証拠は自分が身につけた帯の中に納められていた.こんな近くで真実が常に寄り添っていただなんて,なんて滑稽なことだろう.息子の誕生を祝うメッセージを添えた父と大門の写真を入れた御守袋を,どんな気持ちで彼の帯の中に仕込んだのか.そして勘違いで自分の息子に殺されたあのとき,どんな気持ちを抱いたのだろうか…大門は絶叫します!
大門と球三郎,2人の父である伊集院千岩.彼は先代総帥を卑怯な手で殺めた後ろめたさから自分の子ではない球三郎を溺愛し,それが高じて後継者を決めたがゆえに全てが狂ってしまった….大門にとっては真実は猛毒.もはや戻れぬことをしてしまったからこそ,どんな言い訳もその毒を中和することはできない.実の父を手にかけた息子にはもはや戻るべき道はなく,妄執は逆向きに彼の心を押しつぶしていくのです.
全てを知ってなお正面からぶつかる兄と弟.大門はビクトリーの仲間どもを使った人間ナイヤガラで球三郎を止める所存.1塁を目指して進む球三郎に次々に炸裂するその道の一流選手たちの猛攻撃! しかし凄いのはそんな技を習得させた大門でも習得したビクトリーどもでも面白映像を平気な顔で繰り出す制作側でもなく,どれほど痛めつけられても兄への償いのためにあえて血みどろの道を行こうとする球三郎の精神.一試合完全燃焼のために兄の妄執をあえてその身に受けて,全てを昇華させる心積もりです!
球三郎のあまりにも苛烈な自己犠牲の姿勢は,ついに大門の頑な心を打ち壊します.「優しさなどでは,人は救えん.余計に相手を惨めにさせることもあるのだ」と語る彼の目には理性が戻っている.狂乱していてはわからない己の罪も,正気に戻れば誰より深く身に染みる.妄執の夢の中にいるうちは生きてくれると思ったからこそ,球三郎は兄に真実を伝えたくなかったのだけど,優しい夢は醒めて現実へ….次回に続きます.

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