第13回しりとり竜王戦・予選
追い詰められた言葉と言葉のぶつかり合いである「しりとり竜王戦」も今回で13回目.今回も主に見逃した人や地方で見られない人,あとは未来の自分のために書いていきたいと思います.この異例な長期シリーズは新鮮さが最重視される深夜モノとしては破格であるわけですが,今回も無事に年を越えちゃいました.この長寿は良い企画という評価が業界的全国的にじわじわと広がっていった結果で,企画に対する惜しげのない称賛と同義じゃないかと.ともかく1企画としてはまさに破格です.
ただしまる2年以上の時間が経過したため,見ていて寒気がするほどにキレていた時期を過ぎていることは事実.現状は最強の板尾永世竜王が笑いを一人で支える格好.そんな停滞の中に投げ込まれたのが,普通ならここには並ばないであろう一流の2人! 普通のバラエティ番組ではフリートークやらおもしろ企画やらに埋もれてしまってなかなかわからないものですが,「しりとり」というシンプルな状況でその素晴らしい力が輝きます.初参加でここまで理解してこなし,彼ら自身の強みまで出すんだからやっぱり凄いよ隠し球!
今回の出場者は板尾(130R),ふかわりょう,佐々木健介,井上(次長課長),KABA.ちゃん,有野(よゐこ).+シークレットなしりとり刺客2人.近日公開予定の映画「ピーナッツ」の宣伝を兼ねているので映画に出演している芸人3人が参加しています.ふかわは「若獅子戦」以来,井上は前々回以来の登場.ちなみに有野は今回も永世竜王にリーチ中なので,プレッシャーが心配.
司会はいとう.判定はいとう・勝俣・MEGUMIのおなじみのメンバーに,特別審査員として監督の内村も参加.そして記録はこの番組で一番苦労している野村アナです.
Aブロック予選は板尾・ふかわ・健介・井上.以前プロレス好きだったので健介の登場はうれしいはずなんだけど,ここで見るのは凄く複雑.マイクアピールが抜群ってタイプでもないし,なんでこの仕事受けちゃったかなぁこの人は(苦笑).あまりの緊張ゆえの半泣きでおなじみの井上は今回は比較的落ち着いています.かなり必死の自己暗示でリラックス? 久々に登場したふかわは今回は仲間たちと一緒なのでなんだか強気.その仲間たちがふかわを仲間と考えているかどうかは怪しいですが….内村なんて全然覚えてくれてないし.そしてあまりにも強すぎる板尾竜王.しりとりのために生まれてきたこの男は,多少風邪気味でもまったく問題ありません.
1戦目は「しりとりツバメ返し」.「~だが~」でしりとり.
テーマは「インパクトの弱い言葉」.「同姓同名だが岡本信人」からスタート.
ここで挙手したのがなんと健介! 職業柄の度胸は買いますが,「とにかくリングでは強い健介だが,北斗には弱い」…それは当たり前なのであんましインパクトは感じない(苦笑).しかも段取り忘れて駒も打ってないし.初手の迷走に巻き込まれた井上は「いいスーツなのだが,色が紺色だ」と今ひとつ.そんな状況でも板尾永世竜王は「抱いてと言ったつもりだが,抱いたと言ってしまった」と微妙な言い間違えでテーマを表現.しりとりで重要なのは難しいテーマでも常に点を稼ぐことです.ふかわの「タイだが肌寒い」が弱いけれどテーマとずれてしまっているのに対し,佐々木が満面の笑みで答える「石焼イモを買った俺だが,小さかった」は…これは小さい! オレオレしりとりだけどいい! 続く井上は「太鼓を叩いたのだが,バチが人差し指だった」は確かに打圧は小さいな.板尾は「タイの,タイの王様だが,タイの王様だが,…無口」これはテーマを完璧に取りこぼしてますね(笑).別に無口でいいといういとうの意見はもっともです.ふかわの「中2だが…大人しい」も今ひとつ.しかしまったく別の道を歩む佐々木は「イリュージョンだと思っていた俺だが,ただのサーカスだった」とオレオレ(笑).どんなレスラーに対する形容なのだろうか.井上は「貯めに貯めたお金だったのだが,チーズバーガーを2つ買った」と小学生みたいな可愛らしさ.板尾の「タメ口を聞いてやったのだが,電話でのこと」は社会的なインパクト.ふかわの「徳川だがヒロシ」は最初の見本をインスパイア.
言葉のインパクトが重要なしりとりでインパクトのない回答を探すのはかなり難しいわけですが,この煮詰まりやすい状況での健介の異様な無邪気さに全員がびっくり.テーマがあまりに難しい場合は場が膠着して見ている側のストレスばかりが溜まる場合もこれまでときどきあったけれど,今回は健介がおかしかったために変な爽快感を感じました(笑).また,この厳しいテーマでもこつこつ当てている板尾竜王,その持久力はやはり本物です.
2戦目は「しりとりイマジネーション」.テーマのイメージでしりとり.
テーマは「サクラチルに代わる不合格を知らせる電報」.「お客引く」からスタート.
この予選は珍しく2戦とも板尾竜王以外からスタート.回答権を取ったふかわは「靴脱げる」.さっきはテーマとキャラが異様な化学反応を起こしていた健介ですが,このテーマは難しいようで「…」といきなり時間切れ! 勝負から逃げちゃ北斗に起こられるぞ(苦笑).井上は「ルーブル,休まず営業」と迷走.むしろ休んだほうが落ちた感じになるのでは….そして板尾「うさぎ,めりこむ」と状況がわからない(笑)! 意味不明だけど面白い,これがあるから永世竜王.ふかわの「無理」は間違ってはいないんだけど直前が強すぎる.健介は「リスにつまづいてこける」…いくつだよ一体(苦笑).電報じゃなくて点取り占いだ.またも「る」が回ってきた井上は「ルミちゃんに問う」と絵に描いたような苦し紛れ.それに比べて板尾は「ウガンダ泊まりに来る」と大変失礼ながらも業界内でウケのいい方向に言葉を持っていく.ふかわの「ルーレットが止まらない」は普通,健介は本当にテーマが合ってないようで「いい車に頭突きをかます」と斜め上に.井上の「すぐに膝が笑う」とともに出題の主旨がわかってないかのような困った回答.そしてラストは板尾の「うれしいはずがない」.これはテーマに合って良い.
まず,センター試験当日にこのテーマをやる制作側の根性の曲がりっぷりが素晴らしい(笑)! 受験生はこんな時間にしりとりなんか眺めているわけがないので,どんな不吉なテーマでもOKなはずですたぶん.お題としては比較的易しいほうではないかと思うんですが,永世竜王以外の回答者の経験不足でどうにも煮え切らない結果で終わってしまったのが勿体無かった.
結果,板尾11点,井上6点でなんと井上が抜けた! 板尾竜王も含めてぐだぐだな戦いであったわけですが,そんな中でもバランスよく前半も後半も点を取っていた井上が抜けたようです.ちなみにふかわと健介は仲良く3点.どれほど頑張ろうとも記憶に残れないふかわのヘタレぶりがおかしいやら気の毒やら.でも,彼の一番の売りであるヘタレぶりを視聴者に見せつけることができたんだからある意味勝利ではないかと思います.そしてこんな畑違いの場で最後まで頑張った健介には,一本勝ちではなく努力賞を差し上げたいと思います.
Bブロック予選は有野・KABAそして三村・大竹(さまぁ~ず)! この時間なら司会者クラスの一流中堅芸人がBブロックに乱入だ! この贅沢なゲストたちはもちろん「しりとり」ははじめて.コンビではなくピンでの強さを問われるこの舞台でどんな活躍を見せてくれるんだろうか.そして実力のある芸人が2人加わってどうにも気の毒なのはKABAちゃん.少しでもいいところが見せられれば上出来だろうなぁ.そして永世竜王の地位を目指す有野はコンビの参入を受けても大丈夫か? どうも当人の頭の中が「ピーナッツ」に出られなかった悔しさの方で一杯だという点も心配です(笑).
1戦目は「しりとりツバメ返し」.「~だが~」でしりとり.
テーマは「ワケありな言葉」.「2メートルだが副番長」からスタート.
今回はベテランの有野が即効で回答権を奪って「ウルトラマンだがバイクで登場」…一体円谷に何があったのか(笑).続くのは三村の「馬だが嘘つき」という大振りで失敗.初体験で初手から大当たりはさすがに難しいか.KABAちゃんは「キツツキだがつつかない」と愛らしくもぴたり.そして大竹の「芋だが奪い合い」…これはいい! 芋を奪い合うというビジュアルのインパクトも素晴らしい.そんなインパクトを有野は「石だが奪い合い」とパクってみました(笑).大竹から生まれた風の中で三村は「1回休みだが,やっちゃう」と彼自身のキャラまでもが生きる素晴らしい回答! コンビが作り出した強い風の中ではKABAちゃんの「後ろ足だが使わない」ではなかなか目立てない.大竹は「芋だそうだが,芋じゃないらしい」と自分の前回の回答を膨らませ,有野は「いじわるな子だが,お金をくれる」と小学生の世界.三村の「ルール無用だが,みんなきっちり守る」のはさっきのスゴロクですか(笑)? KABAちゃんの「留守なはずだが,声がする」は大人の世界で良い.居留守にはそれなりのワケがあるもの.そして大竹の「ルッコラ,なのだが,爆発しちゃう」…これはあれか.子どもに拾わせたショックで爆発する非人道兵器か(笑).有野の「後ろからはねられたのだが,わらけた」は笑ってる場合ではないと思うのですが.三村の「誕生日だが,みんな,留守」も小学生の世界.KABAちゃんは「留守番電話に設定したが」と言い出したけれど「る」じゃないのでやり直し.「すぐ帰ったはずだが,帰ってこない」と女心で見事リカバリ.最後は大竹の「いつも家にいる母なのだが,母じゃないらしい」…小学生の世界が壊れる衝撃!
回答者によってそれぞれに違う世界が描かれながらも,繰り出される回答はどれも粒揃い.Aブロックのふがいなさに比べると,なんて愉快で引き込まれるバトル! 好調なのは初登場のさまぁ~ずの2人.1人置きのあのコンビネーションの間では,KABAちゃんだけでなく有野すら本領を発揮できていません.
2戦目は「しりとりイマジネーション」.テーマのイメージでしりとり.
テーマは「劇場中が泣いたピーナッツの名セリフ」.
内村の例文,「眠くなってきたよ…パトラッシュ」という三村の台詞からスタート.
今回は大竹からのスタートで「ゆとりがあるじゃないか」で審査員のご機嫌を伺います.でも,直後にこれでいいんだよね?と自ら狼狽するのはどうだろう.もっと落ち着いて(笑)! 有野は悩んでから「辛すぎて泣けてくるよね」と涙がらみで無難に.三村は「ねえ,ゴリラだよ」と演技で押す.とりあえず内容がまったく映画の宣伝になっていないことだけは確か.KABAちゃんにはこのテーマは厳しいようで「夜型なんだ」はどう泣けばいいのか.大竹の「たにしだって仲間じゃないか」は僕らはみんな生きていますか? でもそれは人間愛じゃない.有野の「カー,カー,カー,誰かふかわを止めてやれ!」は演技込みの大暴走(笑).絶対あまりのイタさに劇場が泣いているのだ.そして流れが本格的におかしくなるのはここから.三村の「レッツ理科室」で泣ける奴はいないわけですが,ここで学園モノに転がったのがまずかった.KABAちゃんの「ツーンとしないで」はオカマの学園ドラマ? 大竹の「出かけようぜ! 保健室!」はパンツの穴みたいな奴ですか? 明らかにさまぁ~ずは内村の敵です.そんな愉快な学園の中で有野は苦しみつつも「強がり言わないで,ご飯食べようや!」と昼食に.そして三村は「野球しようぜ,いや,レッツ野球!」.放課後部活動でございます.
まず,映画「ピーナッツ」は学園モノではありません.そして名人たちは観客たちの泣きのツボに対する認識がおかしいです! もちろんその狂いっぷりは意図したものであり,歪みこそが見る側を爆笑させることは全員が承知してるんだけど,たぶんそれでも複雑な心境に陥る奴はいるんじゃないかと思います.例えば「ピーナッツ」の監督とか….
結果.大竹が13点で1抜け,有野と三村は9点の同点なので審査員判定に.有野は後半のテーマで全然取れなかったのが痛かった.三村は前半後半でバランスよく点を稼いでいたのがプラスに働いたのか,審査員判定の結果は三村2の有野1で三村が勝ち抜け,この厳しい環境で,KABAちゃんは真面目によくやったと思いますよ.そして有野の永世竜王位は今回もお預けです.
以上予選で勝ち残ったのはAブロック板尾・井上,Bブロック大竹・三村.この4人で本戦が行われたわけですが,その顛末については本戦記事に続きます.
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