練馬大根ブラザーズ#6
「名声は性悪な麻薬の巻」
各界に強い影響力を持ちマスコミを牛耳る占師・ゴクツブシホソヨ.その結果に従えばどんな願いも叶うという彼女が江古田のホストクラブに来るからと,マコは他人の金でイチローに同伴し金を取られたヒデキもそれについていく.歌手になりたいマコはホソヨの前で即席ソーセージ料理を作るも,その腕前では歌手としての成功は無理という判断.成功のために買いなさいと言われたマコはヒデキのカードで壷を買い,さすがに百万の借金を許せなかったヒデキはマコと喧嘩.その仲裁に呼ばれたカラクリはボウガンの見事な腕前を披露する.そんな騒動の傍らで仕事を終えたイチローは穏やかに眠り続けるのだった.
回を重ねるごとにいらない力もいる力も抜け,エピソードの積み重ねによって折角作った作品の型がぐらぐら壊れだした「練馬大根」.スロースターターのナベシンや御大の凄い本領が発揮されるのは半壊のその先.病の深い患者が見れば今回みたいなぐずぐずっぷりは作品のだめエンジンがかかって来た証拠以外の何物でもなく,その不安定感にどうしようもなく心震わされてたまりません(笑).
今回のターゲットはゴクツブシホソヨこと細木.特に対面の占いというのは第3者の視点から冷静に説教をしてもらうことに大きな意味があるわけだから芸能界でのあのポジショニングに関しても特に異論はないんだけど…女性で身を持ち崩す件はまあOKとして,5倍の方はどうするんだろう?
前半.てなわけで今回はゴクツブシ潰し.今時ならスピリチュアルカウンセラーのほうが楽しそうな気もするけれどまあ似たようなもんだしいいか.緑の顔で芸人に対し「ずばり言う! You死ぬ」と死兆星の如き結果をぶっつけるおばはん.ゴクツブシ自身の名声に便乗して鳴かず飛ばずの芸人が知名度アップのために行うのが改名行為だから,余程無理な芸名を言われても受け入れるのが芸能界のたしなみってもの.そういやX-GUNも改名したなぁ.
そんな茶番をたれ流すテレビを見ている,今日ものんきな練馬大根ブラザーズ.政治家やらスポーツ選手やらが夢を叶えてもらったというゴクツブシ先生の高名はマコさんですらも知るところ.占ってもらいたいのでその居所を掴みたい彼女のお耳に耳寄り情報.なんと江古田のイチローのバイト先でえぐい遊びを繰り広げてました,シャンパンだって嫌がるイチローに口移し.ババアにそれをやられるなんて相当臭かったに違いない.
で,辛くて臭いイチローの仕事ぶりにマコさん大ショック.「わたしのイチロー」の唇が…と勝手に所有権を設定するマコさんの態度にヒデキもショック.マコさんは横にヒデキがいても何も気にせずイチローへの恋を絶唱した上に口移しで飯を食わせようとするほど乱れまくり.しかし金ももらえないのにそんな行為をされるのはお断りであるイチローは,迷わずにマコさんの横っ面を張り倒すのでありました.前回マゾっ気に目覚めたマコにとって愛する人からのスパンキングは甘美そのもの.ただし財布とか奴隷に張られても痛いだけなので誤解しないでいただきたい(笑),財布は金だけ出してりゃいいんだとばかりにヒデキのカードから現金引き出し,イチローと一緒に江古田へ向けて同伴出勤に赴くマコさん.惚れたら負けの連鎖の業は,誰からも愛されぬヒデキに借金という形で刻一刻と降り積もります.
練馬大根ブラザーズとゴクツブシの第1ラウンドは江古田のホストクラブ.占いが当たらないと押しかけたクレーマーにすら「大最悪」というごまかしで壷を買わせる迫力を持つゴクツブシに対し我らが主役はどのように立ち向かっていくのか…って,おやっさんから借りてない練馬大根に勝ち目があると考える方がどうかしています.歌手になりたいマコさんのお願いすらもウインナーへの飾り包丁で片付けてしまうゴクツブシ.料理と占いの関係性は今一つよくわかんないんだけど(笑)とりあえず恐るべし.
料理もできない一人前でない女の明日は死ぬ日だ.料理と死期の関係性はやっぱりよくわかんないんだけど(苦笑)言われたマコは大変にショック.で,買えば死期も遠のき歌手にもなれると超お手軽に洗脳されてしまったマコは他人の百万円で変な壷購入.…なあ,料理ができないのが悪運の原因なら,百万のかわりに料理の修業するべきなんじゃないのか?
冷静に考えれば不条理極まりない要求すらも無理に飲まされてしまうのが洗脳の怖さ.そして宗教こそが力と人と金を集めるべく有史以来磨き上げられてきた高度な洗脳技法の結晶.神様はボッタクリかよというヒデキのぼやきはまさに真実で,それに巻き込まれた頭の弱いマコさんがあっさり金を絞り取られたのは至極当然.でもマコさん,理性が吹っ飛んだ状況でもヒデ兄ちゃんにタカることだけは忘れないんだ…(苦笑).
さすがのヒデキも壷代の百万の借金は我慢できずに心を鬼に.マコさんは岡山にいいつける歌を「デコでしばかれちょるのでたすけてつかーさい」と熱唱するもヒデキの愛は百万以下なのでチャラにはならない.貧乏なヒデキは金を巡って好きな相手と本気で喧嘩.あなたがその人のことを本気で好きならば,その人に金を貸すのはよしておいたほうがいいですよ.生臭い理由で喧嘩するヒデキとマコにうんざりしたらしいパンダは携帯でカラクリを呼び付けて,カラクリは区民の喧嘩をボウガンで止める.男性が女性に勝てるわけもなくヒデキが一人負けしているのはまあいいとして,パンダとカラクリの関係がなんだか気になるぞ.
後半.占い師に金を巻き上げられて喧嘩して迎えた空しい練馬の朝.ヒデキとマコは当事者だからいいとして,こんなのに一晩付き合ったカラクリが結構気の毒.そしてこの朝に明かされるマコさんの秘められた過去.なんであんなにデビューに必死なのかと思ったら,過去にアイドルやってちやほやされてたんですねこの女.名声は麻薬.若くしてこれをたっぷりぶち込まれたらそりゃ戻れないほど中毒するだろうし脳もがたがたに壊れるってもの(笑).間違いなく意志の弱いマコさんが自分から名声欲を断ち切れるはずもなく,再デビュリたいとこんなところで若い身をこのように持ち崩しているのでありました.…名声ダメ,ゼッタイ.
しかしいくら名声が欲しくても壷は役に立たないというのがカラクリがたらたら漏らす内部情報.被害届が出るほどに壷には効果がまったくなく,テレビに出ている有名人たちはゴシップをネタにゆすられて広告塔として活動させられているのであります.名声という麻薬に溺れる有名人にとってゴクツブシは今や薬のルートを支配するボス.中毒者にとって彼女は神より偉いのです.
おかしいのはそのゴシップの仕入れ先はちゃんと占いだったこと.確かに一見意味ないんだけど(笑)人間は喜びよりも恐怖によって強く繋がれるから,まともに当たる占いを頻繁にやるよりは1度の占いで弱点を握って延々揺するほうが効率いいんだ.そして最後に近日逮捕予定!と予告して去るカラクリ.かわいいものさえ側にいなければ冷静な彼女がここまで囀るのはなぜか?答えは5分後!
こうして決定したゴクツブシ対練馬大根ブラザーズの2回戦! もちろんアイテムなしの彼らに勝ち目なんかはないわけで,おやっさんこと監督に久々に3人で歌って舞ってレンタルプリーズ.けれど同じ歌と踊りは視聴者でなくても飽きるので今回はもうちょい何かつけてくれともーっとお願いされました.折角深夜だしマコさんが大サービスで脱ぐよ!と構えたとたんに出てくるグッズ.そうか,人妻好きですか.奥さんを心底愛していることは理解できますが,でもそんなのここで主張しなくてもいいよなぁ.
てなわけで貸し出されたコスプレグッズで入浴中のゴクツブシを襲う練馬大根ブラザーズ.上の階から仮装させたパンダを吊るしてここにパンダ神光臨! ただしこのグッズはこれまでにないほど役に立たない.あっさりはがれてしまうこの化けの皮は,ゴクツブシがいんちき占いをしていたという言質を引き出したのみ.…おやっさんの今回のやる気のなさが伝わってきますな(苦笑).
パンダの偽装がバレて怒るゴクツブシの前,浴槽に情けなく落下しても一応格好だけはつけてみせるダンディでボンクラな練馬大根ブラザーズ! とりあえずゴクツブシの占いに何の強制力もないことだけははっきりしたからあとは権威なき老婆を適当にぶっ飛ばして金を奪えば無問題…という状況に突如乱入するカラクリ刑事(ミラクルチャクラム25段)! 本作が1話で見せた「5分あればどんなに広がった話でもどこかに収まる」というスキルがここから炸裂.チャクラムで壷が割れるやら中から金が出てくるわ都合よく元信者が突入して金を奪って去っていくわと歌の勢いで全ての無茶が押し切られていく(笑).地獄に行くのはゴクツブシのみ.そして貧乏なのは練馬大根ブラザーズのみ.
投げやりでテンション低いツッコミ・イチローは朝には昨日の茶番も忘れてパンダに溢れた夢の中.対していかにも血圧が高そうなヒデキとマコは,結局返品された壷をゴクツブシが通信販売しているというどうでもいいオチを目にします.名声という麻薬のルートを牛耳っていたゴクツブシ自身もまた名声の中毒者.己の似姿を大廉売で世間に広めて欲を満足させたいんだろうけれど,さすがに世間だってその麻薬はもう彼女には与えないよね(苦笑).
「練馬大根たちがおやっさんから借りたグッズを使って社会の悪を倒すものの金は儲からない」ってのが本作の型.しかし今回に至りついにグッズすら役に立たないときたわけで.さらにラストではパンダまで出奔? カラクリとパンダは一体どこまで進んでるんだ? それ以上にマスコットキャラがそんなことやあんなことをやってもいいのか? 小さなエピソードが物語からちょっとずつ鉄筋を盗み,ついには凄いことになっていく待望の次回に続きます!
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