« 練馬大根ブラザーズ#3 | トップページ | 金色のガッシュベル#142 »

焼きたて!!ジャぱん#62

「もはや後先考えてないよねこのリアクションの巻」

「焼き立て9」の舞台を借りて,将来をかけて兄弟対決することになった冠.あまりにも兄が有利な状況に絶望しそうな冠たちのところに,倒れたはずの和馬が病院を抜け出して戻ってきた.諦めない和馬の行動は素晴らしい着想をもたらし,冠は翌日のジャムに堂々と挑む.
溶岩石の鍋にジャムフランベ.弟に対する深い憎しみを抱いた堤が繰り出す本場の技は冴え渡り,完成した燃えるジャムは審査員の黒柳にとんでもない行動を強いる.煮えたぎるジャム鍋に顔を突っ込んで顔面にひどい火傷を負う黒柳.その姿は幼児のスーパーヒーローを作った人にひどくよく似て危険だった.

たった9マスの道程も半分を越え,いろんな意味で険しい道がクライマックスまで続くに違いない「ジャぱん」.和馬たちも大変そうだけど製作現場だって相当厳しいことになっているに違いない.しかしそんな逆境の中でも他人のキャラをインスパイアするだけでなく主要キャラの一人に新設定を原作どおりに追加する作り手の間違った根性万歳.ゴールデンタイムにやるからこそ価値を増す激しい悪ふざけの世界がここにあります.

これまで連勝を続けてきた和馬たちだけどさすがに今回は分が悪い.冠の兄である堤の腕も怖いんだけど,それ以上に和馬が倒れてしまったのが洒落にならない.どれほど不利な状況であったとしても「○○ジャぱんじゃー!」と叫んだ瞬間に戦況を根こそぎひっくり返す秘密兵器なしにパンタジアは戦わねばなりません.たった2人のパンタジア,しかも河内は数に入れられないという状況で,冠は一人でよくここまで頑張ったと思います.
しかし全ての面で兄に上を行かれてもはや諦めるしかないかと思われたそのとき!病院を脱走しふらふらの和馬が宿にやってきちゃいました.自分の体がどうなろうとも仲間のことを忘れられない和馬は筋金入りの大バカで,そんな一途な主役だからこそバカだけども好ましい.で,和馬を看病する過程で冠は逆転の1手に気づきます.最高の職人は作らずして最高の味を導くことができるようです.
翌日,決戦当日のバトル前.可愛い2人の息子をややこしい状況に巻き込んでしまった冠と堤の父,橋口組長は複雑な思いとともに戦いを見守りにやってきました.こんなときばかり父らしくふるまう組長に堤は反感を抱いているようだけど,ヤクザの組長の場合はいくら行きたくても授業参観に出ないほうが子どものためだろうに.きっと息子たちのためにいろいろずっと我慢してきたはずの父は,未だにこの戦いそのものの是非に悩んでいます.
組長が今すぐにでも欲しい橋口会の後継者.数万の子分を束ねねばならない立場には超一流の人材を迎えねばならないわけですが,別の業種で超一流の成果を出しつつある息子たちの道を曲げるのは申し訳なく,しかし組には息子たちの代わりになる人材はいないし…と悶々.組織の長はバカで務まるはずもなく,苦しくても出来のいい息子たちに望みをかけねばならないのです.…実際,頭の回る冠が組長になったら橋口組はかなりいいとこまで行きそうな気もします.
真面目に悩んでくれている父の心中など知らず,弟に対する憎しみばかりを煮えたぎらせているのが兄の堤.自分の場所を奪った上に自分を越える才能を示した冠への嫉妬は深く,この場で絶望した弟をさらに容赦なく叩きのめすことでのみ鬱憤も晴らされるもの…と思ったら,昨日散々打ちのめしたはずの冠が意外と元気に登場.今日は不在の和馬のかわりに遅刻芸も披露.彼が手にしているのはリンゴの木.対戦相手に想像のつかない素材の登場は逆襲への序曲となります.
対戦開始.兄は早速溶岩石の鍋を出して煮えたぎらせているわけですが,この状況の意味は料理の知識のない一般人にはまったくわからない.で,ひょんなことから松代店長と接触した組長は,息子たちが何をしているのか解説を頼み込むのでありました.…軽くヤクザどもをやっつける魔人ぶりを示す松代店長にそんなことを頼み込む組長はさすがに度胸がいいなぁ.一度は説明を断る店長を翻意させる月乃さんのとりなしがうれしい.肉親と戦ってきた彼女だからこそ,肉親の情には特別思うところがあるんでしょうね.もちろん店長にもちゃんと情はあり,前途有望な可愛い後輩を守るため万が一の場合には組を相手に喧嘩するつもり満々です.
こうして店長の注釈つきで展開する兄と弟の一騎打ち.河内はもちろんいつものように戦力外(笑).兄はジャム鍋としては最高の溶岩石鍋で暖かいジャムを作る.ただし暖かいジャムがうまくても市販の冷蔵ジャムを暖めても甘過ぎてうまくないのでご注意ください.さらに堤はカルバドスでフランベしジャムに素晴らしい香りをトッピング.鍋から炎の立つ実に見栄えのいい技術を披露した上,兄は必殺の燃えるジャムを黒やんに提出したのでありました.
さて,本作は主に試食者の珍妙なリアクションを楽しむための作品であり,作られるものが美味くなればなるほど食う側のリアクションに際限がなくなるという重い宿命を背負っております.宮廷料理人謹製の凄いジャムを目にして鼻にした黒やんは辛抱たまらず燃える黒鍋に頭をそのままツッコんだ(笑)! こんな新種の拷問は絶対真似しちゃいけません.しかもこのリアクション,黒やんの命も危ないけれどリアクションの暗示するものも相当に危ない.心眼で見ると黒鍋を顔につけた黒やんは幼児のスーパーヒーローに見えてきます.サンライズがお送りする制作会社巡りの旅は今回はトムス・エンタテイメントをお送りします.しかも黒やんが表現したいのは正義の味方を作った者.やなせさんではなく「…ジャムのおじさんや!」

後半.いろんな意味で危ないジャムのおじさんを火傷で腫れ上がった顔で表現する命懸けのリアクション師黒やん.溶岩石の鍋と紅玉のカルバドスを使ったフランベはジャムのおじさんにも大満足であり,このレベルの危険なリアクションが炸裂すると戦況を引っ繰り返すのはかなり難しいはず.しかしバカだから諦めの悪い河内はまだまだ冠の勝ちを信じている.バカだからリンゴの木を何に使うのかは知らないし,バカだから同じチームの作戦内容を私生活とごっちゃにしてはいるけれど(笑)それでも冠には相手の予想を越える1手があるはず!
冠の特製キッチンでもうもうと煙が上がって動揺する父親だけれどこれは調理の一環.ドラム缶でジャムを燻製にする温薫だ! 燻すのに使うのは当然遅刻しかけて手に入れたリンゴの木.燻製は使う木で香りが変わり甘いものを燻すときにはリンゴが最適.和馬を暖炉の火で暖めたことからこれを思いついた広い知識と,翌日には失敗できない会場でそれをやってのける経験と腕にさすがの兄もびっくり.しかしそれでも自分の優位は揺るがないはず…と信じてはいるけれど,冠のジャムを食った黒やんのリアクションについては激しく動揺せざるを得ません.
冠のジャムを食った黒やんは沈黙し,心の赴くままに動き出します.ふらふらと歩みゆく彼の先には燻すのに使ったドラム缶.堤は必死で審査員のリアクションを止めにかかります! これは審査妨害ではなく諏訪原忍者が和馬のパンを奪って逃亡したのと同じ意味.今の黒やんにリアクションを取らせてしまうと本人が死んでしまうがゆえの緊急避難措置! ドラム缶に入ってリンゴの木で燻されてしまったら,ジャムのおじさんの燻製が完成してしまう.自殺行為を止めるべく総出でジャムのおじさんの進撃を止めようとするものの,トランスゆえに彼の力は半端ではなくこのままではチンピラ総出でも止まらない.突進するリアクション馬鹿を止めるのが松代店長の心理分析!
人はある行動が何らかの事情で出来ないときには,別の行動で自分の欲望を満たそうとします.今自分を燻してジャムのおじさんの燻製を作ろうとしている黒やんを止めるには…月乃さんを占い師にして運勢を占うしかない! やったら死んじゃう燻製ではなく運勢を占われ,うんていにぶら下がることで己をごまかし慰める黒やん.…いくらトランスしていたとしても,心のどこかではきっと死にたくはなかったんだろうなぁ…(苦笑).そして,この現実離れした状況で適切なダジャレを出して一人のスーパー審査員を救った男の胆力と判断力に,つい魅了されてしまう者が出てしまったのでありました.

黒やんをジャムのおじさんに変えた堤のジャムと危うくジャムのおじさんの燻製を作りかけた冠のジャム.その味わいは甲乙つけがたく,結局勝者なしの引き分けに! 黒やんの精密な判断の結果引き分けってことは,まったく違った技法を使っても優劣がつけられなかったんでしょうね.それじゃ今回のバトルの焦点である跡継ぎ問題はどうするのかと思ったら,男が男に惚れてしまったために明後日の方向に流れ弾が飛んで行った(笑).料理に対する真の熱意を持つ息子たちよりも組長に相応しい男がここにいた!
見た目も性格も申し分ない上に腕も立つ上に判断力も知性もある.その上,下の者を率いるカリスマ性まで持ち合わせた男の中の男として推薦されちゃったのが松代店長! …元々あの風体でパン屋の店長と言い張ることの方に無理があると思っていた全員がこれを歓迎してしまい,店長はアンタッチャブルな世界に強制的に引き込まれていくのでありました.…本人以外はめでたしめでたし.しかし引き分けのパネル1枚分が次回持ち越しとなったことで「焼きたて9」には激動が訪れます.本当にとんでもないのが来ちゃう次回に続きます!

|

« 練馬大根ブラザーズ#3 | トップページ | 金色のガッシュベル#142 »

レビュー◆焼きたて!!ジャぱん」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 焼きたて!!ジャぱん#62:

« 練馬大根ブラザーズ#3 | トップページ | 金色のガッシュベル#142 »