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焼きたて!!ジャぱん#64

「時代を越えてこそ王道の巻」

「焼きたて9」の6回戦.一勝すれば戦局がひっくり返るこの大舞台にサンピエールが投入したのはあの三木のり平,すなわち桃屋の看板だった.彼の専門であるノリを使ったパン勝負に向けて和馬と冠は力を尽くし,河内はその内容をまったく知らなかった.
ノリでは勝ち目が薄いパンタジアはパンの工夫で圧倒するしか道はない.バターのクリーミングや1次発酵後に再度こねるリミックス法を駆使した和馬のパンは黒柳に激しいリアクションを取らせる.島のつく有名人をかき集めた上,足りない一人は自分の婿入りで補って「十六島」.そして審査員は新婚旅行に旅立った.

もはや後のことなど考えずひたすら笑いに挑む「ジャぱん」.前回見せた凄まじい出落ちなど,その破滅的な笑いの追求ぶりはもはややけっぱちにしか見えないわけですが(笑),今回もまた精一杯危険な道を走ります.本作はこれまでゴールデンタイムの作品として可能な限り広い範囲に受け入れられる笑いを狙ってきたわけですが,本来笑いとは範囲が狭ければ狭いほど笑えるもの.今回の13人目と14人目は尖端を狙ってはならない本作があえて狙った尖端,要するにマニアのリトマス試験紙.…しかし真の勝者は時代すらも越える大きなもの.誰にでも理解できる丸くて鈍い笑いこそが,社会までも大きく動かしていくのです.

前半.山崎パンが桃屋とのバトルを受け入れることで視聴者の度肝を抜いた前回に決着がつくのが今回.ノリのスペシャリストである桃屋の人にノリを使ったパンで勝つには,パンタジアは余程パンに工夫を凝らさねばなりません.過去経験した逆境の中でもここまで無茶な状況は存在しなかったはずですが,それでも挫けず工夫を積み重ねる和馬は偉くそれを支える冠も偉く,そんな2人の奮闘をただ信じて見守っているだけの河内は偉くない(笑).本当に「なんやて」を言うためだけの係になってしまったなぁ….
ボウルでバターを泡立ててパンの仕上がりをふっくらさせるクリーミングは和馬とのり平の両方が採用.パンについては素人のはずの桃屋の人がここまで頑張るとは.さすが超一流は何事においても出来が違う.しかし和馬も本作の主役として,のり平にない新たな工夫を見せつけます.
和馬がその腕で見せたのは,1次発酵を終えた生地を再度こねなおすというリミックス法.一度できあがったグルテンを壊して再度作らせるというこの技は以前のダブルグルテンと同じコンセプトではありますが,グルテンを抽出する過程なしに二度ごねだけで同じ以上のものを作れるようになったと考えれば,和馬の技術面での上達ぶりを示している描写ではないかと.課題のノリに関しては精一杯の工夫として生春巻きにコーラ煮ノリを巻き込んでパンに包んで焼成し完成!…なんだけど,ここまで主に後出しで勝ってきたパンタジアには珍しい先出しがやっぱり不安を誘います.
和馬のパンを食った黒やんのリアクションは軽い大爆走&行方不明からスタート.心の赴くままに美味さを表現するがゆえの奇行は今に始まったことではないので,命を粗末にするような真似さえしなければ特に焦ることもない関係者の慣れっぷりがなんか悲しい(笑).もちろんこの行方不明もリアクションであり,店長に肩車された河内が観客の中に見つけたのは….
タレントにスポーツ選手に棋士に歌手,そして…大変に微妙な業界から(笑)「島」のつく14人が大集合.今回作画はそんなに良くはないんですが,そんな絵柄で頑張って似顔絵を描いたことから醸し出される微妙な感じがたまらねえ(笑).14人目はなんでこの人なんだろう.サンデーで洒落が通じそうだったから?
そして最後に登場する新郎新婦は島夫妻.島さんの家に入り婿してまで十六人の島を揃えて「十六島」をやってのける思いきりの良い黒やん改め島やん! たかがパンの美味さを表現するためだけに結婚しやがったこのバカは,パンへの愛だけを抱えて偽りの新婚旅行に出掛けるのであります.…で,肝心の審査はどうすんの?

後半.パンの美味さを表現するためにわざわざ入籍までしちゃった黒やん改め島やん.名字は島だけどあんまり見目麗しくない女性と結婚し,新婚旅行に出掛けるもののやっているのはパンの審査以外の何物でもない.普通なら新婦のことだけを考えなければならない旅行中でも新郎の頭には和馬のパンの美味さしかない.他人のパンの凄さを説明するためだけに結婚した新郎の愛はもちろんパンに向けられている.なんて豪快な妻に対する裏切り! そこには微塵の愛もない!
飛行機の中や南の島のみならずホテルでの初夜に至るまで,島やんの頭の中にはパンだけしかない.ノリから染み出す水分を吸収して食い止めるライスペーパーの工夫を讃えるためのハネムーン.米であるライスペーパーはノリとパン生地の仲を見事に取り持って,逆にパンによって引き裂かれた島夫妻は新婚旅行の直後に離婚する.パンバカの島やんは黒やんへと戻り,たった1度のリアクションで独身青年はバツ1にクラスチェンジしたのでありました.…この人でなしめ(苦笑)!
いろんな島さんを揃えただけでなく自らも島となった黒やん体当たりのリアクションはかなりの好感触の証.普通のバトルなら勝っていてもおかしくないレベルなんだけど,今回はさすがに相手が悪い.続いて差し出されたのり平のパンを食った黒やんは…その妄想世界を無意識のままに現実に広げ,いかにもゴールデンらしい高尚なリアクションを繰り出します.
河内の顔どころか会場全体にどこぞのペイントソフトのようなエフェクトをかけてしまう黒やんのリアクション! フィルタがかかったこのあたり,雑誌では印刷が汚くて見難かった覚えがありますが(笑)アニメでカラーで動くとやはり映えますね.このもやもやとした画風はモネ.モネや→モモや→桃屋とダジャレ的には普通ですがスポンサーでもないメーカー名を礼賛しちゃう本作はやっぱりどうかしているわけで,今回はサンピエールの勝利!
そしてさらに展開される,写楽を筆頭とした名画テーマの連続パロディ.パンタジア側の「島」揃えと違って爆発力はありませんが,この先何年経っても劣化しないであろうこの笑いこそ一般向けアニメの選ぶべき道であります.桃屋がパンタジアに勝っていたのはまずはノリの煮込み時間.生ノリならば炊き上がるのも早いから長時間の煮込みは逆効果.のり平が選んだ30分の浅炊きこそが唯一の正解なのだと,黒やんはみどりの髪も美しいモナリザこと河内に説教します.
そして,のり平がさらに優れていたのがノリを包むのにとうもろこしと小麦の菓子・パータフィロを使っていたこと.生春巻きに比べれば格段に噛み切りやすい生地を使ったことにより,サンピエールのパンは全体として素晴らしい歯切れの良さを得たのでありました…ってなくだりをひまわりやらムンクの叫びやら中国山水画やらウォーホルやらのパロディによって表現する黒やんと巻き込まれている河内.パンタジアも素晴らしかったけれど肝心の部分の詰めがサンピエールより甘かった.一時的にはウケたけれど,芸術となるまで磨き上げられたものではなかった.これが最大の敗因です.

かくして絶対落とせない大一番をついに落としてしまったパンタジア! 作り手が危ない橋を渡って呼んできた凄い刺客は,見事に役目を果たして最強の主役を倒してくれました.実際本作では和馬の強さは反則レベルで,これを負かすのは並大抵の敵ではそもそも無理.しかし,そのキャリアが段違いである桃屋の人ならば仕方ないと,視聴者だって納得せざるを得ないのです.
しかも敵役に回ってもらった豪華なゲストに対する心配りも忘れてません.さっきまでの敵の健闘を讃えた上に自作秘蔵のノリレシピ集まで渡してくれる桃屋の人はいい人だ.日本人の手で既存の料理を改革していこうとする意志は全ての国内メーカーが持つべき高い志.パンとノリという題材の違いはあれども,山崎パンも桃屋も真剣に日本の食を追及し日々前進していくのであります.…世にCM手法は数あれど,ここまで広告効果の高い使い方はそうはないだろう.河内の顔については無視しつつ,窮地の次回に続きます.

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