焼きたて!!ジャぱん#68
「金に染まるぞプレ最終回の巻」
「焼きたて9」の舞台で繰り広げられていた宿敵雪乃と和馬のタルトバトル.黒柳の口に焼きあがった直後の2つのタルトをほぼ同時につっこんだことにより,会場は黒柳のファンタジックな大リアクションに巻き込まれてしまった.異郷で目覚めた和馬は河内とともに,邪悪な黒ビワと雪の女王を巡る争いに関わることになる.コスプレしたおなじみの連中とともにビワの力を使って雪の女王を倒した上にビワを捨てるための旅に出た和馬.女王の居城を知る販売所のじいさんも仲間に加わり,異世界リアクションは延々と続く.
今回含めてあと2話というところまで来ちゃった大詰めの「ジャぱん」.今回の大ネタはあの大作映画三部作!…に見せかけて,実際はクラシカルなサンライズ的最終回パターンではなかろうか.原作のスピンアウトな読みきりに,とりあえず金色で大団円という自社のセルフパロディをぶっこんだ上に感動的に完結させるバランス感覚恐るべし(笑).入り口はより多くの視聴者に,そして奥ではわかってるマニアにも楽しんでもらえることを頭に置いて作られてきた本作の溢れんばかりのサービス精神は,こんなときまで全開です.
前半.吹雪の手対太陽の手の決戦.冷たい手でしかできない逆さ折りを駆使された最上級タルト生地と,暖かく強い手ならではの超高タンパク粉による超薄クロワッサン生地で作られた2つのタルトはほぼ同時に黒やんの口の中に突っ込まれて…そしてはじまる大惨事.美味いパンを同時に2つ口に入れるだけであっさり現実を侵食できる黒やんの妄想力恐るべし.天は陰り地は鳴き海は叫ぶってどんなファンタジーですか?…皮肉でなくてこれは本当にファンタジー.ラスト直前を飾るに相応しい,実にメジャーなパロディへの入り口です.
大異変に巻き込まれ気を失った和馬が再び目覚めたのは異境の花園.一応河内もいるんですけども,彼はいつものようにツッコミ役としてしか機能していないので無視しても問題ないと思います(笑).人のいる気配のない異世界でまずやらねばならないこととして,食料の確保は少なくとも痴話喧嘩よりは正しいと思うんですが,這いつくばって食べられるものを探すあたりが凄いなぁ(苦笑).そこはおまけでついてきちゃった3人の子どもたちのように木になってる奴を….
本気で拾い食い希望の和馬が見つけたのは,地に転がる訳有りの黒糖浸けビワ.2つのタルトが黒やんの口に入れられたことで生まれたこの世界で,和馬が使ったビワに大きな意味が与えられてるあたりから,和馬が作ったタルトの優位性がかいま見えてるんですが,もはや勝敗なんてどうでもいい状況です(笑).和馬が大喜びで拾ったこのビワは,黒糖ビワならぬ邪悪な黒やんビワ.お前を支配してやると和馬の指にくっついて取れなくなり,ここから英雄伝説がはじまってしまいます.来週は最終回だってのに…
指にビワがくっついた和馬の前に迫る脅威と,そんな脅威を見事に祓う凛々しくも美しいヒロイン.馬に乗り追って来る黒衣の者たちを脅威の力で退けるのは,綺麗な服で長耳となった月乃さんことエルフの姫のムーン.響きは似てますがドリフのひげではありません.現実や試合の事を覚えている和馬や河内に比べ,黒ビワを含めその他の人物は完全にリアクションに飲まれて異世界の住人として生きているご様子.作った和馬が正気なのはまあわかるとして,河内が飲まれてないのは…みそっかすらしく,黒やんがキャスティングを忘れたせいかなぁ.やっぱり(苦笑).
大賢者マエストロフ様ことマイスター霧崎のおっちゃんがいる城に連れてこられた和馬たちは,和馬の指に取り憑いたビワの正体について説明を受けます.雪の女王スノーザに利用され裏切られて復讐のために人間の欲を利用しようと動く怨念の黒糖浸けビワ!…ところ天とかハンペンとか,食い物に人格を与えることで生み出されたキャラはこれまで数々見てきてますが,このビワもその例外に漏れず声は鼻毛だけどどこか脱力系ですな(笑).
雪乃女王はもちろん黒ビワやんも邪悪であるから,この世界に平和を取り戻すためには両方を片付けなければなりません.世界を支配しようとする巨悪をぶっつけて両方を葬り去るだなんて相当の大事のはずなのに,イメージシーンでスノーザに支配される人々がいちいちキッドなおかげで緊迫感台無し.あんな珍奇な世界ならきっとボケの和馬率いるコスプレ軍団でもなんとかできるに違いないので,河内は無駄に案じたり止めたりしなくていいですよ(苦笑).和馬のお伴は岩をも砕くケンと岩を貫くクラウニーと岩をも破壊するマイストロフの仮想敵が岩な3人組.さらに月乃ことムーンから超高タンパク粉を授けられ,たった3日の大冒険がはじまったのでありました.
リアクションが生み出した幻想世界の中,正気なら気恥ずかしくて死にたい感じのコスプレで歩くパンタジア野郎一同.そこにスノーザの部下にやられていた販売所のじいちゃんことゴレムも加わって,黒やんの妄想が作り出したパロディ劇は絶好調.…敵を矢で貫いたり魔法で吹っ飛ばしたりするのは原典準拠で問題ないけど,北斗真拳は原典にはねえよ(苦笑).そして販売所のじいさんのデザインを見た時点で期待しまくっていた「いとしいしと」もちゃんと来た! 期待を違えずあの名セリフを言わせてくれるのが大変うれしい.ビワの主である心優しい旦那様が率いる過酷な旅は,ついに佳境へと達します.
後半.道を知っているゴレムの案内によって大自然を進む和馬たち.寒いスノーザの居城間近,ビワの力も強まる地点で今晩は夜を過ごします.特に寝てる時はビワの誘惑に引っ張られやすいから夢でも誘惑に乗るなと言われた和馬が「それじゃあ俺もう寝ねえ!」と言った直後に寝る天真爛漫さがたまりません(笑).何がいいってあの間と和馬の言いっぷりが絶妙.時間がないところを逆手に取った即座の睡眠が素晴らしい!
絵に描いたようにころりと落ちた夢の中,黒ビワは脆弱で欲深い人の子に語りかけます.夢をなんでも叶えてやるぞと誘惑する黒ビワ.そのほくそ笑みが黄色い宇宙人っぽかったりするけれど気にしない.人の欲に乗じてその人間を支配しようとする黒やんビワではあるけれど,なんせ和馬の欲は異常で規格外.「ジャぱん」という妄想に向かってひたすら前進してきた彼の欲は大変に深い上に,他人の助力を受け入れない.周囲からヒントを見つけることはあるけれど,特にパン作りに関しては他人の意見を聞き入れない意外と狭量な主人公.なんせ試行錯誤は和馬にとっては最高の娯楽.これを他人の手に渡すことは一片だってできないという職人らしい覚悟で生きる,実に徹底したパン馬鹿なのです.
あまりにバカな和馬の夢を叶えることのできない黒ビワは,逆に和馬から夢について尋ねられます.世界を支配する野望を抱くビワだけど,支配したあとのビジョンは特になし.…まあ,ビワに統治のビジョンなんか期待する方がどうかしてるとも言えますが.そしてビワがそっと抱えた無邪気なもう1つの夢は…その身に相応しい調理をされて,おいしく食べてもらいたい.もちろん優れた素材にそんなことを直接言われた日には凄腕職人としてはその願いをかなえてやるのが当然なので,和馬は自分のタルトジャぱんにしてやると黒糖ビワのおっちゃんに約束.ビワも和馬の手の暖かさに期待して,和馬の運命共同体となりました.
翌朝,和馬の手についたビワはなぜか大きくなり,パンが作れなくなってます.とはいえこの環境ではパン作りに興じている暇がありません.仲間達と黒ビワとついでに河内とともにスノーザを倒さなければ,リアクションパンアニメには戻れやしないのです.実にタイミングよくビワを始末する燃えるゴミの日に到着した和馬たちはそのまま城に突入.大量の雑魚は岩をも砕くド派手な戦力でばったばったと片づけちゃえばいいんだけれど,問題は最後に控えるラスボス.彼女には岩をどうにかする攻撃がまったく通用しないのです.
巨大なる雪の女王スノーザに対峙するのは,和馬とマイストロフと一応河内.けれど吹雪の手はあっという間に和馬以外を凍らせて,場に残るのは何の攻撃手段も持たない和馬のみ.絵に描いたような最終決戦で絶対絶命のど真ん中,雪乃の大技・サカサオーリの秘術が和馬に炸裂するかと思われたそのとき,和馬はムーンに授けられた超高タンパク粉を思い出してガード! ファンタジーなので原理は気にすんな.さらにスノーザのイチゴビットによるレーザー攻撃には…ビワが超変形し和馬の体を覆って守る! このあたりから,サンライズがサンライズ最終回パロディをやりはじめます(笑).
イチゴビットレーザー対黒糖ビワ防御.黒やんビワは自身の夢見る心を惹き起こしてしまった和馬に死ぬことを許しません.審査員がここまで和馬側に肩入れしてるってことは余程和馬のタルトジャぱんが気に入ったようですが,もはや審査なんかどうでもいいですね(苦笑).そして光りだす和馬の太陽の手.それを掲げる和馬はお約束として金色に輝きます! …いやぁ,実に正しいサンライズの最終回だ…(笑).太陽の手は吹雪の手の力を圧倒.この輝く力は和馬の喰う者と喰われる者の双方に与える愛がもたらす金色の奇跡.食べる者だけでなく食材に対する愛にも満ち溢れた金は全てを包み!ついにスノーザは倒れたのでありました.
そして和馬が倒す最後の者は…決戦の際には自分を守ってくれた黒糖ビワ.一度はタルトジャぱんにしてやると約束した和馬ではあるけれど,ビワが滅びなければ彼自身もパン作りのできる現実に戻ることができない.それでも和馬は別れを嫌がって…嫌だと泣く和馬の手から,ビワが自ら離れていきます.スノーザだけでなく黒糖ビワの邪悪な心すらも溶かしてしまった太陽の手の温もりと別れ,今度会うときにはタルトジャぱんにしてくれと頼んで火口に落下していく.己を捨てリアクションを終結させる,これがビワの歩むべき道.ロード・オブ・ザ・ビワ….
無駄に長いザビワ物語が終了し勝者はパンタジア! ほぼ丸々1話を使った実に長いリアクションでしたが,和馬の側に黒やんビワがついた時点で勝敗は決まっていたようです.どれだけ雪乃の技術が素晴らしくても,和馬の喰う者と食材に対する愛,そして愛を支える太陽の手の力には勝てませんでしたとさ.久しぶりに太陽の手がえらい持ち上げられていますが,超高タンパク粉というのはミキシングに時間がかかったり大変粘ったりするらしく,普通は他の粉とブレンドしたり機械でこねたりしなければならない難しい代物のご様子.これを普通に手だけでこねてしまった和馬はやはり凄いってことなのでしょう.
実に長すぎるリアクションをこの段階で覚悟を決めてやっちゃう本作ってやっぱり凄い! 本作の主役である黒やんのリアクションもロード・オブ・ザ・クロヤナギとして見事に完結してめでたしめでたし.まだちょっと凍ってるヘタレのことはまあ横に置いておくとして,ついに次回は怒涛の最終回! ここまで危ない橋を全力疾走してきた本作もついに見納め.権利問題と戯れながらも,あっと驚く展開を最後に見せた上に見事に着地してのける,次回,最終回に続きます!
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