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練馬大根ブラザーズ#8

「そのスパンキングに愛はないの巻」

マコのイチローへの想いは頬を叩かれて以来ひたすら募るばかり.しかしそんなことすら察せないヒデキが指輪をエサにマコに結婚を迫っていると,カラクリがホスト大量失踪事件が発生していることを伝えに来る.パンダとナルトの板挟みに耐えられずイチローへの愛に逃げているカラクリはマコと衝突してなぜか岡山弁で戦うのだった.
愛ゆえにピンクのお父さん着ぐるみでイチローを護衛するカラクリ.しかし護衛中につい乱心したところを同じく護衛していたマコにやられ,その背景でまんまとイチローは激安販売店の車に連れ去られてしまう.

ついに色んなものがぶっこわれてきて大変にうれしい「練馬大根」.「練馬大根ブラザーズがドームをおっ建てるためおやっさんからアイテムを借りて悪人をやっつけるものの金は手に入らない」というのが本作初期の基本構造であったはずですが,現在は「ドームをおっ建てる」の部分が頻繁に「仲間を救う」に書き替わってきているのは皆様ご存知の通り.そして今回は「仲間を救う」物語の決定版! 緩い仲間意識と一方通行の恋愛感情で結ばれた3人ならではのバカで切なくて楽しい展開が腹一杯に堪能できます.作画も良好で動きもマコさんの唇も見事.これまでの最高傑作回だと思うんだけど…どうしてこんなときに限って12分も遅れてしまうんだろうなぁ(苦笑).

前半.今日の敵は住人訴訟や買収転じて業務提携でおなじみドンキ…をインスパイアしたコンチキマート.周辺住人からは大不評の深夜営業に火事になったときは絶対ヤバそうなジャングル陳列に一体どこから仕入れているのかわからないほどの激安ぶりでおなじみ.チャームポイントは特徴的なペンギンキャラクターとビル屋上のU字遊具(使えない).このコンチキにやってきたヒデキはNASUのロケット特価1980円(税込)にびっくり.この値段じゃ怖くて乗れません.
借金だらけのヒデキがなんでコンチキなんかに行ったのかと思ったら,それはもちろんマコのため.けれど当のマコさんはステージでイチローへの恋を歌いながら寝込みを襲おうとしております.バカでマゾな練馬大根ブラザーズの一員として見事ぶたれて恋に目覚めたマゾのマコ.今更ですが,スパンキングだなんて特殊なプレイ用語がろくに説明もされずふつーに流されていくあたりがさすが大人向けです.
特殊な性的嗜好を持つマコさんにテレ朝の特番ネタにさらりと触れつつヒデキは気持ちの結婚指輪をプレゼント.憲法を盾にマコは受け取りを拒否ろうとするも,この安っぽい指輪の価値をマコ自身が確信を持って判断できないのが悩ましい.でかくて軽くて怪しげな指輪,お安くゲットしたんでしょ?ばからしいと切々と歌うマコの唇は色っぽく,しかしヒデキはマコに見る目がないのだと頑張ってみる.宝石も大根も地面に埋まっているからわかるという超理論を振り回した上,彼がこの指輪にかけた金額で判断しろと言うのです.
値段は正直と指輪の価値をキャッシュで語り,その投資額は当社比数倍分の借りちゃいなマネーなんだぞと実に拝金主義な詭弁でマコさんを幻惑するヒデキ.ここでダンス画面が25分割まで行くのが画面映えしていいなぁ.大切な大切なお金で買った大切な大切な指輪!というヒデキの勢いになんとなく流されるマコさんも,練馬大根らしくやっぱりバカ,…掘り出し物は稀にしかないからありがたく,ほとんどの良いものには良い値段がついているのは世の道理.ただし良い値段がついているダメなものは山のようにあるわけだから逆は真ならずってのも世の道理なのにそれを知らないマコは指輪と結婚を天秤にかけて悩み…カラクリが自転車でステージに飛び込んで指輪話は一時中断.今回の前説終わりです.
カラクリがわざわざ来たのはイチローに関係しそうな事件のため.元々は練馬大根の敵で内偵者であった彼女も今や立派なダメ人間.パンダからイチローに乗り換え中の浮気な大年増でございます.同じくイチローを狙う者にとっては迷惑な競争者の登場にマコは怒り,角突き合わせて岡山弁での罵倒大会を練馬区で開催…なんで岡山? 岡山弁で真正面から言い張る2人の女とそれを半分寝ながら標準語に翻訳する親切なイチローと完璧に蚊帳の外のヒデキ.どうやら岡山弁は淑女の嗜みらしいですが,岡山には東京のハイソな街なんかよりも淑女がごーろごろってことですか?
さて,カラクリが伝える都内有名ホスト連続殴打誘拐事件.やってることは病院の回によく似てますね.一応江古田のナンバーワンであるイチローも狙われてもおかしくない.で,襲われるイチローを助ければきっとイチローとも親密になれるに違いないぞと煩悩を燃やし,わざわざこのド腐れ婦警はここまで来たわけです.もちろんそんな痴れ事をマコは絶対許せない.私のイチローは私が守る!と全力で歌い大アピール.けれど折角の歌も寝てるイチローには届かないしカラクリはイチローをお持ち帰りしようとするし(苦笑).ただし未だにパンダとの縁が切れていないカラクリは,彼の接近によってイチローを畑の真ん中に落とし強盗失敗.色男ってのは寝込みを襲われたり岡山弁の通訳をしたり誘拐されそうになったりと,なかなか大変そうなものであります.
物語が動くのは翌日の夜.懲りないカラクリは江古田の店で勝手に押しかけ,ピンクのダースベイカラクリとしてグオーパーグオーパーと店内店外問わずに護衛.あんな息がうるさい着ぐるみストーカーに夜道について来られたら,兼業ギャングでも振り向けないほど怖いのは間違いありません(苦笑).鼻息荒く監視しているうちに変質者となったカラクリを止めたのは,どこからともなく登場したマコの鉄拳ガード! たぶんカラクリとほぼ同じ事を考えたはずのマコはオバンの魔の手からは愛する人を救うものの,本命のイチローが画面の端っこで殴られてコンチキの車に連れ去られてます(笑)! 本作は推理モノではないので現場にはコンチキがやったという証拠がバッチリ残る安心構造.でもなんだって安売り店がホストなんかを殴って集めているのやら.

後半は怒涛だ! なぜに激安店がイチローを含めたホストを殴ってお持ち帰りなどしているのか.フツーの頭の持ち主にだって皆目見当がつかないんだから,バカな練馬大根たちが逆立ちしたってわかるわけがない.けれどヒデキもマコもイチローがいないのは嫌なので,おやっさんの前で歌います! ローテンションながらも彼は本作では貴重なツッコミ.いないと寂しいどころか作品が破綻しかねないので(笑)おやっさんこと監督は百万ボルトの単3電池を貸してくれました.一体中はどうなってるんだろう….
なぜにコンチキがホストを大量誘拐してやがったのか.それは屋上から大量のホストをパッケージングして激安販売しちゃうため.出荷先は宇宙を予定しもろに人身売買をやらかす気満々.日本で無理やり人材を調達して送るだなんて,まるでどこぞの国の支援組織みたいであり拉致られる方はたまったもんじゃありません.人権侵害で犯罪です.
夜,コンチキマートのU字の上には大仰な音楽とともに未知とのインディペンデンスな謎の円盤UFOがシャンデリアのごとく到着し,コンチキは屋上からパッケージング済の激安ホストを出荷開始.もちろん仲間を出荷されては困るヒデキとマコとついでにパンダは,宇宙大戦争覚悟でさっきの電池とコンチキの売り物をつかって突撃開始.乗るは冒頭に出てきた激安ロケット! ヤバげな値段のアレに百万ボルトを給電し,練馬の宇宙飛行士は激安店の屋上のU字の中から舞い上がる!
さらわれた仲間を助けにいくのにテンションが上がるのは当然の話.それが愛する人であるならなおのこと.マコさんは宇宙船のコックピットで宇宙一愛するイチローへの愛を思いっきしふりまいて…ここでついにヒデキはスパンキングの魔力を覚ったのでありました.遅! いくらなんでも彼女の心がどっちを向いているかくらいはヒデ兄だってわかってるんじゃないかと淡い期待を抱いてたんですが,期待した方がバカでした(苦笑).
仲間を助けに行くはずのロケットは己の恋敵を助けるためのロケットに変わり,当然それはできないヒデキは借りて来た電池を抜いてしまうからロケット地上へ急速落下.緩い仲間意識は恋心の重力には絶対に勝てない.それはこれまでの人類の長い歴史の中で,各種仲良しサークルが色恋沙汰で崩壊していったことからも既に証明されていることです.ヒデキはマコと結婚したい.マコはイチローを助けて結婚したい.そしてイチローは…結婚しない.「だってマコのこと,なんとも思ってねいもん」
この危機的状況の中,宇宙人にさらわれながらもソロでさらっと己の心情を吐露しちゃうイチロー.マコはただの同居人で同じバンドのメンバーでパンダやマリモ以下の存在でしかないのだと,拝金主義で若いだけが取り柄でもこもこもほわほわもしていない小娘をばっさり切り捨てる! …実際マコは自分の可愛さを鼻にかける嫌な女.そのプライドがイチローの歌でがらがらっとぶっ壊れていく様子に奇妙なカタルシスを感じます(笑).
マコをどん底に叩き込んだイチローの歌はヒデキにとっては凱歌と同じ.恋敵は一転仲間に戻り,現金なヒデキはロケットは再噴射でUFOへ特攻! 地上からコンチキの社長がマシンガン撃ってくる中でピンクの変質者ことカラクリの自転車と空中で合流したのもつかの間ブレーキ効かずにUFOに激突! もちろん壊れるのはコンチキの安物ロケットばかり.ただしUFOは意味不明のバンザイアタックに驚いたのか,ホストを返品して逃げ出してしまいます.
仕入れ値ゼロ円のホストたちはすかさず逃走し,コンチキビルの屋上に落ちたロケットの鼻先ではあの3人がいつものように揃って歌いだす.一方通行で報われない愛でおなじみ,練馬大根ブラザーズ! …一瞬かっこ良く見える3人だけど今回電池以外はもらってないので大変に無力.安売りバズーカ撃ってくるコンチキに比べるとその戦力は嬰児並み(笑).しかし練馬大根にはカラクリがつきもの.ホースとともにある一騎当千の彼女さえこの戦場に引きこめたなら,逮捕のどさくさに紛れてコンチキの金持って逃げるくらいは簡単なはず!…だったのに,宇宙船が戻って来て金を回収して飛んで行ってノーマネーでフィニッシュ.まあ,いつものことなんですが.

一騒ぎも収まって静かになった廃墟の中で,壊れたロケットの上でイチローの幻影に悲しい恋を歌うマコ.いかに若くてぴちぴちでもこの恋は一方通行出口なし.ヒデキの恋をいいように食い物にしていたマコに比べて,そもそもマコの恋を食ってもくれないイチローの方がずっと酷薄で涙が出ちゃう.もし3人がバンドのメンバーでなかったら,一緒にいることすらも許されないに違いない.これぞ所謂ひとつの嫌われ.マコがヒデキにするように,イチローはマコにするのです.
そんな哀愁の中にエンディング曲のイントロと共に登場したのが誰あろうヒデキ.前説の指輪とともに登場し,マコの価値は指輪なんかと比べられないと口説きます,最良のタイミングで最良の言葉を発したヒデキは一挙にトゥルーエンドになだれ込めるはずが!指輪の価値がコンチキの激安32円であったためにバッドエンドに直行だ(笑). …あの分岐の時点で借りちゃいなマネーさえ選んでいれば…かくして税込32円と比較もできないパンダやマリモ以下の乙女は,ヒデ兄ちゃんをけたぐり倒すのでありました.本当のエンディングはイチローが,「世の中,お金で買えないものもあります…嘘です」
涙は笑いというお汁粉に一つまみ入れる塩.普段いい目を見てばかりのマコの流す涙が見事にギャグを引き立てて,ラストの一言で見事に収まる,実に味わい深い仕上がりとなりました! 大人ってのは子どもと違いどうしたってただの友達や仲良しなんかではいられない.ヒデキたちの結束だって,子ども同士の友情のように無制限で無垢で堅いものなんかではないわけです.つまりは限度ありのちょっと汚れた脆い大人の友情を描いているわけだから,本作ってちゃんと大人向けじゃないかと思います.で,そんな脆いものにさらに大きな亀裂が入ってついでに作画も崩壊する(笑)次回に続きます.

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