第14回しりとり竜王戦・本戦
この記事は第14回竜王戦,準決勝以降の記事です.予選は以下のリンクでどうぞ.
R'sM: 第14回しりとり竜王戦・予選
勝ち残ったのはほっしゃん。,有野(よゐこ),川元(ダブルブッキング),千原弟(千原兄弟).板尾永世竜王がいないので鋭く尖った回答に関してはやや不足気味の予選でしたが,エロマスターのおかげで大変に楽しかったからOKです(笑).シモネタは基本的に高く評価されることはまずありませんが,それはシモネタの力が余りにも大きく,特に若手芸人がその力に頼って自らの技術を磨かないというのは甚だしく不真面目であることと,年々厳しくなる放送コードに耐えられないようなことをすんじゃねえボケという2つの理由が主に上げられるはず(笑).しかしシモネタにはちょっとした文化の壁ならば軽く爆破できるほどの恒常的な強さがあり,場をわきまえて効果的に使えばこれほど力のある火薬もありません.シモネタの力は,決して舐めてはならないのです.
準決勝第1試合はほっしゃん対千原.12回の準決勝後半で2人が見せたあのしりとりハイは記憶に新しいところ.新人とは思えぬほどの安定感を狡猾さを見せるほっしゃんと板尾永世竜王の野放図で幻想的な芸風を意識して継承する千原の繰り広げたファンタジックなバトルがまたも見られるかもしれないとなれば,場の温度だって上がります.前回はほっしゃんが崩れて千原が勝利.さて今回はどうなるか.
競技は「しりとりイマジネーション」.テーマのイメージでしりとり.
テーマは「外国人が着ていたTシャツに書かれていた日本語」.「株主総会」からスタート.
意味もわからず日本語を千切って印刷しちゃったがゆえの不条理さが決め手のこのお題.スロー判定で千原の先攻となって最初の解答が「伊武雅刀」.…うん.確かに文字はかっこいい.でもこれって本当はいぶまさとうと読むらしいから,次は「う」ではじまるべきなんだけど千原も審査員も「と」って思ってるからまあいいや(笑).ほっしゃんは「鳥というよりも」と途切れの妙.千原の「モーレツシゴキ教室」は単語のコラージュ.一体どんな雑誌をネタにしたのやら.ほっしゃんの「ツベルクリン反応なし」もどこがネタ元なのか気になるぞ.千原の「七転十三倒」もコラージュらしい.ほっしゃんの「後ろ指,ゆうゆ」はネタ元の古さが見えて愉快.これがTシャツに印刷してあって,しかも着ている奴は意味がわかってないんだぞ? 千原の「湯煙」はお土産品っぽくっていい感じ.ほっしゃんの「リーズナブル」は着ている奴が意味をわかっていないがゆえの悲劇.日本人幼児やおぼちゃんの着ているTシャツも,英語的にはときどき大変悲惨なことになっていたりしますよね.千原の「ルミコ小柳」はなぜか逆に.ほっしゃんの「ギリシャ以上」はインパクトが素晴らしい.赤地に黄文字だったりすると最高だ.千原の「受け口大国」のネタ元を教えてください.そしてほっしゃんの「クイズ王でーす」で終了.
テーマとしては割とわかりやすいものであったはずなのに,2人の個性が作り出したのはとんでもなく高度な応酬.ちょっと見には空振りなのかジャストミートなのかわからない,視聴者の目を試すかのような挑発的な回答が連続しました.
結果,ほっしゃん5点千原13点で今回もベテランの千原が勝利! これは千原に釣られてつい空中戦をやってしまったほっしゃんが自身の強みを発揮できなかったと見るべきかな.けれど,こんな風に毎度準決勝に出続ければ,すぐに決勝にのし上がるための場数の力は身についてしまうはずだから,ほっしゃんの次回が本当に怖いです.
準決勝第2試合は有野対川元.どうしても勝ちたい有野と淡々と独自の黒さを発揮し続ける川元の激突.この戦いこそ今回のベストバウト! どうしても手に入れたい永世竜王の座を前にして足踏みを続けてきた実力者と,何の気負いもなく直前の闘いの勢いを背負った若手の大人気ない戦いが素晴らしい! このバトルのポイントがシモネタ.最強の爆薬をあえて手にするかどうか,名人のプライドが試されます.
競技は「しりとりイマジネーション」.テーマのイメージでしりとり.
テーマは「NHKのアナウンサーらしからぬ一言」.「超深刻なニュースです」からスタート.
NHKに大変失礼なこのテーマは,有野の「寿がきやの鍋うどんの提供でお送りしたいです」という直球からスタート! それに応える川元の「全ての女性を性対象として見ております」がどの局…というか人間としてダメで素晴らしい! 有野の「好きです! なっち.続いてのニュースです」もやっぱり人間としてダメであり,川元の「滑ったので,物マネやりまーす」はアナウンサーとして最悪で….溢れるように出てくるダメイメージ.これは名人の着想だけでなくテーマを考えた人にも賞を差し上げたい.有野がまず「素股の前に,明日のお天気」とエロな方向へ.それを川元が「キャミソールって着てみるといいですねぇ」と後を追う.もちろん着ているのは男性アナだよね! さらに有野は「ネグリジェも,いいですよ!」と畳み掛ける.火花散らす切っ先をさっと逸らすかのような川元の「4時ぐらいです」のアバウトぶりが素晴らしいんですが,これに比べると有野の「すっきりと,かりあげてみました」は焦点が絞りきれていない….ここをチャンスと見た川元,「たっぷりと,ここでローションを使います」とシモネタで勝負に出る! もちろん化粧品紹介なんかじゃないですよ! この攻勢に有野は「好きなだけ舐めてください!」と対抗.もちろん料理紹介なんかじゃないですよ(笑)! そして川元,「イっちゃいました」…早! 有野からはじまり川元が火をつけたシモネタ合戦はこの一撃で川元に軍配.有野は「たまらない,ニュースなので,10チャンを見てください」とさすがに逃避(笑).川元も同様に「イランとかどうでもいいじゃないですか」とまともでひどいしりとりに戻っていきます.奔放な有野の「母さん見てるー? 8時のニュースです」に合わせ,川元が「相撲がなんかやってるみたいです」とアバウトに流して終了.
拍手までも巻き起こるほどの見事な打ち合い! このままずっとこの時が続けばいいと思わせる貴重なバトルであったことは,参加者と視聴者全員が納得するところです.難しい題に初撃から当てて最後まで外さなかった解釈力の凄さ.川元の地味な「す」攻めによるエロの裏側での攻防.爆発的なエロによる見た目の派手さ以上の奥行きを持つ,深夜の大人のしりとりでなければできないバトル!
結果,有野13点川元15点で川元勝利! 前戦でエロマスターが魅せてくれたプライド放棄のエロ戦が,川元にとんでもない力を与えたようです! 川元の勢いに押されて最後にはエロから身を引いてしまった有野はここで敗北.つい格好をつけてしまったのは,やはり守るべき人ができてしまったからなんでしょうか.何の戸惑いもなくエロと戯れる純粋さは,背負うモノがない者にだけ与えられる特別な心境なのかもしれません.
決勝は千原対川元.定評ある安定した千原と今日の勢いの中心にいた川元が繰り広げる最終決戦…なんだけど,直前のバトルが余りにも激しすぎて消耗しすぎた川元がさすがに崩れてしまいます.それほどまでに準決勝第2試合のレベルは高かったし,有野は強かった.けれどどれだけ厳しい状況でも最低限の点を取り続けて維持し,その上最後の最後まで余力を残しておかなければ決勝では勝てない.一瞬の爆発力よりも静かな持続力こそがトーナメントには必要なのです.
競技は「しりとりセンスマッチ」.テーマに合った言葉でしりとり.
テーマは「バカッぽい言葉」.「ハンバーグIII世」からスタート.
己の中からバカを呼び出してくるこの戦い.先攻の千原は「意外とおいしいね,この消しゴム」と小学校に戻ってみる.対する川元は己の中の深淵から「息子って捨てちゃいけないの?」ととんでもない疑問を引き出してくる,あまりに暗い淵を目にした千原「ののしられてるの?」とあえてほのぼのと.これに乗ってしまったのが川元の失策.「ののしってないよ」は会話になっているんだけれど,単に千原の手をより強く印象付けるだけだ.ピュアなバカ路線を走る千原は「4時間も経ってこんなことを言うのなんだけど,君誰?」.川元の「レストランて,怖い?」は言った奴の頭の中にあるこの世界の有様を想像するとじんわりと怖い.千原の「胃潰瘍って,憧れるよね」は闇とは対極の実にあっさりと明るい一言.世界に対し開いたバカと閉じたバカの争いは,次第に開いたバカに引きずられていきます.川元の「粘土って,いろいろなことに使えるよね」という素朴な発見.千原の「猫が,集まってきたね」や川元の「猫のウンコを来るとき見たけど,帰りもあるかなぁ」というどうでもいいものに対する注視と無意味なコメント.千原の「ナイトクラブにいかないかい?」といういい大人のかっこつけによるバカっぷり.川元は「一応殴ってください」と意味なく自分を罰する愚かさを,千原は「イギリスは,あっちです」と指差すことによって根拠なく回答することの愚かさを示す.川元の「スルメってなくならないよね」はいつもでも口をもぐもぐさせているバカ.千原の「猫と僕まっしぐら」はついに猫のエサにまで手を出した見境のないバカ.川元の「ランドセルを金色にしてください」は勝俣の王様というコメントが素敵.そして千原は固まった末,「…痛いから,刺さないでください」と妙にリアルで嫌だ.小学校のときの傍観の思い出が蘇ってくるような…そして川元の「いぼを増やしたいんですけど」で終了.
自分の中にあるバカを吐き出すこのバトルもまた,トーナメントの最後を飾る素晴らしい戦いとなりました.その素晴らしさについては今回やたら喋る雛壇というか矢作のコメント「あの人天才だな」に集約されるかなと思います(笑).どこか明るい千原とどうしようもなく暗い川元の戦いは,中盤から闇が光にやや引きずられ….
結果.千原11点川元6点で千原の優勝! これにより千原が有野と同じ永世竜王リーチ状況になったのかな? そんな8段クラスとの終盤での連続ファイトに健闘した川元もまた凄かった! 今回は思考の暗さを生かす題にも恵まれて,実力を限界まで発揮しきった感がありますね.彼に比べるとまたも今回セリ負けた有野の先行きはやや心配.守ってしまえば笑いのキレが鈍っていくに違いない今後,どのようにして優勝すればいいのやら….確実に聞こえてきた世代交代の足音を聞きながら,今回のレビューを終わりたいと思います.
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