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焼きたて!!ジャぱん#69

「心侵して完全勝利!の巻」

ついに残り1マスとなった「焼きたて9」最終戦.舞台は和馬の郷里である新潟,テーマは「日本のパン」,そして敵は実父である霧崎オーナーを憎んでいたはずのマイスター霧崎! 祖父たちやこれまで出会った人々に見守られつつ,和馬は渾身のジャぱんを作る.素材の面ではマイスターが一見有利.実際にマイスターの作り出したおまんたゴぱんを口にした黒やんは,リアクションのために審査を放り出して旅立ってしまう.このような場合は代理審査員として霧崎オーナーともう一人の審査員が必要なのだが,パンタジア側で今すぐ適切な審査員を準備できなければ,オーナー審査によって和馬の負けが決まってしまう.もはや打つ手のないパンタジアに残されているのは祈ることだけ.そしてその祈りに答えて登場したのは,実にお久しぶりのあの男だった.

パンによるリアクションで笑いと権利の縁を1年半に渡って爆走し,とうとう終着点にたどり着く「ジャぱん」.グルメ漫画の構造を使いグルメ漫画のおかしさを指摘し笑ってきた皮肉屋の原作を熱血アニメ風に調理して,毎週のようにおいしく食べさせてくれた本作も今週で見納めです.
タイアップの都合で時間に振り回されながらも割となんとかしてきた本作らしく,最終回は実に見事な駆け足.本来3話かけたいところを1話でやっちゃう一気可成なクライマックスは,語り足りないところは残るけれどそれを補って余りあるほどに爽快! 激しいリアクションと権利への飽くなき挑戦はいつも通りに,そしていつだって場違いにまともなパンうんちくは,驚きのオチへと繋がっていきます.これまでそのままじゃ使えない原作をきっちり料理しきったアニメスタッフの皆様,本当にお疲れさまでした!

今回はオープニングなしでいきなり決戦.「焼きたて9」最終決戦の舞台は新潟県糸魚川市・能生.どちらが最後のパネルが取るかで勝負が決まるという,最終回らしい最終決戦です.パンタジアがたった1敗でパネルをあらかた取られてしまったのは皆様御存知の通り.大一番に挑む和馬がこねるのは緑色の生地.開催地は新潟出身の和馬にとって大変に有利.けれど敵は霧崎オーナーの息子,マイスター霧崎! 味方であるはずの彼はなぜかサンピエール代表として,和馬の前に立ち塞がります.
今回の会場には地元なので和馬の家族が,そして最終戦なので主要な仲間やライバルたちも姿を見せています…木下までも(笑)! 相変わらずナチュラルに無視されているのが気の毒です.中でも一番複雑な気分なのはマイスター霧崎の妹であり霧崎オーナーの娘であるソフィでしょう.あれほど憎んでいた父の元でなぜ兄が戦っているのか,理由がちっともわからない.
幼い息子と娘を外国に見捨てて出奔した父.ひもじい子どもたちの前で自分の焼いたパンをばりばり食った人非人.パンタジアに対し執拗な攻撃を仕掛けてきたラスボス.これがパンタジア側の知る霧崎オーナーの姿ですが,一時はサンピエール側に回ったシャチホコには疑問が.なぜ,マイスターもソフィーも結局パン職人を目指したのか? 憎むべき父と同じ道は絶対に歩みたくないと思うのが普通なのに.…ソフィさんはパンが美味そうだったから!と断固否定をしてますが,わざわざこの道を歩いたのは.やはり父を無意識に求めてのこと?
さて,パンを食うまでは審査員も観客の一人.ただし極上のリアクションのためにはパンの特徴を製作過程で掴んでおきたい.黒やんの見立てでは素材に関してはマイスターが圧倒的に有利.しかしこれまで,製作中には予想もつかないとんでもないパンが和馬の手から作られてきたことを忘れてはなりません.ちなみにマイスターの極上素材の中では「おまんた米」がともかく不安.…きっと原作なら迷わず洒落にならないことになります(笑).
超一流のマイスターの素材に比べると,和馬の素材はどうにも地味なものばかり.とはいえ初めて地の利を得た和馬が持ってきた素材は決して侮れない.祖父たちに手配してもらった完全無農薬米や野生ヨモギは一流のもので,さらに過去黒やんを天国に吹っ飛ばしたあのペターライトまで復活しています.そして全ての決め手となるのが味噌.これがこの先の全ての鍵となります.
霧崎オーナーに妨害禁止を言い渡された雪乃には歯噛みするしかないクリーンな最終戦.対等な条件で争ってパンタジアが負ければ和馬の心も傷つくだろうし,万が一マイスターが負けたとしてもパンタジア所属の職人ということでサンピエール本体には塁が及ばないという,かなり陰険で計算された状況ではないかな.マイスターは和馬と戦いたくて行ったのだと実際にそれをやった諏訪原が主張してますが,1職人ならともかく,経営にも深く関わる顧問クラスがそれをやっていいのかどうかは大変に疑問の残るところです(苦笑).
数々の修羅場を乗り越えてきた和馬の腕前は,特にパンに関しては本作最強と言い切っても問題なし.そもそも登場時から圧倒的な腕前を示してきた天才は,問題を解決するため,そして挑んでくる敵を叩きのめすために比類ない腕を磨きに磨いてきました.河内が最初から置き去りなのはまあ当然として(笑)周囲からは天才と思われている冠ですらも,素材などのアドバイスはできてもパン本体への助力はできなかったわけで,和馬がこれまで意外と孤独であったことがわかります.
和馬がここまで一人腕を磨き続けて来たのは「ジャぱん」のため.日本人の日本人による日本人のためのパンという途方もなく高い目標があったからこそ,本質的には孤独でもモチベーションは落ちないままにここまで来て,会場で仲間たちがようやく気がつく和馬のいる場所.最近ジャぱん○号ってつけてないというどうでもよさそうなことこそが成長の印.モナコカップまでの試作品から脱却しジャぱんを完成させつつある証!…って,実に地味で丁寧な伏線.そんな繊細さは誰も期待してませんけど(笑).
超一流材料でおまんたなマイスターのカニパンと,ジャぱんとしての完成型である和馬のヨモギ味噌パン.2種とも見事焼き上がって黒やんに試食してもらうことになるわけですが,先に食われるのはマイスターの方.なんせペターライトはリアクション的に天国に行く可能性が高いので,審査放棄の可能性を減らすためにも少し冷ますことに.…ここで最後のパンを食われることになったパンタジアの勝利が料理バトルアニメのお約束から内定したようです.おめでとうございます(笑).
名前からして大変に危険な三角形のおまんたゴぱん.黒やんが食したその味わいは,夜空には花火が上がり,三波先生のおまんた囃子が鳴り止まない幻覚を食うものと観客に感じさせる比較的スタンダードなもの.放送できないようなリアクションでなくて本当によかった.黒やんにぎりぎりの節度があって本当によかった! さらにその米の素晴らしさをその身でもって讃えるべく,自らマンタとなって7つの海に回遊に出掛ける黒やん…結局立派な審査放棄.和馬のパンを後回しにした意味がいきなりなくなってますよこのダメ変人審査員め!
審査員が7つの海に回遊に出掛けて職場放棄するという,不測の事態に困るのはもちろんパンタジア側.その素晴らしい読みによってこの事態を狙いマイスターにあのパンを作らせたのではないかと思われる霧崎オーナーは,ルールを遵守した上でパンタジアの敗北を自ら宣言できる位置につきます.こんな時には,両会社のオーナーと両社に無関係な審査員を立てなばならない.しかし都合よく鋭敏な味覚を持つ無関係の審査員がいるわけもなし,和馬のパンはどんどん冷めていくし….
最終回で彼らを襲う,回避不能の大ピンチ.もはや彼らにできることは祈ることだけ…というわけで,月乃さんがピエロンリングに祈ったならば,原理は不明なれどあの世界レベルのピエロが勇者として飛んできた! お久しぶり(笑)! モナコカップ編ラストの指輪の伏線はここで回収.伏線処理のような細かいことは期待していませんが,シリーズ中屈指の素晴らしいキャラをここに連れてきてくれてありがとう! モナコの皇太子ならば審査員に不足なしと判断されて,ついに最後のリアクションがスタートします.

後半.ついに始まる最終最後のリアクション.普通のヨモギパンにしか見えない和馬のジャぱんを食ったオーナーとピエロが見たのは…古い新潟の記憶.幼い和馬と町のパン屋・サンピエール店主の思い出.この映像は霧崎オーナーの頭の中に10年も寝かされていた記憶.フランスに子ども達を置き去りに帰国した霧崎は,一時新潟で小さな店を営んだあとで東京に進出し,たった10年で老舗のパンタジアを越える規模のパンチェーンを作り上げたことになります.
そして当時のオーナーに東京に出る勇気を与えたものこそ,パンに当時からひどく熱心だった幼い和馬の姿.霧崎オーナーこそが和馬が初めて会ったパン職人であり,あの出会いがなければこんな凄く変な話は生まれなかったはず.あのときの言葉に従ってジャぱんを追い求めた和馬と,今や大会社のオーナーとなった霧崎.和馬はあの当時から何も変わらないのに,霧崎はまるで別人.霧崎がなぜ,パンタジアごと和馬を叩き潰そうとするのか.自分が言った「ジャぱん」をなぜ自ら殺そうとするのか.それは一瞬だけ感覚を共有したピエロには計り知れないところで….
和馬のパンへのリアクションは回想劇であっさり終了! 幻覚の中には米もヨモギもペターライトも出て来ない! 引き続いて2人が食べたおまんたゴぱんには黒やんと同じ幻覚が浮かんでいるので,2人のパンに対する感受性が黒やんに比べ鈍いわけでもないようだし…って,臨時の審査員までマンタとなって7つの海を回遊に出かけてどうする(笑).こんな極端なリアクションは無視するのかと思ったけど,霧崎オーナーも意外とつき合いがいいよなぁ.そして2人と入れ替わりに黒やんが会場に回帰! さっきまでの代理審査員探しの意味が…(苦笑).
7つの海を泳ぎリアクションを完了させてきた黒やんは,相当冷えた和馬のパンを続いて食って「ジャぱーん!」と過去回想と同じく本作としては実に地味なリアクション.権利的にはかなり厳しいらしいけど,そんなヤバさでパンの味が評価される本作はやはりどうかしている(苦笑).そして,ジャぱんへのリアクションは未だ終わらない.眼鏡をかけてまじめな口調で「発表したいと思います」だなんて言いだす横暴で尊大で唯我独尊のはずの黒やんの態度こそ,和馬のパンの真の恐ろしさの発露です!
マイスター霧崎のおまんたゴぱんは審査員たちに同じ光景を見せた優れもの.素材の配合へのこだわりも優れていた上に,焼いたカニが素晴らしいと黒やんも大絶賛! 対する和馬のジャぱんも無農薬な生地,ヨモギの味わいと香り,ペターライトによる焼き加減が素晴らしいとこれまた絶賛する黒やん.しかし和馬の祖父たちの奮闘と期待も空しく,このジャぱんの最大功労者は,超一流の材料に手間と時間をたっぷりかけられてつくられた能生味噌.そして個性の強い素材をまとめ上げ,美しいハーモニーを作り増幅させた太陽の手の力が素晴らしい!
ここで回遊を終えたピエロが帰還.ここまでの黒やんの和馬のパンへの賞賛の言葉が真実ならば,あのリアクションはあまりにも地味.しかし和馬のパンの影響の真価は幻覚ではなく,食った奴自身の内部に現れます.…ピエロをシリアスにし,黒やんを丁寧にする,能生味噌による脳味噌への刺激が本来の性格を引き出すという人格リセット効果を持つこのジャぱんは.あの歴史を変えた大麻ジャぱんすら越える大傑作!
で,肝心の審査の結果は…黒やんもピエロも「引き分け」! 最終審査は残る代行審査員であり現在7つの海を回遊中の霧崎オーナーに委ねられてしまいました.このままでは霧崎の判定によってパンタジアは確実に負ける.ピエロまで呼んだ折角の奇跡も空しく霧崎オーナーは帰還して,そして…
「私がおいしいと感じたのは…パンタジア,東和馬君の,能生味噌ジャぱんだよ」

…霧崎オーナーの優しい顔を見た瞬間にそんなふざけたことを言い出した理由までもがわかる,あっと驚く大逆転! 和馬のパンの能生味噌は霧崎オーナーの頭脳を餌食とし,優しくてまともな人格を表に出してしまったがゆえのどんでん返し! 人を殺し過去を改変してきた和馬のジャぱんはついにラスボスを洗脳するという偉業を成し遂げたのでありました.結果,パネルは5対4となりパンタジアの勝利! パンタジアの権利は晴れて月乃のものに!
おいしいパンは人を幸せにするもの.能生味噌によって優しい本性が露呈してしまった霧崎オーナーは,フランスに置き去りにした2人の子どもに歩み寄ります.おいしそうなパンは,本当においしいかどうかわからないから自分で食べて確認しなきゃならない.しかし本当においしいとわかったパンは…食べて欲しいと思う人間全てに食べてもらいたい.和馬は自分に戦う理由をくれた月乃に,焼きたてのパンを差し出します.ここまで無謀な戦いを繰り広げたのも,月乃さんのパンタジアのパンに対する深い愛情があったからこそ.彼女はパンを愛する人として,和馬がパンを差し出す相手にふさわしい.
本性は実に優しい霧崎オーナー.その優しさは,子どもたちを捨てたのは獅子が子どもを叩き落したようなものであり,今だって日本のパン業界のためにあえて悪役をやってるんではないかと思われるほどなんですが…パンの効果が無限に続くわけもなく,能生味噌の切れたオーナーはいつものふてぶてしい顔に戻ってしまいましたとさ(苦笑).理由は金儲けとかもういろいろ台無しなんだけど,本作としてはこの展開が実にらしくておかしい.結局霧崎オーナーの真意がどこにあるのかはわからないまま.でもあれだけの優しさを見せつけられたあとで,これからが本当の闘いのはじまりだ!とか偉そうにされてもなぁ…(笑).
凄い敵こそが腕を磨く砥石.ジャぱんという頂点に挑む和馬には,支えてくれる仲間と同じくらいに隙あらば彼を谷底に叩き落そうとする厳しい風や雨や雪が必要.そして敵が強ければ強いほど,和馬の腕は天井知らずに上がっていくわけです.風雨の強さ冷たさに耐えてがむしゃらに進んだずっと先に,彼一人では到達できない,まさに想像もつかないようなとんでもない頂点が存在するに違いないのです.

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