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機動警察パトレイバー#1

「あの頃,夢想の世紀末の巻」

世紀末の日本.東京湾干拓計画・バビロンプロジェクトをきっかけとして高度に発達した土木作業技術は,レイバーと呼ばれる大型汎用ロボットの隆盛を招き,同時にレイバーを使用した犯罪の急増へと繋がった.警視庁は急増するレイバー犯罪に対応するべく警備部内に特車二課を設立するも,急激な技術の進歩によって現運用中の96式「アスカ」は時代遅れとなり,後継機として篠原重工の最新鋭機,98式AV「イングラム」が導入されることとなった.
第二小隊の隊員,篠原と太田はメーカーの八王子工場に出かけ,導入直前の新型機を見る機会を得る.しかしその直前,何者かがキャリアごとレイバーを奪い逃走した.未だシートの中の新型機を即座にバイクで追跡したのは,工場に適性検査を受けにきた一人の婦警だった.

80年代終盤の傑作として,今もその名を轟かせる名作「パトレイバー」.特に機械工学や情報技術畑の従事者に与えた影響は甚大であり,恐らく現在中堅のプログラマーやSEの人生を曲げた元凶の一つじゃないかと思います.自分もその例に漏れずかなりの影響を蒙りましたので(笑)旧作ですが名作として,再放送の機会を利用し,じっくりとレビューしていこうと思います.
本作の背景は当時の現実を下敷きにしたしっかりとしたもので,その設定の小難しい部分を使って2作の劇場版が作られていますが,テレビシリーズは同じ背景を使いながらも中高校生向けのわかりやすい作品となっています.完成度としては映画やマンガ,ビデオシリーズに及ぶものではありませんが,当時の先鋭・新人クリエイターたちの才気の爆発に加え,押井守が娯楽から作家性へと移行していく過程をも観察できるなかなかお得な作品です.
てなわけで前置きが随分と長くなりましたが,1話は新型機と新隊員のお話.

80年代に予想された10年後の未来が本作の舞台.現実には存在しない東京湾干拓事業やら東京湾中部大地震の影響やらで異常に土木工学が発達した近未来の東京は,下町の風景と未来的な高層ビル,そして人型の土木作業用ロボットが同居するという,とんでもない時代になっていました.…レイバーこそないけれど,下町とビル街の差は現実もあんまり変わらないかもしれないなんてことは当然わからない時代に作られた作品です.
不安定な足場の上で働く多足式の土木作業用機械として発達したレイバーは,民間では主に建築用重機として大量の機体が使用されてます.で,その乗務員はエリートパイロットなどではなく土方のおっちゃんたちがメイン.特殊車両という扱いだから飲酒運転は当然ご法度なので,今日も飲酒運転のブルドックを捕えるべく,警視庁警備部特車二課のレイバー,篠原の96式アスカが出動中.しかし今やロートルのアスカでは,民間機とはいえパワーに優れたブルドックの相手にはなりません.
やってることも言ってることも現実の取り締まりとあんまり変わらないわけですが,レイバーはやたらに足回りがいい上に馬力もある.その上酔っ払いには日本語は通じず,アスカの乗員である太田もバカなので日本語が通じず(苦笑)…2機は勝手に組み合って,というか太田が一方的に足を取られて運ばれて,結局ジャングルジムに2体で倒れて壊して終了.丈夫なブルドックは乗員含めてまったく無事なんだけど,アスカの方は機体が滅茶苦茶で太田も気絶.酔っ払いにすら負ける警察って,そりゃいくらなんでもダメだろう.
あまりにもダメな古い機体とそれを運用する隊員たちは,お台場の13号埋立地…現実にはテレビ局とか出来たあたりにぽつんと建つ,警視庁警備部特車二課の棟屋に帰還.さっきオイルを噴いて絶命したアスカはメーカーに戻しても部品がないので修理できないだろうというのが整備員のシゲの見解.…ちょっと馬力のある重機にあっさり負けるような機体を無理に運用してるんだから失態も仕方がないけれど,壊した当事者たちがろくに反省もしないってのは別の意味で問題がある.ゆえに口ばかりの皮肉屋の篠原遊馬とバカな太田功は榊班長にお前らランニングしてこいと教育されてます.
第2小隊は現在隊員4名に隊長1名の小所帯.エリート揃いの第1小隊とは違ってどいつも一癖ある連中ばかり.中でも一番癖が強いのが隊長の後藤.今日のアスカの大惨敗すら,新型機への切り替え時を示すものに過ぎないと評価.第1小隊隊長の南雲から見ればこのおじさんの判断は責任棚上げでいいかげん.けれど技術革新の波が押し寄せるこの時代に3年前の機体で繋げると考える方がおかしい.ゆえに新型機や新隊員を契機として,時代に合った小隊へ再構築するというのが飄々とした後藤の判断なのでしょう.…まあ,隊長がアレじゃエリート部隊にはなれそうにもないけどな(苦笑).
ある意味理想の上司像である後藤の大変に悪い癖と言えば,大事なことを周囲の人間にちっとも教えてくれないところ.もはや直らない「アスカ」を篠原の八王子工場へに運んだ遊馬と太田が,そこでメーカー側の実山から初めて新型機の話を聞くってんだから秘密主義も徹底しています.篠原の工場の中がいかにも組立工場ってって感じでいいなぁ….そして新型機を見に行くために工場内のキャットウォークを移動中,遊馬たちは本作の(一応)主役から声をかけられることになります.
工場の入り口でせっせと走っていたショートカットで元気な彼女.目立つと定評のある特車隊の制服を知っていたのか,「特車2課の方ですね!」と妙に人懐っこく声をかけてきます.子どもの頃からこういうの憧れてレイバー隊員の適性試験まで受けにきたという物好きで迷子な彼女.向かうべき方向と逆向きに移動してしまった彼女は,結局今回は試験を受けられずに終わります(笑).
さて,彼女と別れたあとで未だ眠れる新型機を鑑賞するべく,出荷直前のイングラムがキャリアごと置かれている格納庫に移動した遊馬たち.しかし…誰も乗っていないはずのレイバーキャリアがいきなり動き出し扉を破り逃走! 新型機強盗が警官の目前で発生.しかしそれを追おうにも鍵のない専用指揮車はすぐには動かせず…という緊迫した状況に,さっきの婦警が迷子のままでまたも皆の前にやってきました(笑).ちなみにここで工場長が遊馬を名前で呼んでいるのには,きちんと意味があったりします.
どうしても東館に行けない彼女はレイバーが消えたことを知ってなぜだか動揺.「あたしのパトちゃん」などと不遜なコメントで騒がしい彼女に向かい,遊馬は悔しかったら自分で取り戻せと実にアバウトな一喝をかまし…この言葉を真に受けた彼女は勝手にキャリアを追いかけはじめます.これが割とアバウトな指示を持てる限りの行動力でなんとかこなしていく,絶妙のコンビのはじまりです.

後半.レイバーキャリア強奪の報を受けて特車二課にも出動要請が.警察用の機体を納品前に奪われるという恥ずかしい事件に対し,南雲隊長率いる第一小隊が出動…するけれど,あんまり役には立ちません(苦笑).レイバーを運ぶキャリアは搭載するレイバー以上の横幅と長さがあって,ただでも渋滞しやすい都心の道を走るには邪魔.お台場から八王子だと,どう考えても途中で引っかかるよなぁ….犯人が強奪したキャリアにも同じことが言えますが,八王子近辺と都心では交通量がそもそも違うし強奪犯は無茶な運転をして当然.ただしキャリアは大変に目立つので追跡そのものは容易.無理に検問しても被害が増えるだけだと,後藤が緊急配備を一切要請しなかったのも頷けるところです.
甲州街道を高尾方向に逃走中の犯人.八王子工場から遊馬と太田が専用指揮車に同乗して追いますが,それに先行してちっこくてショートカットの元気で変な女の子が篠原の警備員用のバイクを勝手に借り出して追跡しています.キャリアに比べれば小回りの効くバイクで追跡するのは正しいけれど,右折のタイミングを見計らってバイクから飛び移ろうとするのはやっぱり無茶だ(苦笑).交差点でバイク上からジャンプだなんて,後続車に轢かれてもおかしくないんだから「うりゃー」なんてやるなよ….
どこまでも喰らいつく根性や機会を見逃さない度胸は誉めてやりたいけれど,彼女にはそれでは補いきれないほどに致命的に考えが足りない.落っこちて命拾いしただけでは止まらずに,さらにミニパト奪って追跡続行!…するも,一時停止させたあとで今度はキャリアにミニパトをあっさり潰されてしまう.新しい交通手段を手に入れるのはもう難しそうな田舎道.けれど彼女は「あたしのパトちゃんを返せー!」と根性だけでキャリアの荷台によじ登り!ついにはレイバーのコックピットに転がり込むことに成功.出荷直前の機体を起動させ,明るくなる画面に「ALPHONSE」と初期パスを設定.…きっとこの初期パスは,一般のIDみたいなもんだと思いたいです(笑).
警察のレイバーにはそれぞれ指揮車がついて緊密な連携を取りつつ運用されることになっていて,キャリアを追う遊馬たちの指揮車とついに彼女が起動させたレイバー間では無線通信が可能.夕刻となってから指揮車はついにレイバーとの無線が通じる範囲にまで追いつき,そこでさっきの婦警が生きていたことが確認されます(笑).彼女の残した最後の痕跡はぐっしゃりと潰されたミニパト.どうやら面識のあるらしい後藤はまったく心配してませんでしたが,それでもレイバーに潜り込むまで行くとは思ってなかったんじゃないか.もちろん特に彼女との面識のない遊馬たちからすれば指揮車に響く彼女の声はまさに予想外.その上運転までこなせるだなんてまるで作り話みたいじゃないか(苦笑).
こうして本格的に即席タッグを結成することになった遊馬と謎の婦警.犯人の目的地が近いと考え,キャリアが停止したところでいきなり起動させ,そのまま混乱の中を逃走…というのが遊馬の指示.しかしこの犯人たちは割と根性の座った連中のようで,いきなりキャリアがデッキアップしてもそれほど動揺してくれなかったのが割と残念.目的地である山中のスクラップ置き場で起動し立ち上がる新型機は,稼動部のオイルもまぶしいおろしたての機体.フォルムはアスカに比べればずっとスマートでいかにも主役メカらしく…メカフェチにとってはまさに夢のような状況なんだけど,趣味の世界にいつまでも浸っている暇はありません.周囲は既に犯人グループのタイラント3台に取り囲まれています!
飛び道具もなくハッタリも通じないまっさらな新型機.しかも乗っている彼女ときたらレイバーを傷つけることを妙に嫌がる.…むしろ傷つけないためには全力で逃げた方がいいような気がするんだけどなぁ…(苦笑).何を考えてるんだかよくわからない彼女は,この機体をスクラップにしたくないという一心で,むしろ機体が絶対傷つく大立ち回りを演じます(笑)!
背後から迫る機体にはショルダーアタックをかまして一撃で相手を分解.のしかかられただけで潰された前のアスカに比べたらCFRPの装甲の強さも段違い.前からの敵は電磁警棒でコックピットを狙って潰し.右から急襲は腕を抱え込んでそのまま投げ,電磁警棒で動力部を潰して終了.機体の性能もありますが,ほぼまっさらなOSでここまで機体を駆使してみせた彼女の能力も相当のもの.ここで後藤隊長が乗ったヘリが到着してゲームセット.はじめての大活躍は夕日の中で終了します.

1999年.世紀末を前に急増するレイバー犯罪に対応するべく設立された警視庁警備部特車二課.レイバーの黎明期から本格的な普及期へと移行する時代の流れに追いつくために,警視庁は新型レイバー,イングラムを第二小隊に導入します.そして一緒に今後この機体の運用に関わる新隊員も配属.「特車二課第二小隊に配属になりました,泉野明です.よろしく!」…あの日全力で追いかけた彼女が,地の果ての埋立地仲間に加わることになりました.世紀末を過ぎて21世紀に至っても未だ誰にも模倣できない特別な作品はこんなドタバタからはじまって…そして次回に続きます.

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