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機動警察パトレイバー#3

「不祥事もみ消しエンターテイメント!の巻」

2週間の研修を終え,新たな仲間とともに埋立地に戻ってきた第2小隊.これから1週間は緊急事態に備えた待機任務が続く.予備機を使ってレイバーの学習データを蓄積するのが隊が待機時間に与えられた任務.しかしここで1週間暮らさねばならない彼らには,与えられた任務以上にやらねばならないことがあった.それは陸の孤島であるこの埋立地で健全な食生活を営むこと.食生活はここで暮らさねばならない者たちにとって最大のテーマなのだ.

前回までで初期メインメンバーが勢揃いしたところで,ついにこれぞ本作という娯楽を見せてくれる「パトレイバー」.なんでもありの本作でなければできないコメディを描くのはあの押井守! 犬と魚と群体とそして食の滑稽詩人である彼の芸術性が,青少年向け娯楽として満たさねばならない縛りによって練り上げられて完成したこのドタバタは,現在の作品と並べてもまったく見劣りしません.今や完全に芸術の人になってしまった押井氏ですが,個人的にはこの頃の,他者の縛りの中で作られていた作品の方が好きなんだよなぁ….

前半.行く空に水面思うか鰯雲,過ぎ行く影に首都の秋を知る.空にジェットが舞う埋立地のはじっこに,明らかに風流とは逆ベクトルの特車二課第2小隊が研修を終えて戻ってきました.正午より第1小隊から待機任務を引き継ぎ,新メンバーと新機種でようやく一線に復帰.…後藤隊長は南雲隊長を構いたくて仕方がないようですが,彼女は実にそっけない.きっと毎度こんな感じで,うざいからちゃんと用事を事前に準備したりしてんだろうなぁ.
分校での厳しすぎる研修を終えて戦場に戻った第2小隊ですが,レイバーに乗り始めたばかりの野明のキャリアはたったの40時間のみ.この程度の学習時間ではレイバーは赤ん坊とか初期状態のパソコンに等しく,やれることはごくわずか.最初はろくに動けなくても学習によって行動のバリエーションが増えていくってのは,ベースは分散型のアレだろうなぁ.学問的には当時ちょうど熱かったはずだしな.
ちなみにここに来たばかりの野明は当然一番下っ端.似たような年齢でも先輩になる遊馬は妙に偉そうだし,同じ新人でもニューヨークでの豊富なキャリアのある香貫花はもちろん別格.そして下っ端は,1号機がエースになれるかどうかはお前次第とかマーキングをして喜んでるのはレイバーシステムを理解していない証拠とか好き放題言われてしまうものです(笑).テレビ版では2号機の頭は太田が依頼してカスタマイズされたみたいですね.
この手の閉鎖的な小組織だとありがちなのが入隊儀式.特車二課のイニシエーションは誘導なしでトレーラーにレイバーをデッキアップさせること.恐らくは研修以前のアスカの搭乗データも継承しているはずの太田は少々乱暴ですが誘導なしでイングラムをトレーラーに収めて次は野明の番.困るフォワードに対して足元のバックアップは整備員相手に何事かやっているご様子.…警察内部で握るだなんて,さすがにまずくはないですか(苦笑)?
一発で決めれば一人前のフォワードとして認められるこの儀式.野明はひろみの誘導に従って足を進めるものの,たったの40時間なので踏み込もうとしたらバランスを崩し,しかしそれでもなんとか無理やりに格納.この様子に対し,榊班長は野明のことを根っから機械との相性がいいと大変な高評価.実際1話ではほぼ真っ白なイングラムで3体のレイバー相手に勝ってますからね.ただし後藤が見るところ機械との相性が良すぎることも強いて言えば問題.どんなことでも才能に胡坐をかいてしまうと成長しなくなるし,過ぎる愛着は任務に支障をきたしそうだし.
入隊儀式をなんとかこなした程度の野明にはまだまだ学ばねばならないことが一杯.1週間に渡る待機という名の日常が野明を待ち受けています.いつ来るとも知れない出動命令を長時間待つわけだから,そこそこ気を抜いてやらないと精神的に持たないし,それ以上にここにはやることがありすぎる.606装備03と来れば鎌持って草刈り.無駄に広い敷地を整備することも大切な仕事なのですよ…遊馬はシゲと草相撲で遊んでますけどね(笑).
今日は太田が3号機でデータ収集中.既に香貫花の尻に敷かれておりますが,香貫花の方が明らかに格上なんだから太田は諦めて従うしかない.で,この練習を草むらからじっと見ている野明.イングラムを動かすときの感覚を思い出して,勝手に体が動いちゃってるみたいですね.…ちょっとしたトランス状態で香貫花の指示に合わせて上海亭のカーブ目がけ装備03で的確にロックオンしたら,様子のおかしい野明を見ていた遊馬とシゲが驚いて転がる(笑).今後泉機は柔軟で自由度の高い機体として完成していくわけですが,これはその片鱗かな.
日が沈む頃には隊員整備員総出で釣り.もちろんこれは遊びじゃない.昼は上海亭の出前があるけれど,夜間は野犬が出るので来ない.そしてコンビニでの買出しは遠い上に不経済.「何よりもレディーメードの食生活は士気に影響するしな」…ってなわけで,この地の果てでは自給自足が追求されてます.米類の保存の効く主食は問題ない.ビタミンはひろみのトマト農園である程度補える.しかし…タンパク質はニワトリ小屋の20羽の卵では,この大所帯を賄いきれないというわけで海を有効利用! それが釣り! 遊びじゃない!
野明が「冗談…だよね?」と言いたくなる気持ちはよくわかる.けれどここは下手な大学の学生寮よりも食に関しては厳しい場所.飯の問題を甘く見ると埋立地に屍をさらすことになる…ってのは浅薄な脅しではなくかなりの真実.整備班の誇る高速艇すら「沿岸漁業の切り札」としてのご紹介を受けるようなこの場所は,海の恵みなくしてはもはや成り立たないのです…あの,ところで,漁業権は…?

後半.榊班長は愛用のジャガーでご帰宅し,ここから先はハンガーにたむろする若い野犬どもは野放しとなります.一応後藤も一緒に宿直してるけど,あの人も基本的に野放しだからなぁ.釣りのあとは宿直室でちょっとのんびりしたあとで夕食.よく働きよく休みよく食うこの野犬暮らし.己の嗅覚を生かして後藤の炭酸…とアルコール入りの麦茶を盗んできてる奴もいますね.整備班と一緒に食事はテンション高くてまさに戦場.しかしその戦場を揺るがすとんでもない知らせが入る.漁に出た高速艇が座礁した!
魚を積み過ぎて座礁してしまった整備部の誇る高速艇.高価な大学の備品でバカなことをやった上に大失敗する奴って割にいるもんですが,これはそんな不祥事の拡大版.警察の備品をぶっちゃけ密猟に使って沈めたら絶対洒落にならないので,太田が乗った3号機で船を引き上げることに.…市民を守る警察官だけど,法を守る警察官とは決して言えないそのルーズっぷり,臨機応変ぶりがどうにも愉快です.
夜中に海岸で皓々と明かりをつけてのバカ騒ぎ.ここが地の果てであるからこそ,これほどの大事でももみ消しが可能なわけですが,見守る野明は今レスキューしている太田機が落ちたらどうなるのかが気になり,そのご期待に答えるかのように落ちる太田機(笑).もちろん船は沈んだまま.転がるように二重遭難で事が大きくなっていく….
華奢な見た目に反して実にフィクションっぽい凄い防水機能が施されていたらしいイングラム.しかし搭乗員は防水加工ではないためにすっかりご臨終.…やろうと思えば死亡事故だって内部でもみ消してしまえるんだよなぁこいつら(苦笑).てなわけで野明が気になっていた1号機の出番が到来.あれだけの精密機器を海水に浸けて錆びる程度で済んだり,逆立ちで水没している3号機すらもおしゃかにならないとしたら,この世界で一番発達しているのはレイバーよりもむしろ防水技術の方ではあるまいか.
香貫花に挑発され,太田を踏んで復活させつつ1号機に乗り込むことになった野明.飼い主のいない犬たちの大暴走はついにレイバー2機を巻き込むものとなったわけですが,本当に洒落にならないのはここから先.「貴様ら全員海に叩っ込んでくれるぞー!」でおなじみ榊班長が,書類を取りに戻ってきた!
激しい動揺と大混乱の末に無理やりハンガーを現状復帰させた一同.榊が戻ってきたときにはとりあえずいつもの通りに戻したはずですが,なんだか3号機が変….榊にこれ以上ここにいられては困るシゲは書類の作成を請け負ってまで無理やり帰宅させ,ぎりぎりの作戦はここからさらに続きます!
とりあえず出動のこととか事後の洗浄のこととかは棚に上げ,3号機に偽装させていた1号機を海に降ろして救出作戦を続行する一同.しかし事件の中心はもはやここにはない.様子がおかしいのに気づいて投光機の光を確認した榊こそこの事件のコアであり存在そのもの.彼にはっきりと認識された瞬間に事件は明らかな不祥事に変わるわけだから,なんとしても事態の収拾と証拠の隠滅をやりつくさねばなりません!
てなわけで第2小隊は指揮車出して飲酒運転の検問をつくって渋滞つくって時間稼ぎ.今回は脚本が脚本だけあって警官の反則が面白いように連続するわけですが(笑)数々の犯罪の中でも一番まずいのはこれじゃなかろうか.警察官という立場ではあるけれどまったく警察官らしからぬ彼らの位置づけを実例でもって見せてくれる,作り手のひねたサービス精神が素晴らしい.
さて,既に事件の渦の中心からは外れてしまった野明ですが,香貫花の指示で頑張ってます.なんとか3号機の足に鎖をかけ,ようやく引き上げられるかと思ったら滑り…これを支えてくれたのが香貫花の持ち出した2号機! 新入り女性2人の協力によって不祥事はようやくもみ消され,ついでに野明と香貫花の気持ちもちょっと通じ合ってめでたしめでたし.隊員たちの結束がこんな風に固まったことに比べたら,野明の1号機が滑らかにマニュアルでデッキアップしたことなんて,ごく小さなことに過ぎないのです.

回り道して戻ってきた榊班長が目にするのは,何も起きていないかのように静かなハンガー.しかし榊は,彼らが言い逃れのできない明らかな証拠を探します.もちろんそれを示した上で海に叩き込むつもりに違いないから,見守る班員や隊員たちは気が気じゃない.あの短時間でもやれるだけのことはやったはずなんですが,結局残ってしまった痕跡をおやっさんに告げ口したのはイングラム.その手からしたたるしょっぱい水滴で….
ここに出てきたのが放任主義の後藤.「何かあったんですか?」とこれまでの状況を絶対全部知ってるくせにとぼけて聞いて…榊も考えます.言外に後藤は今夜は何も起きてないと言っている.奴らがやらかしたのは間違いないが,奴らなりに対岸から見えるほどの大事をここまで収拾したわけだから…いいや,とちょっと笑い,なんでもねえと許してくれました.
そして緊急呼集! 305の発生でスタンバイから一気に目覚めて熱くなるハンガー! 何かが起きたときのため,何も起きてはならない時間を何も起きないように努力して過ごす,それがここのやり方だと野明にも視聴者にもよくわかったんじゃないかと思います.本作の本質はロボットアニメでは決してないのだということをしっかりと胸に刻みつつ,次回に続きます.

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