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桜蘭高校ホスト部#10

「見事なりサンドバックキングの巻」

ハルヒが貧困のどん底で暮らしている悪夢を見てしまった環.動揺した環は休日をいいことに,他のホスト部の仲間とともにハルヒの家庭環境を確認しに自宅へ押しかける.穏やかな休日を台無しにされて腹を立てるハルヒと,これまで見たことのない庶民の暮らしに舞い上がるホスト部.その変な気の回しっぷりや傍若無人ぶりに振り回されて,ついにハルヒは皆に手料理をご馳走することになってしまう.しかし買出しの直前,とんでもない態勢の環とハルヒを帰宅したハルヒの父が目撃してしまった.

シリアスもギャグも徹底して見事にこなす「ホスト部」.原作自体の芸風の幅もさることながら,アニメにする段階での芸風の抽出・脚色具合も見事なもの.下らない事と大切な事が表裏一体になった原作も凄ければ,そこから自在に面白さを取り出すアニメもまた素晴らしい.特に原作の幅の広さと奇妙なミックス具合に関しては,あの「銀魂」といい勝負だと勝手に思います(笑).
てなわけで今回は一流のギャグ職人による素晴らしいギャグ回! 端正な「ホスト部」らしからぬディフォルメキャラのぬりぬりっとした動きが絶妙で,さすがは絵コンテ桜井弘明(笑).キャラの頭のネジが3割増でおかしいのは言うまでもなく,無意味に背景で回転していたり書き文字が愉快すぎたりと画面の細部まで目が離せません.その分終盤の切ない雰囲気はやや薄くなってますが…一番大切なのはコメディなんだからいいじゃないですか(笑).

前半.高級洋菓子を土産にご訪問したホスト部が愕然としたのは藤岡家の惨状.あばら家の中から出てきたハルヒさんもげっそりとやつれております.窓には新聞紙で床にはござであちこちヒビのデコレーション.お茶だってお椀や計量カップに入って出てくる始末.戸棚は異次元へと繋がっており,そこから出てきたごちそうは3日前から断食して食費を貯めてへそくりはたいた特上パック寿司….
まさに想像を絶する貧乏生活に圧倒される金持ちたちに止めを刺したのは無知の愚かさ.ただの赤身を未知の大トロと誤解して,いかにもおいしそうに食するやつれたハルヒさん….「それはただの赤身であって! 断じて大トロではありません!」と環絶叫.…いや,もちろん夢なんですけども(苦笑).
純然たる金持ちならばここまでの妄想のバリエーションは期待できないというか,むしろ金がないということがどういうことなのかすらわからない可能性すらあるわけですが,どうやら貧乏に関する典型的な情報を大量に頭に入れていたらしい環らしい悪夢.案外ハルヒさんについてより深く知るという名目で,無駄に貧乏を勉強したのかもしれません.ああ見えてA型だし(笑).
不安に駆られた環は大至急朝食抜きで外出の準備.悪夢がただの悪夢であると一刻も速く登校して確かめたいものの! 「恐れながら環様!お召し物が半分お寝巻き,お足元は部屋履きのままにございます!」…ここでうっかりさんがばたばたと戻ってすたすたとやってくる様子,特にすたすたの感じがいかにも桜井.しかも今日は日曜.その程度自分で気づけこの馬鹿というばあやさんの心遣いも空しく(笑)環の暴走は止まらずに仲間を巻き込んでいくのであります.
まさか殿が冒頭から大変失礼な妄想をしているとは知らないハルヒは,スーパーまるとみの朝市からの帰宅中.ごく普通の庶民のお嬢さんとして平和な休日を過ごそうという思惑をぶっ壊すのが自宅前の黒塗りのベンツ.中には良く知ったあの人たちが格納されていたのでハルヒさんがっくり.本人の承諾も得ぬままに,今まさにホスト部による藤岡家家庭訪問が行われようとしていたのでありました.
庶民ワールドの予感に楽しげな仲間たちに比べると,鏡夜に相談しただけなのになぜか勢揃いしている自分たちが嫌でたまらない環.特にドッペルゲンガーズはハルヒにやたらくっつくから嫌なんだろうなぁ(笑).とはいえ彼はこの異郷で一人にされるのも怖いヘタレで,未だ団体行動の呪縛から逃れることができません.
気を取り直してリーダーシップを発揮してみる環だけれど,ハルヒさんに嫌な思いをさせないための「さりげない」配慮に関する注意が全て裏目に.帰って欲しいと思わせる言動禁止のはずが,入る以前から「ていうか今すぐ帰れ!」とハルヒさんに一刀両断されている(苦笑).ピンクのワンピで「黙れ!消えうせろ!」と汚い台詞を吐くアンバランスさが素敵だ….
ホスト部の連中が厄介なのは,あれだけ迷惑でありながらも下手に人当たりが良すぎるところ.変な連中の襲来に警戒した大家も環のホスト技で一瞬で撃沈.孤立無縁となった上にハニー先輩の高級洋菓子アタックを受け,ついに室内への侵入を許してしまうハルヒさん.…雷だけでなくおいしいものもかなりの弱点なんだよな.
藤岡家はごく狭い普通の庶民アパート.金持ちどもからすれば部屋どころかクローゼットサイズなんだろうけれど(苦笑)親子2人がつつましく暮らすには十分な広さ,もちろん当たり前ですが殿が夢見た貧乏生活とは掛け離れていい暮らしなんですが…金持ちどもは住居の狭さを極端に楽しみ,そこにげんなりしつつも「この人たちに何1つ期待しちゃダメだ!」とひたすら耐えることを決意するハルヒ.気の毒です.
例えば高いビルの上からでは真下を歩く人の身長差がわからないように,度を越えた金持ちたちには庶民の普通がわかりません.ティーポットなんかなくたって紅茶は急須で入れられる.そんなことすら思いもつかない彼らにとってはここは未知の世界.イッツ・ア・庶民ワールド! …そんな彼らの動揺ぶりや発見ぶりこそが,当たり前のことをしているだけのハルヒに多大なるダメージを与えているわけですが(苦笑).
話の流れで,ハルヒに恥をかかせたら負けというチキンレースを急遽開催する環と双子.元々大変に失礼な上に変な気を回すから何をやってもアウトな3人に対し,邪念のない上級生たちは一枚上.イチゴのケーキを選んだハルヒに,さらにイチゴをあげて好感度を上げるモリ先輩のスマートぶりに対し,そうしてよかったのか!と身もだえて悔しがる3人.ディフォルメキャラで異様に動く画が素晴らしいなぁ.
そもそも招かれざる客なんだからもっと神妙にするべきなんだけど,ケーキを食べたら小腹が空いて「お昼まだ?」とナチュラルに食事を所望する,とめどなく自由に生きる仲間たち(苦笑).鏡夜の…というよりは実質ハルヒの稼いだ金で寿司を取ることになってしまって冒頭の悪夢が蘇り….無駄な気を回す環が回したメモには「パックのお寿司は「特上」と書いてあっても高級とは言わないよ!!要注意」…バカからバカにされたようなもんだから(笑)即座にくしゃっと丸めてゴミ箱に放るハルヒさんは不幸で,じたばたと言い訳する殿もまた不幸だ.
もはややりたい放題言いたい放題の招かれざる客どもに,いろんなことをすっかり諦めてしまったハルヒさんは手料理が食べたいというハニー先輩の要望すらも飲み込んで,全員で昼食の足りない材料の買出しに行くことに.そもそも黒塗りベンツが来た時点でいろいろと諦めねばならなかったのだと覚悟を決めたハルヒを環が襲います(笑).
一人残って,ハルヒのお母様の写真が飾られた仏壇にご挨拶していた環.ハルヒはお母さん似で綺麗で頭も良さそうで有能そう…と間接的にハルヒを褒めちぎる環.「俺の目に狂いはないからな!」って言われても,君の目は割と節穴っぽいからなぁ(苦笑).それでも自分の母を誉められればうれしくて「そう,思います」と答えるハルヒは少し寂しげで.…それを聞く環の表情も奇妙に寂しくて優しくて,似ています.
というわけでシリアス終わり.さて買い物に行くか!と立ち上がった途端になぜか置いてあったバナナの皮で滑って転んで,環がハルヒを押し倒す格好になったところを狙ったように目撃する,ハルヒの母のような父! 言い訳しようにもできない状況,しかもその声は格上の子安.もはやひよっ子には言い訳のしようがありません!

後半.素晴らしいタイミングですっ転び素晴らしいタイミングで目撃した藤岡家.状況の絶望ぶりを環は完璧に把握しているわけですが,説明すれば理解してもらえると思った時点で大甘です.いくら見た目が大柄の美女であろうとも,彼はハルヒの真の父であり娘に近づく害虫を許すような漢ではありません! 「ごめんねー」と環を引き剥がして壁に叩きつける父の愛が,コマ送りしたくなるくらい面白い(苦笑).その迫力は実の娘すらビビらせる程のもの.今世紀最大のケダモノやでっかい害虫の言い訳を聞くような耳は持ち合わせていないのです….
大事な娘を押し倒し呼び捨てにする環のことが,父はともかく気に入らない.しかも戻ってきた双子がさらに環の悪評を耳に吹き込むもんだから大変だ.確かに部活の時には誠心誠意女好きとなり女をもて遊ぶんでいる環.しかしハルヒに対しては他の客とはまったく別の感情を抱いているから…「違う! 誰が遊びか! 俺は,俺は真剣に…」と急にシリアスに.普通なら告白する勢いなんですが…「真剣に娘さんのことを! 実の娘のように思っています!」…一体何を告白してんだこの人は(苦笑)!
てなわけでハルヒ父を交え,再び室内から仕切り直すこととなったホスト部一同.卓袱台を囲む一同はほがらかに蘭花さんと親交を深めるものの,早速バカのレッテルを貼られた環だけはいつもの体育座りで押入れでキノコを育成しております(苦笑).初対面のはずなのにホスト部をよく知っている蘭花さん.それはハルヒが部活の話をしたわけではなくて,既に鏡夜と通じていたからだなんて!
確かに彼と通じていれば,中学時代の秘蔵生写真を入手するのもたやすいわけで伏線も解消.鏡夜が自分の知らぬところで勝手に藤岡家と仲良くなっているのに怒り,直後にそりゃ本来はお前の仕事だと追い込まれる環は,自業自得だけど可哀想.悪夢を見て恥ずかしい目に遭い帰れと言われ出し抜かれくしゃっと捨てられ誤解されて吹っ飛ばされて吹き込まれて諭されて,今回の環のサンドバックぶりは実に徹底しています(苦笑).全員がそれぞれ違う方法で全方位からいじめるもんだから,行き場を失って押入れに引きこもるのも仕方がない.
ちなみにハルヒさんの父は,現在絶賛キノコ栽培中の環に大変よく似ています.怒った顔も可愛い!と超親バカぶりを発揮する父が環のことを大嫌いなのは…同属嫌悪も混じっているのかな? そしてそんなうざい父を軽くあしらって買い物に行くハルヒの姿に,そりゃ殿扱いが上手くなるよなと深く納得するホスト部でありました.
大変に愛らしくてぜひとも守ってあげたいのに,それを許してくれないハルヒの自律ぶりは父にとっても特別.周囲の人を気遣って,自分のことを自分で決める彼女の行動力は驚くほど.例えば8年前だって,父が休めないという理由で休日の参観日を教えなかった.偏見や先入観から縁遠そうなハルヒさんが,オカマの父のことが恥ずかしいわけがない.けれど父が疲れていることはよく知っているから,回さなくていいところにまで気を回してしまう心遣いがいじらしい.そこは親としては頼ってもらった方がうれしいはずなんだけど….
大嫌いな雷すらも一人で耐えて,ひとりで考えひとりで解決しようとする強くて強情なハルヒ.放っておけばどんな楽しみすらも周囲のために放棄しそうな,そんな娘の張り詰めた生き方をよく知っているからこそ,そんなハルヒを巻き込んで楽しくしてくれているホスト部には感謝している蘭花さん.ポイントは,ホスト部の話はしないはずのハルヒが唯一おバカな部長についてはよく話していること.あまりのダメっぷりと迷惑っぷりにより,環はハルヒの中で既に特別扱いされているようなのです.

先に買い物に出かけたハルヒをこっそり追う尾行プレイに興じる蘭花さんとホスト部一同.いい男をはべらせて歩きたいという欲求を堪えずに実現しちゃう蘭花さんと,毎度似たり寄ったりの行動力を見せる環はやっぱり同種.父がついこっそりと娘を見守ってしまうのは,ハルヒが自分のためにとけなげに行動してくれるから.その好意はうれしいけれどやっぱり配だし…という父の愛がストーキングと化すあたり,愛ゆえに奇行に走りやすい環とやっぱりよく似ているなぁ….
甘え知らずで欲がない.気遣う隙も与えてくれない.そのくせ無意識に人のことを救ってしまう,蘭花こと藤岡涼二の可愛い娘はそんな素敵なお嬢さん.その素敵は涼二だけが独占しているはずなのに…「ああ,それは…わかります」と環に真っ直ぐに共感されて,「わかるわけないの!」とぎゅうっと引っ張る蘭花さん(笑).娘の素敵ぶりは父だけが知っていればいいのであり!父は一人いればいいのであり!娘に特別扱いされるのは自分ひとりでいいのであり!「あんたは敵! 敵と見なす!」
やっぱり父に嫌われた環はハルヒに見つかって,まるで6年前の誰かと同じように尾行をごまかし,それを見たハルヒは6年前に誰かに向けたのと同じ笑顔を環に返しました.目の前でお鍋をねだるこのバカはまるで大きな子どものようで,そんな様子はきっとハルヒのために空回りする自分に似ている.バカなりに真面目で,バカだからこそ真剣.そんな態度はハルヒにとって既に特別で…「欲のないあの子が,ただ一人の人の傍にいることを心から望む日が来るのなら…………やっぱ考えただけでムカつくわー!」と環の嫌いな春菊ばかりを押しつける父のイジメに,環はやっぱり耐えねばならぬのです.オチだから(苦笑).本当に最後まで素晴らしいサンドバックぶりだと感動しつつ,次回に続きます!

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