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機動警察パトレイバー#9

「ご期待通りに段取りクラッシャーの巻」

テロ組織「海の家」シンパの犬走が酒田に入港する船に積まれたソビエトの軍事用レイバーを狙っている.特車二課を突然訪れた公安の高畑はそう語り,後藤たちに捜査協力を求めた.元から乗り気ではなかったが,行き先が酒田であったことから費用公安持ちという条件で非番の野明と遊馬を貸し出す後藤.2人の役目は目立つレイバー隊の制服で来日中の各国のスパイの行動を牽制するだけ.高畑につきまとわれつつも市内を観光したあとは鄙びた旅館で一泊.しかしその裏にはある策謀が横たわっていた.

物語の自由度が高くどんな内容でもやってしまえる「パトレイバー」.今回は押井守脚本回ということで,いかにも押井らしい公安とテロリストの物語は趣味満載.極論すればこの回の場合,別に特車二課がいなくたって話は回ってしまうんですが,作品としての都合上,華になる主役コンビが無理やりに近い形で場違いなところで大暴れさせられているのが面白い.作品の都合によって翻弄される押井氏ってのは今に至ってはもうありえないはずだけれど,枠の中でのこういう変な作家性の押し出しとか悪あがきっぷりとか,好きだなぁ.

前半.今回は押井氏持込のゲストキャラが何人が出てきます.まずは夜の工事現場に雌伏していた鋭い目のテロリスト,犬走は仲間からの連絡を受けて酒田へ.既にそれを見張る公安の姿もあるわけですが,オチを考えるとこの追跡者がちっとも役に立ってないのも当然なんだ.公安の手を逃れタクシージャックで酒田へゴー.一途に何かを求める野良犬ことテロリストは他人への迷惑なんか無視して一路山形へ.
さて翌日.不断の太田大活躍キャンペーンのおかげですっかりお荷物部署としての名の知れ渡った特車二課にやってきたのは,公安の外事一課の高畑.四角く小太りでサングラスで尊大で玄田哲章な公安.押井氏の他作を知っていれば「ああ来た来た」とにっこり笑ってあげたいところ.ただし,昨晩タクシージャックをやってのけた海の家シンパの犬走一直を捕えるために,公安が特車二課に足を運んだってんだからわけがわからない.いくら相手が元空挺レイバー部隊出身で逮捕暦多数で現在も罪の数を増やしている真っ最中のはずの凶悪犯だとしても,そして鶴岡では当然のように立喰師よろしく無銭飲食をやらかしているとしても(笑)なんで特車二課に協力なんか求めにくるのか.その理由は,高畑が示した写真の中にありました.
犬走が狙っているのは現在酒田入港中の船に積まれた赤いレイバー,L-99ことドシュカ.レニングラード軍事科学アカデミーで設計されたソビエト軍の次期主力レイバー…って,もはや実在しない名称が並んでしまってるところが,本作の放映時期である冷戦時代末期の常識って感じで面白い.まあ,どこだかからどこだかへ偉くヤバいものが流されていくってな話は冷戦時期に限った話じゃないんだけど(笑).
現在極秘裏に東南アジアへと運ばれていくそれの強奪を止めるためにぜひ小隊を派遣していただきたい!ってのが高畑の言い分ですが,これを「無理ですな!」と断っちゃう後藤.いつもならのらくら飄々とした後藤にしては珍しく強硬な態度なのかもしれない.特車二課は任地は簡単には離れられないし,公安のシャドウワークの片棒を担ぐのなんか御免だし.警官なんだから独断専行や超法規活動は許されないし.…結果的に太田が暴れてそんな感じになることは多々あるわけですが,本人たちがやりたくてやってるわけじゃないんだ.太田以外は(苦笑).
軍用レイバーとの喧嘩なんざ御免だから自衛隊に行ってほしい後藤と,自衛隊と特車二課の究極の2択でこっちに来ている高畑.破壊神,祟神,山鬼などと思われていようとも,彼らは皆で幸せになりたいまっとうな警察の人間であって,社会の暗部に横紙破りで自分たちから関わりあうような趣味はない.だからいくらサングラスを外して脅しても,後藤相手じゃ無駄だよ公安….
しかしどうしても協力を取りつけたい高畑は不思議な譲歩を.隊が無理なら非番の隊員を回してほしいという提案はさらに謎一杯.隊員だけでレイバーなしで何をやらせようってのか? …ここでしのぶが何事かを後藤に耳打ちし,いきなり後藤は物分りが良くなって第2小隊から非番の2人を回すことに決定.突然の和解に大喜びの高畑ですが,相手はあの後藤なので思惑道理に話を転がすことは諦めたほうがいいと思うぞ(笑).
しのぶが吹き込んだのは「何をやらせようとしてるのかも気になるし,2人くらい潜りこませて見れば?」ってな感じだろうか.あのそっけない態度が語っていた通り公安が大嫌いの後藤.しかしテロ組織「海の家」は警視庁所管内で行われているバビロンプロジェクトに反対する組織だし,レイバーも絡んでいるなら放置するのもよろしくない…ってなわけで第2小隊の非番隊員2名が酒田へおつかいに出かけます.
選抜されたのは1号機パイロットとバックアップの主役コンビ.新幹線や列車を乗り継ぎ,遥か酒田まで公安の皆さんと一緒に制服姿でハタハタを買いに出かけます(笑).周囲が不審な灰黒づくめじゃ,気楽な旅行気分になんてなれるわけないじゃないですか.しかし状況をあんまり理解していない苫小牧出身の野明は,旅費は他人持ちの旅行に大喜び.黄色と青の例の制服は現地の酒田でも悪目立ちしまくるものの,そんな目立ちっぷりをまったく無視しておみやげを買いまくる野明は肝が据わってるんだか無知なんだか.
赤いレイバーを乗せた船は既に入港.途中まで一緒だった公安たちも別ルートからこっそり酒田へ入ったらしく,現在の遊馬たちのお守は高畑のみ.公安とくれば隠密行動がセットのはずなのに無駄に目立つ特車二課を連れまわしたかったのは…意図的に目立ってもらうため.幻のレイバーに魅かれて蛾のように群がる各国諜報部門の皆様方に,レイバー隊が来ているとプレッシャーをかけるのが目的です.
各国諜報部がこちらを見守っていてくれるという嫌過ぎる土産屋.KGBにSASにCIAにNATOに…とこれまたちょっとレトロなラインナップ.しかも高畑が返事しないところをみると全部が冗談ってわけじゃないんだろうから気が重い(苦笑).向こうが特車二課の悪名にビビって手出ししないことを祈るばかりです.
そして宿で発生する,この旅で唯一蚊帳の外に居続けてきた野明を驚かせる衝撃の事実! 公安の手違いで今晩の宿は遊馬と相部屋! 予約がイズミノアキラ様で入ってしまったがゆえの同室.しかももう別の部屋はなし….旅行先でのどきどきアクシデントに狼狽しまくる野明ですが,一方の遊馬が「そういうことなら仕方がないか!」とあまりにも鷹揚すぎてさらに困惑.…遊馬としては公安に取り囲まれたこの旅で一体何を期待できるのかってな話なんだろうけれど(苦笑).

後半.旅館ではじまる困惑の一夜.とっくの昔にいろいろ諦めている遊馬は浴衣でだらだらとテレビ見て自然体.公安と一緒の観光旅行じゃ,今晩は絶対ろくなことにはならないと諦めちゃってるに違いない.一方,そんなことはまったく知らない野明はやっぱまずいとお風呂で動揺中.何事かを決意して風呂から背中だけど半身出しちゃうところがヒロイン的には大サービスだ.
部屋に戻ったら遊馬は既に寝てる.これ幸いと何事もなく野明も勝手に寝てしまいたいけれど,寝こける遊馬の動きが気になってそれどころではない.だって急に起き上がってこっちを見るんだもの! 自分の上に覆いかぶさって手でぎゅっと掴むんだもの! そして自分越しにハタハタを掴もうとするんだもの(笑)! 途中までの展開で動揺した野明は遊馬を桶でぶん殴る.ただハタハタを食おうとしただけなのに,見損なわれ損ですな遊馬.
真夜中に変なラブコメを演じさせられて理不尽だわ痛いわの遊馬のところに東京から電話.別の原因で寝乱れた遊馬をおばちゃんが笑うのが嫌だ….昼には制服姿で引き回されて見世物にされて,そして夜には野明に桶で殴られて.気の毒な遊馬についに訪れた隊長からの…反撃命令.ソ連関連の任務が専門の高畑の思惑が見えた後藤は,遊馬に重要な何事かを吹き込みます.3時間後には何かがここに.そしてハタハタは常に最重要(笑)!
夜半を越えて白く待つ夜更け.港を走るのは誰あろう例の犬走.待ち受ける公安を倒して船に潜入,そして最新鋭の赤いレイバーに乗ろうと思ったら…中の人がいた(笑)! 船からレイバーに乗って出てくるのはKGB高級将校.テロリストのレイバー強奪に偽装した亡命劇のプロデュースこそ,公安が狙っていた今回の茶番だったのでありました.警察やマスコミに取り囲まれた大事にして,他の各国諜報員が手の出せない中で堂々とレイバーと重要人物を日本のものにしちゃおうという実に大げさな茶番劇.当然海の家も特車二課もただのダシである完璧計画であったはずですが…本当に完璧な計画なら,特車二課を巻き込んではいけません(笑).
てなわけではじまる反撃タイム! 公安の背後から立ち上がるまばゆい照明,おなじみの影! 「人をダシに使おうなんてよくない根性だぜ,おじさん」ってなわけで,特車二課の誇るイングラムがゆっくりと立ち上がって茶番をぶち壊す! 独断専行や超法規活動はいくらなんでも言いすぎですが,段取りぶち壊しに関しては間違いなく特車二課の十八番.しかし相手も段取り無視で実弾なんかレイバーに積んじゃってるから困ったもんだ(苦笑).裏切ったなと逆切れした将校からの見境なしの銃撃がイングラムとその他大勢を襲います.
…野明の乗るイングラムのFRP装甲は確かにあの武装相手じゃひとたまりもないけれど,生身で現場をうろうろしている遊馬よりはマシ(苦笑).ついでに遊馬は怒った高畑にまで襲われるからやりきれない.元はと言えば人を騙してでも自分たちの計画を通そうとした高畑が悪いとマウントポジションが上になったり下になったり(笑).しかしここで内輪もめしてる場合じゃない.皆がすっかり忘れていた,例の犬走が赤いレイバーに乗ってやってきた!
特車二課と公安とソビエトの亡命将校と海の家のテロリストが織り成す壮絶かつ間抜けなレイバー戦は,当然のように被害甚大.船は沈むし港湾施設は破壊されるしやけっぱちにも程がある.ただしいくら軍用でも放てばいつかは切れるもの.弾切れを起こしたドシュカを電磁警棒で仕留めようとしたらば悪あがき,これはイングラムの大ピンチ!という状況を救ったのはひたすら後にいた遊馬の指示なんかではなく,犬走の操るドシュカのフォローだったのでありました.
見事1機の赤いレイバーは海へと沈み,一瞬心を重ね合わせたテロリストに警察はリボルバーカノンをつきつけて「逮捕する!」.敵の敵は味方だけど敵がいなくなったらそれまでの話.法と規律にがちがちに縛られ,テロ集団のように微妙な情で裁量が効くような柔らかい組織なんかじゃないわけで…「これだから警察は嫌われるんだよなぁ」.

かくして段取りクラッシャーぶりを見事に炸裂させた特車二課.公安の悪巧みは大失敗.港の壊滅する大惨事を招いたとあっては,地方県警だってエリート面した公安に向かって心おきなく抗議できるってもんです.気に食わない公安をひどい目に遭わせることができた後藤は大満足.皆で幸せになりたい彼ですが,彼の「皆」には公安は明らかに入ってないようで何よりです(笑).
結局全ては高畑を含めて闇から闇へ.初回でここまでひどい目に遭わせれば,公安もきっと特車二課を巻き込むのを以後慎むに違いない.…しかし,段取り壊しは特車二課のお約束.後藤がひたすらに心待ちにしていたアレだけは,いろいろありすぎて別の方向に流れてしまっておりました.ちゃんと買ってきたおみやげのハタハタ.しかし全部二課全体のものになっちゃって,隊員や整備員全員で大変おいしく戴かれてしまうのです….ハタハタって一時期完全な高級魚になってしまったけれど,漁獲調整のおかげで食卓に戻ってきたよなぁとか思いつつ,次回に続きます.

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